世界一の人口を背景に高い経済成長をとげているインド。
この国の成長をなんとか取り込んで投資をしたいと思うのは投資家として当然のこと。
でもインドは海外からの直接投資が禁じられており、間接的な投資をするしかありません。
そこで本記事では、お金と投資の学校GFS(グローバルファイナンシャルスクール)監修のもと、インド投資の経験も長い個人投資家の筆者が、
インドの株式に投資する以下の3つの方法ーー
①アメリカ株式市場でインド個別株を買う方法
②日米の株式市場でインドETFを買う方法
③日本の証券会社でインドの投資信託を買う方法
について、買い方や注意点、実際の個別株、ETF、投資信託の紹介などをご紹介します。
また、初心者の方のために、どのような口座を開けばインド株が買えるのか、新NISAのどの枠で買えるのかもあわせて書いています。
インドの成長をご自身の資産成長の糧にするために本記事がお役に立てば幸いです。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
第1章 いまなぜインド株なのか
ここではいまインド株に投資する理由を、3つの視点から解説します。
1-1 世界一の人口と2050年まで続く人口ボーナス期
インドは2023年に中国を抜いて世界最大の人口を持つ国となりました。
さらにインドは2050~60年ごろまで人口ボーナス期が続くとされます。人口ボーナスとは生産年齢人口の割合が高い人口構成を指し、これが続くことで経済成長に有利な状態が継続します。
「人口ボーナス」とは全人口に占める生産年齢人口(15〜64歳)の割合が高く、経済成長に有利な状態を指します。インドの平均年齢は約26歳と若く、この若い労働力が経済成長の原動力となります。
「人口オーナス」はこの逆に、従属人口(14歳以下および65歳以上の高齢者)の割合が高くなること。「支えられる人」が「支える人」を上回り、社会保障費などの負担が大きくなり、消費が低迷するなど、国全体の経済成長が停滞します。先進国はその傾向が強く、特に少子高齢化が進む日本は人口オーナスが進む国となっています。
確かにインドの人口は2060年ごろまで世界一のまま伸びることが予測されています。
少子高齢化の進行で人口増がストップした中国、すでに長期じり貧状態に入っている日本とは対照的ですね。
GFS監修の無料講座でも、人口が増えることが経済成長のすべての土台であること、「投資」の基本とはその人々の労働と消費が支える世界、国家、企業にお金を投じ、「資産作りの公式」にのっとってお金を増やすことだと伝えています。
1-2 経済成長の魅力
インド経済は急速に成長しており、IMFの予測によると2025年には名目GDP(国内総生産)が日本を抜き、世界第4位の経済大国になるとされています。
さらに2026年にはドイツを抜いて世界3位にのし上がると予測されています(1位は米国、2位は中国)。
(出典:読売新聞オンライン)
1-1で書いた通り、世界一の人口による大量の消費が内需を支えることで、輸出を伴わなくても成長が加速しています。
2014年の発足以来、モディ首相が率いる政権は「製造業の振興」や「企業化支援」などの多くの改革を実行してきました。
高額紙幣の廃止、納税の厳格化、そしてインド版マイナンバー制度である「アドハー」の推進により、10億人以上の登録者を得て銀行預金の増加も推進。膨大なデータベースを活用した各種フィンテック政策も進めています。
また、米国の巨大テック企業の幹部に多数のインド出身者がいるように、伝統的にITに強い国民性があり、これがインドの国力を直接間接的に高めることも予想されます。
多くの日本企業もこの成長力に目をつけてインドに進出しており、両国の経済関係はますます緊密になっています。
1-3 西側でも東側でもない第3極への分散
欧米諸国と社会主義国の対立が激化する中で、インドは第3極として独自の立場を維持しています。
このためインド株への投資は、東西の地政学的リスクを避け、分散させる効果も期待できます。
またインドには、アジア最古の証券取引所、ボンベイ取引所があり、単一の取引所としては世界最多となる5,000以上企業が上場しています。
新興国でありながら成熟した金融市場を持っているのもインド市場の魅力でしょう。
第2章 インド株投資を始める手順
2-1 証券会社の選び方
インド株投資を始めるには、適切な証券会社を選ぶ必要があります。
以下の点を考慮して選びましょう。
- インド株取引の可否ーー外国株式が買える口座が必要です(米国株が買えればインドADRやETFは購入可能)
- 取り扱い投資信託の数ーーインドをテーマにした投資信託がどれくらいあるか確認しましょう。選択肢は多いほうがいいです
- 手数料の安さーーADRやETFは米国株取引の手数料に準じます。投資信託は各商品ごとに違うため投信のページで比較できるのがおすすめです
- 取引ツールの使いやすさーースマホが取引のメインなら専用アプリをダウンロードしてみましょう
- 情報提供サービスの充実度ーー証券会社の海外企業の情報は海外情報を直訳しただけのことが多く、情報が古いことも多いので、気を付けましょう
総合的に考えると、ネット証券のSBI証券と楽天証券、米国株に強いマネックス証券あたりがおすすめです。
2-2 口座開設の流れ(SBI証券を例に)
証券会社の口座をお持ちでない方は以下の記事を参考に申し込みましょう。
基本的には、
- 証券会社のウェブサイトにアクセス
- 口座開設および海外株取引の申込フォームに必要事項を入力
- 本人確認書類をアップロード
- 審査完了を待つ(通常1〜2営業日)
- 口座開設完了の通知を受け取る
という流れです。
インド株のADRやETFを購入するには、「外国株式」の口座開設が別に必要です。また、インド株をNISAの枠で購入するなら、「NISA口座」の開設も必要になります。
証券口座を持っていない方は口座開設と同時に申し込んでしまいましょう。
*NISA口座の開設には別途金融庁の審査が必要のため、通常の口座より開設が数日~1週間ほど遅れます。
2-3 インド株投資の3つのスタイルを検討する
これまでも触れてきた通り、インド株投資には主に以下の3つの方法があります。
- 個別株投資ーーADRを利用(第3章でくわしく説明)。米国株式市場で売買可能。
- ETF(上場投資信託)ーー米国または日本の株式市場で売買可能
- 投資信託ーー日本の投資信託商品を購入します。100円から購入できます
いずれもNISAの成長投資枠で購入が可能です。証券会社によっては定期的な「つみたて投資」も可能です。
自分の資金やリスク許容度、投資目的に合わせて適切なスタイルを選びましょう。
第3章 インド株の買い方
前項2-3で触れたとおり、インド株の買い方は主に個別株(ADR)、上場投信(ETF)、投資信託の3通りあります。
この章ではそれぞれの買い方をもう少し具体的に見ていきます。
3-1 米国市場で買えるインドの個別株(ADR)
インド市場には海外からの直接投資ができず、個別株を買うにはADR(米国預託証券)を通じて投資します。
ADR取引のメリットは、米国株式市場で取引できること。米ドルで売買し、配当金も米ドルで支払われること。
ADR取引の注意点は、日米通貨の為替リスクがあること。またインド市場に上場する原株(インドルピー建て)の場合、原株とADRの間で価格差が生じる可能性があることです。
ただ、上場しているインドADRはそれほど数が多くありません。以下に代表的なインド企業のADRを挙げておきます。
インド株のADR一覧
銘柄名 | ティッカー | 銘柄の特徴・業種 | 上場取引所 |
HDFC Bank Limited | HDB | インド最大の民間銀行。個人・法人向け銀行サービスを提供 | NYSE |
ICICI Bank Limited | IBN | インド2位の間銀行。リテール銀行や企業向けサービスを展開 | NYSE |
Infosys Limited | INFY | ソフトウェア開発とITサービスのリーダー企業 | NASDAQ |
Dr. Reddy’s Laboratories | RDY | 医薬品メーカー。ジェネリック医薬品の製造と販売 | NYSE |
Wipro Limited | WIT | ITおよびビジネスプロセスアウトソーシング企業 | NYSE |
MakeMyTrip Limited | MMYT | オンライン旅行代理店。航空券やホテル予約サービスを提供 | NASDAQ |
Sify Technologies | SIFY | ITサービスプロバイダー。クラウドや通信インフラを提供 | NASDAQ |
WNS Holdings Limited | WNS | 業務プロセスアウトソーシング(BPO)のリーダー | NYSE |
上場取引所のNYSEはニューヨーク証券取引所、NASDAQはナスダック取引所です。
上記ADRの過去10年のチャートは以下の通りです。
比較のためにインドの代表的なインデックスETFであるEPI(オレンジ)と米国のS&P500(赤線)を入れています。
この中ではソフトウェア開発大手のインフォシス(INFY、水色)が株価伸び率5.6倍でぶっちぎりです。ただし外需頼りの側面があり、人口増によるインドの成長を取り込める業界とは異なります。
その点、銀行は成長を取り込んでいける業界といえるでしょう。民間最大のHDBCは10年で2.9倍、第2位のICICIは3.4倍の株価成長を見せており堅実です。
また、オンライン旅行代理店のメイクマイトリップ(MMYT、黄緑)も伸び率約4倍。特にコロナ禍後の2023年に大躍進を遂げています。
経済成長で中間層の国民が増えていくことで、旅行需要もどんどん拡大するものと予想されます。
3-2 米国市場で買えるインド株のETF
ETFは株式市場で個別株のように取引できる投資信託商品です。
米国市場で買えるインド株のETFは次の3つを知っていればいいでしょう(構成銘柄の多い順)。
- WisdomTree India Earnings Fund(ティッカー:EPI)ーーウィズダムツリー社のインド高収益ETF。収益性を優先した企業470社以上で構成しています。
- iShares MSCI India ETF(ティッカー:INDA)ーーインドETFの中では最大資産を持つETFです。「iShares(アイシェアーズ)」は世界最大の米資産運用会社ブラックロック社のブランド商品。INDAはモルガン社の指数「MSCI India Index」に連動。約140銘柄で構成され、インドの大型&中型株の85%をカバーしています。
- iShares India 50 ETF(ティッカー:INDY)ーーインドの代表的株価指数NIFTY50(後述)に連動。iSharesは上記と同じブラックロック社のブランド。
ちなみにインドの代表的な株価指数といえば次の2つあります。こちらも合わせて覚えておきましょう。
- SENSEX(センセックス)ーーボンベイ証券取引所(BSE)が運営編成する30種の株価指数。「BSE SENSEX」あるいは「SENSEX30」とも呼びます。
- NIFTY50(ニフティヒフティ)ーーNSE Indices Limitedが算出しているインド国立証券取引所上場の50銘柄で構成する株価指数。単に「NIFTY」とも。
以下は上記3つのETFと2つの株価指数をまとめた10年チャートです(いずれも配当調整済み)。
NIFTY50(紫)とSENSEX(薄紫)はほぼ同じく10年で3倍の成長を示しており、米国S&P500(赤)をわずかに上回っています。
次がEPI(オレンジ)で2.4倍、INDY(水色)とINDA(緑)はほぼ互角の約2倍の成長となっています。
NIFTY50連動のINDYが実際にはパフォーマンスがかなり下がるのは、ブラックロック社といえどもインドの企業に直接投資ができないため、中間手数料が高くなるためでしょう。
ETF投資のメリット・デメリットや投資信託の違いは以下の記事をお読みください。
3-3 日本円で買えるインド株の投資信託/ETF
日本で発売されている投資信託は、海外口座を作らなくても通常口座で日本円で売買できるため、個人投資家でも手軽にインド株投資ができます。
また、日本の株式市場に上場しているETF(投資信託)もあり、こちらも通常の日本株取引と同様にリアルタイムで取引が可能です。
投資信託/ETFには先述した株価指数に連動する「インデックスファンド」のほか、プロのファンドマネージャーが銘柄を厳選して運用管理する「アクティブファンド」があります。
インデックスファンドは、市場全体の動きを反映する特定の株価指数(インデックス)に連動するファンドのこと。インドの代表的な指数には、SENSEXやNIFT50があり、これらの指数に含まれる銘柄を自動的に組み入れて運用します。運用コストが低く、長期的に安定したリターンが期待できます。
アクティブファンドは、ファンドマネージャーが市場平均を上回るリターンを目指して買い付ける株式などを厳選し、資金を積極的に運用するファンドのこと。専門家が企業の業績や経済指標を分析し、収益が期待できる株や債券を選定してくれる一方、手数料が高くなる傾向があります。
以下に代表的な投資信託商品と日本の株式市場で買えるETFを紹介します。
投資信託は商品名をクリックすると日経新聞の投信サーチの当該ページに飛びます。詳細をご確認ください。
【インド株のインデックス型投資信託】
iTrustインド株式はインド関連の投資信託で唯一、NISAつみたて枠での投資が可能なようです(なぜこの商品だけなのか理由は不明)。
また、最後のeMAXIS新興国株式はインドだけに投資する商品ではありませんが、構成比の中でインドへの投資比率が18%と最も高いのが特徴です。
【インド株のアクティブ型投資信託】
イーストスプリング社の2つの投資信託は以下の記事でも紹介しましたので興味があればお読みください。
【日本の株式市場で買えるインド株ETF】
- NEXTFUNDSインド株式指数Nifty50連動型上場投信(証券コード:1678)ーー野村アセットマネジメントが運営するNIFTY50連動のETF
- iシェアーズNifty50インド株ETF(証券コード:201A)ーーブラックロック社が運営するNIFTY50連動のETF
- iFreeETFインドNifty50(証券コード:233A)ーー大和アセットマネジメントが運営するNIFTY50連動のETF
いずれもNIFTY50連動のETFですので、騰落率などは前章のチャートなどを確認ください。
ほかにアクティブ型のETFもありますが、何を買い付けているのか定かではないためここでは割愛します。
まとめ
インド株投資は、世界最大の人口と急速な経済成長を背景に、大きな可能性を秘めています。株価指数はすでにS&P500のパフォーマンスを上回っていました。
日本の投資信託ランキングで見ても、海外の国別では米国株の次にインドの商品が多数上位にランクインしているほど、日本人には人気です。
ただし、直接投資ができないインドへの投資は通常より手数料がかかります。これが長い目で見たときに大きく資産形成に影響してきます。
また新興国特有のリスクも存在するため、十分な理解と慎重な投資判断が必要なことは言うまでもありません。
長期的な視点と分散投資を心がけ、インド経済の成長を自身の資産形成に取り込んでいきましょう。
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