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トランプ大統領の就任でなにかと盛り上がっている米国株。
アメリカファーストの政策で米株市場にとってはおおむね追い風が吹いています。
米国市場はここ数年、世界の株式市場でひとり勝ち状態が続いており、高いリターンを求めて米国株投資を始める人も多いようです。
しかし、いざ米国株を始めようと思っても、
何から始めればいいのかわからないなあ
日本株投資と何が違うのかしら
英語わからないしねえ
といった疑問や不満をお持ちの方も多いことと思います。
そこで本記事では、お金と投資の学校GFSのもと、個人投資家である筆者が、米国株投資の基礎知識から具体的な買い方、注意点までをわかりやすく解説していきます。
初心者の方でも安心して米国株投資を始められるような内容を目指しますので、最後までお読みいただき、ぜひ米国株投資の第一歩を踏み出してください。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
第1章 米国株投資の特徴と魅力
1-1 世界経済をけん引する巨大成長市場
米国は先進的なグローバル企業が多く、また先進国で唯一人口が増加することによって内需(消費)が拡大している稀有な国家です。
そのため株式市場も右肩上がりで成長しており、長年世界経済をけん引しています。
投資家にとって米国株は今や資産形成に欠かせない投資対象となっています。
個別株を買っていない人でも、S&P500の投資信託を買っている人は多いことと思います。
また全世界に投資する「オルカン(オールカントリー)」にしても、実際は半数以上が米国株で構成されており、日本人投資家の多くが恩恵をこうむっているといえるでしょう。
1-2 2つの取引所に上場する世界トップクラスの企業群
米国市場には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)という2つの取引所があり、合わせて6,000以上の企業が上場しています。
2つの市場には、アップル、マイクロソフト、アマゾン、Google、メタプラットフォームズ、エヌビディア、テスラのいわゆる「マグニフィセント7」はじめ、決済カード会社のビザやマスターカード、コカ・コーラやP&G、スターバックスなど、日本人の誰もが知る世界トップクラスの企業が数多く存在します。
これらの企業は、世界経済の成長やテクノロジーの進化に合わせて成長を続けており、長期的な資産形成を目指す投資家にも最適です。
また、豊富な選択肢から自分の好みに合う投資先を選べるのも魅力でしょう。
1-3 株主重視の高い還元策
米国企業は、株主還元に積極的であることも特徴的です。
多くの企業が四半期ごとに配当金を支払い(日本は半年に1回)、さらに積極的な自社株買いを通じて株式価値を高めるなど、各企業が株主重視の高い還元策に取り組んでいます。
投資家はこれにより、キャピタルゲイン(値上がり益)だけでなく、安定したインカムゲイン(配当収益)の両面で恩恵を受けることができます。
1-4 証券取引委員会の厳格な管理と高い透明性
米国の証券市場は政府機関である米国証券取引委員会(SEC)の厳格な規制のもとに運営され、不正を見逃さない高い透明性を誇ります。
この厳格な規制により、米国の上場企業が発信する情報の信頼性は高く、投資家が安心して投資判断できる環境が整っていると言えるでしょう。
1-5 1株単位で投資可能、四半期ごとに配当
日本株が(一部証券会社のサービスを除き)原則100株単位での売買が必要である一方、米国株は1株からの購入が可能です。
そのため、少額から投資を始めたい初心者でも気軽に投資が始められます。
また米国企業は通常、四半期の決済ごとに配当金を支払います(配当を出す企業のみ)。
年4回の配当を受け取ることで、株式の保有者が安定的な収入を確保することができるのも米国株投資の大きなメリットでしょう。
第2章 米国株取引の準備
2-1 証券口座の海外株取引に申し込む
米国株を購入するには、証券会社の口座を開設し、海外株取引の申し込みを行う必要があります。
多くの証券会社ではオンラインのみで簡単に手続きが完了できます。
口座開設の時、同時に「外国株式」の取引を申し込むと米国株はじめ海外株の売買が可能になります。
多くの米国株や米国ETFはNISAの成長投資枠でも購入可能ですので、こちらも口座開設と同時に申し込んでしまうことをおすすめします。
2-2 米国株におすすめの証券会社
ここでは米国株取引に有利なネット証券を3社ご紹介します。重視したいのは各種手数料、そして証券会社によって異なる取引可能銘柄の数です。
SBI証券
SBI証券は、初心者から上級者まで幅広い投資家に支持されている証券会社です。米国株の取引手数料は約定代金の0.495%(税込)で、2.02米ドル以下の場合は手数料0円、最大でも20ドルと業界最安値。さらに円⇔ドルを交換する為替手数料も往復無料なので、コストが安く抑えられます。また、取り扱い銘柄数が5,300以上と多く、有名銘柄からニッチな企業まで取引可能。米国株専用のスマートフォンアプリも使いやすく、初心者にも買いやすいと思います。
楽天証券
楽天証券は楽天グループの一員なので、楽天ポイントを貯めたり購入に使うことが可能です。米国株の取引手数料は約定代金の0.495%(税込)で、2.22米ドル以下なら0円、最大でも22ドルとこちらもSBI証券に次ぐ業界最安値の水準です。また円⇔ドルの為替手数料も往復とも無料です。米国株の基礎を学習できるコンテンツも充実しており、初心者におすすめです。
マネックス証券
米国株取引に力を入れている証券会社として知られています。米国株の取り扱い銘柄数は6,000以上と業界最多。取引手数料も約定代金の0.495%(税込)で0~20米ドル(税込:22米ドル)と最安値です。独自の米国株レポートやニュースが豊富なため、投資判断にとても役立ちます。また専用アプリなどのツールも使いやすく、リアルタイムの株価情報や多彩なチャート機能が提供されているのも魅力です。
2-3 日本円を米国ドルに転換して入金
米国株を買う際には、取引通貨である米ドルを用意する必要があります。
証券会社の口座内で日本円を米ドルに両替できる機能があり、多くのケースではこれを利用します。
為替レートは日々変動しており先はなかなか読めませんが、なるべく円高のタイミングで両替することがポイントです。
2-4 どんな会社の株を買う?
初めて米国株に投資する人は、まずは安定した成長が期待でき、日本人にも知名度の高い大型企業や、時価総額の高い人気のETFを選ぶのが賢明です。
以下は、初心者に特に人気のある銘柄とETFの例です。
米国株 | ティッカー | 特徴 |
アップル | AAPL | iPhoneやMacなどの製品で知られる時価総額世界トップのテクノロジー企業です。長期的な成長が期待できる安定株として人気です。 |
マイクロソフト | MSFT | WindowsのOSや各種クラウドサービス、ソフトウェア事業で強みを持つ時価総額世界トップクラスの世界企業で、持続的な成長力が魅力です。 |
コカ・コーラ | KO | 飲料業界の世界的巨人。世界的なブランド力と安定した配当収入が魅力です。 |
アマゾン | AMZN | ネット上の大型ショッピングサイトとAWSの名で知られるクラウドサービスで今なお成長を続ける巨大企業です。 |
ETF名 | ティッカー | 特徴 |
SPDR S&P 500 ETF Trust | SPY | 米国を代表する500社の株価を対象にした指数S&P500に連動するETFで、安定的な成長が期待できます。 |
Invesco QQQ ETF | QQQ | IT関連などハイテク株の多いNASDAQ100指数に連動するETFで、高いS&P500を上回る成長力が魅力です。 |
Vanguard Total World Stock Market ETF | VT | 米国はじめ世界の幅広い銘柄に投資できるETFです。 |
第3章 米国株の買い方と注意点
3-1 買い方は3通り
米国株を買うには主に3つの方法があります。
①投資信託
米国株をいろいろな形でパックにした商品。日本円で購入できるため、すでにNISAなどで買っている人も多いでしょう。商品自体がすでに分散がきいているため安全度が高いのが魅力です。
②ETF(上場投資信託)
投資信託を株式市場に上場させたもので、個別株のようにリアルタイムで取引が可能です。日米両市場に多数の銘柄があり、手数料が投資信託より低いのが魅力です。
③個別株
具体的に個別企業の株式を購入する方法で、自分の好み、スタイルに合う銘柄を選んで組み合わせることができます。投資信託やETFのように分散されていないぶん、リスク・リターンが大きいため、米国株を買うといえばこの個別株が基本でしょう。
3-2 注文方法と約定
成行と指値米国株の注文方法には日本と同じく「成行注文」と「指値注文」があります。証券会社によっては入金した日本円から直接買うことも可能。ただし当日の為替レートをきちんと考えて発注しないと、買いすぎあるいは少なすぎとなる可能性があるので注意が必要です。
成行注文ーー注文時に市場にある売り玉を下から順番に価格を気にせず買い集める方法。必ず購入できる半面、思わぬ高値掴みになる可能性も
指値注文ーー価格を指定して市場がその価格になったときに購入する方法。希望価格で購入できるものの、指値まで下落せず買い損ねてしまうことも
3-3 値幅制限なし!ボラティリティに注意
日本株には「値幅制限」という仕組みがあり、1日の値動きが一定範囲に制限されていますが、米国株にはこのような制限がありません。
そのため、大きなニュースやイベントがあった場合、株価が短時間で大幅に変動することがあります。この値幅変動を「ボラティリティ」と呼びます。
特にテクノロジー系企業や新興企業の株式でのボラティリティが高い傾向にあり、買ってから間もない時期の大幅下落で大きな損失を被るリスクもあるので、分散などをしっかり心掛け、冷静な判断で取引する必要があります。
3-4 二重課税が当たり前!取り戻すには確定申告が必要
米国株に投資する際には、配当金に対して米国と日本の両国で課税される「二重課税」が発生します。
例えば米国株を利益確定したり配当金が支払われる際には、原則として10%の源泉徴収が行われます。
その後、日本国内でも20.315%の課税が行われるため、合計30%以上の税金が差し引かれます。
この二重課税の米国分は確定申告で「外国税額控除」の手続きを行えば後日返金されます。
3-5 為替手数料と為替リスクに要注意
米国株を購入するには米ドルが必要であり、日本円をドルに両替する際に為替手数料が発生します。
証券会社によってこの手数料の金額は異なり、1ドルあたり数銭から数十銭がかかることがあります。
また為替は常に変動しており、米ドルを利益確定したときのレート次第では投資収益が変わってしまうことがあります。
購入時よりドル高・円安になれば円換算で利益が増える一方、逆に円高ドル安にかたむくと円換算の利益は減少します。
3-6 取引時間に注意(夏冬で異なる取引時間)
米国株の取引時間は日本時間では深夜〜早朝の時間帯にあたります。
夏時間のときは22時30分~翌朝5時、冬時間は23時30分~翌朝6時が取引時間となります。
そのため、寝る前に指値注文を出すなど、自分の取引スタイルを工夫する必要があります。
また場中に何か起きて急落しても睡眠中で対応できないため、なるべく保有株に損切りライン(トレーリングストップ)を設定しておくなどの工夫が求められます。
まとめ
米国株投資は世界最大の成長市場に参加できる魅力的な投資方法です。
しかし、日本株とは異なる特徴や注意点があるため、十分な知識と準備が必要です。
本記事で解説した基礎知識を踏まえ、自身の投資目的やリスク許容度に合わせた投資戦略を立てて取り組みましょう。
また企業業績やニュース、投資情報などを英語で読む必要も出てくるため、翻訳ツールなどを使って根気よく情報を理解することも大事です。
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