「投資するなら、株と投資信託だと、どちらが儲かるの?」
この記事を読んでいるあなたは、上記の疑問をお持ちなのではないかと思います。
2024年からNISA制度が新しくなり、以前よりも、初心者が投資を始めやすい環境が整ってきたと言えます。
これををきっかけに「自分も投資を始めてみよう」と思い立った初心者の方も少なくないでしょう。
NISA制度では、つみたて投資枠では、金融庁が認めた一部の投資信託を、成長投資枠では、その他の投資信託と、個別企業の株式を購入することができます。
つまり、投資対象として、大きく投資信託と株式の2つがあるということになります。
この2つのどちらに、どの程度投資をしようか、と初心者であれば大いに悩むところですが、決めるにあたって「せっかく投資をするなら儲かる方に投資をしたい」と、誰しもが考えるのではないかと思います。
そこで本記事では、株と投資信託、それぞれの特徴や違いを改めておさらいし、どちらが儲かるのか、おすすめなのはどちらか、などについて、以降詳しく解説していきます。
「株と投資信託、どちらを買おうか悩んでいる」という方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
株と投資信託 特徴と違い
まず初めに、株と投資信託の特徴についておさらいしていきましょう。
株式投資
株式投資は、個別企業の株式を購入することです。
約4000ほどある上場銘柄の中から、投資する企業を選択し、自分で株の売買や運用管理を行っていきます。
株価は企業によって異なり、安いところで数千円程度で購入できる企業もあれば、株価が高く、購入に最低でも数十万〜数百万円が必要、といった企業もあります。
成長する企業を見極めたり、これからの株価動向を予測して、上昇しそうなものを分析することが然り、普段から経済紙をチェックするなど、自分で情報収集し、深く勉強をしていくことが必要です。
株式投資のメリットとしては
- 大きな値上がり益を狙える可能性がある
- 銘柄によっては配当や優待がもらえる
- 株主総会で自分の意向を反映させることもできる
という点が挙げられます。
特に、「大きな値上がり益を狙える」という部分は大きな魅力の一つであり、これを実現すべく、株式投資にチャレンジするという人も多いです。
一方、デメリットとしては
- 分析に労力や時間がかかる
- ある程度資金が必要
- 値下がりのリスクも高い
などが挙げられます。
分析の難しさや資金量など、総じて、投資するまでのハードルが高くなりがちなのが株式投資、と言えそうです。
投資信託
投資信託(ファンド)は、自分の代わりに投資のプロ(ファンドマネージャー)が、運用や分析などを行ってくれるものです。
そのため、私たち投資家は出資のみを行う形となります。
ファンドマネージャーは、多数の投資家から集めたお金を元手に、個別株だけでなく、債券やその他の資産も含め、分析したものに幅広く投資し、運用を行います。
その運用により発生した利益は、それぞれの出資額に応じて、投資家に還元されます。
そのため、投資信託でのリターンは、そのファンドの規模や方針、ファンドマネージャーの腕に左右されるのです。
現在、約6000ほどの投資信託があるので、その中からどのファンドに投資をするかを、選択することになります。
投資信託のメリットとしては
- 1000円や100円など、少額からでも始められる
- 比較的リスクが少ない
- 運用や分析などをプロに任せられる
という点が挙げられます。
少額から始められることや、基本的に幅広く分散投資しているファンドが多いため、リスクも抑えられていることが、特に投資信託の魅力であると言えます。
一方、デメリットとしては
- 短期で大きな利益は狙いづらい
- 保有中、手数料がかかる
- 銘柄数が多く、選択に迷う
- 証券会社によっては、取り扱いがない投資信託もある
との点が挙げられます。
保有中の手数料(信託報酬)は投資額に対して年1%前後のものが多く、そこまで大きな額がかかるわけではないですが、注意しておきたい部分と言えます。
株と投資信託の違い
一番の大きな違いは、「自分で運用管理をするか、しないか」という点です。
個別株投資でも、自分で幅広く分析し、投資・運用を行えるのであれば、理論上はファンドマネージャーと同じように、リスクを下げつつ成果を出すことも可能です。
しかし、これにはかなりの労力と時間がかかります。
実際、企業一社をしっかり分析しようと思うだけでも、それなりの手間やコストがかかるわけですが、複数ともなればなおさら、個人では限界があると言えます。
その点で言えば投資信託は、プロが様々な情報リソースを駆使して分析しており、時には通常私たち個人投資家では取得するのが困難な情報も踏まえて判断しているので、より精度の高い分析に乗っかることができます。
ただ、その代わりに、ファンドマネージャーなどに対して報酬を支払う必要があり、それゆえ保有中にも信託報酬という手数料がかかってくる、との認識になります。
この点、個別株では、自分で運用するので、現物であれば、保有期間中に手数料がかかる、ということはありません。
自分で運用するか、しないか。この違いがあることを覚えておきましょう。
株と投資信託、どちらが儲かるのか
前章で株と投資信託、それぞれの特徴について確認してきました。
さて、ここで、冒頭の通り「では、株と投資信託はどちらが儲かるのか」という疑問について考えていきます。
まず結論として、儲かると言えるのは「株式投資」の方です。
「儲かる=リターンが大きい」と捉える場合、単純に株式投資の方がリターンが大きいと言えるためです。
以下、詳しく紐解いていきます。
株のリターン
株式投資の場合、銘柄によっては1日で数%〜10数%程度の値動きが起こることがあり、うまく売買ができれば、短期的にその程度の利益を繰り返し狙うことが可能であると言えます。
例:フルッタフルッタ(2586)の株価時系列
(yahooファイナンスより引用、筆者作成)
また、銘柄の中には、1年でダブルバガー(株価が2倍になること)を達成するものが毎年一定数あることや、数年のうちにテンバガー(株価が10倍になること)を達成するものもあります。
【ダブルバガー達成銘柄数】
(引用:NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ)
【テンバガー銘柄例】セキュア(4264)
(引用:トレーディングビュー)
リターンで言えば、ダブルバガーであれば+100%、テンバガーなら+900%といった、脅威的な数字となります。
銘柄を厳選し集中して投資ができれば、このような大きな利益を狙うことも、株式投資であれば、理論上は十分可能ということになります。
投資信託のリターン
一方、投資信託の場合、株式投資に比べると、狙えるリターンは少なめです。
例えば、投資信託の中でも、アメリカのS&P500やNASDAQ総合指数をベンチマークとしているものは、比較的パフォーマンスもよく人気が高いですが、そのリターンは以下のとおりです。
【S&P500】
(引用:マイインデックス)
【NASDAQ総合】
(引用:マイインデックス)
1年目はやや大きめの数字が出ていますが、それでも年率平均で10%程度のリターンに落ち着く傾向があることがわかります。
10%という数字自体は、実は決して悪いものではありませんが、前項の株式投資のリターンと比較すると、どうしても投資信託の方が低くなりがちです。
そのため、「より大きなリターンを狙える可能性」に注目するのであれば、株式投資に軍配があがる、ということになるのです。
株と投資信託、どちらがおすすめなのか
前章の内容から、株と投資信託では「株の方が儲かりそう」ということがわかりました。
それであれば、「儲かるのであれば、投資信託よりも、株をやる方が良い」と考えることもできそうです。
しかし、本当にそのように「株の方が絶対的におすすめ」と言い切って良いものでしょうか。少し立ち止まって、考えてみます。
「儲かる=おすすめ」ではない
株式投資には、短期間で大きく儲けられる可能性がありますが、忘れてはいけないのが、「リスクも高い」ということです。
つまり、儲かる場合もあれば、大きく損をしてしまうことも、当然ながらあるわけです。
もちろん、損するリスクを承知で、株式投資にチャレンジしたい、と考えている方はそれでいいかもしれませんが、子の教育資金や今後の自分の老後資金など、将来の不安に備えることを主軸に資産運用をしようと思う場合、過度なリスクは、やはり受け入れがたいと言えます。
すると、この場合は、ローリスクで始められ、時間をかけて安定して利を伸ばしやすい投資信託の方がおすすめ、ということができそうです。
資産運用の目的や、捻出できる金額、受け入れられるリスクの大きさは人それぞれであり、適した運用スタイルも、また十人十色と言えます。
そのため、「少しでも大きく儲かる可能性があるか」という観点だけではなく、目的の達成に必要か、自分に合っているか、なども併せて考えることが必要です。
そうはいっても、「自分にはどちらがあっているのだろうか」と悩む方もいるかもしれません。
そこで株と投資信託、それぞれおすすめなのはどんな人か、以降、要素をピックアップしてみます。
株がおすすめな人
以下の点に合致する場合は、投資信託よりも株がおすすめと言えます。
・短期で大きな売買差益(キャピタルゲイン)を狙いたい人
投資信託の場合、ファンドマネージャーが良くも悪くも分散投資をしているため、短期間で急騰という事象が起こりづらく、また、細かい取引は不向きです。
しかし、株であれば、短期間で急騰しそうなものに資金を集中し、大きく利益を狙うことも、デイトレードやスキャルピングなど、細かい取引を何度も行い利益を積み重ねていくことも可能です。
なので、時間軸を短く、株価の値動きの波にうまく乗って利益をとりたい、という人は株にチャレンジすると良いと言えます。
・資金に潤沢な余裕がある人
これまで述べてきた通り、株式投資には大きなリスクが伴うことや、また投資するためには一定の資金量が必要なケースもあります。
資金に余裕がある人であれば、株価の大きな銘柄も戦略的に購入することができたり、ある程度の損失が出ても、日常生活に経済的な影響がでないような体制を作ることも可能です。
そのため、潤沢に資金がある場合は、株式投資をする余地が十分あると言えます。
・配当や優待を目的にしている人
企業によっては、株式を保有していると、配当収入がもらえたり、株主優待がもらえることがあります。
特に株主優待は、サービスの割引券や無料券、QUOカードや図書カードの金券など様々なものがあり、株主優待を主軸に投資している著名な投資家もいるくらい、昨今、注目度も高いです。
また、配当についても、平均して2%前後の利回りと言われていますが、中には5〜6%の配当利回りを叩き出している企業もあります。
また、株価が下落したタイミングでうまく購入できれば、さらに利回りを高めることも可能です。
このように、企業から出る配当や、株主優待を目的にしたい場合は、株がおすすめと言えます。
・投資先を自分で選びたい人
自分で分析し、納得した上で、投資先の企業を選びたい、という場合も、株がおすすめです。
投資信託では確かにファンドマネージャーが広く分析を行い、分散して運用を行ってくれますが、分散であるがゆえ、間接的ではありますが、自分の知らない企業やモノへ投資することも必然になってきます。
この点、「知っているものだけに投資したい」と思う方や「調べるのが好きだから自分でやりたい」と思う方もいるでしょう。
株式投資であれば、自分の知らない企業への投資をもちろん避けることができますし、分析するにしても、日常生活に身を置く私たち個人投資家だからこその、投資のプロとは異なる視点で深掘りすることも、自分の匙加減でいくらでも可能と言えます。
投資信託がおすすめな人
一方、以下の要素がある人は、投資信託がおすすめな人と言えます。
・ローリスクでの運用を目指したい人
第1章で触れたとおり、投資信託は比較的リスクが少ないのが特徴です。
運用の目標や自分の性格的特徴から、リスクをとって大きく利益を狙いにいくよりも、堅実に安定して運用した方が継続しやすい、と判断する人もいるでしょう。
そのような人には、リスクが少なく始められる、投資信託がおすすめと言えます。
・少額から投資を始めたい人
投資信託は1000円や100円といった少額からでもスタートできます。
投資をしようと考え、色々準備を進めていても、大きな資金を投じると考えると心理的な抵抗が生まれ、二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。
上記のような少額からの投資であれば、心理的なハードルを下げることもできますし、また「家計上、投資に回せる資金がそんなに多くない」という人でも始めやすいと言えます。
・老後資金のためなど、長期的な運用を検討している人
投資信託は、短期的な運用は向いていませんが、長期的な運用でこそ、その真価が発揮されます。
第2章で見た通り、投資信託のリターンは、長期になるほど10%程度に収束する傾向がありますが、裏を返せばそれは、長期運用であれば、年10%程度のリターンを堅実に狙うことも可能、ということです。
資産運用の目標は人それぞれですが、その中で老後資金や子の教育資金など、長期的なゴールを目指している場合は、投資信託がおすすめと言えます。
・自分で投資先を詳細に選んだり、管理が苦手な人
投資先の選定や、その後の運用管理など、自分でやろうとするとそれなりに労力や時間がかかるものです。
これを前向きに、むしろ好んで取り組める人は良いですが、時間的にも精神的にも、割けるリソースが限られている、という人も当然いるでしょう。
投資信託では、投資先の細かい分析やリバランス(投資資源や配分を変更すること)は基本的にファンドマネージャーが行ってくれるので、大きく労力を割かずともリスクを抑えた投資が可能です。
このように、運用管理や分析になかなかエネルギーを割けないという人は、投資信託がおすすめと言えます。
・投資初心者
投資初心者の方は、投資信託がおすすめです。
初心者の場合、実際に行動することで理解が深まったり、感覚が養われたりする部分も大きいので、まずはぜひ投資をしてみた方が良いと言えます。
ですが、そうは言っても最初から大きな金額を投じたり、過度なリスクをとってしまうと、大きな損失になり、即刻相場からの退場を余儀なくされることもあるので、望ましくありません。
投資信託であれば、最初の「あまりよくわからない」という段階でも、リスクを抑えつつ、プロに運用を任せることができるので、比較的始めやすいと言えます。
また、日々の資産の変化や、取引の流れ、経済状況と値動きの関係など、投資の本質を知るための参考になる点も多いです。
まとめ
いかがでしたか。
株と投資信託では、株の方が儲かる可能性はありますが、その分リスクも高いです。
「儲かるから」の一点で、決めてしまうと、想像しないような損失に繋がり、後悔することもあるかもしれません。
資産運用の目的をしっかり定め、また自分にはどんな投資スタイルが合っているだろうか、なども踏まえながら、ぜひ今後の投資戦略を考えてみてください。
そして本記事が、その参考になりましたら幸いです。
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