
発毛・育毛・植毛市場が拡大!多様化する「薄毛対策」の現在地
薄毛や抜け毛は、年齢や性別を問わず多くの人が抱える身近な悩みである。近年は、育毛剤やヘアケア商品だけでなく、AGA治療などの医療サービス、自毛植毛、ウィッグや増毛サービスまで選択肢が広がっている。かつては「薄毛を隠す」ことが中心だった対策も、現在では「脱毛の進行を抑える」「発毛を促す」「頭皮環境を整える」「自分の毛髪を移植する」など、目的に応じて多様な方法を選べるようになった。
こうした市場の広がりは、関連する上場企業にも新たな事業機会をもたらしている。アートネイチャーは毛髪製品や増毛・育毛サービス、ファーマフーズは「ニューモ」ブランドの育毛剤、第一三共はグループの第一三共ヘルスケアを通じて「カロヤン」シリーズを展開している。さらに、花王、資生堂、コタ、アジュバンホールディングスなども、頭皮ケアやヘアケアの領域で市場と接点を持つ。
発毛・育毛・植毛はそれぞれ仕組みや目的が異なるため、これらを一括りにするのではなく、医薬品、医薬部外品、美容サービス、医療技術などに分けて考えることが重要だ。本稿では、こうした毛髪市場の現在地を整理するとともに、関連する上場企業の取り組みを通じて、進化する薄毛対策の最前線を探っていく。
| 証券コード | 企業名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 7823 | アートネイチャー | オーダーメイドウィッグを中心とする総合毛髪企業。増毛・育毛サービスやヘアケア商品も展開。 |
| 2929 | ファーマフーズ | 卵黄由来ペプチドなど独自素材の研究開発に強み。「ニューモ」ブランドなど、育毛・ヘルスケア関連商品を展開。 |
| 4568 | 第一三共 | 大手製薬会社。グループの第一三共ヘルスケアが「カロヤン」シリーズなどの発毛促進薬・育毛関連商品を展開。 |
| 4923 | コタ | 美容室向けにシャンプー、トリートメント、スキャルプケアなどを展開。美容室へのコンサルティング営業にも強み。 |
| 4452 | 花王 | 日用品・化粧品の大手。ヘアケア事業に加え、頭皮と髪の解析を活用したパーソナルケアなどにも取り組む。 |
| 4911 | 資生堂 | 化粧品大手。スキンケアやヘアケアなど幅広い美容領域を展開するグローバル企業。 |
| 4929 | アジュバンホールディングス | サロン専売型の化粧品メーカー。ヘアケア・スキンケア商品を美容室などのプロフェッショナルチャネル向けに展開。 |
「発毛・育毛・植毛の最前線!進化する薄毛対策と毛髪医療の現在地」
薄毛や抜け毛への関心が高まるなか、発毛・育毛・植毛を取り巻く技術やサービスは大きく進化している。かつては「育毛剤を使う」「かつらを着用する」といった選択肢が中心だったが、現在では医薬品による治療、自毛植毛、低出力レーザーなど、複数のアプローチから自分に合った方法を選ぶ時代になった。さらに、毛髪や頭皮の状態を分析し、治療方針を検討するなど、より個別化されたケアも広がっている。
日本皮膚科学会による「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、男性型脱毛症に対してフィナステリド、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用が推奨度Aとされている。つまり、現在のAGA治療において、これらは医学的なエビデンスが比較的確立した中心的な選択肢である。自毛植毛についても、男性型脱毛症では推奨度Bとされている。
発毛分野でまず押さえておきたいのがミノキシジルである。外用ミノキシジルは毛髪の成長を促す治療法として広く利用されており、日本皮膚科学会も男性型脱毛症、女性型脱毛症の双方で外用療法の選択肢として位置付けている。特に女性型脱毛症では、フィナステリドやデュタステリドは推奨されておらず、ミノキシジル外用が重要な治療選択肢となっている。
一方、男性型脱毛症では、フィナステリドやデュタステリドによって脱毛の進行を抑えるという考え方が重要になる。これらは「髪を直接増やす薬」というより、AGAの原因となる男性ホルモンの作用に関係する酵素を阻害することで、脱毛の進行を抑える薬である。したがって、発毛を目指す場合でも、ミノキシジルによる発毛促進と、フィナステリドやデュタステリドによる進行抑制を組み合わせるという考え方が広がっている。日本皮膚科学会も、外用療法、内服療法、自家植毛術を主要な治療法として挙げている。
そして近年、存在感を高めているのが自毛植毛である。自毛植毛は、AGAの影響を受けにくい後頭部などから毛包を採取し、薄毛が目立つ前頭部や頭頂部などへ移植する方法だ。薬による治療とは異なり、毛髪そのものを別の場所へ移すため、適切な症例では高い効果が期待できる。日本皮膚科学会も、十分な経験と技術を持つ医師が施術することを条件に、男性型脱毛症では自毛植毛を推奨している。
植毛技術そのものも進歩している。現在は毛包単位で採取・移植する方法が一般的で、傷跡や自然な生え際のデザイン、毛髪の密度などを考慮しながら施術する。さらに、ロボットを活用した毛包採取など、テクノロジーを取り入れた植毛技術も登場している。日本皮膚科学会の関連資料でも、毛の生える角度や頭皮の状態などをアルゴリズム化して毛包単位の採取を支援する「ロボット植毛」が新しい技術として紹介されている。ただし、移植毛の生着率などについては、熟練した植毛医の技術が優れるとの見解も示されており、「機械を使えば誰でも同じ結果になる」という段階ではない。
もう一つ注目されるのが、LEDや低出力レーザーを利用した治療である。日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、LEDおよび低出力レーザー照射は推奨度Bとされている。薬を使う治療とは異なるアプローチとして、AGA治療の選択肢の一つになっている。
さらに研究段階では、成長因子、細胞移植、毛包再生などをめぐる研究も続いている。毛髪を「生えている毛」だけではなく、「毛包そのものをどう維持・再生するか」という視点から研究することで、将来的には従来の薬物治療や植毛とは異なる治療法が登場する可能性がある。もっとも、再生医療や細胞を利用した毛髪治療については、研究段階のものと、一般診療として確立された治療を区別して考えることが重要だ。2017年版ガイドラインでも、成長因子導入や細胞移植療法は検討項目として挙げられている。
こうした技術革新は、発毛・育毛関連企業にも新しい市場を生み出している。医薬品だけでなく、育毛剤、シャンプー、スカルプケア、毛髪分析、ウィッグ、植毛サービスなど、関連市場は幅広い。例えばアートネイチャーのような毛髪関連企業、ファーマフーズのように育毛剤を展開する企業、第一三共のようにグループ企業を通じて発毛促進薬を展開する製薬企業など、上場企業にもさまざまなプレーヤーが存在する。
ただし、発毛・育毛市場が拡大する一方で、注意したいのが商品の広告やネット上の情報である。「必ず生える」「短期間で劇的に改善する」といった表現だけをうのみにするのではなく、医薬品なのか、医薬部外品なのか、化粧品なのかを確認することが重要だ。また、AGA以外にも円形脱毛症や皮膚疾患、栄養状態などによって脱毛が起こる場合があるため、自己判断だけで対策を続けるのではなく、必要に応じて皮膚科などの医療機関に相談することも大切である。
発毛・育毛・植毛の最前線は、「髪を増やす」という単純な競争から、「脱毛の原因を抑える」「残っている毛髪を維持する」「必要な部分に毛髪を移植する」「将来的には毛包そのものを再生する」という複合的な領域へと進化している。現時点では、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル、自毛植毛など、確立度の高い選択肢が治療の中心である。一方で、レーザー、ロボット技術、再生医療などの研究も進み、毛髪医療の選択肢は着実に広がっている。今後は、個人の脱毛状態をより細かく分析し、それぞれに適した治療を組み合わせる「個別化された毛髪ケア」が、発毛・育毛市場の大きなテーマになりそうだ。
アートネイチャーに注目!発毛・育毛・増毛で進化する「毛髪ケア」の最前線
薄毛や抜け毛への関心が高まるなか、発毛、育毛、植毛などを含む毛髪市場が大きく変化している。かつて薄毛対策といえば、かつらや育毛剤が中心というイメージが強かったが、現在では医薬品による発毛治療、頭皮ケア、増毛、ウィッグ、自毛植毛など、さまざまな選択肢が存在する。こうした市場の変化を象徴する企業の一つが、東証スタンダード市場に上場するアートネイチャーである。同社は1967年の設立以来、総合毛髪企業として事業を展開し、現在では各種毛髪製品の製造販売、増毛・育毛サービス、ヘアケア商品の販売など、幅広い領域をカバーしている。2026年3月末時点ではアートネイチャー店舗283店舗、ジュリア・オージェ91店舗、病院内サロン11店舗を展開している。
アートネイチャーの大きな特徴は、「髪を増やす」というニーズに対して、単一の商品だけで対応するのではなく、複数の方法を提供している点にある。同社の代表的な商品といえばオーダーメイドウィッグだが、それだけではない。自毛に人工毛を結び付ける増毛、頭皮や毛髪をケアする育毛サービス、ヘアケア商品、さらには医薬品としての発毛剤までラインアップしている。つまり、薄毛の悩みを「隠す」「増やして見せる」「育てる」「発毛を促す」という複数の方向から支えるビジネスモデルとなっている。
特に注目したいのが発毛剤への取り組みである。アートネイチャーはミノキシジルを配合した第1類医薬品の発毛剤を販売している。男性用の「LABOMO ヘアグロウ ミノキ5 ネオ」と女性用の「LABOMO ヘアグロウ ハナミノキ」を展開しており、同社によれば男性用発毛剤を2019年、女性用発毛剤を2020年に発売した。その後も商品をリニューアルし、主に自社通販サイトを通じて販売している
ここで重要なのは、「発毛」と「育毛」は必ずしも同じものではないという点だ。アートネイチャーの公式サイトでも、発毛剤は医薬品、育毛剤は医薬部外品として区別されている。発毛剤は壮年性脱毛症による薄毛や抜け毛の治療を目的とし、育毛剤は抜け毛の予防や毛髪の健康維持などを目的とする。薄毛対策を考える場合には、こうした商品の分類や効能効果を理解したうえで、自分の状態に合った方法を選ぶことが重要になる。
育毛の分野でもアートネイチャーは独自のサービスを展開している。同社の育毛ケアサービスは、頭皮や毛髪を継続的にケアし、髪を育てる環境を整えることを目指したサービスで、オーダーメイドサロンで提供されている。さらに、育毛剤として「ラボモ アートブラック ローション」や女性向けの「ラボモ シルキーソフト ローション」などを販売。毎日のホームケアとサロンでのケアを組み合わせられる点は、毛髪専門企業ならではの強みといえる。
一方、植毛については整理が必要である。自毛植毛は、後頭部などの毛髪を採取して薄毛部分へ移植する医療行為であり、アートネイチャーが主力として展開している増毛サービスとは別物である。アートネイチャーの増毛は、自毛の根元に人工毛を結び付けることで、気になる部分のボリュームを調整する方法だ。同社は日本で初めて増毛を開発した企業として、長年培った技術とノウハウを生かし、つむじや分け目などを自然に見せる商品を展開している。
この違いは、発毛・育毛・増毛・植毛を考えるうえで非常に重要だ。発毛は新たな毛髪を生やすことを目指す医薬品によるアプローチ、育毛は現在ある毛髪や頭皮の環境を整えるアプローチ、増毛は人工毛などを活用して見た目のボリュームを増やす方法、そして自毛植毛は自分の毛髪を別の場所へ移植する方法である。それぞれ目的や仕組みが異なるため、「薄毛対策」という一つの言葉でまとめるのではなく、自分が何を求めているのかによって選択肢を検討する必要がある。
こうした多様なニーズに対応できることが、アートネイチャーの事業上の強みにつながっている。同社はウィッグや増毛商品だけでなく、発毛剤、育毛サービス、ヘアケア商品、医療機関へのサポートまで事業領域を広げている。公式サイトによれば、2020年には医療機関への医薬品販売や業務受託を目的としてアートメディカルサービスを設立しており、毛髪に関する知見を医療分野にも広げている。
また、毛髪市場では「自然に見えること」への要求も高まっている。単純に毛量を増やすだけでなく、生え際やつむじの自然さ、装着時の快適性、日常生活での扱いやすさなど、より細かなニーズへの対応が求められる。アートネイチャーは、ウィッグや増毛商品の企画・開発から生産、販売までを一貫して行う独自のビジネスモデルを強みとしており、人工毛髪やウィッグについて機能性だけでなく自然さや快適性も追求している。
今後の発毛・育毛市場では、AGAなどに対する医療的な治療と、日常的な頭皮ケア、そしてウィッグや増毛などの美容的なアプローチが、それぞれの役割を持ちながら共存していく可能性が高い。さらに、毛髪状態を分析する技術やAIなどのデジタル技術が進展すれば、一人ひとりの状態に合わせた毛髪ケアも進みそうだ。
アートネイチャーは、こうした市場の変化に対して「毛髪の総合企業」という立場から対応できる点が特徴である。発毛剤で髪を生やすことを目指す人、育毛によって頭皮や毛髪をケアしたい人、増毛によって見た目のボリュームを高めたい人、ウィッグによってヘアスタイルを楽しみたい人など、異なる悩みに幅広く対応できる。
薄毛対策の最前線は、「何か一つの商品を使えば解決する」という時代から、発毛、育毛、増毛、ウィッグ、そして医療など複数の選択肢を組み合わせる時代へと移りつつある。そのなかで、長年にわたって毛髪に特化した技術とサービスを蓄積してきたアートネイチャーは、今後も変化する消費者ニーズを取り込む余地が大きい企業といえる。発毛・育毛・植毛をめぐる技術やサービスが進化するなか、単なる「かつらメーカー」ではなく、毛髪に関する総合的なソリューションを提供する企業として、その動向が注目される。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」
ファーマフーズ「ニューモ」に注目!発毛・育毛・植毛で広がる薄毛対策市場の最前線
薄毛や抜け毛に対する関心が高まるなか、発毛・育毛市場は大きな変化を迎えている。医療機関でのAGA治療が一般化し、発毛剤や育毛剤、スカルプケア商品などの選択肢も増えている。さらに、自毛植毛をはじめとする毛髪医療への関心も高まり、「薄毛を隠す」だけではなく「髪を育てる」「髪を生やす」「毛髪を移植する」といった多様なアプローチが広がっている。こうした市場で独自の存在感を放っているのが、東証プライム市場に上場するファーマフーズである。同社は機能性素材の研究開発を基盤に、健康食品や化粧品、医薬品・医薬部外品などを展開しており、なかでも育毛ブランド「ニューモ」は同社を代表する商品へと成長している。
ファーマフーズの特徴は、食品や化粧品を単純に販売するのではなく、独自素材の研究開発から商品化までを一貫して手掛けている点にある。同社は「ファーマフーズ」という社名の通り、食品と医薬品の中間領域ともいえる機能性素材の研究に力を入れてきた。卵黄由来の成分をはじめとする独自素材の研究を進め、それをサプリメント、化粧品、医薬部外品などに応用している。毛髪分野では、この研究開発力を背景に誕生した「ニューモ」が大きな柱となっている。
「ニューモ育毛剤」は医薬部外品として展開される育毛剤であり、同社独自の卵由来頭皮保護成分「HGP」を配合していることが大きな特徴だ。ファーマフーズは2026年7月期第2四半期の決算資料で、「ニューモ育毛剤」の累計出荷数が3,234万本に達したことを公表している。また、2025年2月に発売した「ニューモⅤ(ファイブ)」も累計出荷数137万本に達しており、ニューモブランドが引き続きBtoC事業の収益をけん引している。
ここで整理しておきたいのが、「発毛」と「育毛」の違いである。発毛剤は、壮年性脱毛症などによる脱毛に対して、毛髪を新たに生やすことを目的とする医薬品である。一方、育毛剤は医薬部外品として、育毛や脱毛予防、毛髪・頭皮の環境を整えることなどを目的とする。したがって、「ニューモ育毛剤」は医薬品としての発毛剤とは位置付けが異なる。ファーマフーズの事業を考える際にも、発毛と育毛を混同せず、同社は主に育毛・頭皮ケア市場でブランドを構築していると捉えることが重要だ。
その一方で、発毛市場そのものが拡大していることは、ファーマフーズにとって追い風となり得る。AGA治療ではフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどが利用されており、医療機関で治療を受ける人も増えている。こうした医療的な治療と、日常的に使用する育毛剤やシャンプー、頭皮ケア商品などは競合するだけでなく、消費者の悩みや目的によって使い分けられる可能性がある。ファーマフーズはこの「日常のセルフケア」という領域でニューモブランドを育ててきたといえる。
さらに同社は、ニューモを単一の育毛剤ブランドで終わらせず、周辺カテゴリーへ広げている。2026年7月期第3四半期の決算資料によれば、ニューモブランドからドリンクタイプの「ニューモD」を上市し、総合スーパーやドラッグストアチェーンへの配荷を進めている。また、明治薬品が手掛けるCHC事業でも、流通向けの「ニューモ育毛剤」を展開している。通信販売を中心に成長してきたブランドを、店舗販売へ広げていく動きは、今後の成長を考えるうえで注目点となる。
ファーマフーズのもう一つの特徴は、広告・通信販売を活用したBtoCビジネスにある。同社は自社素材を活用した商品を開発し、消費者に直接届けることでブランドを育成してきた。「ニューモ」もその代表例であり、育毛という明確な悩みに対して商品を訴求することで、継続購入につなげるビジネスモデルを構築している。2026年7月期第2四半期では、医薬品・医薬部外品の売上高が前年同期比18.4%増の229億5700万円となり、ニューモブランドがBtoC事業をけん引していると会社側は説明している。
一方、発毛・育毛を語るうえで外せないのが植毛である。自毛植毛は、後頭部などAGAの影響を受けにくい部位から毛包を採取し、薄毛部分へ移植する医療技術だ。育毛剤とは目的も仕組みも異なり、毛髪そのものを移植するため、薄毛対策の選択肢として独立した位置付けにある。ただし、ファーマフーズは植毛を主力事業としている企業ではない。そのため、同社を「植毛関連企業」として捉えるのではなく、発毛・育毛・植毛を含む薄毛対策市場全体が拡大するなかで、育毛・セルフケア領域を担う企業として見るのが適切だろう。
むしろファーマフーズの強みは、植毛のような医療技術とは異なる「毎日のケア」にある。薄毛対策は一度の施術で完結するものばかりではなく、日常的な頭皮ケアや生活習慣への意識も重要になる。そこで育毛剤、シャンプー、サプリメントなどを組み合わせた商品群には一定の市場が存在する。ファーマフーズがニューモブランドを育毛剤だけでなく、ドリンクやヘアケア商品などへ広げていることは、こうした需要を取り込む狙いとみられる。
また、同社は育毛だけに依存する企業ではない点も見逃せない。機能性素材事業ではGABAなどを含む独自素材を研究し、健康食品や機能性食品など幅広い分野へ展開している。BtoC事業では「タマゴ基地」ブランドのサプリメントや医薬部外品、「フューチャーラボ」ブランドの化粧品なども扱っている。つまり、ニューモの成長を軸としながら、健康・美容領域全体へ事業を広げていく構造を持つ。
今後の発毛・育毛市場では、AGA治療などの医療分野、自毛植毛などの外科的アプローチ、育毛剤や頭皮ケアなどのセルフケアが、それぞれの役割を担いながら市場を形成していく可能性が高い。そのなかでファーマフーズは、独自素材の研究開発とD2Cを組み合わせ、「育毛を日常のセルフケアとして取り込む」という領域で存在感を高めている。
「髪を生やしたい」という需要が続く限り、発毛・育毛市場には大きな潜在力がある。医療機関での治療を選ぶ人、自毛植毛を検討する人、まずは育毛剤や頭皮ケアから始める人など、消費者の選択肢は今後さらに多様化していくだろう。ファーマフーズにとっては、ニューモブランドの継続的な商品開発に加え、ドラッグストアなどへの販路拡大や海外展開をどこまで進められるかが今後のポイントとなる。発毛・育毛・植毛をめぐる技術とサービスが進化するなか、「ニューモ」を武器に育毛市場を切り拓いてきたファーマフーズの動向は、毛髪関連市場を見るうえで引き続き注目される存在といえる。
第一三共「カロヤン」に注目!発毛・育毛・植毛で広がる薄毛対策市場の現在地
薄毛や抜け毛への関心が高まるなか、発毛・育毛市場は大きな変化を迎えている。AGA(男性型脱毛症)に対する医療機関での治療が一般化し、ドラッグストアなどで購入できる発毛促進薬や育毛剤、頭皮ケア商品も多様化している。さらに、自毛植毛などの毛髪医療も選択肢の一つとして知られるようになり、薄毛対策は「隠す」だけでなく、「進行を抑える」「発毛を促す」「頭皮をケアする」「毛髪を移植する」といった複数のアプローチから考える時代になった。こうした市場で注目したい上場企業の一つが、国内大手製薬会社の第一三共である。
第一三共と発毛・育毛の関係を語るうえで欠かせないのが、グループ会社の第一三共ヘルスケアが展開する「カロヤン」ブランドである。第一三共ヘルスケアは、医療用医薬品で培った研究開発力を背景に、OTC医薬品やスキンケア、オーラルケアなど幅広いヘルスケア商品を展開している。その中でカロヤンは、長年にわたって発毛促進や育毛を訴求してきた毛髪関連ブランドとして知られている。
カロヤンシリーズの特徴の一つが、カルプロニウム塩化物を有効成分とする商品を展開していることだ。第一三共ヘルスケアが発売した「カロヤン プログレ」シリーズは、カルプロニウム塩化物など複数の有効成分を配合し、「発毛促進」「育毛」「脱毛(抜毛)の予防」「薄毛」などを効能・効果として掲げている。つまり、単なる化粧品としての頭皮ケアではなく、OTC医薬品として発毛・育毛市場に参入している点が特徴である。
ここで「発毛」と「育毛」は分けて考える必要がある。発毛とは、脱毛によって減少した毛髪を新たに生やすことを目指す考え方であり、育毛は現在ある毛髪を健やかに育てたり、抜け毛を防いだりすることを目的とする。第一三共ヘルスケアのカロヤンシリーズは、こうした毛髪・頭皮の悩みに対して、医薬品としてアプローチしていることがポイントだ。
一方、AGA治療全体を見れば、カロヤンだけが選択肢ではない。日本皮膚科学会によれば、男性型脱毛症の主な治療法には外用療法、内服療法、自家植毛術があり、外用薬ではミノキシジル、内服薬ではフィナステリドやデュタステリドが代表的な選択肢となっている。2017年版の診療ガイドラインでは、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル外用はいずれも男性型脱毛症に対して推奨度Aとされている。
この点から見ると、第一三共のカロヤンは、AGA専門クリニックで処方される治療薬とは異なる「OTC医薬品によるセルフケア」という市場を担っているといえる。薄毛が気になり始めた段階で、まずドラッグストアなどで購入できる商品からケアを始めたいという需要は根強い。医療機関での治療とセルフケアは必ずしも二者択一ではなく、症状や目的に応じて選択肢が異なる。
そして、発毛・育毛市場をさらに広い視点から見ると、「植毛」という選択肢も存在する。自毛植毛は、AGAの影響を受けにくい後頭部などの毛髪を採取し、薄毛が目立つ前頭部や頭頂部などに移植する医療技術である。日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、自毛植毛術は男性型脱毛症に対して推奨度B、女性型脱毛症に対してC1と位置付けられている。
植毛と発毛剤・育毛剤では、そもそものアプローチが異なる。発毛剤や育毛剤は薬剤などを使って頭皮や毛髪に働きかけるのに対し、自毛植毛は自分自身の毛髪を薄毛部分へ移植する。日本皮膚科学会も、自家植毛術について「男性型脱毛症になりにくい後頭部の毛を薄毛になりやすい頭頂部や前頭部に移植する治療法」と説明している。
したがって、第一三共を「植毛関連企業」として見るのは適切ではない。第一三共の発毛・育毛との接点は、あくまでグループの第一三共ヘルスケアを通じたOTC医薬品市場にある。植毛については、発毛・育毛市場全体を理解するための一つの選択肢として捉えるべきだろう。
第一三共の強みは、何といっても医薬品企業としての長い歴史と研究開発力である。第一三共グループは1899年以来のイノベーションの歴史を持ち、現在はがん、循環器疾患、希少疾患、免疫疾患などを中心に革新的な医薬品の創出に取り組むグローバル製薬企業となっている。
その一方で、第一三共ヘルスケアは、病院で処方される医療用医薬品とは異なるOTC医薬品市場を担っている。カロヤンのような毛髪関連商品をはじめ、生活者が日常的に利用するヘルスケア商品を展開していることから、第一三共グループは「治療」と「セルフケア」の双方に接点を持つ企業グループと見ることができる。
今後の発毛・育毛市場では、AGA治療の普及に加え、薄毛を予防したいという早期ケア需要も重要になりそうだ。若い世代から頭皮ケアを始める人が増えれば、育毛剤やシャンプー、スカルプケア商品などの市場にも影響を与える可能性がある。また、高齢化が進むなかで、男女を問わず毛髪に関する悩みへの対応も求められる。
さらに、毛髪医療の技術革新も続いている。自毛植毛の技術向上に加え、低出力レーザーなどの新しい治療法、毛包再生や細胞を利用した研究なども進められている。ただし、研究段階の技術と、すでに医療現場や市販薬で確立されている治療を区別して考えることが重要である。日本皮膚科学会のガイドラインでも、成長因子導入や細胞移植療法については、現時点では十分な根拠が確立していないことから慎重な評価が必要とされている。
発毛・育毛・植毛をめぐる市場が広がるなか、第一三共は「カロヤン」という長寿ブランドを通じて、OTC医薬品による毛髪ケアという領域に長く取り組んできた。AGA専門治療や自毛植毛とは異なるものの、薄毛対策の選択肢が多様化するほど、セルフケア市場にも新たな需要が生まれる可能性がある。
薄毛対策は、もはや一つの方法だけで考えるものではない。発毛剤、育毛剤、医療機関でのAGA治療、自毛植毛、頭皮ケアなど、それぞれの特徴を理解し、自分の状態や目的に合った方法を選ぶことが重要である。第一三共にとって発毛・育毛は巨大な主力事業ではないものの、グループのOTCヘルスケア事業における一つの重要なカテゴリーだ。「カロヤン」という長年のブランドを持つ第一三共は、今後も変化する毛髪ケア市場を考えるうえで注目したい上場企業の一つといえる。
まとめ:進化する毛髪ケア市場、関連企業の成長余地にも注目
発毛・育毛・植毛を取り巻く市場は、「髪を増やす」という一つの目的から、脱毛の進行抑制、発毛促進、頭皮ケア、増毛、ウィッグ、自毛植毛など、複数の選択肢を組み合わせる時代へと変化している。AGA治療などの医療分野が普及する一方で、日常的に利用できる育毛剤やヘアケア商品への需要も根強く、毛髪関連市場の裾野は広がっている。
今回取り上げたアートネイチャー、ファーマフーズ、第一三共は、それぞれ異なる強みを持つ。アートネイチャーは毛髪サービスや増毛、発毛剤などを幅広く展開し、ファーマフーズは「ニューモ」を軸に育毛市場で存在感を高めている。第一三共は第一三共ヘルスケアの「カロヤン」を通じ、OTC医薬品による発毛促進・育毛という領域を担っている。
今後は、毛髪状態をより細かく分析する技術や、個人の状態に合わせたケア、医療とセルフケアを組み合わせたサービスなどがさらに発展する可能性がある。自毛植毛などの医療技術も進化を続けており、薄毛対策の選択肢は一段と多様化しそうだ。発毛・育毛・植毛というテーマは美容だけでなく、医療、ヘルスケア、化粧品、サービスなど複数の産業を横断するテーマとなっており、今後も関連企業の動向から目が離せない。




