温泉・銭湯・サウナの現在地――「入浴」から「体験」へ進化する温浴ビジネスと関連銘柄

サウナブームで再注目!温泉・銭湯の現在地と成長を狙う上場企業

日本人の暮らしに長く根付いてきた温泉、銭湯、サウナが、いま新たな転換期を迎えている。かつて銭湯は家庭に風呂がない時代の生活インフラであり、温泉は旅先で楽しむ保養や観光の象徴だった。しかし、家庭風呂の普及によって銭湯の数が減少する一方、スーパー銭湯や日帰り温泉、都市型スパ、サウナなどが登場し、「入浴する場所」から「心身を整え、余暇を楽しむ場所」へと役割が変化している。特に近年はサウナブームが市場を押し上げ、若年層やファミリー層など新たな利用者を呼び込む動きも広がっている。

こうした市場の変化は、関連企業にとって新たなビジネス機会となる。温浴施設そのものを運営する上場企業は決して多くないが、極楽湯ホールディングス、テルマー湯ホールディングス、トラストホールディングスなど、それぞれ異なる形で温泉、銭湯、サウナの需要を取り込んでいる。施設の大型化やサウナ設備の充実、飲食・リラクゼーションとの融合などによって、利用者が施設で過ごす時間を伸ばし、入館料以外の収益を生み出すことも重要になっている。

一方で、エネルギー価格、人件費、設備の老朽化、後継者不足など、温浴業界が抱える課題も少なくない。単なるブームに乗るだけではなく、地域に根付きながら継続的に利用される施設をつくれるかが問われている。歴史的な変化を振り返りながら、温泉・銭湯・サウナの現在地と、それを支える上場企業の取り組みを見ていく。

コード企業名市場温泉・銭湯・サウナとの関係関連度
2340極楽湯ホールディングス東証スタンダード「極楽湯」「RAKU SPA」を運営。銭湯、温浴、サウナを展開★★★★★
3521テルマー湯ホールディングス東証スタンダード「テルマー湯」など都市型温浴施設を運営。サウナ・温浴が中核★★★★★
3286トラストホールディングス東証スタンダード「那珂川 清滝」など温浴施設を運営★★★★☆

温泉・銭湯・サウナはどう変わった?「入浴」から「体験」へ進化する日本の湯文化

日本人にとって「風呂」は、単に身体を洗うための場所ではない。温泉、銭湯、サウナは、長い歴史のなかでそれぞれ役割を変えながら、人々の暮らしや地域社会、観光文化と深く結びついてきた。いま、その姿は再び大きく変わろうとしている。家庭風呂の普及によって衰退した銭湯がある一方、スーパー銭湯やサウナ、都市型スパが新たな需要を取り込み、温泉も「保養」だけでなく「観光」「地域活性化」「ウェルビーイング」を支える存在へと進化している。

日本の入浴文化の歴史は古い。温泉は古くから人々の療養や保養の場として利用され、江戸時代には庶民の間にも銭湯文化が広がった。江戸の銭湯は単なる入浴施設ではなく、人々が集まり交流する社交場としての性格も持っていた。明治、大正、昭和と時代が進むにつれて都市部を中心に銭湯は生活インフラとして定着し、家庭に風呂がない世帯にとって欠かせない存在となった。

しかし、高度経済成長期以降、その環境は大きく変わった。住宅事情の改善や給湯設備の普及によって「家に風呂がある」ことが当たり前になり、銭湯は生活に不可欠な施設から、あえて足を運ぶ施設へと変化していった。厚生労働省によると、2024年3月末時点の公衆浴場の営業許可施設数は2万3,673施設で、そのうち一般公衆浴場、いわゆる銭湯は2,847施設まで減少している。1970年には浴場業の87%を一般公衆浴場が占めていたが、2023年度には12%にまで低下した。家庭風呂の普及、利用者減少、経営者の高齢化、後継者難などが背景にある。

一方で、銭湯がすべて衰退しているわけではない。昭和後半から平成にかけて存在感を高めたのが「スーパー銭湯」である。従来の銭湯が「入浴する場所」だったのに対し、スーパー銭湯は露天風呂、ジェットバス、サウナ、食事処、休憩スペース、マッサージなどを組み合わせ、「一日を過ごす場所」へと進化した。厚生労働省も、ヘルスセンターや健康ランドなどの大型レジャー浴場に加え、食事や休憩、娯楽施設を備えたスーパー銭湯の増加を指摘している。

この変化は、入浴の価値そのものが変わったことを意味する。自宅で風呂に入れる時代になったからこそ、わざわざ施設へ行く理由が求められるようになったのである。広い浴槽、露天風呂、天然温泉、食事、休憩、漫画、岩盤浴などを組み合わせることで、銭湯は「生活インフラ」から「レジャー・余暇サービス」へと姿を変えた。

そこに近年加わった大きな潮流がサウナである。サウナ自体は日本でも長い歴史を持つが、近年は若年層を含めた幅広い世代に人気が広がり、銭湯やスーパー銭湯の集客装置として重要性を増している。サウナ室、水風呂、外気浴を組み合わせた利用スタイルが定着し、施設側もオートロウリュ、個性的なサウナ室、休憩スペースなどへの投資を進めている。

帝国データバンクによる2026年4月の調査では、スーパー銭湯やふろ屋を含む「銭湯」業界の2025年度売上高は約1,200億円となる見通しで、コロナ禍以降では最高水準とされる。サウナブームによって従来の高齢者中心の客層から若年層やファミリーへ顧客層が広がったほか、サウナ設備への投資、アニメなどとのコラボレーション、飲食との組み合わせなど、新しい集客策も生まれている。

ただし、売上が伸びているからといって業界全体が安泰というわけではない。帝国データバンクによれば、2024年度は4社に1社が赤字となり、2025年度も燃料費や人件費などのコスト上昇によって利益環境は厳しい。サウナ人気という追い風がある一方、膨大な湯を沸かし、施設を保温する温浴ビジネスはエネルギー価格の影響を受けやすい。古い銭湯では設備の老朽化も大きな問題となっている。

温泉についても、時代に合わせた変化が起きている。日本には2,800以上の温泉地があり、2023年時点の源泉数は約2万8,000本に達する。高度経済成長以降、新たな温泉掘削が進み、源泉数は1970年の約1万5,000本から大きく増加した。温泉は旅館に泊まってゆっくり楽しむものという従来型のスタイルだけでなく、日帰り温泉、温泉街散策、グルメ、アクティビティなどを組み合わせた観光資源へと広がっている。

一方で、温泉地には新たな課題もある。環境省は、地域によって温泉の湯量減少や温度低下が発生しており、新規掘削や過剰なくみ上げなどが原因として考えられると指摘している。また、団体旅行から個人旅行への変化やインバウンドの増加によって、宿泊、食、アクティビティなど旅行者のニーズも多様化している。温泉資源を守りながら、現代の旅行者に選ばれる場所へ進化できるかが問われている。

つまり現在の温泉、銭湯、サウナを理解するキーワードは「入浴」から「体験」への変化である。かつて銭湯は家に風呂がないから行く場所だった。現在は、自宅に風呂があっても、広い浴槽に入りたい、天然温泉を楽しみたい、サウナで汗をかきたい、食事をしたい、漫画を読みながら休みたい、友人や家族と時間を過ごしたいという理由で施設を訪れる。銭湯や温泉は「必要だから利用する」ものから「楽しむために利用する」ものへと変わっている。

さらに、地域コミュニティーとしての銭湯の価値も見直されている。高齢化や単身世帯の増加が進むなか、銭湯は世代を超えて人が集まる場所になり得る。昔ながらの銭湯を残しながら、カフェやアート、イベント、サウナなどを組み合わせる「新しい銭湯」も登場している。厚生労働省も、従来型の銭湯が減少する一方で、デザイン性などを取り入れた新しいタイプの銭湯が登場していることを指摘している。

こうした流れは、企業にとっても新たなビジネス機会となる。温浴施設を運営する企業にとっては、入浴料だけでなく、飲食、物販、リラクゼーション、サウナ、コラボイベントなどを組み合わせることで客単価を高める余地がある。実際、上場企業では極楽湯ホールディングスなどが温浴施設を直接運営しており、「温泉・銭湯・サウナ」というテーマを株式市場から見る場合にも、こうした施設運営企業が注目される。

これからの温泉、銭湯、サウナは、単純な「風呂屋」ではなくなる可能性が高い。温泉は観光や地域活性化、銭湯は地域コミュニティー、サウナは健康・リラクゼーションや新しい余暇文化と結びつきながら、それぞれの境界を越えていく。人口減少やコスト高という厳しい環境のなかでも、利用者が「わざわざ行きたい」と思える価値をつくれるかが生き残りの鍵となる。古くから続く日本の「湯」の文化は、衰退しているのではなく、時代に合わせて新しい形へ変わりつつある。自宅の風呂が普及したからこそ、温泉、銭湯、サウナには「家では得られない体験」が求められているのである。

資産運用に興味がある方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 初心者向け無料講座:お金のプロが教える「毎月収入を得る投資の始め方」

極楽湯ホールディングス、温浴文化の進化を追い風に「湯」を成長産業へ

日本人にとって風呂は、単に身体を洗うための設備ではない。銭湯は地域コミュニティーの場として親しまれ、温泉は旅行や療養、観光の象徴として発展してきた。そして近年は、サウナブームや健康志向の高まりによって、入浴そのものが「余暇」や「癒やし」のコンテンツとして見直されている。こうした温浴文化の変化を事業として取り込んできた企業の代表格が、東証スタンダード市場に上場する極楽湯ホールディングスである。

同社は1980年設立で、グループ経営戦略の策定・管理を担う持株会社である。グループでは「極楽湯」「RAKU SPA」ブランドを中心に温浴施設を展開しており、2026年6月26日現在のグループ店舗数は54店舗。国内の温浴施設は41店舗で、内訳は直営30店舗、フランチャイズ10店舗、パートナー1店舗となっている。海外にも11店舗を展開しており、日本の温浴ビジネスを国内だけでなく海外へ広げている点も特徴である。

「極楽湯」という名称からは、昔ながらの銭湯を思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、同社が展開する施設は、従来型の銭湯とは異なる。広い浴槽や露天風呂、サウナ、食事、休憩スペースなどを組み合わせ、入浴だけを目的としない時間消費型の施設へと進化している。特に「RAKU SPA」は、温浴を中心に飲食や休憩などを組み合わせた新しい温浴体験を提供するブランドとして存在感を高めてきた。

これは日本の銭湯業界がたどってきた歴史とも重なる。家庭風呂が普及する以前、銭湯は生活に欠かせないインフラだった。しかし住宅設備の向上によって自宅で入浴できる世帯が増えると、「わざわざ銭湯へ行く理由」が必要になった。そこで登場したのがスーパー銭湯や大型温浴施設である。入浴だけでなく、サウナ、食事、休憩、マッサージ、岩盤浴などを組み合わせることで、家庭では味わえない価値を提供するようになった。極楽湯ホールディングスは、まさにこの変化を事業として取り込んできた企業といえる。

同社の歴史を振り返ると、温浴施設を単独で運営するだけでなく、フランチャイズ方式によって店舗網を拡大してきたことも重要である。フランチャイジーに対して店舗の設計・デザイン指導や経営ノウハウを提供することで、直営店とは異なる形でもブランドを広げてきた。現在の国内41店舗という規模は、こうした複数の運営形態を組み合わせてきた結果でもある。

さらに近年、温浴業界に大きな変化をもたらしているのがサウナである。かつてサウナは一部の愛好家が利用する施設というイメージが強かったが、現在では幅広い世代に定着した。サウナ室で発汗し、水風呂に入り、外気浴などで休憩するという一連の体験そのものが、温浴施設を訪れる目的になっている。極楽湯ホールディングスも、この需要を取り込む施設づくりを進めている。

象徴的なのが「RAKU SPA 1010 神田」である。同施設では銭湯・サウナコースを設定しており、同社の株主優待の利用対象にも含まれている。つまり同社の事業は、伝統的な銭湯文化と現代的なサウナ文化の双方を取り込んでいる。温泉、銭湯、スーパー銭湯、サウナという境界が曖昧になりつつある現在の温浴市場において、複数の需要を一つの施設に集約できることは強みとなる。

一方で、温浴施設の経営には独特の難しさもある。大量の湯を沸かし、施設内の温度を維持する必要があるため、エネルギー価格の変動は収益に影響しやすい。また、人件費の上昇や設備の老朽化、修繕費なども無視できない。施設が大型化するほど、利用者数を確保しながらコストを管理することが重要になる。したがって、単純に「サウナブームだから温浴施設は儲かる」と考えるのではなく、入館料だけでなく飲食や物販、リラクゼーションなど施設内消費をどこまで伸ばせるかが重要なポイントになる。

その意味で、極楽湯ホールディングスが掲げる経営理念は興味深い。同社は「人と自然を大切に思い、人の心と体を『癒』すことにより、地域社会に貢献する」ことを理念として掲げている。また、温浴施設「極楽湯」において時代の変化や顧客ニーズを捉え、質の高いサービスを提供することで顧客満足度を高め、安定的な利益を獲得することを経営方針の一つとしている。

実際、同社は店舗の新陳代謝にも取り組んでいる。2025年には「極楽湯ロイヤル川口」や「RAKU SPA Station 武蔵小金井」を開業する一方、既存店舗の閉店も行っている。さらに2026年12月頃には「RAKU SPA 足立江北(仮称)」の新規出店を予定している。すべての店舗を維持するのではなく、地域ごとの需要や施設の収益性を見ながら、出店と閉店を組み合わせて店舗網を更新していく姿勢がうかがえる。

海外展開も同社を考えるうえで重要なポイントである。日本では人口減少が進んでいるため、国内市場だけを長期的な成長源とするには限界がある。一方、温泉やサウナ、スパといった日本の入浴文化には海外でも関心が高まっている。極楽湯ホールディングスは中国を中心に海外展開を進めてきた実績があり、2026年6月時点でも海外温浴店舗を11店舗展開している。日本で培った店舗運営や温浴サービスのノウハウを海外市場でどう収益化するかは、今後の成長を考えるうえで注目される。

株式市場から見た場合、極楽湯ホールディングスには「温浴」という事業内容の分かりやすさもある。温泉、銭湯、サウナというテーマが注目される局面では、事業そのものがテーマと直結しているため、関連銘柄として認識されやすい。また、株主優待制度では国内の対象施設で利用できる優待券を提供しており、投資家自身が店舗を利用しながら企業のサービスを体験できる点も特徴となっている。

もっとも、株価や業績を考える際には、サウナブームや温浴人気だけを見るべきではない。施設運営企業である以上、来館者数、客単価、エネルギーコスト、人件費、設備投資、出店効果など複数の要素を確認する必要がある。特に新規出店では初期投資が発生するため、店舗数の増加がそのまま利益の増加につながるとは限らない。また、同社は安定的かつ継続的な配当を基本方針としているものの、2026年3月期の期末配当は「その他資本剰余金」を原資とする資本の払戻しに該当すると説明しているため、配当を見る際にはその性質にも注意が必要である。

日本の温浴文化は、銭湯からスーパー銭湯へ、そしてサウナやスパを組み合わせた複合型施設へと進化している。自宅に風呂がある現代において、人々が温浴施設へ足を運ぶ理由は「風呂に入るため」だけではない。リラックスする、サウナを楽しむ、食事をする、家族や友人と過ごす、日常から離れる――そうした「体験」そのものが価値になっている。極楽湯ホールディングスは、この変化の中心に位置する企業の一つである。今後は国内店舗の磨き上げに加え、サウナ需要やコラボレーションなどを活用した集客、海外展開、新たな温浴体験の開発によって、「湯に入る場所」から「一日を楽しむ場所」へと、温浴ビジネスをどこまで進化させられるかが成長の鍵となりそうだ。

資産運用で失敗したくない方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」

テルマー湯ホールディングス、都心の「温泉・サウナ」を成長の柱にする100年企業

温泉や銭湯、サウナを取り巻く環境が変化している。かつて銭湯は自宅に風呂がない人のための生活インフラであり、温泉は旅先で楽しむ観光資源という位置づけが強かった。しかし現在では、サウナや岩盤浴、リラクゼーション、飲食などを組み合わせた「体験型」の温浴施設が存在感を高めている。特に都市部では、仕事帰りや休日に気軽に立ち寄り、入浴だけでなく心身をリフレッシュする場所として温浴施設が再評価されている。この変化を象徴する企業の一つが、東証スタンダード市場に上場するテルマー湯ホールディングスである。

同社は1926年に日本レースとして京都で創業し、2026年12月には創業100周年を迎える。長い歴史のなかで事業内容を大きく変化させてきた企業であり、2001年にエコナックへ社名変更、2006年には不動産事業を開始した。その後、2015年に連結子会社のテルマー湯が温浴事業を開始し、新宿に「テルマー湯」を開業した。2025年10月にはエコナックホールディングスから現在の「テルマー湯ホールディングス」へ社名を変更している。繊維を起点とした企業が、不動産を経て温浴へと事業の軸足を移してきた点は、同社の大きな特徴である。

現在の同社を理解するうえで重要なのが、温浴事業の内容である。主力施設の「テルマー湯 新宿店」は、新宿という日本有数の繁華街の中心部に位置し、天然温泉を楽しめる都市型の温浴施設となっている。中伊豆から天然温泉を運搬して提供する露天風呂「神代の湯」を中心に、複数の浴槽、岩盤浴、リラクゼーション、レストラン・カフェなどを備えている。単に風呂に入るだけではなく、施設内で長時間過ごせるようにサービスを組み合わせていることが特徴だ。

このビジネスモデルは、現代の温浴市場が置かれている環境と合致する。家庭風呂が普及した日本では、銭湯が「風呂に入るためだけの場所」であると、利用者を呼び込むことが難しい。そこで、天然温泉、サウナ、岩盤浴、飲食、リラクゼーションなどを一体化し、「わざわざ訪れたい場所」にすることが重要になる。テルマー湯は新宿という立地を生かしながら、こうした複合型温浴施設を展開している。

特に注目したいのがサウナである。近年のサウナブームによって、サウナは温浴施設の付帯設備から、施設を訪れる主目的の一つへと変化した。テルマー湯 新宿店でもサウナを重要なサービスの一つとして位置づけており、温泉とサウナを組み合わせた都市型のリラクゼーション需要を取り込んでいる。また、西麻布店ではサウナ、スパ、岩盤浴、宿泊機能を組み合わせた複合型スパ施設を展開している。

西麻布という立地も興味深い。新宿店が繁華街の中で日常的に利用できる温浴施設を目指すのに対し、西麻布店は独自の世界観を取り入れた空間設計によって、上質な滞在型スパ体験を打ち出している。レストラン、リラクゼーション、フィットネス、リラックスゾーンなども併設しており、「風呂」そのものだけではなく、空間や時間を商品として提供しているのである。

これは、温浴業界の歴史的な変化とも重なる。昔ながらの銭湯は地域住民が日常的に利用する施設だったが、家庭風呂の普及によってその役割は縮小した。その一方で、スーパー銭湯やスパなどは、露天風呂、サウナ、岩盤浴、食事、休憩などを組み合わせることで、新しい需要を生み出した。テルマー湯は、この流れをさらに都市型・高付加価値型へ進めた存在といえる。自宅では得られない「非日常」を提供することで、入浴そのものをレジャーやウェルネスへと変えている。

同社の業績を見ても、温浴事業の存在感は大きい。2026年3月期の連結売上高は約26億9700万円で、そのうち温浴セグメントの外部顧客向け売上高は約20億円となった。温浴セグメントの利益は約4億9300万円であり、連結全体の利益を支える主要事業となっている。温浴施設の利用料だけでなく、飲食やマッサージなど「その他のサービス等」からの売上も温浴事業に含まれている。

一方で、同社は温浴だけの会社ではない。西麻布の不動産を所有し賃貸事業を行うほか、食品事業にも参入している。2025年7月には青柳食品販売の株式を取得して連結子会社化しており、温浴、不動産、食品という複数の事業を組み合わせている。とはいえ、2026年3月期の売上高を見る限り、温浴事業が最も大きな事業セグメントであり、社名変更からも現在の経営における温浴事業の重要性がうかがえる。

今後の成長を考えるうえで、インバウンド需要も見逃せない。新宿や西麻布はいずれも外国人観光客が訪れるエリアであり、「日本の温泉・サウナ文化」を体験できる施設としての潜在力がある。ホテルに宿泊するだけでなく、日本独自の温浴文化を体験すること自体が観光コンテンツになり得るからだ。特に都市型施設であれば、地方の温泉地まで移動しなくても日本の温泉やサウナを体験できる。外国人旅行者の増加は、都心の温浴施設にとって新しい顧客層を開拓する機会となる。

ただし、温浴施設の経営には課題もある。大量の湯を沸かし、浴槽やサウナ、空調などを長時間稼働させるため、エネルギー価格の上昇はコスト増加につながる。さらに、人件費、設備修繕費、施設の老朽化対策なども必要となる。テルマー湯のような大型施設では、利用者を確保しながら客単価を高め、飲食やリラクゼーションなど館内消費を伸ばすことが収益力を左右する。2026年3月期には温浴セグメントが約4億9300万円の利益を確保しているが、今後も高い収益性を維持できるかは重要なポイントとなる。

また、同社の歴史そのものも今後の企業価値を考えるうえで興味深い。2026年に創業100周年を迎える企業でありながら、現在の主力事業である温浴事業を始めたのは2015年である。つまり、100年企業でありながら、現在のビジネスモデルは比較的新しい。繊維から不動産、そして温浴へと時代に応じて事業を変化させてきた柔軟性は、同社の特徴の一つといえる。

株式市場から見ると、テルマー湯ホールディングスは「温泉」「銭湯」「サウナ」「スパ」というテーマを考えるうえでユニークな存在である。極楽湯ホールディングスが全国型の温浴施設ブランドを展開するのに対し、テルマー湯ホールディングスは新宿や西麻布といった都心の一等地で、天然温泉やサウナ、岩盤浴、飲食などを組み合わせた高付加価値型の温浴サービスを展開している。温浴施設の価値が「安く風呂に入る」ことから「心身を整え、時間を過ごす」ことへ変化するなかで、この都市型モデルには一定の成長余地がある。

温泉や銭湯、サウナは、かつては「入浴」という一つの目的を提供する場所だった。しかし現在は、健康、癒やし、観光、食、交流、非日常体験などを組み合わせた複合的なサービスへと変わっている。テルマー湯ホールディングスは、こうした温浴文化の変化を象徴する企業である。創業100年という長い歴史を持ちながら、温浴事業では新しい価値を追求する。今後、サウナ人気やウェルネス需要、インバウンド需要をどこまで取り込めるか。そして「温泉に入る場所」から「心と体を整える都市型ウェルネス空間」へと進化できるか。100周年を迎えるテルマー湯ホールディングスの次の100年を考えるうえで、その温浴事業の成長力は大きな注目点となりそうだ。

資産運用に興味がある方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 初心者向け無料講座:お金のプロが教える「毎月収入を得る投資の始め方」

トラストホールディングス、温浴施設を地域の「体験」に変える九州発の企業

温泉や銭湯、サウナを取り巻く環境は大きく変化している。家庭風呂の普及によって、かつて生活インフラだった銭湯は減少を続けている一方、スーパー銭湯や日帰り温泉、サウナなどは「入浴する場所」から「一日を楽しむ場所」へと進化している。こうした温浴文化の変化を考えるうえで、九州を地盤に事業を展開するトラストホールディングスにも注目したい。同社は駐車場事業を起点に、不動産、医療、警備、車中泊などへ事業領域を広げてきた企業であり、そのグループには温浴施設を運営する株式会社和楽がある。

トラストホールディングスは2009年に設立され、現在は東京証券取引所スタンダード市場と福岡証券取引所本則市場に上場している。証券コードは3286である。会社自体は純粋持株会社としてグループ全体の企画・管理・運営を担い、駐車場、不動産、不動産小口化、ヘルスケア、レジャー、車中泊、警備など幅広い事業を傘下に抱える。つまり、温浴専業企業ではなく、地域の暮らしに関連する複数の事業を組み合わせていることが同社の大きな特徴である。

そのなかで温泉・銭湯との接点となっているのが、グループ会社の株式会社和楽が運営する温浴施設である。代表的な施設が福岡県那珂川市の「那珂川清滝」と、山口県下関市の「和楽の湯 下関せいりゅう」だ。過去の同社資料でも、この2施設を温浴施設として運営していることが確認できる。現在の事業紹介でもレジャー関連事業として株式会社和楽が位置づけられており、温浴事業は現在もグループの事業領域の一つである。

「那珂川清滝」は、都市近郊で本格的な温泉や入浴体験を楽しめる施設として位置づけられている。福岡市中心部からもアクセスしやすい立地にあり、日常の延長線上で温泉を楽しめることが特徴だ。温泉地へ泊まりがけで出かけるのではなく、仕事や買い物などと組み合わせて日帰りで利用する。こうした需要は、現代の温浴市場を考えるうえで重要なポイントである。

そもそも日本の銭湯は、家庭風呂の普及によって大きな転換点を迎えた。高度経済成長期には住宅設備が改善し、自宅で風呂に入れる世帯が増えたことで、銭湯は生活に不可欠な施設から「わざわざ訪れる施設」へと変化した。その後登場したスーパー銭湯や日帰り温泉は、露天風呂、サウナ、食事、休憩、マッサージなどを組み合わせることで、自宅では得られない価値を提供するようになった。トラストホールディングスの温浴事業も、この「入浴+体験」という流れのなかに位置づけることができる。

さらに現在はサウナ人気が温浴業界の追い風となっている。サウナは単なる浴場の付帯設備ではなく、施設を訪れる目的そのものになりつつある。サウナ、水風呂、外気浴などを組み合わせた利用スタイルが広がり、若い世代を中心に温浴施設への新しい需要を生み出した。温泉や銭湯にサウナを組み合わせることで、従来の入浴客とは異なる層を取り込むことが可能になる。温浴施設にとっては、入館料だけでなく飲食や物販など館内消費を増やす機会にもなる。

トラストホールディングスの決算説明資料を見ると、温浴事業は現在も「その他」に含まれる事業の一つとして取り扱われている。2026年6月期第1四半期には、温浴事業について近隣他店舗のリニューアルや大雨の影響などから来館者数が前年同期比で減少したと説明している。一方で、SNSなどを活用した広告宣伝やクーポン配信、リピーター強化、温浴設備の拡充・リニューアル、物販強化などを今後の取り組みとして掲げている。

2026年6月期中間期の資料でも、温浴事業では来館者数が前年同期比で減少したことが示されている。その背景として近隣店舗のリニューアルや天候不良などを挙げる一方、新規顧客の獲得やリピーター強化、キャンペーン、物販強化などを進める方針を示している。これは、温浴施設が単純に「風呂を提供すれば客が来る」という時代ではなくなったことを示している。施設そのものの魅力に加え、情報発信や商品開発、イベントなどを組み合わせて来館動機をつくることが重要になっている。

温浴施設の経営では、コスト面も重要な課題となる。大量の湯を沸かし、浴槽やサウナ、空調などを長時間稼働させるため、燃料費や電気料金の変動が収益に影響する。また、浴場設備は常に水や高温にさらされるため、設備の維持・更新も欠かせない。人件費の上昇も重なり、単純な入館者数の増加だけでは利益を確保しにくい。だからこそ、トラストホールディングスが掲げる設備リニューアル、物販強化、SNSを活用した集客といった施策には意味がある。

特に興味深いのが、同社が温浴施設を単独で見るのではなく、地域社会とのつながりを重視している点である。同社は「人を想う心」で地域社会に貢献し、「笑顔あふれる地域社会」の実現を目指すことを掲げている。駐車場から始まった事業が住まいや暮らしへ広がり、現在では温浴やヘルスケア、車中泊などにも事業領域を広げている。温浴施設もその一環として、地域住民が日常的に利用できる「地域の居場所」という役割を担う。

また、株主優待にも温浴事業とのつながりが表れている。現在の株主優待は300株以上の株主を対象に、九州に関連した5,000円相当の特産品を贈呈する制度となっている。その選択肢の一つには、グループ会社の株式会社和楽が運営する「那珂川清滝」の人気商品を詰め合わせたセットも含まれている。温浴施設で提供する食を物販につなげることで、施設のブランド価値を施設外にも広げている点は興味深い。

一方で、投資テーマとしてトラストホールディングスを見る際には注意も必要だ。温浴事業は同社の主力事業そのものではなく、駐車場や不動産など複数の事業を展開するグループの一部である。そのため、「サウナブームだから業績が直接大きく伸びる企業」と単純に捉えることはできない。むしろ、温浴施設の収益改善に加えて、駐車場、不動産小口化、ヘルスケア、警備など各事業がどのように成長するかを総合的に見る必要がある。

それでも、温泉・銭湯・サウナというテーマで見ると、同社には独自の面白さがある。極楽湯ホールディングスのような温浴事業を中核とする企業とは異なり、トラストホールディングスは地域密着型の複合企業として温浴施設を運営しているからだ。温浴施設を地域のレジャー拠点として活用し、飲食や物販、イベント、情報発信などを組み合わせれば、単なる入浴施設以上の価値を生み出す余地がある。

日本の温浴文化は、生活インフラとしての銭湯から、レジャーとしてのスーパー銭湯、さらに健康や癒やしを求めるサウナ・スパへと変化してきた。これからは「どれだけ多くの人を風呂に入れるか」だけでなく、「その施設でどれだけ長く、楽しく、快適に過ごしてもらえるか」が重要になるだろう。トラストホールディングスにとって温浴事業はグループ全体の一部に過ぎないが、地域社会との接点を生み出す重要な事業でもある。九州を起点に広がってきた同社が、「温泉」という日本独自の資源をどのように地域の暮らしや観光、レジャーへ結びつけていくのか。温泉・銭湯・サウナ市場の変化とともに、その動向を追う価値は十分にある。

まとめ

温泉、銭湯、サウナは、時代とともにその役割を変えてきた。家庭風呂が普及する以前の銭湯は生活に欠かせない存在だったが、現在は自宅では得られない開放感や交流、癒やしを提供する場所へと変わった。温泉も宿泊旅行だけでなく、日帰り利用や地域観光と結びつき、サウナは健康やリラクゼーションを目的とした新しい余暇文化として定着しつつある。共通しているのは、「風呂に入る」という機能だけではなく、そこで過ごす時間そのものに価値が求められるようになったことである。

その変化を事業として取り込む企業の代表例が、極楽湯ホールディングス、テルマー湯ホールディングス、トラストホールディングスである。極楽湯ホールディングスは「極楽湯」「RAKU SPA」を軸に温浴施設を展開し、銭湯・スーパー銭湯・サウナの幅広い需要を取り込む。テルマー湯ホールディングスは新宿や西麻布という都心立地を生かし、天然温泉、サウナ、岩盤浴、飲食などを組み合わせた都市型スパを展開する。トラストホールディングスは九州を中心に地域密着型の温浴施設を運営し、温泉を地域のレジャーや交流の場として活用している。

もっとも、温浴施設はエネルギーコストや人件費、設備投資などの負担が大きく、サウナ人気だけで持続的な成長が保証されるわけではない。今後は、施設の魅力を高めるだけでなく、飲食や物販、イベント、観光などとの連携によって新たな収益源を育てることが重要になるだろう。日本の「湯」の文化は、長い歴史のなかで形を変えながら生き残ってきた。これからも温泉・銭湯・サウナは、地域社会や観光、ウェルネスと結びつきながら、「入浴」から「体験」へとさらなる進化を遂げていきそうだ。

プロの知識が無料で学べます

「投資の勉強を何からやっていいかわからない」「投資で資産を作りたい、収入を増やしたい」

そんな時は無料で視聴できるオンライン講座「GFS監修 投資の達人講座」をまずはお試ししてください。

投資の達人になる投資講座は、生徒数50,000人を超え講義数日本一の投資スクールGFSが提供する無料オンライン講座です。プロの投資家である講師が、未経験者や苦手意識がある人でも分かるように、投資の仕組みや全体像、ルールを基礎から図解を交えて解説します。

投資の勉強をなるべく効率よく始めたい人は、ぜひ一度ご視聴ください。

≫初心者でも資産形成を学習できる無料オンラインセミナーはこちら

【重要】免責事項

  • 投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。

  • 成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。

  • 情報の正確性: 2026年8月時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。

  • 損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。

記事一覧はこちら
月1万円から資産6,000万円を目指す方法
無料で視聴する