「飲まない」から「少し飲む」へ、微アルコール飲料が変える酒類市場

「飲む」から「自分に合った量を選ぶ」時代へ

酒類市場で、アルコールとの付き合い方が大きく変わり始めている。従来はビールやチューハイなどを楽しむか、酒を飲まないかという二択が一般的だったが、現在はその間を埋める商品が次々と登場している。アルコール度数0%のノンアルコール飲料に加え、0.5%前後の「微アルコール」、3%程度の「低アルコール」など、消費者が自分の体調や予定、食事、気分に合わせて細かく選択できる市場が形成されつつある。

背景にあるのは、健康志向の高まりや飲酒量をコントロールしたいという意識の広がりだ。一方で、酒を完全にやめたいわけではなく、少量なら楽しみたいという需要も根強い。こうした「飲みたいけれど飲み過ぎたくない」というニーズを捉え、酒類メーカー各社が新たな商品開発を進めている。アサヒグループホールディングスの「アサヒ ビアリー」、キリンホールディングスの「キリン 華よい」、サントリー食品インターナショナルの「ほろよい」などは、その変化を象徴する存在といえる。微アルコールから低アルコールまで、酒類市場は今、「飲酒量を自分で選ぶ時代」へと移行しつつある。

順位証券コード企業名代表的な低・微アルコール商品度数関連性
12502アサヒグループホールディングスアサヒ ビアリー0.5%★★★★★
22503キリンホールディングスキリン 華よい3%★★★★★
32587サントリー食品インターナショナルほろよい3%★★★★★
42501サッポロホールディングス低アルコールRTDなど3%前後★★★★☆
52531宝ホールディングス低アルコールRTD・チューハイなど3%前後★★★★☆

微アルコール飲料が広げる「飲まない」から「少し飲む」への新市場

酒類市場でいま存在感を高めているのが、アルコール度数を極端に抑えた「微アルコール飲料」である。完全にアルコールを含まないノンアルコール飲料とは異なり、わずかなアルコールを残しながら、ビールやチューハイなど本来の酒類に近い味わいを楽しめる点が特徴だ。健康志向や飲酒量を抑えたいという意識が広がる一方、「完全にお酒をやめるほどではない」という消費者も少なくない。こうした需要を取り込む存在として、微アルコール飲料が新たな選択肢になっている。

微アルコールという言葉を市場で広く知らしめた商品の一つが、アサヒビールの「アサヒ ビアリー」である。アルコール分0.5%のビールテイスト飲料として2021年に登場し、ビールのような味わいを楽しみながらアルコール量を抑えるという新しいカテゴリーを提案した。ビールを醸造した後に脱アルコール工程を施すことで、ビールらしいコクや香りを残す製法を採用していたことも大きな特徴であった。

ただし、2026年の市場を見るうえでは、微アルコールとノンアルコールを同じものとして扱わないことが重要である。現在も販売されている代表的な微アルコール商品として注目されるのが、サッポロビールの「サッポロ The DRAFTY」である。アルコール分は0.7%で、麦芽100%の生ビール原料を使い、ホップを3分割して添加したうえで氷点下熟成するなど、ビールらしい香りや味わいを追求している。350ml缶1本当たりの純アルコール量は2gとされている。

この「少しだけアルコールが入っている」という立ち位置は、微アルコール市場の重要なポイントである。ノンアルコール飲料の場合、「酒を飲まない」という明確な選択になる。一方、0.5~0.7%程度の商品なら、酒を飲む楽しさをある程度残しながら、摂取するアルコール量を抑えることができる。もちろんアルコールを含む以上、運転などアルコール摂取が許されない場面での選択肢にはならないが、「今日は軽めにしておきたい」「食事と一緒に少量だけ楽しみたい」といった場面では独自のポジションを築きやすい。

さらに2026年の酒類市場では、微アルコールを含む「低アルコール化」そのものが一段と進んでいる。例えばキリンビールの「キリン 華よい」はアルコール度数を抑えたRTDとして展開され、白桃、ライチ、葡萄、檸檬など果実を生かした商品をラインアップしている。軽やかな発泡感と果実感を前面に出し、従来の強い酒とは異なる飲みやすさを訴求している。

サントリーの「ほろよい」も、この流れを象徴するブランドである。アルコール度数は3%で、厳密には「微アルコール」と呼ばれる0.5~1%程度の商品とは異なるものの、低アルコール市場における代表的な存在だ。2009年の発売以来、やさしく軽やかな味わいを武器に定番化している。2026年には「青いサワー」「ビタミックス」などを投入するとともに、定番商品のリニューアルも実施。メーカー側の調査では、若年層の嗜好がより「すっきりと軽やかな味わい」へ変化していることも確認されている。

商品開発の方向性も変化している。サントリーは2026年4月から、「ほろよいのもと」を全国で通年販売している。これは好きな量、好きな割り方、好きな度数で楽しめる商品で、飲む人自身がアルコール濃度を調整できる点が特徴だ。従来の「メーカーが決めた度数の商品を飲む」というスタイルから、「自分の気分やシーンに合わせて濃さを変える」という飲み方への広がりを示している。

一方、完全なノンアルコール市場も急拡大している。サントリーの推計によれば、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4584万ケースで、前年比111%、10年前の約1.6倍となった。2025年も4730万ケース程度まで拡大すると見込まれていた。 つまり、消費者の選択肢は「普通の酒」か「酒を飲まないか」の二択ではなくなりつつある。「アルコール0%」「微アルコール」「3%程度の低アルコール」「従来型の酒」という具合に、細かな段階から自分に合った商品を選ぶ市場へ変化しているのである。

こうした変化は、酒類メーカーにとっても大きな意味を持つ。国内では人口減少や飲酒習慣の変化などを背景に、従来型の酒類だけで大幅な市場成長を続けることは難しい。そのため、これまで酒を飲まなかった人や、飲酒頻度を減らした人を取り込むことが重要になる。低アルコールやノンアルコールの商品は、既存の酒類市場を奪うだけではなく、「新しい飲用機会」を作る可能性を持っている。

2026年には、RTD市場でも低~中度数の商品が存在感を高めている。業界では缶チューハイなどを含むRTDが引き続き手ごろな価格帯の商品として注目されており、10月の酒税改正を控えてメーカー各社の商品戦略にも変化が生じている。 その中で低アルコール商品は、価格だけでなく「飲みやすさ」「量の調整」「日常生活との両立」といった価値を提供できる。

投資テーマとして見るなら、微アルコール飲料は単独のカテゴリーというより、「酒類の低アルコール化」「ノンアルコール化」「RTD市場の拡大」「健康志向」「飲み方の多様化」という複数のテーマが交差する領域と考えると分かりやすい。関連銘柄では、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、サントリー食品インターナショナル、サッポロホールディングス、宝ホールディングスなど、大手酒類メーカーを中心に商品戦略を追う価値がある。

微アルコール飲料の市場拡大は、「酒離れ」という言葉だけでは捉えきれない。むしろ消費者が酒を完全にやめるのではなく、自分の体調や予定、食事、気分に応じてアルコール量を細かく選び始めた結果と見ることができる。0%から0.5%、0.7%、3%、さらに高アルコールまで、選択肢が細分化されればされるほど、酒類市場そのものの楽しみ方も変わっていく。今後は味わいの向上だけでなく、どのような生活シーンに適した商品なのかという提案力が、微アルコール・低アルコール市場の成長を左右することになりそうだ。

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アサヒグループHD、微アルコール市場を切り拓く「0.5%」の新しい飲酒スタイル

酒類市場で「飲むか、飲まないか」という従来の二択が変わりつつある。その象徴として注目されているのが、アルコール度数を極端に抑えた「微アルコール」商品である。完全なノンアルコールではない一方、従来のビールやチューハイに比べてアルコール量を大幅に抑えられるため、飲酒量を意識する消費者から支持を集めている。この新しいカテゴリーを日本でいち早く切り拓いた企業の一つが、アサヒグループホールディングスである。

同社の微アルコール戦略を象徴する商品が、アサヒビールの「アサヒ ビアリー」である。2021年3月に発売された「アサヒ ビアリー」は、アルコール分0.5%のビールテイスト飲料として登場した。一般的なビールよりもアルコール度数を大幅に低く抑えながら、ビールらしい味わいを楽しめることを特徴としている。発売当時、同社は「微アルコール」という新しいカテゴリーを提案し、飲酒量を抑えながら酒類の味わいを楽しみたいという需要を取り込もうとした。

「ビアリー」の特徴は、単純にアルコール度数を下げただけの商品ではない点にある。通常のビールを醸造した後に脱アルコール工程を施すことで、ビールらしい味わいや香りを残す製法を採用している。つまり、従来のノンアルコールビールとは異なる「ビールの延長線上にある低アルコール商品」を目指したのである。酒類メーカーにとって、アルコールを減らせば減らすほど、味や香りの再現が難しくなる。その技術的な課題に挑戦したこと自体が、同商品の大きな意味を持っている。

アサヒグループの微アルコール戦略は、「ビアリー」だけにとどまらない。2021年にはアルコール分0.5%の「アサヒ ビアリー 香るクラフト」も発売し、ビール系の微アルコール飲料に味わいのバリエーションを加えた。また、アルコール度数3%の「アサヒ ハイボリー」も展開し、微アルコールから低アルコールまで、飲酒量を抑えたい消費者に幅広い選択肢を提供してきた。

ここで重要なのは、アサヒグループが微アルコールを単なる一商品のヒットに終わらせず、飲酒スタイルそのものの変化として捉えている点である。近年は健康志向の高まりに加え、仕事や運転、翌日の予定などを考慮して飲酒量をコントロールする消費者が増えている。また、若い世代を中心に、従来の「酔うために飲む」という価値観から、「食事やコミュニケーションを楽しむために適量を飲む」という価値観への変化も指摘されている。

こうした市場環境では、アルコール度数の高い商品だけを提供するよりも、消費者がその日の状況に合わせて商品を選択できるブランド群を持つことが重要になる。例えば、週末には通常のビールを楽しみ、平日には微アルコールを選ぶ。さらに飲酒を控えたい日はノンアルコールを選ぶ。このように、同じ消費者が場面に応じて複数の商品を使い分けることができれば、メーカーにとっては新たな需要の掘り起こしにつながる。

アサヒグループは、ノンアルコール市場にも積極的に取り組んできた。「アサヒ ドライゼロ」などのノンアルコールビールテイスト飲料を展開する一方で、「ビアリー」のような0.5%の商品を投入することで、0%と通常のビールの間に新たな選択肢を設けた。この「0%と5%の間を埋める」という発想は、微アルコール市場を考えるうえで非常に重要である。

日本の酒類市場は、人口減少や飲酒習慣の変化などを背景に、従来型の商品だけでは大きな成長を期待しにくい。一方、アルコール摂取を控えたい消費者が増えていることは、酒類メーカーにとって必ずしもマイナスではない。むしろ、これまで酒を飲まなかった人や、飲酒量を減らした人に対して、「それでも楽しめる商品」を提供することで、新しい市場を生み出すことが可能になる。

その意味で「ビアリー」は、酒類市場の縮小に対応する商品というより、飲み方の多様化を促す商品と見ることができる。アルコールを完全に排除するのではなく、0.5%というわずかなアルコールを残すことで、ビールらしい味わいと飲酒量抑制の両立を狙う。ここには、アサヒグループが長年培ってきたビール製造技術を、新しい消費者ニーズに合わせて再構築する姿勢が表れている。

もっとも、微アルコール商品には注意点もある。0.5%であってもアルコールを含むため、「ノンアルコール」と同じように扱うことはできない。運転前などアルコール摂取が適さない場面では選択すべきではなく、メーカー側にも表示や消費者への正確な情報提供が求められる。微アルコールというカテゴリーが広がるほど、「ノンアルコール」と「微アルコール」の違いを明確に理解してもらうことも重要になる。

それでも、微アルコール市場には大きな可能性がある。酒類市場の未来は、単純に「アルコールを飲む人が減る」という話ではなく、「どの程度のアルコールを、どのタイミングで、どのように楽しむか」という選択肢が増える方向に進むと考えられるからだ。アサヒグループホールディングスは、ビール、RTD、ノンアルコール、微アルコールといった幅広いカテゴリーを持つことで、この変化を取り込むことができる。

「ビアリー」が提示した0.5%という数字は、単なるアルコール度数ではない。そこには、飲酒を完全にやめるのでも、従来通り飲むのでもない「第三の選択肢」を作るという意味が込められている。今後、健康志向や飲酒量コントロールへの関心がさらに高まれば、微アルコールは一過性のブームではなく、酒類市場の定番カテゴリーへと成長する可能性がある。アサヒグループホールディングスにとっても、微アルコール商品は既存のビール市場を守るだけでなく、変化する消費者の飲酒スタイルを取り込むための重要な成長領域になりそうだ。

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キリンHDが挑む低アルコール市場、広がる「無理なく楽しむ」新しい飲酒スタイル

酒類市場で、消費者の「飲み方」が大きく変化している。かつてはビールやチューハイなど、一定のアルコール度数を持つ商品を選ぶことが当たり前だったが、現在では「今日は少しだけ飲みたい」「アルコール摂取量を抑えたい」「食事を邪魔しない軽いお酒を選びたい」といったニーズが広がっている。こうした変化を背景に存在感を高めているのが、微アルコール・低アルコール飲料である。その市場で注目される企業の一つが、キリンホールディングスだ。

キリンHDの酒類事業を担うキリンビールでは、低アルコールRTDの商品開発を積極的に進めている。代表的なのが「キリン 華よい」である。アルコール度数3%のRTDとして展開され、果実の香りや味わいを楽しみながら、一般的なチューハイなどよりもアルコール度数を抑えられる点が特徴だ。2024年に発売された同ブランドは、白桃、ライチ、葡萄、檸檬などのフレーバーを展開し、軽やかな飲み口を求める消費者を取り込んできた。

2026年も「華よい」は商品展開を続けている。キリンビールは1月、「キリン 華よい 白桃スパークリング」「同 ライチスパークリング」「同 葡萄スパークリング」「同 檸檬スパークリング」の4品をリニューアル発売した。さらに4月には期間限定で「華よい さくらんぼスパークリング」を投入するなど、季節感や果実感を取り入れた商品開発を進めている。

ただし、ここで注意したいのは、「微アルコール」と「低アルコール」は必ずしも同義ではないという点だ。一般的に微アルコールという場合は1%未満程度の商品を指すケースが多く、3%の「華よい」は厳密には低アルコールRTDに位置付けられる。とはいえ、アルコール度数を抑えた商品という大きな潮流の中では、両者は密接につながっている。キリンHDを見る場合も、「0.5%などの微アルコール商品だけ」ではなく、3%程度までの低アルコール市場全体を捉えることが重要である。

キリンが低アルコール市場に注力する背景には、消費者の価値観の変化がある。健康への意識が高まるなか、飲酒量を自分でコントロールしたいという需要が増えている。また、酒を飲む目的そのものも変化している。強いアルコールで酔うことを重視するのではなく、食事や会話を楽しみながら適量を飲むというスタイルが広がっている。こうした消費者にとって、3%程度の低アルコールRTDは選びやすいカテゴリーとなる。

さらにRTD市場そのものの拡大も追い風となる。RTDは缶を開けてそのまま飲める手軽さが魅力であり、ビールなどと比較して味のバリエーションも豊富だ。レモン、グレープフルーツ、桃、ブドウなど、果実を前面に押し出した商品は、酒類の苦味や強いアルコール感が苦手な消費者にもアプローチしやすい。「華よい」が果実感を重視しているのも、こうした市場環境を意識したものといえる。

キリンHDの強みは、低アルコール商品だけを単独で展開しているわけではない点にもある。ビールでは「キリン一番搾り」をはじめとする主力ブランドを持ち、RTDでは「氷結」などの大型ブランドを展開する。さらにノンアルコール領域にも商品を持っている。つまり、消費者が「今日は普通のビール」「今日は3%の低アルコール」「今日はノンアルコール」と選択する場合にも、幅広い商品群で対応できる。

このようなポートフォリオは、人口減少などによって国内酒類市場の数量成長が難しくなるなかで重要性を増している。従来型の酒類だけで需要を取り込もうとすれば、市場縮小の影響を直接受けやすい。しかし、アルコール度数を抑えた商品やノンアルコール商品を増やせば、これまで飲酒を控えていた層にもアプローチできる。さらに、既存の酒類ユーザーについても、飲酒量を抑える日には低アルコール商品を選んでもらうことで、ブランドとの接点を維持できる。

この「飲酒量を減らしてもブランドから離れてもらわない」という考え方は、酒類メーカーにとって非常に重要だろう。例えば、平日の仕事終わりには3%の低アルコールRTD、休日にはビール、翌日に運転や仕事がある日はノンアルコール、といった使い分けが可能になれば、同じ消費者が複数カテゴリーの商品を購入する機会が生まれる。メーカーにとっては、酒類市場全体の縮小を単純に受け入れるのではなく、消費者一人当たりの飲み方を多様化することで市場を維持する戦略につながる。

一方で、キリンHDが今後さらに微アルコール市場を攻める場合には、0.5%前後の商品を含む超低アルコール領域への対応も注目される。アサヒグループホールディングスが「アサヒ ビアリー」で0.5%の商品を市場に投入したことで、従来のノンアルコールと低アルコールの間に新たな市場が生まれた。キリンにとっても、3%の商品だけでなく、さらにアルコール度数を抑えた商品をどのように開発するかは今後のテーマとなる可能性がある。

もっとも、微アルコール商品には「アルコールを含む」という明確な注意点がある。0.5%や0.7%などの低い度数であっても、ノンアルコールとは異なる。運転などアルコール摂取が適さない場面では選択できないため、消費者に対する表示や情報提供は重要になる。市場が拡大するほど、「ノンアルコール」「微アルコール」「低アルコール」の違いを分かりやすく伝えることが求められる。

キリンHDにとって、低アルコール市場への取り組みは単なる新商品の投入ではない。それは、酒類市場そのものが「酔うための酒」から「自分の生活に合わせて選ぶ酒」へと変化していることへの対応でもある。「華よい」のような3%RTDは、その中間領域を埋める商品として存在感を高めている。

今後、健康志向や飲酒量のコントロールがさらに広がれば、酒類市場ではアルコール度数の細分化が進む可能性がある。0%のノンアルコール、0.5%前後の微アルコール、3%程度の低アルコール、そして従来型のビールやチューハイというように、消費者がその日の気分や予定に合わせて選ぶ時代である。キリンホールディングスは、強力なビールブランドとRTDブランド、そして低アルコール商品を組み合わせることで、この「飲み方の多様化」という大きな変化を取り込もうとしている。微アルコール・低アルコール市場の成長は、国内酒類市場の新たな成長領域として、今後もキリンHDの戦略を占う重要なテーマとなりそうだ。

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サントリー食品インターナショナルと低アルコール市場、広がる「ほろよい」という選択肢

酒類市場で進む大きな変化の一つが、アルコール度数の低下である。かつてはビールやチューハイなど、一定以上のアルコールを含む商品が中心だったが、近年は「少しだけ飲みたい」「強いお酒は避けたい」「食事と一緒に軽く楽しみたい」といった需要が拡大している。さらに、健康志向や飲酒量を自分でコントロールする意識も高まり、ノンアルコールから低アルコールまで、選択肢が細分化している。こうした市場環境で存在感を示しているのが、サントリー食品インターナショナルである。

同社を低アルコール市場と結び付けるうえで欠かせない存在が「ほろよい」だ。アルコール度数3%という低めの設定と、果実や飲料を組み合わせた多彩な味わいを特徴とするRTDブランドであり、低アルコール市場を代表するロングセラーブランドの一つとなっている。なお、「ほろよい」は厳密にはアルコール度数0.5%前後の商品を指す「微アルコール」とは異なる。しかし、アルコールを抑えた商品群という広い視点で見ると、微アルコール市場と低アルコール市場をつなぐ重要なブランドである。

「ほろよい」が登場したのは2009年である。当時から、強いアルコール感よりも飲みやすさを重視し、若年層を含む幅広い消費者が手に取りやすい商品として市場を開拓してきた。アルコール度数を3%に抑えたうえで、白いサワー、もも、梅酒ソーダ、グレープなど、多様なフレーバーを展開。酒類に果実飲料のような親しみやすさを取り入れたことで、従来のチューハイとは異なるポジションを築いた。

2026年に入っても「ほろよい」の商品展開は活発である。サントリーは「ほろよい」ブランドで季節やトレンドを意識した新商品を投入する一方、定番商品のリニューアルも実施している。例えば2026年には「青いサワー」や「ビタミックス」などがラインアップに加わり、従来の果実系だけではない味わいを提案している。こうした継続的なフレーバー開発は、低アルコールRTD市場で消費者の飽きを防ぎ、ブランドとの接点を維持するうえで重要な戦略だ。

さらに注目したいのが、サントリーが2026年4月から全国で通年販売を開始した「ほろよいのもと」である。同商品は、好きな量、好きな割り方、好きな度数で楽しめることをコンセプトとしている。従来の缶RTDは、メーカーがあらかじめアルコール度数や味を設定し、消費者はその商品を選んで飲むスタイルが基本だった。それに対して「ほろよいのもと」は、自分で濃さを調整する余地を持たせている。

この商品が示しているのは、アルコール市場における「自分で飲み方を決める」という新しい価値観である。例えば、その日の体調や食事、翌日の予定に応じて薄めに作ることもできれば、しっかりした味わいを楽しみたい日には濃いめにすることもできる。もちろん、アルコールを含む以上、運転などアルコール摂取が適さない場面では利用できないが、飲酒量を意識する消費者にとっては、自分のペースに合わせやすい商品といえる。

サントリー食品インターナショナルが低アルコール市場で注目されるもう一つの理由が、飲料メーカーとして培ってきたマーケティング力である。RTD市場では、単にアルコール度数を下げるだけでは競争力を持ちにくい。どのような味なのか、どのようなシーンで飲むのか、誰に向けた商品なのかを分かりやすく伝える必要がある。その点、「ほろよい」はテレビCMやSNSなどを通じて、商品そのものだけでなく、軽やかな飲酒シーンをブランドとして発信してきた。

また、低アルコール市場の拡大は、ノンアルコール市場の成長とも無関係ではない。サントリーによれば、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4584万ケースとなり、前年比111%、10年前と比較して約1.6倍に拡大した。2025年も4730万ケース程度への拡大が見込まれていた。ノンアルコール市場が拡大している背景には、健康志向や飲酒量抑制への意識だけでなく、「飲み物としておいしいものを楽しみたい」という消費者ニーズの高まりもある。

この市場環境では、「0%か100%か」という二択ではなく、その間に多様な商品を配置することが重要になる。アルコール0%のノンアルコール飲料、0.5%前後の微アルコール飲料、3%程度の低アルコールRTD、さらに5%以上の一般的な酒類というように、アルコール度数によって商品を細かく選べるようになれば、消費者の飲み方はさらに多様化する。

サントリーは、この変化に対応できる商品ポートフォリオを構築している。酒類では「ほろよい」のような低アルコールRTDを展開し、ノンアルコール領域では「のんある」シリーズなどを展開する。さらに一般的なビール、ウイスキー、チューハイなども幅広く扱っている。消費者が「今日は飲まない」「今日は少しだけ」「今日は普通に飲む」と選択する際、それぞれの需要に商品を提供できる点は大きな強みである。

一方で、微アルコール市場という観点では、サントリーが今後どこまで0.5%前後のカテゴリーを拡大していくかも注目される。アサヒグループホールディングスの「アサヒ ビアリー」のような0.5%商品が登場したことで、1%未満の微アルコールという新しい市場が認知されるようになった。サントリーにとっては、3%の「ほろよい」と0%のノンアルコール商品の間をどのように埋めていくのかが、今後の商品戦略を考えるうえで興味深いポイントになる。

ただし、低アルコール・微アルコール商品が広がるほど、消費者への正確な情報提供も重要になる。アルコール度数が低いからといってノンアルコールではなく、微量であってもアルコールを含む商品は飲酒として扱う必要がある。メーカーには、商品の魅力を伝えるだけでなく、アルコールを含むことを明確に伝える責任もある。

国内では人口減少や飲酒習慣の変化によって、酒類市場を取り巻く環境は厳しさを増している。しかし、消費者が酒そのものを完全に拒絶しているわけではない。むしろ、「自分に合った量を、自分に合ったタイミングで楽しみたい」という需要が強まっていると考えられる。その意味で、3%という「ほろよい」の立ち位置は非常に興味深い。

サントリー食品インターナショナルにとって、低アルコール飲料は単なる酒類商品の一カテゴリーではない。それは、飲料を楽しむシーンそのものを広げる市場でもある。「ほろよい」の長年にわたるブランド力に加え、「ほろよいのもと」のような自由度の高い商品が登場することで、消費者はさらに自分らしい飲み方を選べるようになる。今後、ノンアルコール、微アルコール、低アルコールという境界がより細分化されていけば、サントリーの幅広い飲料・酒類事業を生かした商品開発力が、さらなる市場開拓につながる可能性がある。低アルコール化が進む酒類市場において、「ほろよい」を擁するサントリー食品インターナショナルは、今後も注目すべき企業の一つといえるだろう。

まとめ――微アルコール・低アルコールが変える酒類市場の未来

微アルコール・低アルコール飲料の広がりは、単なる酒類商品の多様化にとどまらない。そこには、消費者のライフスタイルや健康意識、飲酒に対する価値観の変化が映し出されている。0%のノンアルコールを選ぶ日もあれば、0.5%程度の微アルコールを選ぶ日、3%程度の低アルコールを楽しむ日、従来型のビールやチューハイを飲む日もある。こうした柔軟な選択が可能になることで、酒類との付き合い方そのものが変化している。

メーカー側にとっても、この流れは新たな成長機会となる。人口減少などによって国内酒類市場の大幅な数量成長が難しいなか、既存の酒類需要だけを奪い合うのではなく、飲酒量を抑えたい層やこれまで酒を飲まなかった層を取り込むことが重要になる。アサヒ、キリン、サントリーなど各社が微アルコール・低アルコール、ノンアルコールの商品開発を進めることで、市場はさらに細分化されていくだろう。

今後は「どれだけアルコールが入っているか」だけでなく、「どのような場面で、どのように楽しむか」が商品選択の重要な基準になりそうだ。微アルコール飲料は、酒離れへの対抗策というだけではなく、飲酒をより自由に、より自分らしく楽しむための新しい選択肢である。0%から数%まで多彩な商品がそろうことで、酒類市場は「飲む・飲まない」の二択から、「今日はどの程度飲むか」を選ぶ市場へと進化していく可能性がある。

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