ネットを使って確定拠出年金について調べた際「企業型確定拠出年金にだまされるな」という強い関連ワードが出てくるのを見たことがあるでしょうか?一体なぜそんなワードが出てくるのか?企業型確定拠出年金とは、そんなに悪いものなのか?と疑問を持った方も少なくないと思います。
そこで今回は、企業型確定拠出年金の特徴やデメリットについてまとめてみました。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、「会社四季報」編集長との共同セミナーに講師として登壇(東京証券取引所主催)するなど、著書に講演依頼、メディア出演も多数。「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の違いを知ろう
確定拠出年金には「企業型」と「個人型」の2種類あることは周知の通りですが、個々の特徴について詳しく知っているという方はあまり多くないかもしれません。そこで同章では、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)について詳しく解説していきます。
企業型確定拠出年金とは?
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を毎月積み立てし、従業員が自ら年金資産の運用を行う制度です。そして同制度は自動的に加入するケースと任意のケースの2パターンあり、加入した場合はどの商品を運用するのか? さらに資産配分をどうするのか?といった運用方法を自身で決めることができます。
ちなみに同制度は企業が従業員に提供する福利厚生の一つですが、全ての企業で採用しているわけではありません。
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは?
公的年金とは違い、任意で加入できるのがこの個人型確定拠出年金です。最近では「iDeCo」と言った方が伝わりやすいかなと思います。制度の概要を簡単に説明すると、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができるという制度です。
始めるには証券会社でiDeCoの専用口座を開設する必要があります。どこで開いても同じではなく、証券会社によって商品の品揃えや手数料が異なるため、始める際はまずじっくり証券会社を選ぶべきです。
「企業型確定拠出年金に騙されるな」の真意を探る
前章では制度の概要について簡単に紹介した程度ですが、別段怪しい側面など見られなかったと思います。では、なぜ「企業型確定拠出年金に騙されるな」というワードがネット上で踊っているのでしょうか? ここでは同制度のデメリットと、なぜ「騙されるな」という警告文が広まったのか? その理由について探っていきます。
企業型確定拠出年金のデメリットから探る
調べてみると、企業型確定拠出にはいくつかデメリットがあることがわかり、まとめると・・・
企業型確定拠出年金のデメリット
⚫︎元本割れのリスクがある
⚫︎原則60歳まで引き出すことができない
⚫︎受け取り方によって課税額が高くなる可能性がある
⚫︎将来受け取れる給付金がわからない
⚫︎ある程度投資の知識が必要
⚫︎選択制の場合は厚生年金などの給付額が減る
⚫︎運用管理機関を選べない
以上になります。「投資に関する知識が必要」な理由は、運用管理機関こそ選べないものの、商品を選ぶのは自分自身です。加入した年齢から受け取ることができるまでに、どんな商品でどの程度積み立てていけば良いのか?
ある程度の知識がないと、適切な商品選びなどできません。また他にもいくつもデメリットが多く、これだけあれば「騙されるな」と言われてしまうのも合点がいくでしょう。
「個人型」にはデメリットがない?
今やNISAと並んで「やるべき資産運用」の一つとして数えられるiDeCoですが、企業型同様こちらも確定拠出年金であることには変わりないため、それなりにデメリットはあります。いくつか挙げると・・・
個人型確定拠出年金のデメリット
⚫︎途中解約ができない
⚫︎原則60歳まで引き出すことができない
⚫︎元本割れのリスクがある
⚫︎手数料がかかる
基本的には企業型と似たようなデメリットがあることがわかります。しかしながら、企業型も個人型も投資である以上、ある程度のリスクがあるのは仕方がないことです。
さらに、原則として60歳まで受け取ることができない点や途中解約ができない点も確定拠出年金の特徴であり、避けることはできません。しかしながらもう一点、特筆すべきは「手数料について」です。
iDeCoに加入すると、いくつかの手数料が発生します。
⚫︎加入・移換時手数料:2829円(初回のみ)
⚫︎掛金収納時手数料:105円
⚫︎還付手数料:1048円
引用元:iDeCo公式サイト
ちなみに上記は国民年金基金連合会に支払う費用となり、運営管理機関への手数料は金融機関ごとに異なるため、加入時に確認しておくべきでしょう。
企業型確定拠出年金には手を出すべきではない?
企業型・個人型共に私的年金のため、加入の義務はありません。前項で紹介したようなデメリットを知ってしまったら、中々加入したくもなくなるなんて方もいるかもしれませんが、受取時に一定の非課税枠がある点や、所得控除になる点などメリットも少なからずあります。
よって、例えば退職金こそないものの、企業型確定拠出年金制度を取り入れている企業に勤めている場合は、退職金の代わりとして加入するのがおすすめです。また、老後の生活に不安を抱えている方にも預金やNISAなどの手段に加えるのも手でしょう。
確定拠出年金とその他の資産形成方法との比較
デメリットこそあるものの、老後資金を蓄える手段の一つとしては悪くありません。では、確定拠出年金以外の手段はどうでしょうか。どうしても企業型確定拠出年金に手を出したくない方や、企業型確定拠出年金だけでは不安という方に、その他の方法について紹介します。
定期預金の場合
ノーリスクという点では数ある手段の中で最も安全性が高いと言えます。しかし、金利は良くても0.45%程度であることを考えると、NISAや確定拠出年金などよりも低効率と言わざるを得ません。
新NISAの場合
企業型確定拠出年金との最大の違いは「受け取ることができる時期」です。新NISAの場合はいつでも引き出すことができますが、確定拠出年金は満60歳以降がマストです。
さらに言うと、確定拠出年金の場合、元本確保型・元本変動型の中から選ぶことができますが、その数はさほど多くありません。所属企業が契約した管理機関にもよりますが、新NISAと比べると圧倒的に少ないのです。
個人年金保険の場合
個人年金保険とは、老後の必要な生活資金に対し、公的年金に上乗せ補完する目的で、自身で準備する保険です。保険契約者は毎月保険料を一定年齢まで払い込み、受取開始時期になると年金形式または一括で受け取ることができます。つまり、確定拠出年金と似た制度です。
ただし個人年金保険はあくまで保険です。企業型確定拠出年金の場合は加入者自身が運用しますが、個人年金保険の場合は保険会社が運用します。同じ性質を持った手段ではあるものの、確定拠出年金との併用が可能なので、より盤石な老後生活を考えているなら、どちらも採用するのも一考でしょう。
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