投資信託に興味を持ち、早速購入したところ、「高い時に買ってしまったようで、その後、値段が下がってしまった」という経験をしたことはありませんか。
少額からでもスタートでき、プロのファンドマネージャーが代わりに分散してリスク管理もしてくれるため、比較的始めやすい投資信託ですが、買った後に下落するとなると、「高い時に買ってしまって、失敗だったのか」と当然不安に思いますよね。
結論として、基本的には保有することを前提に考えてOKです。
順調に成長を続けている投資信託は、短期的な上下を伴い調整しながら上昇していくケースが多いです。
しかし、特定の状況に当てはまる場合は、売却を検討した方が良いこともあります。
それでは、高い時に買ってしまったとしても、保有で良い場合、売却を検討した方が良い場合とは、それぞれどのような状況か。
また、高い時に買ってしまった、と不安な気持ちを抱えることがないよう、事前にどのようなことに気をつけて確認しておけば良いのか。
本記事では、上記の点について深掘りし解説していきます。
高いときに買うのは、やっぱりよくない?
高いときに買ってしまったら、どうしたらいい?
何に注意すれば、高いときに買わずにすんだのかな
と、お悩みだったあなたは、ぜひこのまま最後まで読み進めてみてください。
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監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、「会社四季報」編集長との共同セミナーに講師として登壇(東京証券取引所主催)するなど、著書に講演依頼、メディア出演も多数。「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
投資信託の仕組み
まずはじめに、投資信託とはどんなものかについて、改めておさらいしておきます
投資信託とは
投資信託とは「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資・運用する商品」のことを言います。ファンドマネージャーが運用成果を上げられた場合、投資家は、それぞれの投資額に応じて利益を受けられるようになっています。
投資信託の運用成績は市場環境などによって変動します。投資信託の購入後に、投資信託の運用がうまくいって利益が得られることもあれば、運用がうまくいかず投資した額を下回って、損をすることもあります。
投資信託を購入する時には、「投資信託の基本情報」として、「基準価額」 「純資産総額」 「手数料」の3つをまずは押さえます。
以下、楽天証券の「eMAXSIS Slim 米国株式(S&P500)」を参考にしてみます。
①基準価額
投資信託の値段を表すのがこの基準価額です。
投資信託は基本的に「口(くち)」という単位で取引され、この基準価額は基本的に「1万口あたりの値段」で表示されます。
購入するとなった場合、この数字は目に入ってきやすい位置に表示がされているかと思いますので、まずは基準価額がいくらなのかを確認しましょう。
②純資産総額
純資産総額は、投資家から集まった資金や、ファンドで運用されている株式や債券などの全ての資産額から、手数料を差し引いた後に残った純粋な資産分の総額であり、ファンドの規模を表しています。
ファンドでうまく運用成果がでたり、購入する人が増えたりするとこの純資産総額は増えていきます。
反対に、売却する人が増えたり、運用がうまくいかない場合などがあると減少していきます。
また、投資家への分配金の吐き出しによっても減少します。
購入時現在で、どのくらいの純資産総額なのかを確認しておきましょう。
③手数料
購入時にかかる「購入手数料」、保有している間かかる「信託報酬(運用管理費用)」、売却時にかかる「信託財産留保額」など、投資信託の売買には手数料がかかります。
今回は購入時という部分で、特に購入手数料と運用管理費の2点について、どの程度かかるのかを確認しておきましょう。
基準価額の決まり方
前項で触れた基準価額ですが、
基準価額=純資産総額÷総口数
という式で計算されます。
株式のように需要と供給で価格が決まるわけではなく、今ある資産を口数で割り算して、求めます。
つまり、運用がうまくいき、純資産総額が増えれば、基準価額も上昇しますが、反対に、運用がうまくいかなかったり、分配金の吐き出しによって純資産が減ると、それに伴って基準価額も下落することになります。
また、基準価額はブラインド方式といって、1日1回、市場が終わった後にその日の基準価額が計算されます。
なので、投資信託を購入する場合、注文を出した時に確認した数字とは異なる基準価額で約定することになります。
つまり、注文を完了した時点では、基準価額がいくらで約定するのか、わからないのです。
かといって、確認した基準価額から大きくズレて約定する、ということは、市場で大暴落が起こった場合などは別ですが、ケースとしては少ないと言えますので、過度な心配は不要ですが、基礎理解として、この部分をしっかり覚えておきましょう。
高い時に投資信託を買ってしまったら?
前章で、投資信託の基礎理解をおさらいしました。
さて、それでは改めて、「投資信託を高い時に買ってしまった」という場合は
どのように考えれば良いでしょうか。
冒頭でもお話したとおり、基本的には「保有」で問題ないですが、一部のケースの場合は売却を検討する方が良いと言えます。
それぞれ、具体的にどのようなケースか、説明していきます。
「保有」で問題ないケース
「基本的に保有」といっても、何か基準を持って「保有して大丈夫だ」と判断できれば、より安心かと思います。
参考として、以下のポイントをチェック、振り返りをしてみると判断しやすいかと思いますので、ぜひ確認してみましょう。
「長期・積立・分散」を前提に購入している
元々、長期的に積立投資を前提として投資信託を購入している場合は、高い時に買ってしまっても、保有継続で問題ないです。
毎月同額、同タイミングで買い増ししていく方法を「ドルコスト平均法」といいます。
これを前提としている場合「値段が高い時には少なく、値段が安い時には多く」購入することになるので、将来的に取得単価は平準化されていきます。
なので、積立投資をしている間で、「たまたま高い時に購入タイミングになってしまった」という場合も当然あるかと思いますが、この場合は保有継続で問題ないと言えます。
値段の高い、安いも、あくまで結果論です。相場の高値や底値を予想して当てることはそもそも困難でもあるので、気にしなくて良いでしょう。
なお、ドルコスト平均法についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ読んでみてください。
「純資産総額」が右肩上がりに上昇している
過去からの純資産総額の推移を確認し、長期ベースで堅調に右肩上がりに上昇している場合も、保有で問題ないケースです。
1章で確認したとおり、純資産総額はファンドが持つ全資産から経費を差し引いた、純粋な資産額の総合計です。これが長期的に上昇しているということは、安定して運用実績を出して資産を増やせていること、またそれによって信頼を得て、投資家からのさらなる出資を募ることができている、ということを表していると言えます。
純資産が増えれば、いわゆる「規模の経済」が働くため、ファンドとしてもより運用実績を出しやすくなります。
このように、長期的に見て順調に純資産総額が上昇している場合は、保有継続で問題ないと言えます。
そもそも相場とは、短期的には上下を繰り返すものです。
成長するものは、そうした上下を経て、緩やかに上昇していくものがほとんどであるため、足元の値動きをのみを過度に不安視する必要はありません。
今まで特別分配金を出していない
分配金を出すタイプの投資信託の場合、これまでの分配金の実績を確認して「特別分配金」が出ていなければ、この場合も保有継続で問題ないです。
分配金には「普通分配金」と「特別分配金」があり、以下のような違いがあります。
【普通分配金】
ファンドが運用実績をしっかり挙げられて、市場から得られた利益の中から出す分配金
【特別分配金】
ファンドの運用がうまくいかず、利益を出せていない中、分配金を出さなければならない場合に、元本を削って出す分配金
これまでの分配金実績で一度も特別分配金が出ていない場合、基本的にはこれまで運用がうまくいっており、堅実に利益を出せている、もしくはファンドの方針で、運用がうまくいかない時には分配金を0とし、純資産額の減少を最小限にしようとしている、などが読み取れます。
いずれも、投資家としてはポジティブな印象を持てると判断できる部分です。
ファンドの方針の部分は、もちろん目論見書などで改めて確認をしておく必要もありますが、上記のことから、過去実績で特別分配金がなければ、そのまま保有継続で良いと判断する一つの要素となります。
手数料が安い
保有を継続する場合、その間は信託報酬(運用管理費)という手数料が発生し続けます。
これが安く抑えられていれば、保有し続ける、と判断できる一つの基準になります。
本項目の一つ目で「長期、積立、分散」について触れましたが、例えば長期で保有する場合、それだけこの信託報酬もかかってくることになります。
ここのコストができるだけ抑えられていれば、保有を継続していても運用効率への影響も少なくなり、「待つ」という戦略も取りやすくなるためです。
「売却」の検討を視野に入れた方がいいケース
次に、売却を検討した方がいいケースについてです。
判断基準の参考として、以下のポイントをチェック、振り返りをしてみると良いでしょう。
当てはまっている項目が多いほど、売却の検討余地があるかもしれません。
人から勧められるなど、内容もわからず買った
まず、自分が購入した投資信託が「人から勧められて購入したもので、どのようなものかわかっていない」などという場合は、注意したほうがいいです。
「なんとなく」や「よくわからない」という状態で投資をしてしまうと、資産運用というより、もはや限りなくギャンブルに近いと言えます。
自分の判断して購入していないので、「どうすればいいの?」と何かあるたびに、常に迷うことになります。
投資の世界では「自己責任」という言葉がよく使われます。いくら誰かから良いと勧められたり、SNSなどで人気だったから、などの理由があったとしても、下落したら損を被るのは自分自身です。他の誰も責任をとってくれることはありません。
そのまま持ち続ける心理的な負担も増えますし、「よくわからない」うちに更なる下落に巻き込まれることもあります。
上記のことから、自分ができていない投資信託を、高い時に買ってしまった、という場合は、仕切り直すためにも、一旦売却を視野に入れたほうが良いと言えます。
基準価額や純資産総額が減り続けている
購入した投資信託について、これまでの推移を確認した時、基準価額と、純資産総額が右肩下がりになっている場合も、注意が必要です。
特に注意したいのが、純資産総額の減少です。
先に述べた通り、純資産総額はファンドの規模を表しています。分配金の吐き出しや、相場環境の影響で運用実績の低下で、直近で一時的に純資産総額が減っているのであれば問題ありません。
しかし、過去の推移を確認した時に、右肩下がりにどんどん減っているという場合は、ファンド自体の運営がうまくできていないことが推定されます。そのまま純資産総額が減り続けると、途中でファンド自体が解散することもあり、安い値段で強制的に売却をしなければならなくなることもあります。
以上から、基準価額と純資産総額、特に純資産総額が右肩下がりとなっている場合、高い時に買ってしまったなら、売却の検討を視野に入れた方が良いかもしれません。
特別分配金を出している
分配金を出すタイプの投資信託で、これまでの分配金実績を確認した際、「特別分配金」を出していた場合も、売却を検討する一つの要素となります。
前章で触れたように、特別分配金は元本を切り崩して拠出される分配金です。
「高い時に買ってしまったけど、分配金が出ているから貰い続ければいい」と安易に考えていたところ、実際もらっているのは特別分配金で、元本がどんどん減ってしまっていた、というケースもあります。
つまり、分配金が出ていても、それが「特別分配金」であるなら、実際は運用がうまくいっていないと言えます。
今まで特別分配金を出したことがある、ということは、今後も運用がうまくいかない時に特別分配金を出す可能性があるということです。
特別分配金はファンドの規模減少に繋がります。規模が小さくなれば、「規模の経済」を効かせられなくなるので、運用成績を上げることも難しくなっていきます。
こういった理由から、特別分配金を出している場合は注意が必要です。
また、これまで特別分配金を出していなかったとしても、目論見書を確認してみて、「特別分配金を出すことはある」などの方針が書かれている場合も、注意した方が良いでしょう。
他と比較して、手数料が高め
他の投資信託と比較した際、高めの手数料設定となっている場合も、売却検討を視野に入れる要素の一つです。
ここでの手数料は、やはり「信託報酬」に注目します。
投資信託は、保有している間、ずっと信託報酬がかかり続けるので、コストが高いほどファンドとしても運用効率の面では悪くなります。
信託報酬は、年0.1%程度のファンドもあれば、高いと年3%を超えるファンドもあります。
もちろん、かかる手数料以上に運用実績を残せているのであれば問題ないのですが、値段が下落を続けている場合は、同じような投資内容で、他に手数料が安くてパフォーマンスが良いものがあれば、乗り換えた方が良い可能性もあります。
このように、手数料が高い場合も、注意した方が良いと言えます。
投資信託を買う前に確認するといいこと
前章では、投資信託を高い時に買ってしまった場合の、保有と売却の判断軸についてお伝えしてきました。
ここで
「投資信託を買う時に、高値掴みにならないように気をつけられることは?」
「高値で買うことになっても問題ない、ってマインドセットするためには、買う前に何を見ておけばいい?」
と、思う方もいるでしょう。
そこで本章では、投資信託を買う前に確認する視点について、解説します。
具体的には以下の3つ視点を考えてみると良いです
・コストがどのくらいかかるのか
・過去の運用実績や純資産総額の推移
・時間軸を長めに、資金は分けて投資する
一つずつ説明します。
コストがどのくらいかかるのか
投資信託には、購入手数料、運用管理費(信託報酬)、信託財産留保という、3つのコストがかかります。
このコストがどのくらいかかるかを確認、比較してみましょう。
例えば、同じインデックスをベンチマークとするファンドがいくつかある場合、事前に手数料の観点で比較し、安いものを選んでおけると、高い時に買ってしまっても「保有継続」と判断しやすくなります。
手数料の中でも特に信託報酬については、これまで触れたきたとおり、保有している間はかかり続けるものなので、できるだけ安い設定になっているものを選べると良いです。
過去の運用実績や純資産総額の推移
これまでの運用や分配金支払いがどのような実績だったか。また、ファンドの規模を表す純資産総額はどのように推移しているか、を確認してみましょう。
ファンドが出している「目論見書」や「運用報告書」、チャートなどを確認し、
・これまで順調に運用がうまくいっているか
・分配金があれば、普通・特別のどちらだったのか
・純資産総額は右肩上がりになっているか
・そもそもどういうものに投資をして、どのような運用を目指しているファンドなのか
などの点に注目すると良いです、
なお、こうしたファンドの運用の履歴(トラックレコードといいます)は、できるだけ情報量が多い方が判断しやすいです。
つまりそのスタートしてからある程度期間が経っているファンドの方が、よりこの点を判断しやすいと言えます。
最近では、新規に設定され、スタートしたばかり、という新しいファンドも多く出ています。これらは一見良さそうに思えますが、実績がないので、少し判断が難しいところです。
・右肩上がりのインデックス流をベンチマークにしている
・今まで投資したくてもできなかった有望な国などに投資できるようになった
など、の理由でなければ、実績のあるファンドの方を検討してみると良いでしょう。
もちろん過去の実績のあり・なし、運用成績の良し悪しだけで抽出して、「今後も絶対大丈夫」などの判断はできませんが、十分、参考の要素にはなりえます。
時間軸を長めに、資金は分けて投資する
投資信託を購入するときは、そのスタンスが重要です。
基準価額は毎日常に動くので、狙って高値を回避したり、底値を当てる、ということはとても難しいです。また、1章で説明した通り、買いたい人、売りたい人の需給によって決まるものでもありません。
ファンドの運用がうまくいき、徐々に規模が拡大することで、さらなる投資家が集まります。そうしてさらに資金が集まれば、規模の経済が働いて、より運用実績も出しやすくなります。
ファンドはこのような循環で規模が拡大していき、私たち投資に利益をもたらしてくれますが、これは一朝一夕なものではなく、時間をかけて緩やかに循環していくものです。
そのため、投資信託に投資する私たちも、長期的な視点を持つ方が良いです。
仮に一時的に高値で買ってしまったとしても、長めの時間軸の元、ドルコスト平均法によって資金を分けてコツコツと続けていくことで、安定した成果を出しやすいと言えます。
もちろん、短期的に一括での投資も手段としては良いですが、高値掴みで悩みたくない、という場合は「長期でコツコツ」のスタンスで、投資信託を選ぶと良いでしょう。
累計63万人以上が受講している人気講座です。
まとめ
いかがでしたか。相場は日々動いており、時には予期せず、過去の歴史を塗り替えるほどの大暴落が発生することもあります。
そのような中「高い時に買ってしまって、どうしたら良いんだろうと」と悩み続けるのも心理的な負担が大きく、何か判断軸が欲しいと感じる方も多いでしょう。
上記のようなお悩みに、本記事の内容が参考になれば、幸いです。
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