「SBI証券の審査に落ちた」そう聞いて、驚く方も少なくないでしょう。なぜ証券口座を開くだけなのに審査が必要なのか?と。
そもそもお金を借りる訳でもなければローンを使うわけでもない。単純に自分のお金で金融商品を購入・管理するだけです。それにも関わらず、なぜ審査をする必要があるのでしょうか。
今回は、証券口座開設時に行われる「審査」にフォーカスして解説していきます。これから投資を始めようと考えている方は、ぜひ最後までお読み飛ばしなく。
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監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
SBI証券の審査に落ちた理由
投資ビギナーの方は驚くかもしれませんが、証券口座を開く際は基本的に審査アリがデフォルト。では、証券会社によっては審査のないところもあるのでは?と思われるかもしれませんが、原則として審査無しはあり得ません。
そして何より審査が行われるということは、当然落ちるケースもあるのです。しかし、金融商品を購入・運用するだけの用途で、なぜ審査を要するのか? そして、なぜ審査に落ちてしまう方がいるのでしょうか?
審査に落ちた理由は?
そもそも証券口座の開設に審査が必要かどうかについて疑問を覚える方もいると思いますが、実はそれ、マストなのです。つまり、ほとんどの証券会社において、口座開設時は誰であれ審査することが決まっています。
一般的な審査基準は後述しますが、ここではまず「なぜSBI証券の審査に落ちたのか?」について言及して行きたいと思います。
まず、「SBI証券の約款・規程集」にて公表されている内容から審査に落ちる理由として考えられるのは・・・
SBI証券の審査基準
⚫︎反社会的勢力であることが判明した場合
⚫︎SBI証券との取引に関して、脅迫的な言動、暴力、法的責任を超えた不当な要求を行った場合
⚫︎お客様情報に基づき、法令に抵触するおそれがあるとSBI証券が判断した場合
⚫︎日本国内に住んでいない人
⚫︎証券会社に勤務している人(世帯主が該当する場合も)
⚫︎本人名義以外の口座開設手続きをしている人
⚫︎すでにSBI証券で証券口座を開設済の人
以上になります。
つまり「落ちた方」は、以上のどれかに該当するものと思われ、別段理不尽な理由で落とされたわけではないことがわかります。また、上記の審査基準については、あくまでもSBI証券独自の基準になります。各社で要項は異なっているので、口座を開設する際は、個々の証券会社であらかじめ内容を調べておくことをお勧めします。
信用口座の審査基準はさらに厳しい?
ちなみに、前項でご紹介したのは「証券口座」についてです。つまり、『信用取引口座』を開設する際は基準が異なります。そもそも「信用取引」とは何か?
簡単に言うと証券会社からお金や売買に必要な株式を借りて行う取引のことで、大まかに言えば『借金をして金融商品を購入することができる取引』です。しかも信用取引で使った費用や購入した株式については、一定の期間内に返却しなければならず、十分な資金を持ち合わせていないと、中々手を出すことができない取引です。そして肝心の審査基準は・・・
SBI証券の信用口座の審査基準
⚫︎年齢75 歳未満の成人であること(未成年は開設不可)※
⚫︎常時連絡がとれる
⚫︎信用取引のルール、「信用取引口座設定約諾書」、「信用取引に関する覚書」、および「信用取引の契約締結前交付書面」を十分に理解していること
⚫︎十分な金融資産や証券知識があること
⚫︎株式の投資経験があること
⚫︎既にSBI証券で口座開設されていること
⚫︎登録金融機関業務に従事していないこと
⚫︎金融商品仲介業を営んでいないこと
⚫︎金融商品仲介業務に従事していない
⚫︎証券担保ローンをご契約していないこと
⚫︎FX株券担保サービスを申し込みしていないこと
⚫︎SBI株オプションをご契約し、かつポジションを保有していないこと
※年齢75 歳以上の成人であっても、80 歳未満の場合は別途申請することで投資経験、資力等によっては口座開設が可能な場合もある
以上になります。
見た目からもわかるように、非常に細かい基準が設けられている上に、投資ビギナーにはハードルが高いことがお分かりいただけると思います。もし同証券会社で信用取引口座の開設を考えているなら、上記に該当してないことをしっかりと事前に確認しておくべきでしょう。
証券会社の審査基準について知ろう
前章ではSBI証券の審査についてフォーカスしましたが、ここでは証券会社全般についてのお話になります。そもそも、証券口座を開くだけで審査を要する事実を知らない方も多いのではないか? と思いますが、前記した通り多くの証券会社でそれは「決まり」になっているところがほぼです。審査基準はもちろんですが、なぜ審査をする必要があるのか? などについても言及していきます。
主要証券会社の審査基準はどうなっている?
細かく挙げればキリがないので、ここでは「全ての証券会社で採用されている審査基準」と「多くの証券会社で採用されている審査基準」に大別して紹介します。
<全ての証券会社で採用されている審査基準>
⚫︎反社会的勢力の関係者でないこと
⚫︎証券口座を開設する本人からの申込みであること
まず、全ての証券会社で採用されている審査基準は上記2点になります。ちなみに、一点目の反社関係者の場合についてですが、「元反社」の場合はどうなるのか? というと、令和4年2月に警視庁から「元反社」で社会復帰した場合、預金口座の開設を認めるという方針が発表されましたが、証券口座についての言及はありません。また、関係性の深さ・濃さにもよりますが、反社の身内であった場合も審査落ちの対象になると言われています。
<多くの証券会社で採用されている審査基準>
⚫︎金融関係や証券会社の役員や従業員でないこと
⚫︎居住地が日本国内であること
気になるのは一点目。なぜ金融関係者や証券会社に属する方が口座を開設できないのか? というと、業務を通じて取引に有益な情報を得られる可能性が高いためなのだそう。つまりインサイダー防止策としてということでしょう。
なぜ審査をする必要があるのか?
審査されるのは仕方がないとしても、落ちる理由がわからない。何も金融機関からお金を借りる訳ではなく、単に自費で金融商品を購入するだけ。それにも関わらず、なぜ審査という仕組みを設けているのか? というと・・・
⚫︎犯罪行為の防止
⚫︎顧客の資産保護
以上2点が審査をする理由になっています。まず、犯罪行為の防止については、架空にして他人名義の口座に資金を転がし続けるマネーロンダリングを防ぐことが主な目的です。
そして2点目の顧客の資産保護については、リスクの高い取引などによって顧客が大きな損失を出してしまうことを防ぐためと言われており、証券会社によっては、口座開設時に顧客の投資経験やマネーリテラシーをチェックします。ただし、経験が浅く知識が少ないという理由で審査に落ちるという事例はほとんど聞きません。
審査に落ちたらどうすればいい?
前項までを読み、不安になった方も少なくないかもしれません。何せ、反社の関係者でなくとも審査に落ちる可能性は少なからずある訳で、最も気になるのは「落ちたらどうすればよいのか?」に尽きるでしょう。
一度落ちたらもう二度と証券口座を持つことは叶わないのか? というと、そうではありません。一度落ちたとしても、同じ証券会社で再度審査して通った例もあり、大事なのは「落ちた理由に改善の余地があるかどうか」です。つまり、書類の不備をはじめとする手続き上のミスによって落ちてしまった場合、その点を改善することで再度の審査が可能。
当然、通過する可能性は高いと言えるでしょう。また、万が一審査に落ちてしまったとしても、別段個人の信用情報に傷がつく訳ではないのでご安心下さい。そして、落ちたとしてもすぐに審査してもらうことができるので、改善できる余地があれば何度でもトライしてみることをお勧めします。
審査前に気をつけておくべきことは?
危険なのは、口座を開設する前にしっかりと準備しておかないことです。つまり、身内のチェック(反社がいないかどうかなど)や準備すべき書類について、さらには審査に出す証券会社の基準をクリアしているかどうかの確認に漏れがないかどうかが大事になります。そしてここでは、口座を開設する際、ユーザーが忘れがちなことについて紹介していきます。反社じゃなければ大丈夫とタカを括るのはNGです。以下をよく読み、自身が該当しているかどうか、しっかりと把握しておきましょう。
NISA口座は一人につき一つしか持てない
ややこしい話ですが、NISA口座は一人につき一つしか持つことができません。しかし、一般の証券口座(NISA口座ではなく)であれば、数に制限なく持つことが可能です。NISAから投資を始めるビギナーの中には、選べる証券会社は一人一社に限定されていると勘違いしてしまう方もいるかもしれませんが、何もそういう訳ではないことを理解しておくべきでしょう。
ブラックリストに載っている人は絶対落ちる?
債務整理を利用するなどして、信用情報に事故情報が登録されている状態、つまりブラックリストに載っていると言われているステータスの方は証券口座開設の審査に通らないのか? 答えは「NO」です。
そもそも、証券会社は個人の信用情報をチェックすることができません。しかし、信用口座を開設する場合は、高確率で信用情報を見られてしまいます。何せ株や資金を借りて手続きする訳ですから、その点を確認しないことには口座開設などできません。あらかじめ注意しておくべきでしょう。
開設する口座の種類によって審査難度は異なる
前項で少し触れましたが、開設する口座の種類となによって審査基準は大きく異なります。
今回は一般証券口座にフォーカスしてきましたが、その他の口座の場合はどうなのか? というと・・・
<信用取引口座開設の審査基準>
⚫︎一定の年齢基準を満たしていること
⚫︎十分な金融資産をもっていること
⚫︎マネーリテラシーのレベルが低くないこと
⚫︎投資経験があること(信用取引や株式投資が主)
<FX口座開設の審査基準>
⚫︎一定の年齢基準を満たしていること
⚫︎収入額が証券会社の基準を超えていること
⚫︎投資資金を借金で賄っていないこと
<法人口座開設の審査基準>
⚫︎取引の目的が明確であること
⚫︎事業内容を明らかにできること
⚫︎反社会勢力との繋がりがないこと
⚫︎自己破産の経験がないこと(証券会社によって問われない)
以上になります。信用やFXはリスクの高さもあって、審査基準が厳しくなっています。それらに比べると一般的な証券口座の開設はハードルが低いと言えます。
とはいえ、実際に落ちてしまったという例も見聞きしているので、これから投資を始めようと考えている方は、まず口座を開くことができるかどうか? 証券会社ごとの審査基準をしっかりと確認しておくべきでしょう。
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