今日は投資の失敗について勉強するよ!
失敗から学ばないとね!
2022年の株式市場は下げ相場が続き、かなりの損失をこうむっている人が多いのではないでしょうか。
最近株式投資を始めた投資初心者から、
投資しろって言うから預金全部突っ込んだら持ち株みんな下がった
含み損が増えていくばっかりで、やんなっちゃう
やっぱり投資なんかするんじゃなかったわあ
などの悲痛な声がよく聞かれます。
でも落ち着いて考えてください。
長く投資を続けていく以上、こうした一方的な下落トレンドや急落はつきものです。
歴史をさかのぼれば、リーマンショック、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、日本ではライブドアショックや東日本大震災直後の暴落などなど、数えあげればきりがないほど。
2020年3月のコロナショックでは主要指数が30%前後も短期間で一気に下落しました。
歴史的な暴落でなくても、10〜20%程度の急落はひんぱんに訪れるし、数年にわたって株価が低迷を続けることもあります。
そういうとき、上しか見ていなかった人は一撃でやられてしまいます。
また、株価が上昇トレンドにある時期でも投資で失敗する人は後を絶ちません。
たとえばインフルエンサーがつぶやいた銘柄をあわてて買ったら、ほかの人も大勢買っていて、あっという間に売られて急落。損切りができなくてそのまま放置ーー
そんな経験は投資初心者ならだれでもあるのではないでしょうか。
本記事では、わたしたちの投資スクール「グローバルファイナンシャルスクール(GFS)」監修の下、
- 投資初心者が失敗しやすい5つのパターン
- 投資初心者が失敗しないための3つの投資戦略
- 失敗後の正しいリカバリー方法と塩漬け解消法
をテーマに、投資初心者の失敗の”傾向と対策”をじっくり考えていきたいと思います。
この記事を読むことで、以下のレベルアップを目指します。
- どんな人がどんな失敗をするのか、そのパターンと原因が理解できる。
- 自分の失敗の理由がわかり、同じあやまちを繰り返さないようになる。
- 現在の悲惨な状況からどのように抜け出せばいいかがわかる。
- 他人や相場のせいにせず、冷静に自己責任で投資判断ができるようになる。
投資初心者に限らず、いつまでも失敗を繰り返してしまう人もこれをお読みいただき、失敗の理由を理解し、正しい投資方法を身に着けて資産形成に役立ててもらえたら幸いです。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
投資初心者が失敗しやすい5つのパターン
投資初心者が陥りがちな失敗にはどんなものがあるでしょうか。
ここでは大まかに以下の5つの失敗パターンとその理由を考えていきます。
投資初心者が失敗しやすい5つのパターン
①投資目標が設定できていないーー強欲と恐怖に流されてしまうパターン
②投資先の選び方・買い方が雑すぎるーーフンイキ買い、イナゴ買いで高値づかみするパターン
③銘柄だけ見て相場全体が見えていないーー下落の理由がわからずに売買を続けてしまうパターン
④赤字株・高配当株に執着しすぎるーー早く儲けようとして逆に資産を減らすパターン
⑤資金管理ができていないーー自分の資金やリスク許容度を超えて危険な投資に手を出すパターン
実際にはこれらの要素は複合的にからみあっていますが、初心者が失敗の傾向をつかむためにぜひ単独で知っておいてほしい項目ばかりです。
1つずつ順番に見ていきましょう。
①投資目標が設定できていないーー強欲と恐怖に流されてしまうパターン
初心者の失敗でまず多いのが、投資をする目的や目標がしっかりと定まっていないことです。
投資を始めた漠然とした理由はあるかもしれませんが、それだけでは十分ではありません。
長期で大きな資産を築きたいのか、月々のこづかいを稼ぎたいのか、将来のお金の不安をなくしたいのかFIRE(=経済的自立と早期の退職)したいのかなど、投資の目標は人それぞれ異なります。
この目標がきちんと定まっていないと、投資スタイルがふらふらとどっちつかずになってしまいます。
特にありがちなのが、欲や恐怖にかられてルール通りに投資できず、投資期間の目線を「短期⇔長期」とコロコロ変えてしまう失敗パターンです。
たとえば、「毎月〇万円稼いで小遣いの足しにしたい」と株の短期売買を始めた人がいるとします。
この場合、デイトレなら一日の売買に徹する必要がありますが、下落したのにルール通り損切りせず、「持っていればそのうち上がるだろう」と安易に持ち越し、結果として含み損がさらにふくらんで塩漬け株にしてしまう人がかなり多く存在します。
これは次の日から売買する資金がとぼしくなってしまう「機会損失」という失敗です。
一方、その逆に、長期保有を目的に投資をした人がいつのまにか短期目線で売買してしまう失敗例も目立ちます。
せっかく長期で保有して複利で大きく育てていこうと買った銘柄なのに、目先の利益に目がくらんで利確したり、ちょっとの下落で動揺して損切してしまったり。
それを繰り返しているうちに売買手数料ばかりたくさん取られ、結局資産と呼べるものが全然増えていないという結果になりがちです。
毎月の小遣い稼ぎなど、短期のトレードなら、できるだけたくさん、素早く細かく損切りすることで、1勝9敗でも儲けることができます。
一方5年10年と長期投資するなら、20%や30%、ときには50%以上の株価の下落もあると想定して、下がったらコツコツと買い増していく姿勢が大事です。
このように、どれくらいの期間でいくら儲けたいのか、何年かけていくらまで資産を増やしたいのか、そのためには月々いくらの投資が必要なのか、そうした目的・目標の設定なしに投資で成功はありえません。
この目標設定がないと次の項目で説明する売買銘柄選びも適当になってしまいます。
②投資先の選び方・買い方が雑すぎるーーフンイキ買い、イナゴ買いで高値づかみするパターン
投資初心者の失敗原因であまりに多いのが、投資銘柄の雑な選び方と買い方です。
長期投資なら、銘柄選びは本来じっくり時間をかけ、長期の成長性を見極めなくてはなりません。事業内容や商品・サービスの優位性、長期の計画、経営状態や業績の推移、現在の株価バリュー(高すぎる/安すぎる)など、判断すべきことがかなりあります。
それをよく調べもせずに、「この会社は有名だから」「みんながいいと言っているから」と買ってしまう人。「なんとなくよさそうだ」と勘に頼ってしまう人。
こういう「フンイキトレーダー」は、どのように成長していくのかのビジョンに欠け、結局思い通りに上がらないとすぐに売ってしまい、儲け損ねてしまいます。
あるいはSNSでフォローしている有名投資家が「買った」とつぶやいたり、メディアで将来有望な企業と紹介されていたりすると、あわてて買ってしまう人。
こういう影響力のある人の意見に安易に飛びついて投資する人を「イナゴ」と呼んだりします。
イナゴは農作物に群れでとびついて一気に食いつぶし、たべたらとっとと飛び去っていきますよね。それと同じように、1つの銘柄に集団で飛びついて、利益を食べつくしたらさっさと逃げてしまいます。
イナゴ投資家が大勢とびついた株のことを「イナゴタワー」などと言います。いずれこの株は自らの(イナゴの)重みに耐えきれず下落していきます。こわいですね。
利確できるのはひとにぎりの上手な投資家だけ。初心者マークの大半のイナゴトレーダーは、もう食べるところがない銘柄に高値で飛びついた後、ほかのイナゴが去ってずるずると下落していくのを見てあわてて損切りしたり、逃げ遅れて大きな含み損を抱えてしまったりします。
SNSのインフルエンサーやメディアなどで名前が出たら、買うのはあなただけではないということ。
そして、本来ならじっくり調べてから投資すべき銘柄にみんなが安易に飛びつくため、飛び去るのも早いということ。それをしかと肝に銘じてください。
銘柄選びは慎重に時間をかけてやらないと、フンイキで買う人もイナゴとなって飛びつく人も、いずれも「市場の養分」となってしまいます。
③銘柄だけ見て相場全体が見えていないーー下落の理由がわからずに売買を続けてしまうパターン
業績などを一生懸命調べて将来有望な個別企業の銘柄を見つけても、株価はその事業の成長度や順調さに比例して右肩上がりで上がっていくわけではありません。
たとえ企業の業績が絶好調でも、相場全体が悪ければずるずると売られて下がっていくことが当たり前のようにあります。
こういうとき、下落した理由もわからず右往左往して、含み損になったとたん長期目線を忘れて損切りしたり、「安くなった」と喜んで下手にナンピンしたりして失敗する人は多いのではないでしょうか。しかも失敗しても理由がわからなかったりするので、また同じ過ちを繰り返したりします。
株価を動かすものは、別に企業の業績だけではありません。世界の景気動向、各国の金融政策、政府の方針、不測の事件・事故、戦争や災害などなど、社会を動かすあらゆる要素が、あまり関係のなさそうな銘柄の株価にまで影響するのです。
たとえば2022年はなぜこんなにたくさんの株が値下がりしたのでしょうか。
それは、
- コロナ禍で各国がとった金融緩和政策により、市中に出回ったお金ですでに株価が上がりきっていた
- 経済の回復にともなって、人手や原材料の不足が深刻化し、生産が予定通り進まなくなっていた
- ロシアのウクライナ侵攻で、原油や天然ガスなどのエネルギー不安が高まり、コスト増を招いた
- 人件費や物価高でインフレが進み、各中央銀行が極端な金融引き締めに舵を切った
- ワクチン開発やコロナ患者の隔離がうまくいかず、中国で感染者が拡大して工場ラインの停止を余儀なくされた
などの複合要因が挙げられます。
特に、欧米の中央銀行がインフレ対策としてとった政策金利の急な引き上げは、市中に出回るお金の量が減り、企業が資金調達をしにくくなるなどの理由から、景気後退へと結びつきやすく、失業率の低下など本来なら歓迎すべき良好な経済指標が出ても、「これではインフレはおさまらない」「また利上げになる」と警戒して株が売られる、という悪循環を招くだけでした。
日本は欧米ほどインフレは進んでいませんが、サプライチェーンの混乱のほか、経済の関係が深い米国の株価下落や中国のロックダウンなどが相場を抑え込みました。
あなたは自分の保有銘柄が下落したとき、こうした相場環境の説明がきちんとできるでしょうか。
そしてその状況がコロコロ変わることを把握できているでしょうか。
これほど大きな金融経済の流れの変化だけではなく、保有している銘柄の業界全体にかかわる状況の変化もあります。
もしかしたらかなり強力なライバル会社が出現したり、同業他社の業績悪化で業界全体の株が売られたりすることだってあるのです。
経済学者じゃあるまいし、そんなこと言われてもわからないよなあ
別に金融経済のことなんてわからなくても、投資はできるでしょ?
、、、という声が聞こえてきそうですね。
もちろんその通りで、こうした相場環境にあなたの資産をいちいち左右される必要はありません。
でも、相場環境や業界の変化など全体で何が起きているかわからない人ほど下手に売買してしまいがち。
がんばって含み損に耐えていても、下落理由がわからないと疑心暗鬼にさいなまれ、結局損失に耐え切れずに大底で損切りしてしまい、数日後に株価が回復してきた、、、なんて悲劇はよくあることです。
それもこれも、自分の買った銘柄の株価しか見ておらず、全体の相場環境が見えていないせいです。
④赤字株・高配当株に執着しすぎるーー早く儲けようとして逆に資産を減らすパターン
資金が乏しい若い投資初心者が特に選びやすい銘柄があります。
それは、小型のゲーム株とバイオ株です。
スマホゲームも創薬バイオも、ひとつヒット商品をつくれば株価がいきなり高騰し、一気に資産が増えることがあるため、宝くじ的な一攫千金の楽しみがあるためです。
しかしこうした企業は赤字であることが多いのが実情です。
スマホゲームのヒットを生むには、たくさんの人員と長期にわたる時間が必要で、開発予算が大きくかかります。
また創薬にも、研究開発のほか、その薬が実際に効果があるかを調べる何層にもわたる臨床試験が必要で、やはり莫大な予算が必要になります。
成功するまでに途方もない予算と時間がかかり、資金が不足すると新たに「増資」をして資金調達をします。
増資とは、すでに発行している株に加えて新たに株を増やしてそれを銀行や証券会社など第三者に買い取ってもらう方法です。1株あたりの価値が薄まるため、増資が発表されると株価が大きく下落するのが普通です。
ゲームやバイオ株に限らず、いつまでも赤字の企業はこうして資金調達を繰り返すため、何年たっても株価が上がらないばかりか、ひとたび景気が悪くなったり金融引き締めで日銀が政策金利を引き上げたりする局面では、大きく売られる対象になります。
また、投資家側の事情として、こうした株は資金のない投資家が信用取引を使って購入している比率が高く、また仮に黒字でも株価収益率(PER)がかなり高くなっていることが多いため、返済のために売られやすいという性質があります。
裏を返せば、開発に成功してもすぐに利確して手放す投資家も多いわけで、一発ヒットの効果で株価が上昇する幅も期間もそんなに長くは続きません。
もちろん、失敗のときの株価下落はそれ以上に大きいものとなります。実際の実力以上に株が買われているため、失望によって大きく売りこまれるからです。
以上のことから、こうした銘柄への投資は「ギャンブル」に等しく、資金の乏しい投資初心者が特に失敗しやすいので注意が必要です。
⑤資金管理ができていないーー自分の資金やリスク許容度を超えて危険な投資に手を出すパターン
株式投資は、株が上がって利益を得ることよりもまず、損をしないことが大事です。
長期で保有することで上がっていく株を、短期の上げ下げに動揺して売買を繰り返していては、知らないうちに損失(あるいは売買手数料)がかさんでいくことになります。
逆に短期トレードをしている場合は、小さな損失のうちに適切な損切りをこまめに繰り返す必要がありますが、惜しくなって含み損を増やし、結局大きく下落してから泣く泣く損切りして傷口を広げてしまうケースもあります。
特に、「レバレッジ2倍/3倍投資信託」など、値動きが株価指数の2倍3倍になる投資信託やETF(上場投信)の取引きは注意が必要です。
株価指数が上がれば一気に投信価格は2倍3倍にもなりますが、下がった時の下落幅も2倍3倍と大きいことから、このリスク(振れ幅)に耐えられずに損切りして自滅するケースが目立ちます。
同様に、信用取引を使って手持ち資金の2倍も3倍も購入したり、同じ銘柄に集中投資したりすることで失敗する投資初心者も大変多いです。
信用取引は証拠金として口座に入れた資金の3倍の額を取引できるため、資金の乏しい投資初心者があたかも現物株を買うように使ったりしますが、ひとたび株価が下落して元の資金以上に損失が発生すると追加で証拠金(追証=おいしょう)の入金が求められ、払えないと強制的に持ち株が売却されて損失分を借金として抱えることになります。
たとえば、証拠金30万円を入金して信用取引でその3倍の90万円分の株を購入したとします。仮にこの株が半値に下落した場合、90万円で買った株の含み損は45万円となり、元の資金(証拠金)を下回るマイナス15万円が追証として発生します。
さらに危険なのは、現物で買った株を担保(代用有価証券)にして信用取引で同じ銘柄を買うケースです。
なぜなら株価が大きく下がった時、現物で買った株の担保価値も一緒に下落するため、すでに信用取引で買っている株の損失が支えきれなくなって追証のリスクが早まるばかりか、追証の金額も大きくなるからです。
このように現物と信用で同じ銘柄を購入することを「信用二階建て」といいますが、これは初心者が絶対にやってはいけない取引の1つです。
購入しているのが現物株だけであれば最悪でもゼロになるだけで済みますが、元の資金や現物株の価値を超えた信用取引の損失は、借金の利払いにも等しい「追証」としてのしかかってきます。
こうしたリスクが想定されておらず、結局元の資金をすべて失い、市場から退場してしまう初心者が後を絶ちません。
投資初心者が失敗しないための3つの重要投資戦略
上記で見てきた投資の失敗事例は、これを気を付けることである程度防ぐことができます。
しかし、何度も同じ失敗を繰り返している人がいるとしたら、次の3つの投資戦略を必ず思い出すようにしましょう。
①長期投資戦略ーー投資先をよく調べるクセをつけて安易な飛びつきを避ける
②積立投資戦略ーー購入価格を平準化させ、株価下落の直撃も軽くする
③分散投資戦略ーーリスク分散をはかり、集中投資による資金損失を回避する
これらはベテランの投資家ならだれでも当たり前のように考えていることですが、初心者は知らない人も多く、知っていても実践ではつい忘れがちです。
でもこれらは失敗リスクを抑えるためにかなり有効な投資戦略ですので必ず頭に入れておくべきでしょう。
1つずつ解説していきます。
①長期投資戦略ーー投資先をよく調べるクセをつけて安易な飛びつきを避ける
短期の小遣い稼ぎは別として、多くの人が投資をする目的は資産の形成・増大にあるはずです。
資産の形成には長期的な視野と投資戦略が必要です。長期投資の視線を持つことで以下のような失敗回避のメリットが期待できます。
- 長期成長銘柄を探すことで、SNSやメディアで目にした銘柄にいきなり飛びつかなくなる。
- 投資先をしっかり選ぶことで短期の株価の上げ下げが気にならなくなる。
- 長期で保有することで大きな「複利効果」が期待できる。
株式投資は株価の上げ下げの差額を儲けることにあるのではなく、その本質は「企業の成長」支援にあります。
優秀な経営者の下、従業員が日々働いて人々が求める商品やサービスを提供している限り企業はふつうに成長していくものであり、現在の株価がすでに高すぎるのでない限り、株価は業績に伴って上がっていくはずです。
これらの成長の果実を享受するためには、企業の成長性を長期で見ていく視点、すなわち業績推移や財務の健全性などその銘柄の「ファンダメンタルズ分析」が欠かせません。
投資初心者はこの視点がなく、またはファンダメンタルズ分析を面倒がり、チャートだけ見て、あるいはSNSやメディアで話題の銘柄に飛びついて安易に売買しようとしがちです。そして海千山千のプロトレーダーとの勝負に負け、あるいは市場の養分となり、資産を失って市場から退場していくのです。
長期で考える目線を持っていれば、少なくともこうした「飛び乗り自殺」のような失敗は防げるはずです。
長期で保有することには、もっと確実に資産形成につながる大きなメリットがあります。それが③の「複利」効果です。
複利とは「利息が利息を生む」という考え方で、元本の上昇だけでなく、上昇した分の上昇の上積みも期待できるということです。
複利効果は長期になればなるほど加速度的に高まるもので、大きな資産形成には絶対に欠かせない要素です。
世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏はこの複利効果を「スノーボール(雪玉)」にたとえてその大切さを説き、かの天才アインシュタインは「複利は人類の最大の発明」と呼んでいます。
短期で利確・損切りを繰り返しているうちはまったく実感できませんが、この複利を長期資産形成の要素として考えることで、短期売買の失敗リスクを避けることができるでしょう。
②積立投資戦略ーー購入価格を平準化させ、株価下落の直撃も軽くする
つみたてNISAの普及により、積み立て投資がいかに資産形成に適しているかを実感している投資家が増えているのではないでしょうか。
積立投資のメリットは大きく分けて3つあります。
(1)投資に回せる資金が少ない人でも無理なく資産形成できる。
(2)回数を分けて投資をすることで下落リスクを分散することができる。
(3)ドルコスト平均法により購入金額を平準化できる。
(1)は特に説明不要でしょう。少額でもいいから月々の収入の一部を積立投資に回すことで、長期でまとまった資産を形成することができます。
今回大事なのは(2)と(3)です。
投資初心者で多い失敗の1つに、退職金などまとまった資金を一度に全部投資に回したせいで一気に資産を減らしてしまうことが挙げられます。
たとえばEV(電気自動車)の雄として知られる米国のテスラ。
数年にわたって株価が急上昇してきましたが、2021年11月の高値414ドルを最後に2022年は一気に100ドル付近まで下落してしまいました(下図investing.comチャート参照)。
仮に最高値付近の1株400ドルで退職金20万ドル分(約2500万円)、500株を一気に購入した場合、持ち株の評価額は2022年末には4分の1の5万ドルに目減りしたことになります。
これに対して、毎月1万ドルずつ20回に分けてテスラ株を積み立て購入していたとしたらどうだったでしょう。
400ドルでは25株しか買えませんが、その後株価が300ドルの時には33株、200ドルの時には50株、100ドルでは100株と買う株数を増やすことができます。
また、購入平均単価も下がります。20回買い終えたときの購入平均が250ドルだとすれば、退職金20万ドルでトータル800株買えた計算になり、株価が100ドルに下落しても資産の評価額は8万ドルにとどまります。
2022年はずっと下落基調だから減るのには変わりありませんが、購入平均株価が400ドルで500株しかないのと、250ドルで800株あるのとでは、その後の株価上昇局面で回復力がまったく違ってきます。
投入資金である20万ドルに資産が戻るには、前者は株価が400ドルに戻らないとなりませんが、後者は250ドルまで上がれば復活でき、さらに400ドルまで株価が回復した場合、資産は32万ドル(約4000万円)まで資産が増えていることになります。
上下に動く株を積み立てによって購入単価を平準化していき、1度に買うより株数を増やしていく方法を「ドルコスト平均法」と呼びます。
もちろんこれは結果論であり、株価がずっと右肩上がりの上昇トレンドだったらこのドルコスト平均法は機能せず、最初に一気に購入した方がよかったということになります。
しかし、株式は一気に上昇するより一気に暴落・急落するほうがずっと多いので、資産防衛の観点からもこのドルコスト平均法を生かす積立投資が有効なのです。
③分散投資戦略ーーリスク分散をはかり、集中投資による資金損失を回避する
資産を守るために「分散投資」がとても大切なことは、ある程度の投資経験のある方ならもう常識でしょう。
ところで、「分散」には以下の4つのやり方・種類があるのをご存じでしょうか。
- 銘柄分散ーー投資先の銘柄を複数に分散する。セクター(業種)も分散するのが理想。
- 地域(貨幣)分散ーー日本株(円)、アメリカ株(ドル)、中国株(元)など国際分散をはかる。それぞれ異なる通貨の資産に分散できる。
- 資産分散ーー株式のほか、債券(国債・社債)、金、不動産、現金など資産クラスを分散させる。
- 時間分散ーー資金を一度に全部投資せず、時間をかけ、何回にかに分けて投資する。つみたて投資もこれにあたる。
分散というとふつうは銘柄分散ばかりが話題となりがちですが、資産防衛のためにはこれだけの分散を意識しないといけないということです。
資金がまだ少ない投資初心者はここまでの分散は考えなくてもいいですが、S&P500や全世界株、日経平均(日経225)などインデックス連動型の投信の積み立てには、セクター分散を含む銘柄分散と時間分散をすでに実行していることになります。
投資初心者が無理せず資産を形成するのにインデックスファンドの積立が最適な理由がおわかりいただけると思います。
前項でも書きましたが、投資初心者は1つの銘柄、1つの投資アイデアに持ち金のすべてを一度につぎこむ失敗を冒しがちです。集中投資は効率がいい半面、資産を大きく失うリスクが高まることも肝に銘じておきましょう。
以上、3つの投資戦略ーー「長期」「積立」「分散」投資を分解してそのメリットを見てきましたが、これらの発想が頭にない投資初心者がどんどん投資に失敗して資産を失っているのです。
日本証券業協会が2021年に約7000人を対象に実施した全国調査によると、投資リスクを減らすこれら3つの投資方法(「長期投資」「積立投資」「分散投資」)をきちんと認識している人はわずか15%に満たず、全体の4分の1が「聞いたことがあるが詳しくは知らない」と答えています。
証券投資に関する全国調査(調査結果概要)より
みなさんそれだけリスクの高い投資をしているからこそ失敗も多くなるわけで、この3つの投資方法をきちんと実践できればそんなに失敗はしなくて済むはずです。
失敗後のリカバリー(回復)方法と塩漬け株(含み損)解消法
失敗してしまったものは仕方ない。失った資金が戻ってくるわけではありません。
ここは心機一転、失敗を正しいやりかたで回復し、次の投資に向かっていきたいものです。
この章ではそのリカバリーのノウハウとして次の3つを説明します。
①潔く負けを認め、同じ銘柄で取り戻そうとしない
②少額投資に切り替えてメンタルをきたえ直す
③すべて現金に戻して相場を休む
そして最後に、
について伝授いたします。
①潔く負けを認め、同じ銘柄で取り戻そうとしない
前章でも強調しましたが、初心者が一番やってしまいがちな失敗として、同じ銘柄に固執しすぎることが挙げられます。
ほかにいくらでもいい銘柄があるのに、その銘柄への投資に失敗したことを認められず、回復の見込めない株を放置し、あるいはナンピン(含み損の株を買い増すこと)してさらに傷口を広げてしまうことがあまりに多いのです。
株価が思ったように上がらない理由はいろいろあり、ファンダメンタルズ分析をしっかりやっていて、銘柄の事業の成長性に問題はなく外部要因で下がっているような場合は何年も保有し続けるのもありです。
しかし、分析もしておらず、下落の説明もきちんとできない投資は危険すぎます。一途になりすぎると対象の欠点が見えてこないからです。
1章の⑤で少しふれましたが、資金力がない人が同じ銘柄に固執するあまり「信用二階建て」(現物で保有している銘柄を担保に同じ銘柄を信用買いすること)に手を出すことは最悪の結果を招きます。
一途に思う気持ちが強ければ強いほど、うまくいかなかったときの打撃が大きくなるのは、失恋と一緒。
日本株ならほかに3,800銘柄あり、世界に目を向けたらさらに多くの投資先があなたを待っています。
ここは潔く負けを認めて、くよくよすることなく新しい恋(銘柄)をさがすべきです。
②少額投資に切り替えてメンタルをきたえ直す
投資初心者が大きな失敗を出すのは、ボーナスや退職金など大金が手元に入り、気が大きくなり、それを1つの投資先にいっぺんに賭けてしまうときです。
またいくら銘柄分散を守っていても、相場が悪い時に大金を一度に投資したら一気に損失がふくらむことになります。
もともと株式、特に個別株はリスクの大きい投資であり、自分の持てる資産を全部投じるのは危険なのです。
あまりに失敗続きの場合、投資の基本が欠落してしまっている可能性があり、大きなお金で投資を続けるのは得策ではありません。ここはいったん今あるポジションを解消し、冷静になって少額投資に切り替えてみる必要があります。
日本株の場合、通常は単元株(100株単位)で売買しなくてはなりませんが、証券会社によっては「S株」「単元未満株」と称して1株から購入できるサービスがあります。また米国株ならふつうに1株から購入が可能です。
たとえば5万円を軍資金にすれば、1銘柄5,000円ずつ10銘柄買う、といったこともできます。
この少額投資で十分値動きに慣れ、買い増しや損切りで全体がプラスになっていくことを確認してから、徐々に投資額を増やしていくと大金を失うような失敗が減っていくはずです。
株式投資では銘柄や相場分析のほかに、投資する自分のメンタルにもかなり左右されます。少額投資で実験をくりかえすことで、このメンタルを鍛え直すことにもなります。
③すべて現金に戻して相場を休む
上記②の小額投資でもどうしてもうまくいかない場合、株式投資はまだ早い、あるいは相場環境が悪いのだと割り切って、すべてを現金に戻して投資からいっとき手を引く勇気も必要です。
思い切って投資資金を引き揚げることで、いったん熱くなった頭をクールダウンさせ、相場の回復を待つのです。
夏と冬のバケーションには機関投資家が休みをとり、相場が閑散とする時期があるので、そうした時期に合わせて一緒に休むのも手です。
「休むも相場」という格言もありますが、ポジションを持っていなくても、いつでも戻ってくる用意があるかぎり、それも立派な投資行動なのです。
休んでいる間も銘柄探しや相場観察などやれることはたくさんあります。
また、インデックスファンドなどの定期積立は休んでいる間でも止めずに継続しましょう。
④「塩漬け株」の正しい考え方と損切り手順
大きく含み損になって切るに切れなくなった株を「塩漬け株」と呼びます。理由は後述しますが、こうした塩漬け株が自分のポートフォリオに増えることは「百害あって一利なし」です。
長期投資だから下落することも織り込み済み、という場合は含み損でも保有し続けていてかまいません。
でも、短期でトレードのつもりで購入したら下落して、いつか上がるだろうと放置していたら含み損が拡大して損切りできなくなったという場合、その塩漬けは間違ったポジションと言わざるえません。
ではこうした塩漬け株はどのように扱ったらいいのでしょうか。
以下はわたしたちの投資スクールの代表の考え方をもとに、筆者の失敗経験をもとにアレンジを加えた「塩漬け株の対処方法」です。
(手順1)塩漬け株のある人は、それを損切りしたらどれだけの資金が残るかを計算してみる(現在の株価×持株数)。
(手順2)もともと投資した元金は忘れ、損切り後に残るお金を自分の再スタートの資金と考える。
(手順3)その資金で損失を被った株をもう一度買いたいか、もっと別の株に投資した方がいいかを考える。
(手順4)その株をまた買いたいなら、いったん損切りして同じ株を買い直す。
(手順5)別の株に投資したほうが資金が早く増やせると思うなら、損切りしてそちらに投資先を乗り換える。
だいたいこんな手順で考え、損切りするかどうか判断すればいいでしょう。
株式市場にはほかにたくさんの有望で魅力的な銘柄や投資手法があるのだから、業績悪化でいつまた上がってくるかわからない株に資金を塩漬けするのは新たな投資への「機会損失」となります。また、含み損株は持っているだけで憂鬱になるため、メンタル的にもよくありません。
なので、間違ったポジションは一刻も早く損切りで解消し、残った資金をもっと最適な場所に置いてあげることが大事だし、なによりポートフォリオに大きな含み損の額がなくなるだけで心が軽くなります。
また、同じ株を持っておきたいという人も、一度損切りしてから同じ数を買い直すほうがお得です。なぜなら損失を確定すれば、その分は別の株を利確した際に「損益通算」され、税金が戻ってくるからです(「特定預り」の場合は自動的に、そうでない場合は確定申告によって相殺されます)。
これを株の「損出し」といいます。よりくわしくは以下の記事をお読みください。
まとめ 失敗理由を分析して正しい投資行動を
投資初心者の株式投資における失敗パターンと失敗しない投資対策、失敗への対処方法などをまとめてきましたが、いかがだったでしょうか。
ここで内容をおさらいしておきましょう。
①投資目標が設定できていないーー強欲と恐怖に流されてしまうパターン
②投資先の選び方・買い方が雑すぎるーーフンイキ買い、イナゴ買いで高値づかみするパターン
③銘柄だけ見て相場全体が見えていないーー下落の理由がわからずに売買を続けてしまうパターン
上記で見てきた通り、投資初心者は経験もないのに自分の投資方法や投資先を過信しすぎて失敗するケースが多く、またその失敗理由もきちんと理解しないまま別の投資でも同じ過ちを繰り返すことがよく見られます。
投資をする上で失敗はつきものですが、初心者は成功することばかり考え、失敗に対処する知識も行動力もありません。
こうした投資知識は長く経験をつんで意識的に学んでいかないとなかなか身に着かないものです。
この記事を読んだみなさまの投資がこの先、失敗を繰り返すことなく、実りの多いものとなりますよう、心から願っております。
投資に失敗はつきもの!その経験から学ぶことが大切なんだね
いつまでもひきずってちゃダメだよ!
わたしたちの投資スクール、GFS(グローバルファイナンシャルスクール)では、お金と投資に関するあらゆる知識を2,000本以上の講義動画でいつでも好きな時に学ぶことができます。
銘柄選びのためのツールや投資をシミュレーションできるゲームなど生徒向けのサービスも多数そろえており、30,000人以上の生徒が日夜投資経験を高めるために学んでいます。
長い目で見て、これらの投資・金融知識は必ずこれからの人生の大きな糧(かて)となるはずです。
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