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最近大きく盛り上がりを見せている「インバウンド」業界
海外から日本を訪れる「訪日外国人」の数は、コロナ禍では大きく落ち込んだものの、その後は回復どころかさらに増え続けています。
日本政府観光局(JINTO)の統計によると、2024年の1年間の訪日外国人数は合計で36,869,900 人。年間で 3,600 万人を突破し、過去最多を更新したというから驚きです。
ニュースなどでも、インバウンド効果による観光各所の賑わいの様子が報道されていたり、普段の生活の中でも、街中で海外観光客が頻繁に行き交う様子を目の当たりにするなど、肌でインバウンドの盛り上がりを感じ取っている方もいるはずです。
そのようなインバウンド業界の盛り上がりを背景に「きっとインバウンド関連銘柄の株価も、上昇が期待できるのではないか」と考え色々探している、という人も多いのではないかと思います。
しかしながら、探してみるとその数も決して少なくなく、中には「どのような点でインバウンド関連なのか?」と思うような企業がヒットすることもあって、どの点に注目すべきなのか迷ってしまう場面も多いでしょう。
そこで本記事では、インバウンドやインバウンド株について改めておさらいし、おすすめのインバウンド株や、インバウンド株を選ぶ際の注意点などについて深掘りしていきます。
おすすめのインバウンド株を探していた方はもちろん
- そもそもインバウンドって何?
- インバウンド株を選ぶ際はどんな点に注意すればいいの?
とお考えだった方にも、参考になると思いますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
「インバウンド株」を知ろう
まず始めに、「インバウンド」や「インバウンド株」について簡単におさらいしていきましょう。
・インバウンドは「海外の人が日本に来る」こと
そもそも「インバウンド」とは、何を指すのでしょうか。
本来の意味でのインバウンドは「外から中に入ってくること」を指します。国家間を行き来するものには様々ありますが、特に日本経済や日本株投資の文脈においては「人」にフォーカスした内容で使われることがほとんどです。そのため冒頭でお伝えした「訪日外国人」との概念になります。
(なお、海外の方からすると、インバウンドは基本的にモノの動きを指すことが多いため、少し違和感がある話かもしれませんね)
端的に言えば、海外の人が日本に旅行に来ること、もしくは海外から旅行で日本に来た人そのものが、ここで言う「インバウンド」です。また、派生して「海外から訪れた人による消費活動」もインバウンドと呼ぶこともあります。
「インバウンドが盛り上がっている」とは、つまり「海外から日本に旅行で訪れる人がとても増えている」または「海外からの観光客による需要が増加している」と言い換えるとイメージしやすいかもしれません。
インバウンド株とは、そうした訪日外国人観光客の増加、消費活動の活発化によって業績上昇の恩恵を受けやすい銘柄のことを指します。
・「インバウンド」といっても範囲は広い
前項で触れたインバウンド株、つまり「インバウンド需要の増加によって業績上昇の恩恵を受けやすい銘柄」ですが、具体例としては以下のセクターが挙げられます。
- 空運、陸運
- 旅行業
- ホテル業
- 百貨店
- レジャー・アミューズメント
- 外食産業
- 小売業
まず、飛行機や電車の需要が増えることは誰もがイメージしやすく、また、旅行となれば当然「旅行プラン」などを利用する方もいるはずです。
そのため、「空運・陸運」や「旅行業」は、まさしくインバウンド株と言えます。
そのほか、観光で日本の飲食を楽しんだり、日本でしか手に入らないものをお土産に購入するなど、「外食産業」や「小売業」もインバウンド需要が大きく影響することは、比較的想像に固くないでしょう。
少し意外かもしれないのが「百貨店」。先述のお土産の側面はもちろんありますが、「日本の百貨店なら、ほぼ確実に正規品を購入できる」とのことで、ハイブランド品の売れ行きが好調になることから、インバウンド株として分類されることも多いです。
上記はあくまで一例ですが、「インバウンド」と一言に言っても色々な範囲に影響がある、ということをぜひ覚えておきましょう。
おすすめインバウンド株5選
前章ではインバウンドやインバウンド株についておさらいしたところで、本章ではおすすめのインバウンド株を5つ、ピックアップしてみます。
なお、あくまで参考の一つであり、投資銘柄を推奨する趣旨ではありませんので、あらかじめご注意ください。
・ワシントンホテル(ホテル業)
- 時価総額:106億円
- PER:8.84倍
- PBR:1.28倍
- ROE:11.8%
- ROA:2.5%
- 一株あたり配当:10円
「ワシントンホテルプラザ」と「R&B ホテル」を全国展開しているワシントンホテル。1964年創業と、会社の歴史はありますが、上場したのは2019年。比較的最近の上場と言えます。
元々、上記2ブランドはビジネスホテルとしての展開であり、国内のビジネスパーソン向けサービスが主でした。しかし、コロナ禍を機に抜本的な改革に目を向け、国内レジャーやインバウンドでの宿泊客向けに部屋のデザインや機能を変更するなど、直近で積極的なインバウンド施策を展開しています。今後もさらなるインバウンド需要の取り込みにより、業績上昇や増配の可能性も考えられるでしょう。
・HANATOUR JAPAN(旅行業)
- 時価総額:149億円
- PER:9.98倍
- PBR:5.21倍
- ROE:98.9%
- ROA:12.6%
- 一株あたり配当:0円 (次期予想30円)
主にアジア圏からの旅行客に対して、インバウンド手配事業を行っているHANA TOUR JAPAN。まさにインバウンド専門企業と言えます。インバウンド旅行商品の企画や各種手配、移動・宿泊までをグループ内でワンストップで提供できることが、同社の強みと言えます。また、「団体 or 少人数」、「ショピング or アクテビティ」など、非常に多様化している旅行ニーズにも対応できる機動力も、同社の強みの一つです。
現状ではROEが突出して高く、財務レバレッジがかなり効いている状態と言えます。「業績悪化時はダメージが大きくなってしまう」という部分は懸念事項ですが、今後のROE適正値への改善や復配の可能性なども含め、長期目線で監視しておくのも良いかもしれません。
・高島屋
- 時価総額:4146億円
- PER:10.9倍
- PBR:0.84倍
- ROE:7.3%
- ROA:2.5%
- 一株あたり配当:18.5円
言わずと知れた、老舗国内百貨店の一つ高島屋は、インバウンドにおいて百貨店事業が好調。第1章でもお伝えしましたが「ハイブランドの正規品をほぼ確実に手に入れることができる」とのことで海外観光客から非常に人気があります。また、それ以外にも直近で進んでいる円安の影響により、「良いものをより安く購入できる」という文脈になりやすい側面もあるため、より一層需要が加速している状況とも言えるでしょう。
会社規模がすでにかなり大きいため、短期間での急成長は狙いにくいかもしれませんが、PERやPBRが比較的割安であることや配当も安定して出ていることからも、今後も長期目線で観察する妙味のある銘柄と言えます。
・力の源ホールディングス(外食産業)
- 時価総額:365億円
- PER:17.00倍
- PBR:3.55倍
- ROE:25.9%
- ROA:12.7%
- 一株あたり配当:20円
力の源ホールディングスは、有名ラーメン店「一風堂」を全国展開する外食企業です。海外進出も果たしており、その海外売り上げの寄与も大きく業績も堅調に伸びています。
海外進出しているので、日本以外でも同社の食事を体験することはできますが、やはりインバウンドにおける「本場の日本で食事を楽しみたい」とのニーズは大きく、また、こちらも円安の影響で、よりリーズナブルに楽しめるとの文脈にもなりやすいです。増加するインバウンド需要に答えるため、今なお都心などを中心に店舗展開が進んでいます。
ROEやROAも比較的高水準であり、株主優待や直近での特別記念配当の実施など、株主還元も積極的に行っているため、長期投資のスタイルの投資家に人気があります。
・トレジャーファクトリー
- 時価総額:415億円
- PER:15.39倍
- PBR:4.14倍
- ROE:29.4%
- ROA:12.6%
- 一株あたり配当:28円
リユース事業を行うトレジャー・ファクトリーもインバウンド株としておすすめの一つです。リユース事業とは、端的に言えば「リサイクルショップ」の運営。一見すると、インバウンド需要との繋がりがないようにも思えますが、実は「日本のリユース品」は海外でも
人気。価格がより安いのはもちろん、保存状態の良さや「メイドインジャパン」の安心感を得られるなど、注目度も高いのです。高価格帯のハイブランド品も、比較的品質の良いものを安く購入できるメリットもあり、リユース品の購入を目的の一つに日本へ旅行に来る人もいるというから驚きです。
そうしたインバウンド需要をうまく取り込み、同社の業績も堅調に上昇しています。特に配当は、前々期18.5円から前期28円と、大幅な増配も達成していて、積極的な株主還元の姿勢が非常に投資家からも注目されています。ROEやROAも高い水準であり、今後の増配の予想もあるため、今後の成長にもぜひ期待したい企業の一つであるといえます。
インバウンド株を選ぶ際の注意点
前章でおすすめのインバウンド株について取り上げましたが、もちろん他にも好調なインバウンド株は色々あるはずです。
「自分でも探してみよう」と思った方は、色々探してみて、各種指標やビジネスモデルなどを確認してみると良いです。
ただ、インバウンド株を選ぶ際には「注意しておいた方がいい」という点もあります。
具体的には以下の2点です。
- 需要の動向を読みとる
- 為替の影響で、業績が変動する可能性がある
一つずつ説明していきます。
・需要の動向を読みとる
まず一つ目に注意したいのが「インバウンド需要の動向」です。
訪れる海外の方が「日本に来てどういったことを楽しみたいのか」といったトレンドのようなものは一定でなく、常に変化するものです。
例えば、2015年前後に顕著にみられたインバウンド需要は、「モノの消費や購入」(いわゆる爆買い)がメインの需要と言われています。もちろんそれも、今なお大きなインバウンド需要の一つであることは間違いありません。しかし2022年以降は「コト消費」(体験など)に対する需要も旺盛に広がっています。例えば、観光に行った先で、現地でしか得られないものにお金を使う、など「コト消費に付随してモノ消費がされる」という文脈も多いです。
また、今後もインバウンドの盛り上がりが予想される中で、こういった需要の動向がまたさらに変わる可能性も十分考えられます。そうした需要の変化の中、企業によってはこれまで好調だった業績を維持できなくなることもあるかもしれません。
そのため「どのようなことがインバウンド需要の中心なのか」と需要の動向を読み取った上で銘柄を選定、ポートフォリオを構築することが望ましいといえます。
・為替の影響で、業績が変動する可能性がある
二つ目に注意すべきは「為替の影響」です。
インバウンド株は為替の動きに大きく影響を受けます。基本的には、円安が続くと海外の人にとっては安く日本に来ることができるため、インバウンが活況となり、反対に円高になると需要が落ち込む傾向があります。特に2023年以降、米ドルに対して急速に進んでいる円安がインバウンド需要にプラスに働いている側面も大きいです。
しかし、今後為替はどのように動くかは分かりません。円高方向に動くことももちろん考えられるわけです。その場合、連動してインバウンド需要が落ち込む可能性も高いといえます。インバウンド株を購入する場合、こういった「為替変動によるリスクがある」ということを前提に検討する必要があります。この点を覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたか。
現在の活況もさることながら、今後の盛り上がりも大いに期待できるインバウンド株ですが、「インバウンド」の中にもさまざまな業界や分野があります。「インバウンドのどの部分のニーズを満たしている企業なのか」と言った深掘り、需要トレンドの変化や為替の影響など、注意すべき点を意識しつつ、インバウンド企業の強みを分析することが大切です。
おすすめしたインバウンド株もあくまで参考ではありますが、ぜひ今後の投資戦略へお役立て頂けましたら幸いです。