貯金500万の55歳が10年で資産4000万円を目指す最適な方法

貯金500万の55歳が10年で資産4000万円を目指す最適な方法

老後2000万円不足問題が大きな話題となってから、この金額を老後資金の目安としている人も多いと思います。

でもこの数字、定年後の夫婦の家計をモデルに試算した1事例にすぎず、全員に当てはまるものではありません。

最近この額に異を唱える別の意見が出て話題となりました。

それは「老後資金は4000万は必要」というものです。

設定は同じでも、仮に3.5%のインフレ(物価上昇)が続いたら、必要額は倍の4000万円になると試算されたのです。

平均3.5%はともかく、物価上昇が続く可能性は高く、長生きすればするほどこれが現金の価値を目減りさせていくことは確かでしょう。

そこでこの記事では、今55歳の人が、2000万円ではなく4000万円必要になるという前提に立ち、この老後資金を65歳までの10年でどのように作っていけばいいのか、その具体案を探っていきます。

資産運用に興味がある方へ
私たちグローバルファイナンシャルスクール(GFS)では、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 簡単30秒 LINEで診断!「お金の健康診断」はこちら
≫ 無料講座:お金のプロが教える「毎月収入を得る投資の始め方」

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

①50代が知っておくべき老後資金の目安

4000万円という大ざっぱな数字で検討する前に、まずは本当に必要な老後資金がいくらになるのかを考えていきましょう。

1-1 必要な老後資金のベースを計算

考え方の基本となるのは、1か月の家計の支出と収入の差額です。

1ヶ月に必要な支出を計算し、そこから年金収入など1か月の収入の合計を引きます。

これがマイナス(収入の方が大きい)なら、あなたは年金収入の範囲内で暮らせることになり、老後資金は必要ありません。

でも老後2000万円不足のモデルでは月々約5万円の不足が生じることになっており、これを前提に計算を進めていきます。

下記が2000万円不足を指摘したレポートの中で示されたモデル夫婦の家計です。

 

老後資金2000万円不足問題

 

月々5万円不足なので年間では60万円。

100歳まで生きるとしたら余命は35年なので、60✕35=2100。

これが老後に2000万円不足するという根拠でした。

もし今の時点で貯金があればこの額から貯金額を引きます。

それがあなたが65歳までに必要になる老後資金ということになります。

計算式:(支出-収入)✕12ヶ月✕35年-現在の預貯金額

1-2 独身か夫婦か、持ち家か賃貸かで支出を調整

上の項目では老後2000万円不足問題のモデルとなった夫65歳・妻60歳の夫婦のケースで計算しています。

でも、独身か夫婦かでもちろん必要な老後資金は変わってきます。

一般的に独身のほうが支出が大きくなるという傾向があるようです。

また、モデルのケースはおそらく持ち家の夫婦が多く、家賃がほぼかからない前提となっています。

が、実際は賃貸住まいの人はこれに月々の家賃がかかってきますから、支出がさらに大きくなりますね。

そのあたりを考慮に入れて、あなたにとって本当に必要な老後資金はいくらなのかを計算しましょう。

1-3 インフレ(物価上昇)を考慮に入れると必要な老後資金はさらに増える

上記の計算式はあくまで今の時点から物価が変動しない前提の単純計算です。

しかし、みなさんご存じの通り、物価は年々上昇しています。

モノの値段が上がるということは、実質的に現金の価値が減る(購買力が低下する)ことを意味します。

つまり、100歳までの年月にどれほど平均物価が上昇するかを考慮に入れないと、本当に必要な老後資金は導き出せないのです。

現在世界の先進国では物価上昇の目標を年2%と定めています。

ところが欧米各国はコロナ禍収束後、一気に5~7(●要確認)%もの物価上昇率を記録しました。

日本でも、低いインフレ率をようやく脱し、2%を上回るようになっています。

そこで、インフレ加速と目標の2%の間を取り、年平均3.5%という少々高めのインフレ率をもとに必要額を考えてみます。

その場合、65歳から35年後、物価はどのようになっているでしょうか。

下の表は複利計算で100万円がどのように増える(どう値上がりするか)を計算したものです。

年3.5%の物価上昇

(複利計算「Ke!sanサイト」より)

これで見ると、100万円は233万円に増えています。

つまり、年3.5%のインフレなら35年後の支出は65歳時より約2.3倍に増えるということ。2000万円不足なら実際は4600万円不足になるという計算です!

ただし、実際には年金支給額も物価上昇に合わせて増額していくはずなので、それを差し引いて丸めた数字が「4000万円不足」となったのだろうと想像します。

ちなみに物価上昇率の平均が2%なら+100%(2倍)で済みます。

一方、平均5%ならなんと+450%(4.5倍)となります。こんな高いインフレ率が続くと、老後破産者が続出しそうです。

②55歳から10年で4000万円を目指す方法

ここからは老後資金が4000万円不足することを前提に、いったい平均的な55歳の人がここからどのようにこの不足する金額を作っていけばいいかを考えていきます。

その前に55歳の資産や入金力(収入から投資に回せるお金)がどれくらいあるか前提を設定しておきます。

2-1 55歳のつみたて入金力と保有資産額

65歳までの積み立て入金力

定年は人それぞれですが、現在55歳でまだ資産が全然ない人は、できるだけ長く働く必要があります。

そこでここでは、65歳まで10年間働くこととし、収入のうち毎月5万円を積み立て投資に回すことにします。

55歳の保有資産(中央値)

50代の保有する預貯金額を世論調査でみると、中央値は700万円となっています。

世代別・金融資産保有額(単位:万円)

(知るぽると「令和5年 家計の金融行動に関する世論調査」より)

このうち「生活防衛資金(毎月の支出の半年分)」として約200万円を現金のままプールするとして、ここでは残る500万円を個別株投資に回すこととします。

55歳でこの貯蓄額がない人は、とりあえずまとまったお金をためましょう。

2-2 つみたて投資と個別株投資を分けて目標額を算出

さて、55歳の資産状況と収入見込みを仮定した上で、実際に4000万円をどうつくるかシミュレーションしていくことにします。

戦略としては①収入からの月5万円はインデックスファンドの積み立てに回し、②現在ある資産500万円は個別株投資に回します。

いずれも、NISAの積立枠(年120万円✕5年分)と成長投資枠(年240万円✕5年分)をフル活用していくこととします(譲渡益税や配当税を考慮するとややこしくなるため)。

月5万円積み立て投資戦略

積み立て枠の投資対象は、人気の高いS&P500インデックスファンド(投資信託)とします。

現在オルカン(全世界株投資)と人気を二分するインデックスファンドですが、ここはやはり実績と期待リターンからS&P500に軍配を上げます。

S&P500は世界経済をけん引する米国の大型成長株500銘柄で構成されるインデックス(株価指数)で、長い歴史があり、年平均9%のリターンを出してきた実績もあります。

もちろんすでにオルカンに投資をしている人は変える必要はありません。だいたい平均7%のリターンが見込めます。

ただし、オルカンは構成銘柄が約3000と分散がききすぎている上、構成比の半分以上が米国の大型株なので、仮に米国株が急落したら同じように急落すると考えたほうがいいでしょう。

S&P500(リターン9%)、オルカン(同7%)を積み立てシミュレーションしたのが下記の表です。一番右は銀行預金(リターン年0.02%)で置いておく場合。

月5万円積み立て投資

 

(楽天証券「かんたん積立シミュレーション」より)

S&P500の最終積み立て額は複利計算で約970万円、オルカンは865万円。わずか2%ポイントのリターンの差とはいえ、10年もすると100万円以上差がつくんですね。

ちなみに銀行に現金のまま預けているだけだと、10年で1万円増えるだけです(笑)。複利って偉大です。

計算をしやすくするため、月5万円ずつS&P500インデックスファンドの積み立てをしていった場合、ざっくり1000万円の資産ができると考えます。

資産500万円分の個別株投資戦略

4000万円のうち1000万円を積み立て投資でつくるとすれば、残る目標金額は3000万円です(4000-1000)。

元金500万円を10年で3000万円にするには、だいたい年平均20%のリターンが必要となります。

500万円を3000万円にするリターン

(複利計算「Ke!sanサイト」より)

このリターン20%は、投資信託の積み立てやほかの資産購入ではなかなか達成が難しいと思います。

これを達成するには、リスクとリターンが大きい個別株で投資していくのが現実的と思います。

つまり、500万円で3000万円をつくるには、個別株で年平均20%ずつ資産を増やしていくことを目標とするのが最適解です。

 

③個別株でリターン20%をどう目指すか

ここまで、月5万円の積み立て投資で1000万円を作り、残る3000万円を個別株の株式投資で年20%ずつ増やすという目標を設定できました。

最後の章では、株式投資で20%のリターンをどう実現していくか、いくつかのアイデアを現実に落とし込んで提案していきます。

3-1 提案①過去の株価成長率が年20%超の安定成長株5銘柄に投資

まず最もリスクが小さい安定成長株への投資を考えます。

インデックス投信積立のリターンが年9%とすれば、よりリスクの高い個別株のリターンは最低20%以上のリターンはほしいところ。

そんな株見つけられるの?という不安な声が聞こえてきそうですが、その心配はご無用です。

現在日本にはおよそ3800社の上場企業があります。その中から20%程度のリターンを実現している銘柄はゴマンとあると思っていいでしょう。

簡単に探すには、『会社四季報』や『Yahoo!ファイナンス』などのサイトで長期チャートを見て、株価が年平均20%以上伸びている銘柄をピックアップすることです。

厳密に年20%ずつ伸びている必要はありません。景気動向や個別の事情などによりどうしても株価が伸びない年もあるからです。

なので、多少凸凹(でこぼこ)でもおおむね右肩上がりに推移しているチャートを探し、平均して+20%、5年で+約150%(20%の5年複利)の銘柄を探すイメージでいいでしょう。

こうした株の業績は売上高・営業利益・1株利益(EPS)も上がっているはずなので合わせて確認することが大切です。

この場合、無名の中小企業より有名な大企業のほうが投資先として適しています。

テレビなどでよくCMを流している企業、実際に店舗やサービスをよく利用する企業、家にある家電や寝具のメーカーなんかでいいのです。

もうこれ以上大きくなりそうにない大企業でも、5年あればけっこうな数の銘柄で株価が倍になっています。

下記は時価総額日本一のトヨタの5年チャートです。ざっくりですが株価が2倍以上(1450円→3270円)になっています。

どんな企業も日々利益を追求し、そのために大勢の従業員が朝から晩まで働いて富を生み出し続けています。

株式投資とは本来、そうした利益成長する企業にお金を投じて増やすことなのです。

事業の内容も業績も知らず、チャートだけ見て下から上に値幅を取りにいく「投機」とはその点が異なります。

こうした安定した株価成長を続ける企業を5つ厳選し、できるだけ均等に100万円ずつ投資をします。

あとは、平均20%以上の株価上昇が見込めるようなら、10年間ほったらかしでもかまいません。

何らかの事情で業績悪化するなど、想定した安定成長が崩れた場合、あるいは購入時から10%以上株価が下落した場合は、早めに売却(損切り)して別の銘柄に資金を移しましょう。

3-2 提案②高配当利回り+株価成長率が20%超の安定成長株5銘柄に投資(配当は再投資)

成長する企業の基本がわかったところで、もうひとつの「+20%」銘柄を見つける方法をご紹介します。

それは高い配当を株主に還元してくれる銘柄を探すことです。

その場合の配当利回りは3~5%前後。これと合わせた株価成長が合計で20%以上あればいいということになります。

高い配当を継続して出せるのは、すでに大きな成長は終え、安定した利益を継続して稼ぎ続ける成熟した企業です。

新規参入しにくい業界やサービスの事業者。特に銀行・保険・通信・海運・鉄鋼・資源・エネルギーなどの企業に高配当銘柄が多いですね。

急成長が終わったとはいえ、安定した配当を出し続けるには継続的な売上や利益の成長が不可欠です。

また、利回りは年3~5%前後と書きましたが、これより高い企業には注意が必要です。

配当利回りは「1株あたりの利益(EPS)÷株価×100」で計算しますから、分母の株価が小さくなれば数字が高くなりますよね。

つまり、配当利回りが高すぎるのは、業績悪化で株価が下落し、見かけの利回りだけ高くなっている可能性があるのです。

こうした企業がいずれ減配や無配に転落すると、配当目当ての株主がこぞって逃げていき、株価が一気に急落するので大変危険です。

こうしたあぶない高配当銘柄を避け、安定的に高い配当を出している銘柄を見つけるコツがあります。

それは、配当額が少しずつ増えている(増配している)企業を探すことです。これを「累進配当」といいます。

配当が伸びているということは、少しずつ利益も伸びていることを意味します。

下は高配当銘柄として人気が高いKDDIの業績と配当額の推移です(SBI証券アプリ/四季報業績欄)。

四季報KDDI業績欄

2020年3月期から26年3月期(予想)まで、利益がほぼ毎年成長し、それにつれて1株当りの配当(一番右)も115円から150円に上がっているのがおわかりいただけると思います。

急成長はしなくても、新しい事業が順調に育ったり、インフレによる人件費や原材料高などを販売・サービス価格に転嫁できる企業が配当を上げていくことができるのです。

この配当額の推移も『四季報』やお手持ちの証券会社のアプリなどで簡単に確認できますので、ぜひ調べてみてください。

こうした高配当安定成長銘柄も100万円ずつ5銘柄に分散しましょう。買い増していって老後も持ち続け、配当を自分年金にすることもできます。

3-3 提案③年50~100%の株価成長を見込む小型成長株に分散投資

株式投資のだいご味は、一般にはあまり知られていない企業に早くから目をつけて投資し、その成長に乗ることでしょう。

短期で株で大成功する人はこの小型成長株に投資した人が多いです。

小型株の定義はあいまいですが、時価総額がおおむね500億円以下の企業を指すようです。

小型であるゆえに一度事業が軌道に乗ると1年で株価が2倍(+100%)、3倍(+200%)と急騰します。

中には数年で株価10倍になる企業もたくさんあります(「テンバガー」といいます)。

こうした急成長しそうな小型株を見つけて分散投資をし、その中の1つでも2つでも投資を大成功させることで、全体で20%以上の成長を手にするのです。

小型成長株の場合はリスクに備えて50万円ずつ10銘柄に分散投資するのがおすすめ。

投資した銘柄が全部50%成長が見込めるわけではありません。

仮に3銘柄が想定通りの+50%なら、4銘柄で株価変化なし(±0%)、残り4銘柄が-10%でも、トータルは+20%超になります。

このうち1銘柄だけでも2倍(+100%)になれば、半分の5銘柄が失敗でも目標は達成できます。

 

前項のような安定成長株と違い、小型成長株を見つけるのは簡単ではありません。

それなりに株式投資の勉強と、未来を予見する想像力や新しいトレンドを敏感に察知する観察眼が必要です。

わたしたちGFS(グローバルファイナンシャルスクール)では、年成長50%の小型成長株を見つけることを勉強の目標に置いています。

10倍株(テンバガー)となる企業には共通する条件もあります。

GFS監修の無料講座「投資の達人講座」でその一端を紹介していますので、ぜひ視聴してみてください。

累計40万人が学んだ講義動画を無料で差し上げます。

まとめ

「貯金500万の55歳が10年で資産4000万円を目指す最適な方法」、いかがだったでしょうか。

インフレを見越した目標金額に最初はたじろぐかもしれませんが、投資の勉強次第で十分目標の資産を築くことは可能です。

実際にはインフレに合わせた年金の増額が見込めるかもしれませんし、80歳、90歳と年を重ねれば支出も自然と減っていきます。

また積み立てた投資信託はそのまま老後も持ち続けることで、さらに成長を続けます。

年9%で運用できればそれだけで16年目に4000万円に増え、26年目には1億を超えます。

ですので、実際には4000万円は必要ないのかもしれません。

ただ、未来には何が待ち受けているかわかりません。

もしかしたら想定をはるかに上回るインフレが待ちかまえているもしれません。

いずれにしても、将来を見据えて一刻も早く投資を始めるのが得策であることに変わりはありません。

記事一覧はこちら

コメント