現在、実家暮らしをしている方なら、一度は
「実家暮らしなら、どのくらい貯金できていればいい?」
「一人暮らしと比べると、どのくらい貯金しやすいんだろう」
「実家にいるけど、あまり貯金ができていない…」
と、貯金について悩んだり、考えたことがあるのではないでしょうか。
特に20代〜30代の方では、「7割近くが実家暮らしをしている」というデータもあるため、上記のようなことを現在進行形で考えている人も多いと思います。
結論として、実家暮らしの場合、一人暮らしよりも貯金しやすく、収入の約4割は貯金に回せる、と言えます。
この「収入の約4割、貯金が可能」ということを聞いて、
「本当に4割も貯金できる?」
「どんなことをすればうまく貯金ができる?」
とさらに疑問が出てきたのではないでしょうか。
本記事では、そのような疑問にお答えしていきます。
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監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
実家暮らしの貯金の目安は毎月の収入の4割程度!
冒頭でもお伝えしたとおり、実家暮らしであれば、収入の約4割くらいが貯金の目安となります。
ここで「なぜ4割が目安となるのか」と気になると思うので、まずはこの部分を、収入と支出の面や、一人暮らしとの比較で紐解いていきます。
なお、これも冒頭で少し触れましたが、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に行った「出生動向基本調査」をみてみると、「18歳~34歳で親と同居する未婚者の割合は男性65.9%、女性72.1%」というデータがあり、20〜30代の約7割近くが、実家暮らしをしていることがわかります。
そのため、以降では、20代〜30代の収入や支出を中心に掘り下げていくこととします。
1-1. 20代~30代の収入の中央値は330万~400万円
まず収入から見ていきます。
国税庁の統計調査によると、20代、30代の収入の平均はそれぞれ以下の通りとなっています。
(出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」)
他の年代に比べ、20代前半がかなり低めな数字となっていますが、これは新卒入社などで、まだキャリアが形成されていない状態の方を含んでいるためです。20代後半以降をみると、一気に300万円後半から400万円後半の平均値となります。
一方で中央値について、転職サイトのdodaが実施した調査資料によると、それぞれ以下の通りとなっています。
(出典:doda「正社員の年収中央値は?男女別・年齢別・都道府県別にも解説」)
これを見ると、特に30代以降は平均値の方が高いことがわかります。
つまり、一部の所得が高い層に押し上げられて平均値が上がっているということです。
なので、実態に近い数字として、中央値を参照していくこととします。
すると、改めてですが、収入は20代で330万円、30代で400万円というのが、収入の目安基準、と言えます。
1-2. 実家暮らしのほうが一人暮らしより約5万円支出を抑えられる
続いて支出を見ていきます。
ここでは「家計調査」の単身世帯の支出結果をベースに、実家暮らしの場合と、どの程度差があるかを比較していきます。
1-2-1. 一人暮らしの支出
まず、一人暮らしの方の支出について見ていきます。
家計調査のデータを参照すると、34歳以下の単身世帯の支出は以下のとおりとなっています。
(出典:総務省「2023年家計調査」のデータより作成)
消費支出の合計は月170,281円であることがわかります。
1-2-2. 実家暮らしの支出
次に実家暮らしの方の支出を考えていきます。
まず、1-2-1の一人暮らしの方の支出をベースに、実家暮らしのため、以下の項目の支出がかからない、と想定し、支出を割り出してます。
上記を合計すると90,221円となり、消費支出の170,281円から差し引くと、支出合計は 80,060円となります。
つまり、実家暮らしの方は一人暮らしの人よりも、単純に考えると9万円ほど、支出に余裕があると言えます。
1-3. 手取り収入から貯蓄に回せる額
ここで、もう一つ、支出要素を考慮しておきます。それは「実家への入金」です。
実家暮らしの方の場合、実家にお金をいれている、という人も多いのではないでしょうか。
不動産賃貸のポータルサイト「SUUMO」が実施した「SUUMO実家暮らし調査」によると、20代〜30代の実家暮らしの方の実家への入金額の平均は「37,417円」であった、との結果が出ています。
こちらの支出を加味した場合、90,221円 – 37,417円 = 52,804円となります。
つまり、実家暮らしの方の場合、一人暮らしの方よりも、約5万円は余裕がある、ということがわかります。
さて、ここで、もう一つ、手取りに対する貯金額のデータを見てみます。
「家計の金融行動に関する世論調査」より、手取りの収入のうち貯蓄に回している金額の割合のデータを参照すると、20代〜30代の一人暮らしの方は平均して手取りの2割程度を貯蓄に回していることがわかります。
(引用元:「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](令和5年))
1-1で、20代は330万円、30代では400万円が収入の目安であることがわかりました。
これらの数字から、社会保険や税金が差引きされ、残るのが8割程度と考えると、手取りは、20代は264万円(約月22万円)、30代では320万円(約月26万円)となります。
なので、それぞれ、一人暮らしの方は20代の方では毎月約37000円、30代の方では毎月46,000円を貯蓄に回していると言えます、
実家暮らしの場合、ここにさらに約5万円の余裕があることがわかっているので、それぞれ貯金できる額としては
・20代:37000+50000=87000円 → 手取りの40%
・30代:46000+50000=96000円 → 手取りの37%
と算出できます。
つまり実家暮らしの場合、手元の収入の4割程度の貯金が可能なのです。
ここまで、少々長くなりましたが、これが「実家暮らしの場合、収入の4割が目安となる」との理由となります。
実家暮らしなのに、うまく貯金ができない3つの理由
前章の内容で、実家暮らしの方は、目安として、収入の約4割は貯金ができる、ということがわかりました。
しかし、実際、収入の4割を目安に貯金ができている方や、4割といかなくとも、一人暮らしよりは貯金がしやすい状況であることは確かである中、堅実に貯金できている、と言う方はどのくらいいるでしょうか。
実は、実家暮らしの方でも「うまく貯金ができていない」と言う悩みを抱えている人は、少なくありません。
なぜ、一人暮らしよりも貯金ができる状況なのに、お金が貯まらないのでしょうか。
その理由としては以下の3つが挙げられます。
・貯金の目標がない
・余裕があるがゆえに、個々の支出を多くしがち
・何にお金を使っているか把握できていない
もしこの記事を読んでいるあなたも、「実家暮らしだけど、なかなか貯金ができていない」という状況であったなら、心当たりがあるか、ぜひ読み進めて確認してみましょう。
2-1. 貯金の目標がない
一つ目は、貯金をする目標を設定していないことです。
貯金は本来、何か目標や目的があって行うものです。
もちろん「何のために、いつまでに、いくら」という目標であれば貯めやすいですが、「将来への備え」といった、漠然とした不安感からくるものでも構いません。小さなことでも、貯金のための目標や目的を、何か設定すべきです。
しかし、実家暮らしの場合、「お金を使って余ったら貯金しよう」と考えて、手元にあるお金をどんどん使ってしまったり、実家にいられることで、将来に対する不安感や危機感も和らいでしまい、抽象的にも目標を定めづらい、という状況が起こりがちです。
このように、目標がないがゆえ、毎月貯金する金額なども設定することがなく、結果お金を使ってしまうということが、お金を貯められない理由として考えられます。
2-2. 余裕があるがゆえに、個々の支出を多くしがち
第1章で紐解いたところから、実家暮らしの方は一人暮らしの方に比べ、かなり支出にも余裕があり、自由にできるお金が多いと言える状況です。
自由に使えるお金が多いと、つい過剰にお金を使いすぎてしまう場合が多く、これも貯金ができない理由の一つになります。
趣味や美容、外食や娯楽など、自分の好きなことや楽しめることにお金を使うこと自体は良いのですが、かといって「多少の大きな支出も気にしない!」というスタンスで、余裕な分も全てつぎ込んでしまうと、支出として過剰となってしまいます。
何か趣味や美容、娯楽など、特定のこだわっている分野がある人は、こういった支出が大きくなってしまっている可能性が考えられます。
2-3. 何にお金を使っているか把握できていない
そもそも「お金を何に使っているか把握しておらず、散財している意識すらない」ということも、お金が貯められない理由の一つです。
旅行に行く、趣味関連で高額なものを購入する、など、大きな支出を伴うことをしていなければ、本来はお金は貯まっていきます。それでも貯められていない、という場合は、普段の生活や行動の中で無意識にお金を使ってしまっていて、その支出が多くなっていることが考えられます。
頻度を気にせず、毎回外食で済ませたり、必要もないのに何となく毎日コンビニに寄って雑誌やお菓子を買うなど、心当たりはないでしょうか。
このように、無意識でお金を使ってしまう場面が、普段の生活の中に組み込まれてしまうと、支出が積み重なっていき、どんどんお金がなくなってしまいます。そして、なかなかそのことにも気が付きづらいです。
実家暮らしの人こそやるべき、お金を貯めるための行動
前章で、実家暮らしで貯金ができない理由をお伝えしました。
それを受けて「今後は注意してしっかり貯金していきたい!けど、何をしたらいいだろう」と考えた方も多いと思います。
そこで、貯金をしていくため、実家暮らしの人こそ、力を入れてやるべき行動を3つお伝えします。
3-1. 目標設定
まずは、何よりも「貯金の目標」を設定してみてください。
2-1で少し触れましたが「何のために、いつまでに、いくら」という形で、言語化して目標を設定すると、自分でも貯金する目標を明確にできるのでおすすめです。
ただ、「何のために」の部分は、人によってはすぐに設定が難しいこともあると思います。
その時は、最初は「いつまでに、いくら」の部分だけをまずは設定してみる、ということでも問題ありません。
期間や金額を決めるだけでも、かなり明確になり、貯金のスタートを切りやすくなります。
ただ、過剰に貯金することそのものが目的になってしまい、あとで後悔に繋がることがないように、注意が必要です。
3-2. 支出の見える化
「何にお金をどのくらい使っているのか」と数字で出してみて、支出の現状を把握することも、お金を貯めるために有効です。
2-2や2-3でお伝えしたとおり、実家暮らしでも貯金ができないのは「(無意識に)使いすぎてしまうこと」が理由であることが多いです。
自分の支出を数字で一度しっかり算出してみて、目で見えるようにすると、どこで浪費が起きているのか、どこに使いすぎてしまっているのか、がわかりやすくなり、節約の糸口とすることができます。
支出を明確にするには、家計簿アプリなどを使うと管理しやすく、おすすめです。
また、節約する際は、「無駄な固定費から削る」のが鉄則ですが、実家暮らしの場合、サブスクやスマホ代などの他は、固定費がかかる場面が少ないと言えます。そのため、娯楽や趣味など、変動費を中心に節約できる浪費がないか、洗い出してみると良いでしょう。
3-3. 先取り貯金
貯金する際のテクニックとして、「余った分を貯金する」のではなく、「先に貯金する分を確保する」ようにすると、お金をためやすいです。
例えば3-1で「いつまでにいくら」と目標設定したら、それに合わせた金額を毎月別口座に自動振り分けしたり、3-2で支出を洗い出して、浪費している金額がわかってきたら、無意識に使ってしまう前に、その分を最初に普段使わないお財布に入れてしまうなど、「支出よりも先に貯める」という仕組みやルールを設けると、上手に貯めていくことができます。
なお、先取り貯金の一つの方法として、投資に回して運用しながらお金を貯める、という選択肢も有効です。
投資は余剰資金で行うのが鉄則ですが、実家暮らしの方の場合は、固定費があまりかからない、何かあってもひとまず実家にいられる、など状況的にも余裕を持ちやすいと言えるので、早めに先取り貯金での資産運用を始めてみるのも良いです。
まとめ
いかがでしたか。
実家暮らしは、一人暮らしに比べ確かに貯金するにあたっては余裕があり、有利な状況といえます。
しかし、その余裕さゆえに、気にせずお金を使ってしまい、なかなか貯められない、という人も多く、また、実家にいるという安心感で、ついお金に関して感覚が緩んでしまう部分もあるでしょう。
ですが、少し支出に意識をむけてみたり、日々のちょっとした行動を振り返るだけでも、貯金しやすい体制を作ることができます。
貯金ができていないけど大丈夫かな、どのくらい貯金していけばいいかな、とお考えだった実家暮らしの方へ、ぜひ本記事が参考になりましたら幸いです。
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