まず初めに、結論をお伝えします。
初心者なら「基本は指値注文!損切りは成行注文」を使うのが良いです。
株式投資を始めて間もない、もしくはこれから株式投資に挑戦しようと思っている、といった初心者の方なら、「指値と成行、どっちの注文方法を使えば良いのか」といった迷いに、ほぼ確実に辿り着くのではないかと思います。
「この注文をすると、実際にお金が動く。下手したらすぐ損して無くなるかもしれない」と考えると、当然、注文にも慎重になりますし、最適な方法があるのであれば、それを選びたいですよね。
では、なぜ、基本的に初心者は指値注文を使うと良いと言えるのでしょうか。
また、なぜ損切りの時は、指値ではなく成行注文を使ったほうが良いのでしょうか。
本記事では、指値注文と成行注文の違いやメリット・デメリットを改めておさらいした上で、「初心者なら基本は指値、損切りは成行」とした方がいい理由について解説していきます。ぜひ最後まで読み進めてください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
指値注文と成行注文の違い
まず、注文方法について、指値と成行、どのような違いがあるかを改めておさらいしていきます。
指値注文と成行注文の大きな違いは「売買したい金額を指定するかどうか」という点です。
指値注文は「100株を〇〇円で購入。200株を〇〇円で売却」というように、売買したい金額を自分で指定し、注文を出します。
つまり、「望む値段になったら売買したい」という時に使う注文方法です。
一方、成行注文は「100株を成行で購入、200株を成行で売却」というように、株数のみを指定して、注文を出します。
つまり「いくらでもいいので、今、売買したい」という時に使う方法となります。
指値と成行、それぞれ、具体的な注文操作の違いについても見ていきましょう。
一つ例を出します。
上記は、三井E&S(7003)の注文状況(「板=いた」)です。
証券会社はSBI証券を使用しています。
【指値注文】
まず指値注文の設定から見ていきます。
現在、株価が1128円となっていますが、ここで「今よりもう少し安い、1122円で購入したい」と言ったように、値段を指定して売買をしたいと考えた場合に使うのが、指値注文です。
注文の際は、以下のように設定します。
①注文したい株数を設定し
②指値を選択。
③購入したい価格を入力します。今回は1122円で購入したいので、「1122円」と入力。
なお、指値で設定できる価格は、基本その日の制限値幅内の価格となります。
Tipness
【制限値幅】
株価が急激に変動し、相場が必要以上に混乱してしまうことを防ぐために設けられた、1日の間に動ける値段の範囲のこと。前日の取引終了時の値段(終値=おわりね)を基準に、毎日幅が決まる。
以上を設定し、注文を確定させます。すると市場に注文が出現します。
上記の注文板で、1122円のところに100株の指値注文が置かれ、注文数が5100→5200と増えたことがわかります。
あとは、株価が下落し、1122円以下となれば、売買成立(約定=やくじょう)となります。
このように指値注文では、売買したい価格を指定し、株価がその指定した値段になれば約定します。
また、同じ価格で他に指値注文があった場合、注文を早く出していた方が優先して約定する、という特徴があります。(時間優先の原則)
上記の例で言えば、株価が1122円になっても、自分の注文が約定するのは、他の投資家たちが先に入れていた買い注文、5100株が捌けた後となります。
【成行注文】
次に、成行注文の設定です。
「いくらでもいいから、今、100株買いたい」というように、値段を指定せず、売買をとにかく優先したい場合は、成行注文を使います。
注文の際は、以下のように設定します。
①注文したい株数を設定し
②成行を選択。
設定完了後、発注します。
すると「現在売りに出ている注文の中で一番有利な価格」で、すぐに約定となります。
現在、板に出ている売り注文の中では「1128円」が一番安い価格となっているため、1128円で約定、売り板の注文数が1600→1500と減ったことが確認できます。
このように、成行注文では、株数のみを指定することで、今現在出ている注文の中で最も有利な価格で、発注直後、すぐに約定します。
改めて、指値と成行では
・価格を指定する、というアクションの有無
・約定するまでの時間的な差
という違いがあることを覚えておきましょう。
1-1 指値注文のメリット・デメリット
次に、それぞれの注文方法のメリットデメリットを見ていきます。
まず、指値注文についてです。
【メリット】
・想定した額で売買ができる
・自動的に約定する
【デメリット】
・約定しない可能性があり、機会損失に繋がる
指値注文の場合、買いの場面では指定よりも高い額で、売りの場面では指定よりも低い額で約定することはなくなります。
つまり、想定以上に資金拘束を受けたり、利益が減ったりすることがなくなるので、資金管理がしやすくなるのです。
また、注文を出しておけば、株価が設定した指値条件に合致した時点で自動的に約定するので、ずっと株の値動きを見張っているということをしなくてもよくなります。
そのため、働いている方など、日中に相場を見られない場合でも、事前に注文をして置けば、取引に参加することが可能となります。
反対に、金額を指定するということは、その指定した条件にならない限り、いつまでも約定することはありません。
例えば、指値での買い注文の場合、指定したところまで株価が落ちずに、上昇してしまうこともありますし、売り注文も同様に、少しでも高く売ろうと指値をしていたけど、そこまで株価が上がって来ずに、下落してしまった、ということもあります。
「あと1円落ちてくれたら約定したのに」など、シビアな差でチャンスを逃すことも少なくありません。
損切りの場面では、これが仇となり、損失が拡大してしまうこともあるので、注意が必要です。
1-2 成行注文のメリット・デメリット
次に成り行き注文のメリット・デメリットを見ていきます。
【メリット】
・注文を出せば、基本的には約定する
【デメリット】
・想定外の金額で約定する可能性がある
成行注文では、「いくらでもいいので、買う・売る」という方法なので、市場に投資家からの注文が出ている限り「約定しない」ということが基本的になくなります。
つまり、「買おうと思ったのに買えなかった」「売ろうと思ったけど、売れなかった」ということがなくなり、ほぼ確実に売買を成立させることができるのです。
反対に、金額については「いくらでもいいので」という文脈になってしまうため、想定以上に高く購入してしまったり、低い額で売ってしまうこともあり、資金管理は難しくなります。
株式投資では、コンマ1秒を争って売買が行われることもあるので、「成行注文を入れる直前に株価が大きく動いてしまい、思わぬ額で約定してしまった」という状況も十分起こり得ることなので、注意が必要です。
【初心者向け解説】指値注文と成行注文の使い分け
ここまで、指値と成行の違いや、メリット・デメリットについて確認してきました。
ただ、初心者の場合、これらの違いや、それぞれのメリットデメリットは理解したけど、「結局、どう使い分けたらいいの?」
という疑問を持つかと思います。
そこで、指値注文、成行注文の使い分けについて、それぞれ具体的にどのような場面で有効なのか、ということを解説していきます。
2-1 指値注文が有効な時
まず、指値注文についてですが、「今の株価よりも、もう少し有利な株価で売買したい」という、価格を優先したい場面で有効です。
適正な水準で推移していた株価が、何かの理由で大きく下落したときに買いを入れたり、一気に反発したら売りを入れる、など、相場の流れに逆らった状況を捉える手法を「逆張り」といいます。
指値注文は、この逆張りをしたい時に相性のいい方法です。
株価は基本、常に上下を繰り返す訳ですが、その上下が一定の範囲に安定して納まって推移することがあります。そういった動きをしている銘柄があれば、「推移の中で安いところに買い指値、高いところに売り指値を入れて、待つ」という手法を取りやすいです。
高値で買ってしまう「高値掴み」や、安値で売ってしまう「底売り」を避けることができ、焦った取引をしなくて済むので、上記のような株価推移をしている銘柄を見つけた場合は、指値注文を検討すると良いでしょう。
2-2 成行注文が有効な時
次に、成行注文についてですが、「とにかく今すぐ、このタイミングで売買したい」「今起きている流れに乗り遅れたくない」という、時間やタイミングを優先したい場面で有効です。
株価が上昇している時にはその流れに沿って買いを入れ、反対に下落基調が続いているときには売りを入れるという、というように、発生した流れ(トレンドといいます)と同じ方向に乗っていく手法を「順張り」といいます。
この順張りをしたい時には、成行注文が相性が良いです。
こういったトレンドは一度発生するとしばらく続くことも多いため、うまく乗れるか乗れないかで、かなり投資効率に差が出てきます。
そのため、トレンドがあればしっかり捉えていきたい訳ですが、「事前にいつ発生し、いつ終了するか」などを予想することはとても困難です。したがって、トレンドを逃さないためには、「見つけたそのタイミングで素早く乗る」ことが必要になってきます。
この場合、約定価格が多少ブレたとしても、その後の流れに乗れないことの方が痛手になるので、価格よりも時間やタイミングが重要となります。
こういった時に、成行注文を使うと確実に売買を成立させることができます。「上昇(もしくは下落)が”継続している”」という株価推移をしている銘柄があれば、成行注文を使って、素早くトレンドに乗ってみると良いです。
初心者なら、どっちを使うべきか
ここまで、指値注文と成行注文について、内容やそれぞれ使える場面を解説してきました。
違いを熟知し、都度上手に状況を判断して、それぞれうまく使い分けができたら、もちろんそれが一番良いのですが、初心者の場合「初めから完璧に場面ごとに使いこなす」のは、かなりハードルが高いと感じる方も多いと思います。
そこで、「指値と成行、初心者なら主にどっちを使うべきか」という点について、筆者が考えるおすすめを解説します。
3-1 基本は指値注文でOK。「損切り」だけは成行注文で
まず、一番おすすめなのは「基本的には全部指値注文を使い、損切りの時は成行注文を使う」というものです。
つまり、注文自体は「どっちも」使うのですが、「使い分ける場面」の方を絞るのです。
まず前提として、基本的に初心者であれば、「指値注文」を使う方が良いです。
理由としては、1章のメリットの項目で触れたように、「想定外の価格で約定することを回避できる」という点です。
長年相場に身を置いている投資のプロですら、「想定外」が発生すると、冷静さを欠くことがあります。初心者であれば、なおさら「想定外」の発生で焦ってしまうことが多いと言えます。
そうした想定外の要素は、できるだけ抑えた方が良いです。そのために指値注文を使って価格をコントロールすることは有効と言えます。
しかし、「損切り」の場面においては話が違ってきます。
損切りは「今以上に損失が拡大することを防ぐ」ために行うものです。
つまり、損失を最小限に抑えるため、一刻も早く行動することが重要になってきます。その文脈に対して有効なのが、「今」というタイミングを重視する成行注文となります。
ここで
「損切りで指値を使ってはいけないの?」という疑問も出るかと思います。
もちろん、損切りで指値を使うこと自体、悪いことではありません。下落する株価に対してうまく指値を当てられるなら問題ありません。
しかし、私たちが物理的に注文操作、設定をしている間も、株価は一円を争って常に動いているので、「注文が完了した時点で、さらに株価が下落していて当たらなかった」ということもあり、結果損切りが遅れる、というケースもあります。
その点、成行注文であれば、注文完了と同時に基本、必ず約定するので、注文が取り残されることはありません。
また、1章で説明した通り、値段指定をしない分、指値注文よりも物理的に操作工程が少ないので、より素早く注文操作を完了することもできます。
以上から、通常の売買では基本的に指値注文を活用し、損切りをする際には成行注文を使って、株価の動きに大きく巻き込まれるのを防ぐ、という戦略をとることが、初心者にはおすすめです。
3-2 もし「どっちかだけを使いたい」なら、指値をマスターしよう
初心者でも指値と成行、固執せずにどっちも使えるように心得ておくのがベストではありますが、
「迷う場面をできるだけ減らしたいので、あえて、どっちか一つに絞るとしたらどちらがいいか、を考えたい」
と思った方もいるかもしれません。
上記のように思った初心者の方へ。結論としては「指値」の方に絞って使うと良いでしょう。
一番の理由は、やはり「想定外になり、焦った状態での売買を防ぐ」ことにあります。
もう一点の理由として、損切りをする際、指値注文を少し工夫することで、成行注文と同じように使うことができることが挙げられます。
どのような方法かというと、「損切りの際、現在の株価よりもある程度、金額を下に置く」という方法です。
上記は「株式の買いポジションを持っていて、損切りで売却する場合」を前提にした言い方ですが、信用取引の売りなどでも同じように考えることが可能です。
以下、例を用いて具体的に説明します。次のような注文板の状況があったとします。
下落が始まったところで板を確認したところ、現在株価が1053円でした。
ここからさらなる下落に巻き込まれないよう、100株、損切りをします。
この時、指値注文を使って損切りするにあたり、株価の指定を、現在の株価よりさらに下に設定します。つまり、1053円より下の株価を指定するのです。
ここでは例として、7円下の「1046円」に指値売り注文を出すことにします。
一見、「1046円で指値をしたのだから、1046円で売れてしまうのでは?」と考えるかと思いますが、指値をした値段よりも有利な値段で約定しうる注文がある場合は、指値ではなく有利な方の値段が優先されます。
今回の場合、1046円で売り指値をしても、1046円以上の買い注文があれば、そちらにぶつけることが優先されます。
この文脈は「今出ている買いの中で一番高い値段の注文にぶつける」という成行売りをした時と同じです。
そのため、上記では1053円が一番有利な値段のため、1053円で約定することになります。
このように使うことで、指値注文も損切りの際に成行注文のように活用することが可能となります。
注意点として、前項でも述べたように、値段指定をする分、成行注文を使うよりも、物理的に注文操作にかかるアクションは多くなるので、若干手間がある、ということは把握しておく必要があります。
また、現在の株価が大きく急速に下落している場合は、多少売り指値を下に設定したところで、それ以上に株価が下がってしまい、注文が置き去りにされることもあります。
このように、状況によってはそれなりに下値を指定する必要があることもあるので、その点も注意が必要です。
しかし、これをマスターすれば「成行を使うのか、指値を使うのか」と、注文方法の選択でいちいち焦ることはなくなり、その分、現在の板状況を見ることに集中できます。
なので、もし初心者の方で「注文方法を一つに絞りたい」と思った場合は、上記を参考にするといいです。
まとめ
いかがでしたか。
初心者の方は特に、この指値と成行の注文方法の違いや使いどきについて、どっちを使えばいいと、迷うことが多いでしょう。
本記事の内容が、上記の悩みの解決に繋がり、今後の投資戦略の参考になれば、幸いです。
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