株式投資でよく注目されるテーマの一つである「半導体」
ニュースなどでも半導体関連の内容を目にすることが多くて気になっていた、という人もいると思います。
実際、相場では、半導体業界の動向は「経済の先行指標」とも捉えられていて、日々重きを置いてチェックしている投資家も非常に多いです。
特に最近では、生成AI向け半導体を生産しているアメリカ企業エヌビディア(NVIDA)が特に注目されていて、その一社の動向や決算内容の発表一つで、経済指標も大きく動いてしまうこともあるというから驚きです。
このような中、半導体株に興味を持ちつつも、アメリカの企業に投資するのはなんとなく抵抗があって「日本の半導体企業に投資をしたい」と思った人もいるでしょう。
もちろん日本株でも半導体を扱っている企業がありますが、実際に探してみると結構な数があり、どの企業に投資をしようか迷ってしまった、ということもあると思います。
そこで本記事では、半導体の基礎知識を簡単におさらいするとともに、おすすめの日本の半導体株を5つ紹介していきます。
また、後半で改めてそもそも半導体株が注目される理由や、半導体株への投資にあたって心得ておくべき注意点についても解説していきます。
ぜひ最後まで読み進めてみてください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
半導体の基礎知識
まずはじめに、半導体とは何か、半導体銘柄にはどんな種類があるか、という部分を簡単におさらいしておきましょう。
・半導体とは
半導体とは、電気をよく通す金属などの「導体」と、電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」との、中間の性質を持つ物質や材料のことをいいます。
具体的にはシリコンやゲルマニウムといった元素です。本来的にはこの「素材そのもの」を半導体といいます。
ただ、これらの素材で使われる「トランジスタ」(電気信号の増幅やオンオフの切り替えをする部品)や複数のトランジスタを組み合わせた「集積回路(IC)」などの部品も、広い意味で半導体という言葉で表されます。これらの部品の方がもしかしたら「半導体」としてイメージしやすいかもしれません。
そのため「半導体」と言われたら「ICチップやそれを作るための素材」と、まずはざっくりイメージすると良いです。
・半導体株の種類
前項で確認した「半導体」を扱うのが半導体企業、つまり半導体株ということになります。しかし、冒頭でも少しお伝えしたとおり、半導体株を探してみるとかなり数が多いことがわかります。
これは、半導体(素材、回路の種類両方)自体に色々種類があることや、作り上げるまでの工程が複雑かつ難易度が高く、専門的な技術がそれぞれ必要であることなどが理由です。
それほど「半導体」は複雑で難しく、各企業がこぞって専門性を磨き、挑んでいる分野なのだと言えます。
一つ一つ細かくするとかなり複雑なので、概ね以下のような種類分けで理解しておくと良いです。
素材
シリコンウェハーなど、半導体の素材の取扱や材料の製造を行う企業。
設計・製造
CPUやGPUといった半導体部品の設計図を作成し(設計)、設計図をもとに、半導体部品を製造する企業。
片方だけに特化、もしくはどちらもやる企業もあります。
また、製造はさらに「ウェハー製造」→「形成」→「検査」→「パッケージング」→「テスト」など、細かい各工程があり、それぞれ専門企業もあります。
半導体装置
半導体を製造するために必要な装置の製造、取扱をする企業。
販売
設計・製造した半導体を様々な企業に販売する企業。
半導体製品
スマートフォン、パソコン、自動車など、半導体を使って様々な製品を作る企業。
半導体企業や半導体株を探す際には、上記のどこに位置するのかを、ぜひ簡単にイメージするようにしてみてください。
おすすめ半導体株 5選
前章で半導体の基礎や半導体株の種類について簡単に確認ができました。この理解を前提に、改めておすすめの日本の半導体株を5つ、ご紹介していきます。
あくまでもご参考の一つであり、投資銘柄の推奨の趣旨ではありませんので、あらかじめご注意ください。
・東京エレクトロン(製造装置)
- 時価総額:102,784億円
- PER:28.45倍
- PBR:5.91倍
- ROE:20.68%
- ROA:14.82%
- 一株あたり配当:393.00円
日経平均株価を構成する225社に含まれ、日本の代表的な半導体企業の一つがこの東京エレクトロン。
半導体企業として、主に半導体を製造・加工するための装置の開発、製造、販売を担っています。特に、スマートフォンやパソコンなどの機器に必要な半導体の製造において、技術の精密さや信頼性の高さから、東京エレクトロンの製造装置への需要が非常に高いです。
2024年11月時点で株価は23000円前後と、値嵩株ではありますが、企業規模の大きさを活かし、積極的に事業投資も行っていることから、今後もさらなる成長が期待できる企業です。
・新光電気工業(製造・パッケージング)
- 時価総額:7,153億円
- PER:38.44倍
- PBR:2.7倍
- ROE:7.2%
- ROA:4.3%
- 一株あたり配当:25円
新光電気工業は長野県に本社を置く、半導体製造を行う企業です。製造工程の中でも、半導体を保護したり、他の部品と接続できるように加工する「パッケージング」に強みを持っています。
特に「パッケージ基板」という分野では世界シェア2位となっており、日本だけでなく海外からの需要にも応える、確かな技術力を持った信頼性の高い企業と言えます。
なお、2025年1月以降に、政府系ファンドの産業革新投資機構により、TOBが実施される予定です。
TOB実施後は上場廃止となる見込みとなっています。現時点での株価は5200円前後ですが、TOB価格は5920円と予定されているため、現状ではTOB価格よりも安く購入ができる状態といえます。
しかしながら、TOB開始予定の延期・中止や、予定価格の下方修正などの可能性もあるため、今後の適宜開示などを随時参照することをおすすめします。
・信越化学工業(素材)
- 時価総額:112,583億円
- PER:21.92倍
- PBR:2.67倍
- ROE:11.76%
- ROA:10.10%
- 一株あたり配当:100円
様々な素材を扱っている化学メーカーの信越化学工業。
半導体部品を作るために必要な質の高いシリコンやレアアースなどの原料も、もれなく取り扱っています。
半導体企業としての信越化学工業の強みはその世界シェアです。
ICチップ製造に必要な「シリコンウエハー」は世界シェア1位、半導体の微細化(電子を細かくすること)に必要な素材の「フォトレジスト」は世界シェア2位など、確固たる地位を築いていると言えます。
また、アメリカの大企業であるAppleを超えるほどの営業利益率を叩き出すなど、稼ぐ力も非常に強いです。
株価は2024年11月時点で5500円前後であり、こちらもさらなる成長見込みがある企業と言えます。
・アドバンテスト(テスト)
- 時価総額:67,546億円
- PER:108.18倍
- PBR:15.64倍
- ROE:14.45%
- ROA:9.28%
- 一株あたり配当:18円
アドバンテストは、半導体装置の大手メーカー企業です。特に、半導体の製造工程で、部品の出荷前に必要な「テスト」を行うための装置やシステムの開発・製造・販売に特化しています。
その装置の精度や技術力は非常に突出しており、半導体テスト市場において世界シェア58%とトップを獲得するなど、海外各国から高い評価を受けています。
2024年時点で株価は10000円前後とやや高く、またPERも100倍以上と高めの数字ではありますが、今後の積極的な株主還元なども見据えた経営計画は、投資家としても好感が持てるものと言えます。
・ソシオネクスト(設計)
- 時価総額:4,332億円
- PER:16.27倍
- PBR:3.30倍
- ROE:19.95%
- ROA:13.99%
- 一株あたり配当:25円
上場が2022年11月と、比較的最近出てきた半導体企業であるソシオネクスト。
富士通とパナソニックの半導体事業が統合してできた企業であるので、技術力の高さは申し分ないことは、お分かりいただけると思います。
ソシオネクストは半導体の「設計」に特化した企業で、そこが強みです。元々持っている高い技術力を設計という一点に集中させることで「顧客のニーズに沿ってカスタムした半導体をデザインする」という、他の企業には簡単に真似できない価値を提供しています。
2024年11月時点で株価は2500円前後と、ピーク時に比べるとやや下落しているとも見て取れますが、まだ上場してから3年以内と日も浅く、ROEやROAが非常に高く効率的な経営ができている点からも、今後の成長を期待できると言えそうです。
日本の半導体株にまとめて投資できるETF
前章で具体的に半導体企業をご紹介しましたが、もちろん他にも素晴らしい半導体企業はたくさんあるので、ぜひいろいろ探してみると良いです。
しかし冒頭でもお伝えした通り、半導体企業はかなりの数があるので、いざ探してみたものの迷ってしまった、ということもあるでしょう。
そこで有効なのが、複数の半導体株にまとめて投資ができるETFへの投資です。
半導体への注目されている昨今、新たに半導体の指数も作られ、それに連動する商品もいくつか誕生しています。その中でもETFであれば、個別株のようにリアルタイムで売買することも可能です。
半導体銘柄の選定に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
・グローバルX半導体関連-日本株式 ETF(2644)
一つ目はグローバルX半導体関連-日本株式 ETFです。
ベンチマークは「FactSet Japan Semiconductor Index」という指数で、採用されている国内半導体企業40社のうちからいくつか厳選して、投資を行っています。
(引用:グローバルX 半導体関連-日本株式 ETF | Global X Japan)
上場が2021年と比較的最近ですが、「日本の半導体株」に投資ができるものの中では、実はこのETFが一番古いものとなります。一定期間の値動きを表す騰落率をみると、3年で+43.24%と非常に高い数値にもなっており、また分配金も得られるため、投資家からの人気も高いです。
半導体の個別企業の選定に迷う人は、選択肢に加えても良いかもしれません。
・NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信(200A)
熊本のTSMCや北海道のラピダスを始め、半導体への大規模な設備投資が進むなど、昨今の国内の半導体業界の盛り上がりを受け、2024年3月に新たに「日経半導体指数」というものが作られました。
この指数をベンチマークとしたのが「NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信」です。
日経半導体指数は、2024年11月時点で以下の29社と割合で構成されており、本ETFも基本的には同様の企業、割合で投資し、指数に連動する運用を目指すところとなります。
(日経平均プロファイル「半導体指数/構成銘柄一覧」より筆者作成)
上場は2024年6月と、現時点では非常に新しいもののため、ETF自体の過去データはまだ少ないですが、ベンチマークの日経半導体指数を同じ基準で過去まで遡って確認すると、日経平均株価よりも大きく上振れしたパフォーマンスとなっているので、今後も成長が期待できる指数と言えます。
(引用:NEXT FUNDS)
なぜ半導体株が注目されるのか
ここまでの内容を参考に、おすすめの半導体株やETFについて確認してきました。内容を参考に、改めて色々な銘柄を探している人も多いでしょう。
ところで、そもそも半導体株への投資を検討しているのは「半導体の注目度が世間的に高く、自分も興味を持った」ことがきっかけなのだと思いますが、では、なぜ半導体はこんなにも注目されているのでしょうか。
その理由を一つずつ、説明していきます。
・日常や各産業に広く浸透しているから
まず理由の一つとして「半導体がありとあらゆるものに使われ、私たちの日常と密接に関わっている」ということが挙げられます。
スマートフォンやパソコン、生活家電や産業インフラなど、日常や仕事でよく使用・利用する機器には、全てこの半導体が使われています。まさに「半導体によって日常が支えられている」といっても過言ではありません。それほど、半導体とは重要なものなのです。
例えば、普段使っている機器の性能が進歩したとすれば、それは半導体の技術革新が進んだことも意味する場合があります。投資家達は常にそのような日常の変化にも敏感にアンテナを張って、投資する対象を見極めているのです。
生活や産業に広く浸透している半導体は、それだけ投資家に注目される機会も多くなると言えます。
・成長性、収益性が高いから
収益性の高さも半導体が注目される理由の一つです。
半導体は取り扱いが非常に難しく、加工のためには高い技術力が必要とされます。また、半導体を作るために必要な工場や機械など、設備や開発にかかるコストもかなり高額です。
そのような背景から、完成した半導体にはそれだけ高い付加価値が生まれることになります。
そして、作られた半導体は、一つだけでなく多様な製品に使われるため、その需要も旺盛と言えます。そのように高い付加価値と需要が相まって、収益性も非常に高くなりやすいのです。
また、半導体の技術自体は、もちろん以前よりかなり進歩して現代に至るわけですが、今後ももっと進化・成長する余地があると捉えられています。
「空飛ぶ車」や「遠隔医療」など、一見すると少し難しそうな夢も、半導体の進化により実現は十分可能というから驚きです。
そうした成長性の期待や、収益性の高さから、注目度も高くなっています。
・経済の先行指標として見ている投資家も多いから
例えばメーカー企業の場合、業績を上げようと思えば、当然たくさんの製品を売る必要がありますし、そのためにたくさん製品を作る必要もあります。その製品を作るために事前に半導体が必要となるので、仕入れ量も拡大します。
反対に、製品の供給過熱を見越した場合、真っ先に材料である半導体の仕入れ量を調整して製品の生産を抑制しようとするでしょう。
このように半導体は、世の中全体の需要供給や経済の状況を先取りし、モノの流れの一番上流の段階で敏感に動く、という性質があります。この構造によって、冒頭でも触れた通り、半導体は「経済の先行指標」と捉えられ、投資家にも常に注目されるのです。
5 半導体株に投資するなら覚えておきたい注意点
前章までで見てきた通り、半導体株への投資は、収益性の高さや成長の伸び代などを背景に、非常に投資対象として魅力的なものだと言えます。
しかし半導体株への投資には注意すべき点もあり、それをしっかり把握した上で検討するのが望ましいです。
では、具体的にどのようなことに注意すると良いのでしょうか。以下、一つずつ説明していきます。
・ボラティリティが激しい
注意すべき点の一つに、ボラティリティが高いことがあります。
ボラティリティとは「価格の変動のしやすさ」のことで、「上にも下にも値動きの幅が大きい」ということを表します。
つまり、半導体株への投資で大きく利益を狙える可能性はありますが、その分、損をする可能性も高いということです。
この点を理解していないと思わぬ損失に繋がってしまう、ということもあるので注意が必要です。
・企業ごとの競争、差が激しい
先述のとおり「半導体」と一言にいっても、種類やそれぞれの企業が担う分野も大きく異なります。そのため「半導体業界が盛り上がっている」と言っても、必ずしも全ての半導体企業が順調に上昇するとは限りません。
また、技術競争も激しいので、同じ分野に属していたとしても、規模や資金力などの関係もあり、企業単位で如実に差が出やすい業界でもあると言えます。
そのため、企業や業界への理解や前提知識をある程度持った上で、銘柄の選定を行うことが必要です。
・政治や地政学など、外部の影響も受けやすい
半導体を取り巻く環境には、その企業内部や国内だけではなく、政治や地政学など外的な要素も多く含まれます。
例えば、各国間での貿易摩擦や戦争などの有事によって、半導体の原料や部品の調達・輸送が困難になるといったケースが起こることも少なくありません。
半導体株に投資をするのであれば、半導体のみの事情ではなく、こういった経済や社会全体のことも広く把握しておくことが望ましいです。
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まとめ
いかがでしたか。
半導体は奥が深く、少々難しいという印象もあるかもしれませんが、今後も大きく成長が期待できる分野であることに間違いなく、また、経済の動向を捉えることにも繋がるので、半導体株への投資を検討することは、非常に良い視点であると言えます。
しかし、半導体の中でも様々な分野があり、また企業数も多いので、どのような戦略をとろうか迷ってしまうこともあるでしょう。
そのような方へ、本記事の内容が、今後の投資戦略を考えるきっかけになれば幸いです。
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