「水を買う」が新常識に?宅配水市場を支える注目3銘柄

身近な「水」が投資テーマに変わる

私たちの生活に欠かせない「水」をめぐる消費スタイルが変化している。日本では安全な水道水を利用できる環境が整っている一方、重いペットボトルを購入・運搬する手間を省きたい、冷水や温水をすぐに使いたい、天然水を日常的に楽しみたいといったニーズから、宅配水やウォーターサーバーの利用が広がってきた。さらに近年は、猛暑による水分補給需要や災害への備えに加え、水道水を浄水して利用する「浄水型ウォーターサーバー」も普及し、市場の競争軸は大きく変わりつつある。

こうした宅配水・ウォーターサーバー市場で存在感を示す上場企業が、プレミアムウォーターホールディングス(2588)、ナック(9788)、TOKAIホールディングス(3167)である。3社はいずれも宅配水を手掛けながら、それぞれ異なる事業基盤やサービス戦略を持つ。水そのものの品質だけでなく、定期配送、ウォーターサーバーの利便性、浄水型への対応、物流効率、既存顧客との関係など、さまざまな視点から各社の成長性を捉えることが重要になっている。変わりゆく「水」の市場と、そこに挑む3社の現在地を探る。

証券コード企業名市場宅配水ブランド・サービス宅配水事業の特徴
2588プレミアムウォーターホールディングス東証スタンダードプレミアムウォーターなど天然水をウォーターサーバーとともに宅配する事業を中核として展開 
9788ナック東証プライムクリクラ宅配水「クリクラ」の製造・販売を展開。浄水型ウォーターサーバーも手掛ける 
3167TOKAIホールディングス東証プライムおいしい水の宅配便、うるのんリターナブル・ワンウェイの天然水宅配に加え、給水型浄水サーバーも展開

宅配水・ウォーターサーバーの現在地――「天然水」から「浄水型」へ、変わる水の消費スタイル

家庭に水を届ける宅配水と、冷水・温水を手軽に利用できるウォーターサーバーは、かつて「少しぜいたくな水」のイメージが強かった。しかし現在、その市場は大きな転換期を迎えている。日本宅配水&サーバー協会(JDSA)の2025年度統計によると、宅配水業界は顧客数が前年並みとなる一方、製造量は前年比103.0%、市場規模は101.3%と増加した。さらに浄水器形ウォーターサーバーを含めると、市場規模はより大きくなる。背景には猛暑による水分補給需要の増加や、家庭での飲料水への関心の高まりがある。市場は「利用者を増やす成長局面」から、「既存需要を取り込みながらサービスを進化させる局面」に移りつつあるといえる。

ウォーターサーバーの普及状況を見ると、まだ成長余地は大きい。日本宅配水&サーバー協会が2025年に実施した調査では、自宅でウォーターサーバーを利用している人は12.3%だった。法人への普及率は22.8%であり、家庭・職場の双方で一定の利用基盤が形成されている。特に注目されるのが、水を「飲む」だけではなく、冷水や温水をすぐに利用できる利便性である。暑い時期の水分補給だけでなく、コーヒーやお茶、料理、乳児用ミルクなど、日常生活のさまざまな場面で使えることがウォーターサーバーの強みとなっている。

一方で、市場の主役は少しずつ変化している。従来型の宅配水は、天然水やRO水などをボトルで家庭に配送し、サーバーにセットして利用する方式が中心だった。水を買いに行く手間が省け、冷水・温水をいつでも使える一方、ボトルの保管場所、交換時の重量、配送費を含めたコストなどが課題となる。そこで存在感を高めているのが「浄水型」のウォーターサーバーである。これは水道水をサーバーに注ぎ、内蔵されたフィルターなどで浄水して利用するタイプで、水そのものを宅配してもらう必要がない。JDSAも2025年の市場動向として、浄水器形ウォーターサーバーが増加傾向にあると指摘している。消費者の節約志向を背景に、宅配型から浄水型へ切り替える動きがあるという。

この変化は、ウォーターサーバー業界の競争軸を大きく変えている。宅配型では「どの水を届けるか」「天然水の産地」「水の味」「配送システム」などが重要だったのに対し、浄水型では「月額料金」「フィルター性能」「サーバーのデザイン」「給水のしやすさ」「電気代」などが比較ポイントとなる。つまり、水そのもののブランド競争から、生活家電としての使い勝手やコストパフォーマンスを競う市場へと広がっているのである。

こうした市場環境の変化は、上場企業の事業戦略にも表れている。宅配水を中核とするプレミアムウォーターホールディングスは、天然水を家庭へ届けるビジネスモデルを軸としている。一方、ナックは「クリクラ」を展開し、宅配水だけでなく浄水型ウォーターサーバーも手掛ける。TOKAIホールディングスも、「おいしい水の宅配便」「おいしい水の贈りもの うるのん」に加えて、給水型浄水ウォーターサーバー「しずくりあ」を展開している。つまり、大手事業者にとっても「宅配水だけ」ではなく、宅配型と浄水型の双方を押さえることが重要になっている。TOKAIグループでは、これらアクア事業3サービスの顧客件数が2025年7月末に20万件を突破したとしている。

さらに、ウォーターサーバーの役割は「水を飲むための機械」から「家庭の水分補給インフラ」へと変わりつつある。近年は猛暑が常態化し、熱中症対策としてこまめな水分補給が重視されている。JDSAの調査でも、90.9%が熱中症対策としてこまめに水分を摂ると回答し、45.2%はウォーターサーバーが熱中症対策に役立つと考えている。また、自宅で飲み物をローリングストックしている人は52.8%に達した。災害時の備蓄という観点からも、水を一定量確保しておく需要は根強い。

ただし、業界が成長一辺倒というわけではない。顧客数が前年並みにとどまっていることは、市場が成熟段階に入りつつあることを示す。JDSAは2025年度について、顧客数は前年並みながら、製造量や市場規模は増加したとしている。これは一人当たりの利用量や単価、サービス内容などに変化が生じている可能性を示唆する。今後は新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の継続率を高め、サーバーの付加価値を高めることが重要になる。

また、消費者側から見れば、契約条件や料金体系の分かりやすさも重要なポイントとなる。ウォーターサーバーは月額料金だけでなく、水の注文ノルマ、サーバーレンタル料、メンテナンス費、解約時の費用などを含めて総額を比較する必要がある。市場が拡大する一方で、販売方法や契約条件をめぐるトラブルへの注意も必要であり、事業者には透明性の高い料金表示や分かりやすい契約説明が求められる。

今後の市場を考えるうえで鍵になるのは、「水を届ける」から「水をどう便利に使ってもらうか」への発想転換である。宅配型は天然水の品質やブランド力、配送の利便性を強みにし、浄水型はコストや給水の手軽さを武器にする。さらに、常温水、コーヒー機能、ボトルレス設計、省エネ性能、スマートフォンとの連携など、ウォーターサーバーを家電として進化させる余地も大きい。

宅配水・ウォーターサーバー市場の現在地は、「急拡大する新市場」というより、「成熟化と新たな成長領域への転換が同時に進む市場」と表現するのが適切だろう。宅配水の需要そのものは猛暑や防災意識を背景に底堅い一方、消費者の節約志向は強く、従来型の宅配サービスだけでは競争が厳しくなっている。だからこそ、宅配型と浄水型を使い分け、料金・利便性・品質・デザインなど多様なニーズに対応できる企業が優位に立つ可能性がある。

日本では水道水を比較的容易に利用できるため、ウォーターサーバーは「絶対に必要な商品」ではない。しかし、冷たい水と温かい水をすぐに使える利便性、重いペットボトルを運ぶ必要がない手軽さ、備蓄や水分補給への対応など、日常生活における付加価値は確実に存在する。今後は「高級な水」ではなく、「家庭の水分補給・生活インフラ」という位置付けをどこまで確立できるかが、宅配水・ウォーターサーバー業界の次の成長を左右することになりそうだ。

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宅配水市場の本命銘柄、プレミアムウォーターホールディングスの成長戦略

水を自宅まで届けてもらう「宅配水」と、冷水や温水を手軽に利用できる「ウォーターサーバー」は、いまや一部の家庭だけが利用するぜいたく品ではなく、日常生活における新たな水インフラの一つとなりつつある。その市場で存在感を高めているのが、東証スタンダード市場に上場するプレミアムウォーターホールディングス(2588)である。同社は自社ブランド「PREMIUM WATER」を中心に、日本の天然水の宅配事業とウォーターサーバー関連サービスを展開している。2013年に東証マザーズへ上場し、2022年4月からスタンダード市場へ移行した。

同社の特徴は、単純にミネラルウォーターを販売する会社ではない点にある。天然水を採水し、ボトリングし、ウォーターサーバーを通じて家庭へ定期配送することで、継続的な顧客接点を構築するビジネスモデルを採用している。一般的なペットボトル飲料であれば、消費者が必要なときに店頭やECサイトで購入する。一方、宅配水では一度契約した顧客に対して定期的に商品を届けるため、長期的な利用につながれば安定した収益基盤を形成しやすい。プレミアムウォーターホールディングスも、長期にわたる宅配水の定期配送サービスが安定的な収益基盤につながるとして、長期契約プランの提供や既存顧客の継続率向上に取り組んでいる。

同社の規模を示す指標として注目されるのが保有契約件数である。2026年3月期上期末には179万件まで拡大しており、2025年3月末時点では173万件だった。同社は2025年3月末の自社顧客数173万件と、日本宅配水&サーバー協会(JDSA)の統計に基づく宅配水市場全体の予想顧客数524万件を比較し、宅配水業界で顧客数No.1と説明している。つまり、宅配水市場における同社の存在感はかなり大きく、市場の成長を取り込めるポジションにあるといえる。

業績面でも成長が続いている。2026年3月期上期の売上収益は403億4700万円で前年同期比3.7%増となった。販売促進費などの増加が利益を押し下げる要因となる一方、顧客獲得コストの効率化、工場設備の稼働率向上による製造原価低減、物流網の構築による配送費の安定化などに取り組んでいる。宅配水は「水を採る」だけでは成立せず、ボトリング、保管、配送、サーバー管理、顧客サポートなど多くのコストが発生する。そのため、顧客数を増やすだけでなく、製造・物流の効率を高めることが利益成長の重要なポイントとなる。

同社が強みの一つとしているのが、水源の多さである。2026年2月の決算説明補足資料では、宅配水業界最多の8水源を保有していると説明している。天然水を全国へ安定的に供給するためには、水源の確保だけでなく、自然災害などによる供給リスクへの対応も重要になる。複数の水源を持つことは、安定供給という観点から競争力につながる可能性がある。また、天然水そのものをブランド価値として訴求できることも、同社の特徴である。

もっとも、宅配水市場を取り巻く環境は変化している。近年は「宅配型」だけでなく、水道水をサーバーに注いでフィルターで浄水する「浄水型ウォーターサーバー」が普及している。宅配型には天然水を自宅まで届けてもらえる魅力がある一方、ボトルの保管や交換が必要になる。これに対して浄水型は水道水を利用するため、ボトルの受け取りや交換の手間を抑えられる。消費者の節約志向が強まるなか、ウォーターサーバー市場の競争は「水の品質」だけではなく、「月額料金」「使いやすさ」「省スペース性」「メンテナンス」「配送の有無」などへと広がっている。

こうした市場変化に対して、プレミアムウォーターホールディングスも宅配水だけに依存する姿勢ではない。同社の代表メッセージでは、自社ブランド「PREMIUM WATER」を中心とする天然水の宅配事業に加え、浄水型を含むウォーターサーバーなどの付帯サービスを提供する子会社の経営管理を行っていると説明している。天然水という既存の強みを維持しながら、ウォーターサーバーそのもののサービス領域を広げることが、今後の市場競争を勝ち抜くうえで重要になりそうだ。

また、宅配水には「防災」という追い風もある。地震や豪雨などの自然災害が発生した場合、飲料水を一定量備蓄しておくことは重要である。宅配水のボトルは日常的に消費しながら新しいものが届くため、いわゆるローリングストックに適している。ウォーターサーバーを単なる「おいしい水を飲むための機械」ではなく、「家庭の水分補給と備蓄を支える設備」と捉えることで、市場の裾野はさらに広がる可能性がある。

一方、投資対象として見る場合には注意すべき点もある。宅配水事業は顧客獲得競争が激しく、広告宣伝費や販売促進費が収益を左右しやすい。また、天然水の製造・配送には物流コストがかかるため、燃料費、人件費、資材価格などの上昇は利益への圧力となる。実際、同社も販売促進費などの増加を利益の押し下げ要因として挙げている。そのため、今後は契約件数の増加だけでなく、顧客獲得コスト、継続率、製造原価、物流効率といった指標を総合的に見る必要がある。

さらに、同社は株主還元にも特徴がある。株主優待制度では、100株以上の株主を対象に、同社の宅配水サービスを選択肢として利用できる仕組みを設けている。自社サービスを株主優待に組み込むことは、商品やサービスへの理解を深めてもらう機会にもなる。水という日常消費財を扱う企業だけに、株主との接点をサービス利用へつなげられる点はユニークである。

2026年8月12日には、同社の2027年3月期第1四半期決算発表が予定されている。今後の投資判断では、契約件数の増加が続いているか、売上収益の伸びを利益成長につなげられているか、そして浄水型を含むウォーターサーバー事業をどのように拡大していくかが重要なチェックポイントとなる。

日本の水道水は品質が高く、飲料水そのものを購入する必然性が海外と比べて高いわけではない。それでも宅配水市場が成長してきた背景には、「買いに行かなくてよい」「冷水・温水をすぐ使える」「天然水を自宅で楽しめる」「備蓄にも使える」といった水以外の価値がある。プレミアムウォーターホールディングスは、その価値を定期配送というビジネスモデルに組み込んできた企業である。今後は天然水のブランド力に加え、浄水型を含むウォーターサーバーの進化、製造・物流コストの改善、既存顧客の継続率向上をどこまで進められるかが成長のカギとなる。宅配水市場が「水を売る市場」から「便利な生活インフラを提供する市場」へ変化するなか、同社はその変化を捉える代表的な上場企業として、引き続き注目される存在である。

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クリクラで切り拓く宅配水市場――ナックが挑むウォーターサーバーの次なる成長

宅配水・ウォーターサーバー市場が転換期を迎えるなか、東証プライム市場に上場するナック(9788)が展開する「クリクラ」に注目が集まる。ナックといえば、住宅設備やレンタル・環境衛生など複数の事業を展開する企業であるが、その中でも宅配水事業は長年にわたって同社を支えてきた主要事業の一つである。クリクラは、家庭やオフィスに水を届け、ウォーターサーバーで冷水・温水を手軽に利用できるサービスとして普及してきた。現在は従来型の宅配水だけでなく、浄水型ウォーターサーバーにも事業領域を広げており、水の宅配から「水を便利に使うためのサービス」へと進化を図っている。

ナックの宅配水事業の歴史は長い。クリクラ事業は2002年にスタートし、現在では全国に広がる製造・営業ネットワークを活用して宅配水を提供している。同社によれば、クリクラ事業では全国約500カ所の拠点を持ち、製造から販売、配送までを一貫して手掛けている。水は重量があるため、宅配水事業では物流網そのものが競争力になる。全国の顧客へ安定して配送するためには、製造拠点と営業・配送拠点を効率的に配置する必要があり、長年かけて構築してきたネットワークは後発企業が簡単には再現できない資産といえる。

クリクラの特徴は、宅配水だけでなくウォーターサーバーそのものを含めたサービスとして提供している点にある。ウォーターサーバーは冷水と温水をすぐに利用できるため、飲料水としてだけでなく、コーヒーやお茶、料理などにも利用できる。特に家庭では、重いペットボトルを購入して持ち帰る手間を減らせることが大きなメリットである。オフィスでも給水設備として利用でき、従業員の水分補給や来客対応など幅広い用途がある。こうした「水そのもの」ではなく「水を利用する便利さ」に価値を見いだすことが、ウォーターサーバー市場が一定の普及を維持してきた理由の一つである。

もっとも、市場環境は以前とは変わりつつある。従来の宅配水は、天然水やRO水などをボトルに詰めて顧客へ届ける方式が中心だった。しかし近年は、水道水をサーバーに注いでフィルターで浄水する「浄水型ウォーターサーバー」の存在感が高まっている。宅配型の場合、ボトルの受け取りや保管、交換が必要になるのに対し、浄水型は水道水を利用するため、ボトルの在庫を置く必要がない。消費者の節約志向が強まるなか、こうした手軽さやコスト面が支持を集めている。

この市場変化を受け、ナックも「クリクラ feel free」をはじめとする浄水型ウォーターサーバーを展開している。これはナックにとって重要な意味を持つ。従来の宅配水事業では「どの水を届けるか」が大きな競争軸だったが、浄水型では「どれだけ便利に、手軽に、経済的に水を利用できるか」が重要になる。つまり、天然水を届けるビジネスと、水道水を浄水して利用するビジネスを両輪とすることで、異なる消費者ニーズを取り込める可能性がある。

さらに、宅配水市場では「防災」という観点も重要になっている。日本は地震や豪雨などの自然災害が多く、飲料水の備蓄は防災対策の基本の一つである。宅配水は普段から消費する商品を定期的に補充する仕組みを構築できるため、ローリングストックとの相性がよい。ウォーターサーバーを利用する家庭では、水を常に一定量確保する習慣が形成されやすく、日常の利便性と災害時の備えを兼ねることができる。猛暑による熱中症対策への関心も、水分補給を手軽にできるウォーターサーバーにとって追い風となる。

一方、ナックの企業としての強みは、クリクラだけに依存していないことにもある。同社はクリクラ事業のほか、レンタル事業、建築コンサルティング事業、美容・健康事業、生活衛生関連事業などを展開している。住宅関連や環境衛生など、生活に密着した複数の事業を持つことで、一つの市場環境が悪化した場合でも収益源を分散できる。特に宅配水事業と住宅・生活関連サービスとの親和性は高く、家庭という共通の顧客接点を生かしたクロスセルにも可能性がある。

宅配水事業の収益性を考えるうえでは、顧客数だけを見るのでは不十分である。重要なのは、顧客を獲得するためにどれだけコストをかけているか、契約後にどれだけ長く利用してもらえるか、配送・製造コストをどこまで抑えられるかという点だ。水は重量物であるため、原材料だけでなく物流費の影響を受けやすい。人件費や燃料費、容器などの資材価格が上昇すれば、利益率を圧迫する可能性もある。そのため、全国の製造・配送ネットワークを効率的に運用できるかどうかが、クリクラ事業の競争力を左右する。

また、ウォーターサーバー市場では販売競争が激しくなっている。宅配水専業企業だけでなく、通信、ガス、住宅、家電などさまざまな企業が参入しており、消費者にとって選択肢は増えている。その結果、単に「水がおいしい」というだけでは差別化が難しくなっている。デザイン性の高いサーバー、省エネ性能、給水のしやすさ、メンテナンス性、料金体系など、総合的な使い勝手が選ばれる時代になっている。

そこでナックにとって重要になるのが、クリクラブランドの知名度と長年培ってきた顧客基盤をどのように次世代の商品へつなげるかである。宅配型を好む顧客には天然水・宅配水を提供し、ボトル交換やコストを重視する顧客には浄水型を提案する。こうした複数の選択肢を用意することによって、顧客のライフスタイルが変化しても関係を維持できる可能性がある。宅配水市場の成熟化に対応するうえで、「一つの商品を売り続ける」のではなく、「水に関するさまざまな選択肢を提供する」方向への転換がカギとなる。

投資対象としてナックを見る場合には、クリクラだけで企業価値を判断しないことも重要である。ナックは複数事業を展開するため、宅配水市場が伸びたからといって、そのまま業績全体が同じ割合で伸びるわけではない。一方で、クリクラという生活密着型サービスを持つことは、安定した顧客接点を形成するうえで強みとなる。今後、宅配水と浄水型ウォーターサーバーの双方で顧客基盤を拡大し、配送・製造の効率化によって利益率を高められれば、同事業はナックの中長期的な成長を支える柱になり得る。

宅配水・ウォーターサーバー市場は、「天然水を家庭へ届ける市場」から「家庭やオフィスの水環境を総合的に提供する市場」へ変化している。ナックはクリクラを通じてこの変化の中心に位置する企業の一つである。2002年から続く宅配水事業で築いたブランド、製造・配送ネットワーク、顧客基盤を持ちながら、浄水型ウォーターサーバーという新たな需要にも対応している点は注目される。今後の焦点は、宅配型と浄水型の双方で顧客のニーズを取り込みながら、物流や販売促進などのコストを管理し、どこまで収益力を高められるかにある。水という生活必需品を扱うからこそ、派手なブームだけではなく、日常生活に根付いた継続利用をどれだけ積み上げられるかが、同社の宅配水事業を評価するうえで重要なポイントになりそうだ。

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宅配水から生活インフラへ――TOKAIホールディングスが描く「水」の成長戦略

宅配水・ウォーターサーバー市場が転換期を迎えるなか、東証プライム市場に上場するTOKAIホールディングス(3167)は、地域密着型の生活インフラ企業として「水」を成長領域の一つに位置付けている。同社の特徴は、宅配水だけを専門にする企業ではなく、LPガス、都市ガス、情報通信、CATV、建築設備、アクア事業など、暮らしに関わる幅広いサービスを展開している点にある。そのため、宅配水事業単体の成長だけではなく、既存顧客との接点を生かして生活サービスを横断的に提供できることが、同社の競争力につながっている。

TOKAIグループのアクア事業では、「おいしい水の宅配便」「おいしい水の贈りもの うるのん」「しずくりあ」という3つのサービスを展開している。天然水を宅配する従来型のサービスに加え、水道水を利用する浄水型ウォーターサーバーも取り込んでいることが大きなポイントである。宅配水市場では、天然水を自宅へ届けてもらう利便性が支持される一方、ボトルの保管や交換、料金負担などを理由に、浄水型ウォーターサーバーを選ぶ消費者も増えている。TOKAIグループが宅配型と浄水型の双方を用意していることは、この市場構造の変化に対応する戦略といえる。

特に注目されるのが「うるのん」である。富士山の天然水などを家庭やオフィスへ届けるサービスとして展開され、天然水の品質を訴求できることが強みとなる。日本では水道水を利用できる環境が整っているため、単純に「飲み水を確保する」というだけならペットボトルや水道水でも代替できる。しかし、宅配水には「重い水を買って運ばなくてよい」「冷水や温水をすぐ利用できる」「定期的に水が届く」といった利便性がある。さらに、災害時の備蓄やローリングストックという観点からも、家庭に一定量の水を置いておく需要は根強い。

一方、「しずくりあ」は浄水型ウォーターサーバーとして、宅配型とは異なるニーズを取り込む役割を担う。水道水を給水して利用するため、水のボトルを定期配送する必要がなく、ボトル交換や保管場所の問題を抑えられる。消費者の節約志向が強まるなかでは、毎月一定の料金で水を利用できることや、ボトルを注文する手間が少ないことが魅力となる。天然水に価値を感じる層と、コストや手軽さを重視する層の双方にサービスを提供できる点は、TOKAIグループのアクア事業にとって重要な意味を持つ。

実際、TOKAIグループのアクア事業は顧客基盤を拡大している。会社資料によれば、2025年7月末時点で「おいしい水の宅配便」「うるのん」「しずくりあ」の3サービス合計顧客件数が20万件を突破した。宅配水市場全体が成熟化するなかでも顧客基盤を伸ばしていることは注目材料である。今後は新規顧客を獲得するだけでなく、既存顧客に対して複数の生活サービスを提案することで、顧客当たりの収益を高められるかが重要になる。

ここでTOKAIホールディングスならではの強みが生きてくる。TOKAIグループは「TLC(Total Life Concierge)」という考え方のもと、ガス、通信、宅配水などの生活関連サービスを提供している。例えば、すでにLPガスを利用している家庭に宅配水を提案したり、通信サービスの顧客に別の生活サービスを案内したりすることで、新規顧客をゼロから獲得するより効率的な販売が可能になる。宅配水専業企業とは異なり、既存顧客との長期的な関係を持つことが同社の大きな特徴である。

宅配水事業はストック型ビジネスとしての側面も持つ。一度契約した顧客が継続的に水を購入すれば、毎月の配送を通じて安定的な売上が積み上がる。もちろん解約率や顧客獲得コスト、配送費などの管理は必要だが、スポット販売型の飲料ビジネスとは異なる安定性を期待できる。TOKAIグループの場合、ガスや通信などの継続課金型サービスと宅配水を組み合わせることで、生活インフラ企業としての収益基盤をさらに厚くできる可能性がある。

ただし、宅配水市場には課題もある。水は重量があるため、製造・保管・配送にコストがかかる。燃料費や人件費、容器・資材価格などが上昇すれば、利益率に影響を与える可能性がある。また、ウォーターサーバー市場では競合企業が多く、天然水、RO水、浄水型など選択肢も増えている。消費者から見れば比較しやすい市場であるため、単純な価格競争に陥れば収益性が低下するリスクもある。TOKAIグループにとっては、地域密着の営業網や既存顧客基盤を生かしながら、顧客獲得・配送・サーバー管理の効率を高めることが重要となる。

また、ウォーターサーバーそのものの進化も市場の競争軸になっている。従来は冷水・温水を供給できることが主な価値だったが、現在では省エネ性能、デザイン、給水のしやすさ、設置スペース、チャイルドロックなど、家電としての完成度が求められている。浄水型の普及によって、「どの水を届けるか」だけではなく、「家庭でどのように水を使うか」が競争の中心になっている。TOKAIグループが宅配型と浄水型を併存させていることは、この変化への対応策として評価できる。

投資対象として同社を見る場合、アクア事業だけを切り取って判断するのは適切ではない。TOKAIホールディングスは、エネルギー、情報通信、CATV、建築設備など複数の事業を展開する企業であり、宅配水はその一部である。一方、複数の生活インフラサービスを持っているからこそ、宅配水事業の成長を他事業との相乗効果につなげられる可能性がある。今後、アクア事業の顧客数が増加し、さらにガス・通信などとのセット利用が進めば、顧客基盤全体の価値向上につながる。

宅配水・ウォーターサーバー市場は、「天然水を届ける市場」から「家庭の水環境を便利にする市場」へ変化している。TOKAIホールディングスは、長年培ってきた地域密着型の生活インフラ事業を背景に、宅配型の「うるのん」「おいしい水の宅配便」と浄水型の「しずくりあ」を組み合わせ、変化する需要に対応している。さらに、ガスや通信などとのクロスセルという独自の強みも持つ。今後の注目点は、アクア事業の顧客基盤をどこまで拡大できるかだけでなく、その顧客をグループの他サービスへつなげ、総合的な生活インフラ企業としての価値を高められるかにある。水は毎日の生活に欠かせないからこそ、景気変動に左右されにくい生活密着型サービスとしての潜在力を持つ。同社は、宅配水市場の変化と「生活インフラの複合化」という二つのテーマから注目できる銘柄といえる。

まとめ――「水を売る」から「暮らしを支える」へ

宅配水・ウォーターサーバー市場は、単に天然水や飲料水を販売する市場から、家庭やオフィスの水環境そのものを支える生活サービスへと進化している。従来型の宅配水には、天然水の品質や自宅まで届けてもらえる利便性という強みがある一方、浄水型にはボトル交換や保管の手間を抑えられるメリットがある。今後は、それぞれのニーズに応じたサービスを提供できるかどうかが競争力を左右するだろう。

プレミアムウォーターホールディングスは天然水の宅配を軸に顧客基盤を拡大し、ナックは「クリクラ」を通じて宅配水市場で長年の実績を積み重ねている。TOKAIホールディングスは宅配水に加えて浄水型サービスも展開し、ガスや通信など幅広い生活インフラとの相乗効果を狙う。3社の事業モデルは異なるものの、共通しているのは、水をきっかけとして顧客との継続的な関係を築こうとしている点である。

今後の注目点は、利用者数の拡大だけではない。顧客の継続率を高められるか、物流・製造コストを抑えられるか、浄水型を含む新たな需要を取り込めるか、そしてウォーターサーバーを「便利な家電」から「生活インフラ」へと定着させられるかが重要になる。猛暑、防災、節約、健康志向など、水を取り巻く需要は今後も多様化するとみられる。身近で普遍的な「水」を、どのようなサービスとして提供し、継続的な収益につなげるのか。変わりゆく水市場を読み解くうえで注目したい上場企業である。

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