
広島県は、世界遺産や平和都市としてのイメージが強い一方で、日本を代表する「ものづくり県」としても確固たる地位を築いている。戦国時代には毛利氏の本拠地として栄え、近代には瀬戸内海の海運や造船業を背景に工業都市へと発展してきた。現在では、自動車や半導体、化学、食品包装など多彩な産業が集積し、世界市場で存在感を示す企業が数多く本社を構えている。広島県の歴史や観光、知っていると話したくなるトレビアを紹介するとともに、食品容器のリサイクルで循環型社会を支えるエフピコ、半導体製造の自動化を支えるローツェ、世界の海運を陰から支える中国塗料の3社を取り上げ、広島県が育んできた技術力と産業の魅力に迫る。
| 企業名 | 証券コード | 本社所在地 | 主な事業 |
|---|---|---|---|
| マツダ | 7261 | 広島市 | 自動車メーカー |
| エフピコ | 7947 | 福山市 | 食品トレー・食品容器メーカー |
| ローツェ | 6323 | 福山市 | 半導体・FPD製造装置、搬送ロボット |
| 中国塗料 | 4617 | 大竹市 | 船舶用・工業用塗料メーカー |
| ダイキョーニシカワ | 4246 | 東広島市 | 自動車用樹脂部品メーカー |
| 北川鉄工所 | 6317 | 府中市 | 工作機械・建設機械・鋳造 |
| ヒロセ通商 | 7185 | 広島市 | FX取引サービス・金融商品取引業 |
| ポエック | 9264 | 福山市 | ポンプ・送風機・防災関連機器 |
| 自重堂 | 3597 | 福山市 | 作業服・ユニフォームメーカー |
| ヤマネホールディングス | 2144 | 広島市 | 建設・介護・教育事業 |
| ウッドワン | 7898 | 廿日市市 | 住宅建材・木質内装材メーカー |
広島――歴史と平和、瀬戸内の絶景が育んだものづくり県の魅力
広島県と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのは原爆ドームや厳島神社ではないだろうか。しかし広島は、それだけでは語り尽くせない奥深い魅力を持つ県である。古くから瀬戸内海の海上交通の要衝として栄え、戦国時代には毛利氏の本拠地として中国地方最大の勢力を築いた。そして近代には軍港と工業都市として発展し、戦後は平和都市として世界にその名を知られるようになった。さらに現在では、自動車産業や半導体関連産業など日本のものづくりを支える企業が集積する地域でもある。歴史、文化、観光、産業が見事に調和した広島県の魅力を探ってみたい。
広島の歴史を語る上で欠かせない人物が、戦国武将の毛利元就である。元就はわずかな領地から勢力を拡大し、中国地方の大半を支配するまでになった名将として知られる。彼の教えとして有名な「三本の矢」の逸話は、兄弟や家族の結束を説く話として現在でも語り継がれている。ただし、この逸話は後世に脚色された可能性が高いともいわれている。それでも「団結することの大切さ」を象徴する物語として、日本人に広く浸透していることは間違いない。
江戸時代になると広島藩は約42万石の大藩として栄え、広島城の城下町は中国地方有数の都市へと発展した。広島城は「鯉城(りじょう)」という別名でも知られ、この「鯉」が現在のプロ野球球団・広島東洋カープの愛称「カープ」の由来になったといわれている。広島市内には今でも「鯉城通り」など、その名残を感じられる場所が数多く残されている。
近代に入ると広島は軍都として大きく発展する。日清戦争では一時的に帝国議会が広島へ移され、日本の「臨時首都」となったこともある。現在ではあまり知られていないが、日本の政治の中心が一時的に東京から広島へ移ったという歴史は、大きなトレビアの一つである。
しかし、広島の歴史を語るうえで避けて通れないのが1945年8月6日の原子爆弾投下である。一発の原子爆弾によって街は壊滅し、多くの尊い命が失われた。その悲劇を伝えるため保存された原爆ドームは世界遺産として登録され、隣接する広島平和記念公園には世界中から多くの人々が訪れる。広島は復興を果たしただけでなく、「平和都市」として核兵器廃絶を訴え続ける特別な役割を担っているのである。
観光地としての広島を代表するのが、世界文化遺産である厳島神社である。海に浮かんで見える大鳥居は日本を代表する絶景として海外でも高い人気を誇る。潮の満ち引きによって景色が大きく変化し、満潮時には海上に浮かぶように見え、干潮時には歩いて鳥居の近くまで行くことができる。このように一日に二つの表情を楽しめる神社は世界的にも珍しい。
宮島にはもう一つ有名な存在がある。それが島内を自由に歩くシカである。奈良公園のシカほど知られてはいないが、宮島のシカも神の使いとして古くから大切にされてきた。ただし現在は野生動物として扱われており、以前のように餌やりは推奨されていない。観光客との適切な距離を保ちながら共生している点も興味深い。
広島県は食文化も非常に豊かである。全国的に有名なのが広島風お好み焼きだ。一般的なお好み焼きとは異なり、生地の上にキャベツやもやし、豚肉、中華麺などを重ねて焼き上げるスタイルが特徴である。実は広島市内には数百軒ともいわれるお好み焼き店があり、「一人一店お気に入りがある」と言われるほど地元に根付いたソウルフードとなっている。また、瀬戸内海で育つカキは全国トップクラスの生産量を誇り、冬になると県内各地で焼きガキやカキ鍋を楽しめる。
さらに広島は「レモン王国」としても知られる。特に瀬戸内海に浮かぶ生口島をはじめとする島々では国産レモンの栽培が盛んで、日本国内の生産量でも上位を占めている。レモンを使ったスイーツや飲料、調味料など、ご当地グルメも数多く誕生している。
産業面では、日本を代表する自動車メーカーであるマツダの存在が圧倒的である。本社と主力工場を広島市と府中町に構え、地域経済を長年支えてきた。独自技術であるロータリーエンジンへの挑戦や、「走る歓び」を追求するクルマづくりは世界中のファンを魅了している。また近年はローツェをはじめとする半導体製造装置メーカーや、エフピコのような食品トレーのリーディングカンパニーなど、世界市場で活躍する企業も数多く生まれている。広島県は観光地であると同時に、日本有数のものづくり県でもあるのだ。
広島県は、戦国時代から現代まで日本史の重要な舞台となり続けてきた土地である。世界遺産や平和への願い、美しい瀬戸内海の風景、豊かな食文化、そして世界へ羽ばたく企業群。その一つひとつが広島の個性を形づくっている。歴史を学び、絶景を楽しみ、地元グルメを味わい、産業の力強さに触れる――広島は何度訪れても新しい発見がある、日本を代表する魅力あふれる県なのである。
食品トレーから循環型社会へ――エフピコが築いた「使い捨てない容器」のビジネス
スーパーで刺身や肉、総菜を買うと、ほとんどの商品がプラスチック製の食品トレーに入っている。普段は何気なく手にしているこの容器だが、その多くを手掛けているのが広島県福山市に本社を置くエフピコである。同社は食品トレーや弁当容器の国内最大手として知られ、日本全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストア、食品メーカーの売り場を支えている。しかし、エフピコの真価は単に容器を製造しているだけではない。「使い終わった容器を再び容器へ生まれ変わらせる」という循環型ビジネスモデルを築き上げ、日本のリサイクル文化をリードしてきた企業なのである。
エフピコの創業は1962年。当時の日本では高度経済成長を背景に、スーパーマーケットという新しい販売形態が全国へ急速に広がり始めていた。それまで魚や肉は対面販売が一般的だったが、セルフサービス方式が普及すると、食品を衛生的に包装し、そのまま陳列できる容器が必要となる。この時代の変化を捉えたエフピコは、食品トレーの開発・製造に注力し、市場を拡大していった。
現在では、食品トレーは単なる包装材ではない。鮮度を引き立てる色や柄、商品の高級感を演出するデザイン、持ち運びやすさ、電子レンジ対応など、多様な機能が求められる。刺身には黒や木目調の高級感あるトレー、精肉には赤色が映える色合い、総菜には中身が見やすい透明容器など、売り場の演出まで考え抜かれている。エフピコはこうした容器デザインの提案力にも優れ、小売業の販売促進を支える存在となっている。
同社の最大の特徴は、食品容器メーカーでありながら「リサイクル企業」とも呼べる事業モデルにある。日本では1990年代以降、プラスチックごみ問題への関心が高まり、「使い捨て」から「資源循環」への転換が社会的な課題となった。その流れを先取りする形で、エフピコは全国のスーパーマーケットと連携し、使用済み食品トレーを店頭で回収する仕組みを整備した。
買い物帰りにスーパーの入り口付近で、白い食品トレーや透明容器を回収するボックスを見かけたことがある人も多いだろう。あの回収システムの普及を長年支えてきたのがエフピコである。回収されたトレーは工場で洗浄・選別・粉砕され、新たな食品トレーへと再生される。この「トレーtoトレー」という水平リサイクルは、単にプラスチックを別用途へ再利用するのではなく、食品容器を再び食品容器へ戻す高度なリサイクル技術として高く評価されている。
さらに近年では、透明なPET容器についても「ボトルto透明容器」「透明容器to透明容器」といった循環システムを構築し、再生プラスチックの利用拡大を進めている。食品容器は衛生基準が非常に厳しいため、再生材を安全に使用するには高度な品質管理が欠かせない。エフピコは長年培った技術とノウハウによって、その課題を克服してきた。
実は食品トレーには意外な工夫が数多く盛り込まれている。例えば刺身用トレーにはドリップが目立ちにくい加工が施され、肉用トレーには赤身がより鮮やかに見える色彩設計が採用されることがある。また、容器の形状一つで輸送効率や陳列効率も変わるため、物流コストや店舗オペレーションまで考慮した設計が行われている。食品トレーは決して「ただの容器」ではなく、販売戦略や食品ロス削減にも影響を与える重要な製品なのである。
エフピコの強みは、生産から物流までを一体化した供給体制にもある。同社は全国各地に製造拠点や物流センターを配置し、スーパーマーケットや食品メーカーへ迅速に商品を届ける仕組みを構築している。食品売場では季節やイベントによって必要な容器が大きく変わる。年末年始には寿司や刺身用、花見シーズンには弁当用、クリスマスにはオードブル用など需要が急増するが、それらへ柔軟に対応できる供給能力が競争力につながっている。
また、環境への取り組みだけではなく、多様な人材活用にも積極的である点も特徴だ。障がい者雇用を長年推進し、グループ会社では多くの障がい者が食品容器の選別や物流業務などで活躍している。単なる法定雇用率の達成ではなく、誰もが働きやすい職場づくりを進めてきたことでも高く評価されている。
食品業界では近年、テイクアウト需要や中食市場の拡大が続いている。共働き世帯や単身世帯の増加、高齢化などを背景に、スーパーやコンビニの総菜市場は成長を続けており、それに伴って食品容器の需要も拡大している。一方で、環境負荷低減への要求は年々高まっており、容器メーカーにはさらなる軽量化や再生材利用、生分解性素材への対応などが求められている。エフピコはこうした社会課題を事業機会と捉え、研究開発を継続している。
派手な製品を作る企業ではない。しかし、毎日の食卓を陰で支え、全国のスーパーの売り場づくりを支え、さらに循環型社会の実現にも貢献する存在として、エフピコは日本を代表する「縁の下の力持ち」といえる企業である。私たちが食品を購入した後、何気なく回収ボックスへ入れる一枚のトレー。その小さな行動の先には、エフピコが半世紀以上かけて築き上げた資源循環の仕組みがある。食品トレーという身近な製品を通じて、便利さと環境保全を両立させる挑戦は、これからも日本の持続可能な社会づくりを支えていくだろう。
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半導体工場の「縁の下の力持ち」――ローツェが世界で選ばれる理由
スマートフォンやパソコン、AIサーバー、自動車、家電製品――現代社会は半導体なしでは成り立たない。そして半導体の需要が急速に拡大する中、その製造装置メーカーにも大きな注目が集まっている。しかし、半導体業界を支える企業の中には、一般にはあまり知られていないにもかかわらず、世界市場で高いシェアを持つ企業が数多く存在する。広島県福山市に本社を置くローツェも、その代表格である。同社は半導体製造装置の中でも、シリコンウエハーを正確かつ高速に搬送するロボットや自動搬送システムを得意とし、「半導体工場の縁の下の力持ち」として世界中の最先端工場で活躍している。
ローツェの設立は1985年。創業当初は産業用ロボットや自動化装置の開発からスタートしたが、やがて成長著しい半導体市場に着目し、ウエハー搬送ロボットの開発へ本格参入した。現在では日本だけでなく、韓国、台湾、中国、ベトナムなど世界各地に拠点を構え、グローバル企業として事業を展開している。
半導体製造は、数百にも及ぶ工程を経て一枚のシリコンウエハーから多数のチップを作り出す非常に精密な作業である。回路形成、成膜、エッチング、洗浄、検査などの工程が何度も繰り返されるが、そのたびにウエハーを次の装置へ運ばなければならない。この搬送を人の手で行えば、微細なほこりや振動によって歩留まりが低下してしまう。そのため現在の半導体工場では、人が直接触れることなくロボットがウエハーを搬送することが当たり前になっている。
ここで活躍するのがローツェの搬送ロボットである。同社のロボットは、極めて高い位置決め精度と高速動作を両立し、クリーンルーム内で24時間365日安定して稼働する。半導体工場では、ほんのわずかな振動や位置ずれが製品不良につながるため、「速い」だけではなく「正確」で「壊れにくい」ことが何より重要になる。ローツェは長年培ってきた精密制御技術によって、この難しい要求を満たしてきた。
半導体製造装置というと、回路を描く露光装置が注目されることが多い。特に最先端分野では、オランダのASMLが製造するEUV露光装置が世界的に知られている。しかし、どれほど高性能な露光装置があっても、ウエハーを正確に運ぶ搬送システムがなければ製造ラインは動かない。半導体工場は数百種類もの装置が連携して初めて成り立つ巨大なシステムであり、その中でローツェは欠かせない役割を担っているのである。
近年はAIブームによって半導体市場が再び急成長している。生成AIやデータセンター向けGPU、高性能CPUなどの需要拡大に伴い、世界中で半導体工場の新設や増設が進んでいる。こうした設備投資の増加は、搬送ロボットや自動化装置への需要も押し上げる。ローツェはその恩恵を受ける企業として投資家からも高い注目を集めている。
また、同社は単なるロボットメーカーではない。半導体工場全体の搬送システムを設計・構築する能力を持ち、ストッカーやロードポート、自動搬送装置など幅広い製品を展開している。近年ではライフサイエンス分野にも進出し、医療検査装置や研究施設向け自動化装置の開発も進めるなど、精密搬送技術を新たな分野へ応用している。
ローツェの強みの一つが、海外生産体制である。特にベトナムでは早い段階から生産拠点を整備し、優秀な技術者を育成してきた。現在では同国が同社の重要な製造拠点となっており、コスト競争力と生産能力の両立を実現している。日本企業が海外拠点を活用しながら高品質な製品を供給する成功例としても知られている。
半導体産業は景気変動の影響を受けやすい業界でもある。スマートフォンやパソコンの需要が落ち込めば設備投資も減速し、製造装置メーカーの業績も変動しやすい。しかし、中長期的に見るとAI、自動運転、IoT、5G・6G通信、産業用ロボットなど、半導体の利用分野は今後も拡大が見込まれている。社会全体のデジタル化が進む限り、半導体製造装置への需要も増えていく可能性が高い。
実は私たちが日常で使うスマートフォンにも、自動車にも、ゲーム機にも、ローツェの装置によって搬送されたウエハーから作られた半導体が使われているかもしれない。しかし消費者がローツェという社名を目にする機会はほとんどない。それでも世界の半導体メーカーから信頼され、最先端工場で採用され続けることこそが、同社の技術力を物語っている。
広島県といえば自動車メーカーのマツダを思い浮かべる人が多いが、実は半導体産業でも世界と戦う企業が育っている。その象徴がローツェである。表舞台に立つことは少なくても、最先端の半導体製造現場では欠かせない存在として、世界中のデジタル社会を支え続けている。AI時代の到来によって半導体の重要性がさらに高まる中、ローツェは日本のものづくりの底力を示す企業として、今後も国内外で存在感を高めていくことだろう。
世界の船を守る「見えない技術」――中国塗料が支える海運と環境の未来
私たちが日常的に使う衣料品や家電製品、食料、資源の多くは、巨大な貨物船によって世界中を行き来している。世界の貿易量の約8~9割は海上輸送によって支えられているといわれるが、その船が安全かつ効率的に航行するためには、船体を守る特殊な塗料が欠かせない。その分野で世界的な存在感を示しているのが、広島県大竹市に本社を置く中国塗料である。同社は船舶用塗料を主力事業とし、日本だけでなく世界各国の造船所や船会社から高い評価を受けるグローバル企業である。華やかな製品ではないものの、世界の物流を陰で支える「見えない技術」を提供し続けている。
中国塗料の創業は1917年。100年以上の歴史を持つ老舗企業であり、瀬戸内海沿岸の造船業とともに発展してきた。広島県は古くから造船業が盛んな地域であり、多くの造船所や海運関連企業が集積している。そうした地域産業を背景に、中国塗料は船舶専用塗料の研究開発を進め、日本有数の船舶塗料メーカーへと成長した。
一般的に「塗料」と聞くと、建物や自動車の色を付けるものを想像する人が多い。しかし船舶用塗料の役割は、単に船を美しく見せることではない。最大の目的は、海水による腐食から船体を守ることである。海水には塩分が含まれており、鋼鉄製の船は何もしなければ急速に錆びてしまう。さらに、海中ではフジツボや海藻、貝類などの海洋生物が船底に付着する。これらが増えると船の抵抗が大きくなり、燃費が悪化し、航行速度も低下してしまう。
そこで重要になるのが「防汚塗料」である。中国塗料はこの分野で世界トップクラスの技術力を持ち、海洋生物が付きにくい特殊な塗膜を開発してきた。船底を滑らかな状態に保つことで、水の抵抗を減らし、燃料消費量を抑えることができる。燃費が改善されれば二酸化炭素(CO₂)の排出量も削減できるため、船舶用塗料は環境対策の面でも重要な役割を果たしている。
実は、船底にフジツボなどが大量に付着すると、燃料消費量が10~20%以上悪化するケースもあるとされる。世界中を航行する大型コンテナ船やタンカーでは、この差が年間で数千万円から数億円規模の燃料コストにつながることも珍しくない。そのため船会社にとって、高性能な船底塗料は単なる消耗品ではなく、経営効率を左右する重要な投資なのである。
中国塗料はこうしたニーズに応えるため、長年にわたり防汚性能や耐久性の向上に取り組んできた。近年では塗膜表面をより滑らかに保ち、水との摩擦抵抗そのものを低減する技術も開発している。海洋生物が付きにくいだけでなく、船が水中をよりスムーズに進めるよう工夫されており、省エネルギー性能を高める製品として世界市場で採用が広がっている。
一方で、船舶用塗料には環境問題も深く関係している。かつては強力な防汚効果を持つ有機スズ化合物を含む塗料が広く使用されていた。しかし、この成分が海洋生態系へ悪影響を及ぼすことが明らかとなり、国際的な規制によって使用が禁止された。これを契機に、船舶用塗料メーカーは環境負荷を抑えながら高い性能を実現する新しい技術開発を迫られることになった。
中国塗料はこうした変化にも積極的に対応し、新しい防汚技術の開発を進めてきた。環境規制は年々厳しくなっているが、それは同時に技術力を持つ企業にとって競争力を発揮する機会でもある。同社は研究開発への継続的な投資によって、世界の海運業界から厚い信頼を獲得している。
また、中国塗料の事業は日本国内だけにとどまらない。世界の造船市場は韓国、中国をはじめとするアジア地域へシフトしており、同社も海外生産・販売体制を積極的に整備している。海外拠点では現地の造船所や船会社へ迅速なサービスを提供し、グローバル市場での競争力を高めている。船は世界中の港を行き来するため、メンテナンス体制も国際的なネットワークが欠かせない。中国塗料はこうしたアフターサービスまで含めた総合力を強みとしている。
近年、海運業界では脱炭素化への取り組みが急速に進んでいる。国際海事機関(IMO)は温室効果ガス排出削減目標を掲げ、船会社には燃費改善やCO₂削減がこれまで以上に求められるようになった。新燃料船の開発も進む一方で、既存船の燃費改善はすぐに取り組める有効な対策である。その意味でも、高性能な船底塗料への需要は今後さらに高まる可能性がある。
中国塗料は船舶用塗料だけでなく、工業用塗料やコンテナ用塗料など幅広い分野にも事業を展開している。しかし、その根幹にあるのは「表面を科学する」という技術力である。わずか数百ミクロンの塗膜によって鉄を守り、燃費を改善し、環境負荷まで低減する。その技術は決して目立つものではないが、世界の物流を支える重要なインフラの一部となっている。
私たちは港に停泊する巨大な船を見ることはあっても、その船底にどのような技術が使われているかを意識する機会はほとんどない。しかし、その見えない場所には中国塗料が長年培ってきた技術が息づいているかもしれない。船が安全に航海し、世界中へ物資を届け、環境負荷を少しでも減らす。その実現を陰で支えているのが、中国塗料という企業なのである。派手さはなくとも、世界経済と持続可能な海運を支える存在として、同社はこれからも日本のものづくりを代表する技術企業であり続けるだろう。
まとめ
広島県は、原爆ドームや厳島神社といった歴史・文化遺産だけでなく、世界の産業を支える企業が数多く生まれた地域でもある。エフピコは食品容器のリサイクルを通じて循環型社会の実現に貢献し、ローツェは半導体工場の自動化技術でデジタル社会を支え、中国塗料は船舶用塗料によって世界の物流と環境負荷低減を支えている。いずれも普段は目立たない存在だが、人々の暮らしや産業に欠かせない技術を持つ企業ばかりである。歴史と平和、豊かな自然、そして世界に誇るものづくり。この多彩な魅力こそが、広島県が国内外から高い評価を受け続ける理由なのである。
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