10月IPOの注目株!「福祉」と「AI」で挑む異色の2銘柄

10月IPOの注目2銘柄――「記録DX」と「障害福祉」で異彩を放つ新規上場企業

2026年10月のIPO市場では、異なる分野で成長を目指す2社が登場します。10月13日に名古屋証券取引所ネクスト市場へ上場予定のアイビスホールディングス(9334)と、10月15日に東京証券取引所グロース市場へ上場予定のルクレ(648A)です。現時点のIPOスケジュールでは、10月の新規上場予定としてこの2社が掲載されています。

アイビスホールディングスは、障害者の就労を支援する「就労継続支援B型事業所」を運営する企業です。一般企業などで働くことが難しい人に対して、雇用契約を結ばずに作業や訓練の機会を提供するB型事業を軸に、拠点を展開しています。少子高齢化や人手不足が進む日本では、障害者の社会参加や就労機会の拡大は重要な社会課題となっており、福祉とビジネスを結び付ける同社の事業モデルは、今後の社会インフラを考えるうえでも興味深いテーマです。10月13日の上場を予定しており、名証ネクスト市場に加えて福岡証券取引所Q-Boardへの上場も予定されています。

一方のルクレは、1995年創業の「記録DX」企業です。デバイスとAI、クラウドを組み合わせ、建設現場などの写真や映像を効率的に記録・管理・共有するサービスを展開しています。代表的なサービスが建設業向けの「蔵衛門」で、長年にわたって蓄積した現場データや顧客基盤を強みに、AIを活用した業務効率化を進めています。東京証券取引所によれば、事業内容は「デバイス×AIクラウド型の『記録DXプラットフォーム』」。10月15日に東証グロース市場への上場が予定されています。

この2社は事業領域こそ大きく異なりますが、「現場」を支えるという共通点があります。アイビスホールディングスは障害のある人が社会とつながり、働く機会を提供するリアルな現場を運営しています。一方、ルクレは建設などのフィジカル産業に存在する膨大な記録をデジタル化し、AIによって現場の生産性向上を目指します。

AIや半導体、生成AIなどが株式市場の主要テーマとなるなか、今回の2社はそれとは少し違った角度から日本社会の変化を映し出しています。人手不足や社会保障、現場のDXといった、これからの日本経済に直結するテーマを事業に取り込んでいる点は見逃せません。10月IPOの2銘柄を通じて、「成長企業」と「社会課題」の接点を探ってみるのも面白いでしょう。

資産運用に興味がある方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 初心者向け無料講座:お金のプロが教える「毎月収入を得る投資の始め方」

就労継続支援B型事業とは?A型・就労移行支援との違いから見る「働く場」の役割

障害のある人の「働く」を支える制度として、近年注目されているのが「就労継続支援B型」です。名前は聞いたことがあっても、一般企業への就職を目指す「就労移行支援」や、雇用契約を結んで働く「就労継続支援A型」と何が違うのか、分かりにくいと感じる人も少なくありません。

就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業などで働くことが難しく、雇用契約に基づく就労も難しい人に対して、就労や生産活動の機会を提供しながら、知識や能力の向上を支援することを目的としています。厚生労働省も、B型を「非雇用型」と位置付けています。

最大のポイントは、「働くこと」だけを目的にしていない点です。もちろん作業や生産活動を通じて収入を得ることも重要ですが、それと同時に、生活リズムを整える、人と関わる、社会との接点を持つ、自分に合った仕事を見つけるといった役割も担っています。つまりB型は、一般企業での就職だけをゴールとせず、一人ひとりの状態に合わせて「働くこと」と「生活」を支える場なのです。

では、A型や就労移行支援とはどのように違うのでしょうか。

サービス雇用契約主な対象・目的受け取るもの
就労移行支援なし一般企業への就職を目指す人原則として賃金・工賃ではない
就労継続支援A型あり雇用契約に基づいて働ける人賃金
就労継続支援B型なし雇用契約による就労が難しい人工賃
一般就労あり企業などで働く人給与

就労移行支援は、一般企業などへの就職を目指し、一定期間の訓練を受けるサービスです。一方、A型は事業所と利用者が雇用契約を結び、働く機会を提供します。これに対してB型は雇用契約を結ばないため、勤務時間や作業量などについて、比較的柔軟な働き方をしやすいことが特徴です。

B型では、例えば農作業、食品加工、パンや菓子の製造、清掃、軽作業、商品の梱包、パソコン作業、アート作品の制作、地域企業からの受託作業など、事業所によってさまざまな仕事が行われています。近年では、単純作業だけでなく、デザイン、動画制作、IT関連など、利用者の得意分野を生かそうとする事業所も見られます。

そしてB型を語るうえで重要なのが「工賃」です。B型では給与ではなく「工賃」という形で利用者に支払われます。法令上、工賃は生産活動による収入から必要経費を差し引いた額に相当する金額を利用者に支払う仕組みとされています。事業者には工賃水準を高める努力も求められています。

ここがA型との大きな違いです。A型では雇用契約を結ぶため、基本的には労働者として賃金を受け取ります。一方、B型では雇用契約がないため、工賃という形になります。そのため「B型=一般企業より給与が低い仕事」と単純に考えるのは適切ではありません。そもそも制度の目的が異なるからです。

B型の価値は、収入額だけでは測れません。例えば、毎週決まった日に事業所へ通うことで生活リズムが安定したり、他者との交流が増えたり、作業を通じて「自分にもできることがある」という自信を持てたりすることがあります。こうした社会参加の機会そのものが、B型の重要な役割です。

一方で、課題もあります。工賃水準は事業所によって差があり、「働くことによって得られる収入」として十分なのかという問題は常にあります。また、利用者の希望よりも事業所側の作業内容が優先されてしまえば、本来の「その人に合った働き方を支援する」という目的から離れてしまう可能性もあります。

このため、B型事業所を見る際には、単純に「工賃が高いか低いか」だけで判断するのではなく、どのような仕事があるのか、利用者の希望をどの程度反映しているのか、支援員がどのようにサポートしているのか、一般就労への移行を希望する人への支援があるのかなど、多面的に見る必要があります。

制度そのものも変化しています。厚生労働省では、B型の基本報酬について平均工賃月額を基準とする仕組みを設けています。令和6年度の報酬改定では、障害特性などによって利用日数が少ない人を多く受け入れる事業所にも配慮するため、平均工賃月額の算定方法が見直されました。さらに令和8年6月施行の見直しも行われており、B型事業所には工賃向上と利用者支援の両立が引き続き求められています。

また、B型事業は利用者だけでなく、事業者や地域社会にとっても意味があります。地域企業から仕事を受注することで、障害者が地域経済の一員として活動する機会を作ることができます。例えば農業と福祉を組み合わせたり、地域の店舗の商品を製造したり、企業の軽作業を請け負ったりすることで、「福祉施設」という枠を超えた地域との接点が生まれます。

今後は、単に「作業を提供する場所」から、「利用者の能力や希望を生かして仕事を生み出す場所」への進化が重要になるでしょう。デジタル化やECの普及によって、従来は地域や身体的な制約から難しかった仕事にも挑戦できる可能性があります。実際、B型の仕事は事業所ごとに大きく異なり、事業モデルや支援の質が利用者の経験にも影響します。

就労継続支援B型は、「働けるか、働けないか」という二択の間にある重要な選択肢です。一般企業でフルタイム勤務をすることが難しくても、週に数日、短時間から働くことで社会とつながることはできます。逆に、B型で経験を積んだ後、A型や一般就労など次のステップを目指すことも可能です。

つまりB型の本質は、「就職できない人のための場所」ではありません。一人ひとりの障害特性や体調、生活状況、希望に合わせて、無理なく社会参加しながら「働く」を経験できる場所です。A型が「雇用契約を結んで働く場」、就労移行支援が「就職に向けた訓練の場」だとすれば、B型は「自分に合ったペースで働くことを経験し、生活と仕事の土台をつくる場」と位置付けることができます。

障害者の就労をめぐる環境が変化するなか、B型事業には、工賃を高めることだけでなく、利用者が「ここで働いてよかった」と思える仕事や環境を提供することが求められています。今後は、福祉とビジネス、地域社会をどのように結びつけるかが、B型事業の大きなテーマになりそうです。

資産運用で失敗したくない方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」

アイビスホールディングス――「働く」を支える就労継続支援B型で成長を目指す

障害福祉サービスへの関心が高まるなか、就労継続支援B型事業を主力とする企業として注目されるのがアイビスホールディングスです。証券コードは9334。同社は障害者総合支援法に基づく就労継続支援B型事業所を運営し、利用者がそれぞれのペースで訓練や作業に取り組みながら、一般就労に向けた支援を受けられる環境を提供しています。現在は東海、関東、九州を中心に「アイビス」ブランドを展開しており、障害福祉を一つの事業として成長させようとしている点が特徴です。

そもそも就労継続支援B型とは、一般企業などで働くことが難しい障害者に対して、雇用契約を結ばずに就労や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスです。利用者は自分の体調や能力などに合わせたペースで作業に取り組むことができ、生活リズムを整えたり、社会との接点を持ったり、将来的な一般就労につなげたりする役割もあります。アイビスホールディングスは、このB型事業を単なる作業場所としてではなく、「働くことを通じて社会との関わりを広げる場」として展開していることがポイントです。

同社の経営理念は「すべてのあなたをHAPPYに」。障害のある利用者だけでなく、従業員や取引先など、関係するステークホルダー一人ひとりが自身の幸福を追求できる環境を提供することを掲げています。また、「福祉を一流の仕事にする」ことを使命として掲げ、福祉業界で働く人の給与や待遇などの改善にも取り組んでいます。

事業展開を見ると、アイビスの特徴は地域ごとに拠点を広げていることです。グループ会社にはIBIS東海、関東IBIS、九州IBISがあり、東海地区を中心に、東京都や福岡県にも施設を展開しています。2026年7月末時点では、愛知県を主力として東京都、福岡県で計15施設を展開しているとされています。さらに、利用者が施設外で作業する「施設外作業所」も展開しています。

この施設外作業所は、B型事業の可能性を考えるうえで興味深い取り組みです。施設の中だけで作業するのではなく、企業などから委託された仕事を実際の現場で行うことで、利用者がより実社会に近い環境で作業する機会をつくります。企業との接点が増えれば、障害者の就労機会を広げるだけでなく、企業側にとっても業務の一部を外部に委託できるメリットがあります。福祉と企業活動をつなぐ役割を担う点に、同社の事業モデルの特徴があります。

さらに、アイビスでは利用者が手掛けた製品を販売する事業にも取り組んでいます。利用者が作った商品を世の中に届けることで、単に「作業をする」だけではなく、「自分たちが生み出したものを誰かが購入する」という社会との接点を生み出しています。同社はこうした販売機会の創出によって、利用者と社会との関わりを広げることを目指しています。

企業として見た場合、同社の大きな特徴は、障害福祉サービスの中でもB型事業に経営資源を集中していることです。2025年10月期の売上高構成では、就労継続支援B型事業が90.7%を占め、施設外作業所事業が8.1%、その他が1.3%となっています。つまり、アイビスを理解するうえでは、B型事業そのものの成長性や制度環境を見ることが欠かせません。

一方、この集中度の高さは強みであると同時にリスクにもなります。同社自身も、B型事業の売上構成比が高いことで、障害福祉政策や報酬改定の影響を受ける可能性を課題として認識しています。また、福祉サービスは人による支援が中心となるため、人材の確保・育成・定着も重要な経営課題です。同社は研修の強化、システム導入による業務負担の軽減、働きやすい職場環境の改善などを進めています。

特に重要なのが、障害福祉制度への対応です。B型事業所は、一般的な小売業や製造業とは異なり、国の障害福祉政策や報酬制度と密接に関係しています。制度変更によって事業所の収益構造が変わる可能性があるため、施設数を増やすだけではなく、利用者へのサービス品質を維持しながら効率的に運営することが求められます。アイビスは「アイビスルールブック」を制定し、従業員の行動指針や施設での規則を整備するなど、サービスの標準化にも取り組んでいます。

成長戦略という観点では、地域展開が一つのポイントになります。過去には東海圏を中心としていた同社ですが、関東、九州へと進出。2024年には九州圏での事業展開を目的として株式会社九州IBISを設立しました。地域ごとに子会社を設けることで、各地域の特性を踏まえながら施設展開を進める狙いがうかがえます。

また、B型事業に依存しすぎない収益構造をつくることも今後のテーマとなりそうです。同社は就労継続支援B型事業に加えて、リワーク事業、古物事業・通販事業などにも取り組んでいます。B型事業を成長の中心に据えつつ、新たな収益源を育てることで、制度改定などによる影響を分散することが期待されます。

投資対象として見る場合には、単純な「福祉関連株」という捉え方だけでは不十分です。施設数の増加、利用者数の推移、稼働率、工賃、スタッフの確保、既存施設の収益性、新規出店の効率などを確認する必要があります。また、B型事業は公的な報酬制度との関係が強いため、国の障害福祉政策や報酬改定の方向性も重要なチェックポイントです。

なお、アイビスホールディングスをめぐっては、2026年9月に大きな動きがありました。東京証券取引所は9月7日、同社株式について上場廃止を決定し、TOKYO PRO Marketでの上場廃止日は2026年10月12日としています。一方、東証の発表では、10月13日以降も国内他市場で上場が継続される予定とされています。そのため、証券コード9334を取り上げる際には、市場区分の変更にも注意が必要です。

アイビスホールディングスの面白さは、「福祉」と「企業経営」を結びつけようとしているところにあります。障害者の就労支援は社会的意義が大きい一方、事業として継続するためには安定した施設運営、人材育成、利用者の確保、企業からの仕事の受託など、さまざまな経営力が必要です。アイビスはB型事業を軸に拠点を増やし、施設外作業や商品販売などを組み合わせながら、福祉サービスを一つの成長産業として捉えています。

少子高齢化や人手不足が進む日本では、障害者の社会参加や就労機会の拡大は今後ますます重要になるテーマです。そのなかで、利用者に「働く機会」を提供しながら、企業としても持続的に成長できるモデルを構築できるか。アイビスホールディングスは、就労継続支援B型という福祉サービスの可能性を考えるうえで、注目しておきたい企業の一つといえるでしょう。

資産運用で失敗したくない方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」

フィジカル産業とは?AI時代に存在感を増す「現場・モノ・人」のリアルビジネス

「フィジカル産業」という言葉を耳にする機会が増えています。生成AIやクラウド、ソフトウエアなど、デジタル領域への注目が集まる一方で、実際の社会を動かしているのは、工場、建設現場、物流、農業、エネルギー、医療、交通などの「リアルな現場」です。フィジカル産業とは、こうした現実空間でモノを作ったり、運んだり、設備を動かしたり、人にサービスを提供したりする産業を広く指す言葉です。

厳密に定められた産業分類ではありませんが、「デジタル産業」と対比すると理解しやすいでしょう。デジタル産業では、ソフトウエアやデータ、ネットワークなど、情報そのものが主要な価値になります。一方、フィジカル産業では、工場や建物、機械、車両、店舗、物流拠点、電力設備など、現実世界に存在する資産や、人間による作業が価値の源泉となります。

代表例として挙げられるのが製造業です。自動車、半導体、工作機械、産業ロボット、電子部品、食品、化学製品など、実際に製品を生み出す企業はフィジカル産業の中心的存在です。建設業や不動産、運輸・物流、電力・ガス、水道、農林水産業なども、広い意味ではフィジカル産業に含めて考えることができます。

さらに重要なのが、フィジカル産業とデジタル技術の融合です。現在は「フィジカルだからアナログ」という時代ではありません。工場ではAIが設備の異常を検知し、ロボットが人間の作業を支援し、物流センターでは自動搬送機が荷物を運びます。建設現場ではドローンや測量システムが活用され、農業ではセンサーや衛星データを利用して作物を管理する取り組みも進んでいます。

この融合を象徴するキーワードが「フィジカルAI」です。生成AIが文章や画像などのデジタル情報を扱うのに対し、フィジカルAIはAIをロボットや自動運転車、工場設備などに組み込み、現実世界で認識・判断・行動させることを目指します。AIが「頭脳」だとすれば、ロボットや機械は「身体」に当たります。AIの進化によって、フィジカル産業そのものが大きく変わろうとしているのです。

なぜ今、フィジカル産業が注目されるのでしょうか。その背景の一つが、人手不足です。日本では少子高齢化が進み、建設、物流、介護、製造、農業など、現場を支える人材の確保が大きな課題となっています。これまで人間が担ってきた作業を、ロボットやAI、IoTなどによって自動化・省力化できれば、限られた労働力でも社会を維持しやすくなります。

例えば物流業界では、荷物を運ぶドライバー不足への対応が急務となっています。倉庫内では自動搬送ロボットなどの導入が進み、配送についても自動運転や配送ロボットなどの技術開発が進められています。建設業界でも、測量、施工、点検などのデジタル化によって、現場作業の効率化が図られています。

製造業では、さらに大きな変化が期待できます。従来の産業ロボットは、決められた場所で決められた作業を繰り返すことが得意でした。しかしAIの進化によって、カメラなどから得た情報を認識し、その状況に応じて動作を変えるロボットの実用化が進めば、より複雑な作業にも対応できる可能性があります。

ここで重要なのが、日本企業の強みです。日本には、自動車や工作機械、産業用ロボット、センサー、精密機器、素材など、フィジカル産業を支える企業が数多く存在します。AIそのものでは米国の巨大IT企業などが先行していても、AIを実際の機械や製造ラインに組み込む際には、高度なモーター技術、制御技術、センサー技術、素材技術などが必要です。

つまり、AI時代になればなるほど、リアルな「身体」の重要性が増す可能性があります。高性能なAIが存在しても、それだけでは工場で製品を作ったり、荷物を運んだり、建物を建設したりすることはできません。AIの指示を現実世界で実行する機械や設備、そしてそれらを動かす技術が必要になります。

投資という観点から見ても、フィジカル産業は幅広いテーマになり得ます。産業ロボット、FA、半導体製造装置、工作機械、自動車、電力設備、建設機械、物流機器、インフラ、防災、建設、エネルギーなど、関連企業は非常に多岐にわたります。

例えば、AIデータセンターの建設が進めば、半導体やサーバーだけでなく、電力設備、空調、建設、通信などにも需要が波及します。ロボットが普及すれば、ロボットメーカーだけでなく、モーター、減速機、センサー、制御機器、精密部品などを供給する企業にも商機が生まれます。AIの成長がデジタル企業だけで完結せず、フィジカル産業へ波及する可能性があるわけです。

一方で、フィジカル産業にはデジタル産業とは異なる課題があります。工場や物流拠点、発電所、建設機械などには巨額の設備投資が必要となるケースが多く、景気変動の影響も受けます。また、原材料価格、エネルギー価格、人件費、為替、物流費など、さまざまなコスト要因に左右されます。AIによって効率化できる部分がある一方、現場そのものを完全にデジタル化することは容易ではありません。

だからこそ、「AI関連株=IT企業」という見方だけでは、これからの産業構造を捉えきれない可能性があります。AIが社会に浸透すればするほど、そのAIを現実世界で動かすための機械、設備、電力、物流、建設、素材などが必要になります。

フィジカル産業とは、単なる「昔ながらの産業」を意味する言葉ではありません。むしろAI、ロボット、IoT、5G、クラウドなどのデジタル技術によって、新たな進化を遂げようとしているリアル産業です。「デジタルかフィジカルか」という二者択一ではなく、両者が融合することで新しい産業が生まれる時代に入っています。

AIが「考える」能力を高めるほど、それを「動かす」技術の価値も高まります。人手不足、インフラ老朽化、物流問題、エネルギー需要など、日本が抱える社会課題の多くは、最終的には現実世界で解決しなければなりません。こうした意味でも、フィジカル産業は今後の日本経済を考えるうえで重要なテーマとなりそうです。

デジタル革命の次に待っているのは、AIがリアルな世界へ進出する「フィジカル革命」なのかもしれません。AI、ロボット、製造、建設、物流、エネルギーなどが融合することで、これまで以上に「現場を持つ企業」の存在感が高まる可能性があります。フィジカル産業は、AI時代の成長テーマを考えるうえでも、見逃せないキーワードになりつつあります。

資産運用に興味がある方へ
私たちGFSでは、学校では教えてもらえなかったお金のことがわかる無料コンテンツをご用意しています。
≫ 初心者向け無料講座:お金のプロが教える「毎月収入を得る投資の始め方」

ルクレ(648A)――写真とAIで「フィジカル産業」を変える記録DX企業

AIやクラウドといえば、生成AIやソフトウエア、データセンターなどを思い浮かべる人が多いでしょう。そんななか、AIを「現場」に持ち込み、写真や映像を起点にリアルな産業の業務を変えようとしているのがルクレです。証券コードは648A。2026年10月15日に東証グロース市場への新規上場が予定されている注目企業です。東京証券取引所によれば、同社の事業内容は「デバイス×AIクラウド型の『記録DXプラットフォーム』」。1995年創業という長い歴史を持ちながら、AI時代に合わせて事業モデルを進化させている点が特徴です。

ルクレの最大の特徴は、「記録」をビジネスの中心に置いていることです。同社は「『記録』で世界をアップデートする。」をミッションに掲げ、写真とテクノロジーを使ってフィジカル産業のDXを支援しています。建設現場、自動車整備、教育・保育など、現実世界で発生する出来事を写真や映像として記録し、それをAIで認識・整理し、クラウド上で共有・活用する。これが同社の基本的な考え方です。

なかでも中核となっているのが建設業向けの「蔵衛門」です。ルクレは1998年に工事写真ソフトウエア「蔵衛門工事写真」を発売して以来、建設現場の写真管理に長年取り組んできました。その後、電子小黒板、クラウド、ウェアラブルカメラ、AIなどへとサービスを広げています。2021年には「蔵衛門クラウド」を開始し、2022年には有料プランの「蔵衛門プレミアム」を販売。2025年には工事写真を工種などに自動分類する「仕分けAI」を搭載するなど、デジタル化・AI化を進めています。

建設現場では、工事の進捗や施工状況を証明するため、大量の写真を撮影し、整理・保存する必要があります。従来は撮影した写真を人間が分類したり、必要な情報を入力したりする作業に多くの時間がかかりました。ルクレは、この「記録する→整理する→共有する」という一連の作業をデジタル化し、さらにAIによって自動化しようとしています。

ここに同社の「フィジカル産業DX」という独自性があります。企業の業務をクラウドに移すだけではなく、現場で発生するアナログな情報を写真やデバイスによって取り込み、AIとクラウドを使ってデジタル情報に変換するのです。言い換えれば、リアルな世界とデジタル世界の「橋渡し」をする企業といえます。

同社が強みとして挙げるのが、「ブランド力」「定着力」「理解力」の三つです。1998年から続く「蔵衛門」ブランドを通じて約11万社の顧客基盤を築いているほか、現場で使い続けてもらうための端末やアプリ、クラウドサービスを提供しています。また、長年にわたって蓄積した施工写真などのデータをAIや製品開発に活用できる点も特徴です。同社によると、施工写真などの記録データは17億枚を超えています。

このデータの蓄積は、AI時代における重要な資産になる可能性があります。AIは学習・解析する対象となるデータが重要だからです。現場を知らない企業がAIだけを開発しても、実際の業務に適したサービスを作ることは容易ではありません。その点、ルクレは長年にわたって建設現場と接してきたため、どのような写真が必要なのか、現場で何が問題になるのか、利用者がどこでつまずくのかといった「現場知」を持っています。

業績も拡大しています。2025年9月期の売上高は29億2011万円で、前期比31.2%増。営業利益は3億2985万円で、前年同期比322.0%増となりました。経常利益は3億4174万円、当期純利益は2億2608万円となり、増収だけでなく利益面でも大きく伸びています。

さらに注目したいのがストック型収益の拡大です。2025年9月期のARR(年間経常収益)は10億6769万円で、前期の7億1411万円から増加。ストック売上比率も30.8%と、前期の24.7%から上昇しました。サブスクリプション型サービスの拡大によって、毎年積み上がる収益を増やしていることが分かります。

施工記録領域では、2025年9月末時点の有料利用者数が9万5157ID、契約社数が1万763社まで拡大しました。前期末と比較すると、有料利用者数は51.2%増、契約社数は42.1%増です。しかも、解約率は0.16%と低い水準にあります。現場の業務に一度導入されると継続的に利用されやすいことは、SaaS企業として大きな強みになります。

一方、ルクレは建設業だけに依存する企業でもありません。現在は「施工記録領域」「成長記録領域」「整備記録領域」の三つへ事業を広げています。成長記録領域では、幼稚園・保育園などの写真を保護者に届ける「みんなの写真屋さん」を展開しています。2025年9月期の同領域の売上高は9億376万円で、前年同期比64.2%増と大きく成長しました。

さらに2026年には、新たな成長分野として自動車の修理・整備記録AIクラウド「AITURBO」を開始しました。整備工場などにおける修理・整備記録をAIで扱い、最適な工程の提案などにつなげることを目指しています。これは建設現場で培ってきた「記録DX」のノウハウを、別のフィジカル産業へ横展開する戦略の一環です。

つまりルクレの成長ストーリーは、「建設DX企業」から「フィジカル産業全体の記録DX企業」への進化にあります。建設、自動車整備、保育・教育など、業界が違っても「現場で何かが起きる→それを記録する→情報を整理する→関係者で共有する」という共通構造があります。この共通部分をAIとクラウドで横断的に支援することが、同社の中長期戦略です。会社側も施工記録領域を収益成長の基盤としながら、成長記録領域、整備記録領域へと「記録DX基盤」を転用する方針を示しています。

IPOを控える企業として見ると、今後の注目点は三つあります。一つ目は、蔵衛門の顧客企業内で利用IDをどこまで増やせるか。二つ目は、AIによる自動分類・認識などの機能を追加することで、顧客単価をどこまで引き上げられるか。そして三つ目が、AITURBOをはじめとする新領域をどこまで早く収益の柱へ育てられるかです。

もちろんリスクもあります。建設業界の設備投資やDX需要に影響されるほか、AI・クラウド市場では競争が激しくなっています。また、同社自身も施工記録領域では依然としてフロー収益が過半を占めており、ストック売上比率のさらなる向上が課題だとしています。

それでも、ルクレには「現場×デバイス×AI×クラウド」という独自の立ち位置があります。AIそのものを開発する企業だけでなく、AIを現実の現場に組み込み、業務を変えていく企業にも成長余地があります。特に日本では、建設業や自動車整備などで人手不足が深刻化しており、現場の記録・管理業務を省力化する需要は今後も高まる可能性があります。

2026年10月15日に予定される東証グロース市場への上場は、ルクレにとって新たな成長ステージのスタートです。1995年創業、1998年から「蔵衛門」を展開してきた同社が、これまで蓄積した現場データと顧客基盤をAI時代の競争力へ転換できるかが大きなポイントになります。

AI時代の産業DXというと、生成AIやソフトウエア企業に目が向きがちです。しかし、実際の社会を動かしているのは建設現場、自動車整備、物流、製造、保育などの「フィジカル産業」です。ルクレは、そこに存在する膨大な「記録」をAIとクラウドでデジタル化しようとしています。「現場の写真」という一見身近なデータを起点に、フィジカル産業のDXを広げる――。それが、648Aルクレの最大の注目ポイントといえるでしょう。

10月IPOの2社に注目――社会課題を成長力へ変えられるか

10月に上場を予定するアイビスホールディングスとルクレは、いずれも一見すると地味に見える「現場」を事業の中心に据えています。しかし、その現場には今後の日本経済を左右する大きな成長テーマが隠れています。

アイビスホールディングスにとって最大のテーマは、障害者の就労支援と事業としての成長をいかに両立させるかです。就労継続支援B型は、単に仕事を提供するだけではなく、生活リズムの形成や社会参加、将来的な一般就労につながる支援など、幅広い役割を担っています。今後は施設数を増やすだけでなく、利用者にとって魅力的な仕事を提供し、工賃向上や支援品質の向上につなげられるかが重要になります。

一方、ルクレはAI・クラウドを武器に、建設などのフィジカル産業のDXを狙います。「蔵衛門」で培ってきた顧客基盤と現場データを活用しながら、施工記録だけでなく、自動車整備など新たな領域への展開も進めています。IPOを契機に、これまで築いてきた「記録」のノウハウをどこまで横展開できるかが成長のカギとなりそうです。

両社を比較すると、アイビスホールディングスは「人」を支えるビジネス、ルクレは「現場」をデジタル技術で支えるビジネスという違いがあります。しかし、人手不足という共通の社会課題を背景に持っています。障害者の就労機会を増やすことも、AIやDXによって現場の生産性を高めることも、限られた労働力で社会を維持するための重要な取り組みです。

2026年10月のIPO市場では、派手なAI専業企業とは異なる2社が上場することになります。だからこそ、短期的な初値だけではなく、中長期的にどのような市場を開拓し、社会課題を事業機会へ変えていくのかに注目したいところです。アイビスホールディングスとルクレ――「福祉」と「記録DX」という異色の組み合わせから、日本の次なる成長テーマを考えてみる価値はありそうです。

プロの知識が無料で学べます

「投資の勉強を何からやっていいかわからない」「投資で資産を作りたい、収入を増やしたい」

そんな時は無料で視聴できるオンライン講座「GFS監修 投資の達人講座」をまずはお試ししてください。

投資の達人になる投資講座は、生徒数50,000人を超え講義数日本一の投資スクールGFSが提供する無料オンライン講座です。プロの投資家である講師が、未経験者や苦手意識がある人でも分かるように、投資の仕組みや全体像、ルールを基礎から図解を交えて解説します。

投資の勉強をなるべく効率よく始めたい人は、ぜひ一度ご視聴ください。

≫初心者でも資産形成を学習できる無料オンラインセミナーはこちら

【重要】免責事項

  • 投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。

  • 成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。

  • 情報の正確性: 2026年9月時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。

  • 損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。

記事一覧はこちら
月1万円から資産6,000万円を目指す方法
無料で視聴する