
世界を席巻する「キャラクター商品」の新潮流
いま、世界の玩具・雑貨市場で存在感を高めているのが、キャラクターやIP(知的財産)を活用した商品です。かつてキャラクター商品といえば、子ども向けの玩具や文房具が中心でした。しかし現在は、フィギュア、ぬいぐるみ、ブラインドボックス、バッグ、アクセサリーなどへ広がり、Z世代や大人のコレクターも重要な消費者になっています。中国発のPOP MARTが「LABUBU」などで世界的なブームを巻き起こし、米国のFunkoが「Pop!」シリーズで映画やゲームのキャラクターをコレクション商品へと変えてきたことは、その象徴といえるでしょう。さらにMINISOは人気IPを雑貨やポップトイに落とし込み、MattelやHasbroも長年培ってきた強力なブランドを玩具だけでなく映画やゲームなどへ広げています。キャラクターの「かわいさ」だけでなく、「集める」「飾る」「身につける」
| 企業名 | コード | 上場市場 | 国・地域 | 主な商品・IP |
|---|---|---|---|---|
| POP MART | 9992 | 香港 | 中国 | LABUBU、THE MONSTERS、MOLLY、SKULLPANDA、CRYBABYなど |
| MINISO | MNSO / 9896 | NYSE・香港 | 中国 | ディズニー、サンリオ、ハリー・ポッター、TOP TOYなど |
| Funko | FNKO | NASDAQ | 米国 | Pop!、Bitty Pop!、Disney、Marvel、Star Warsなど |
| Mattel | MAT | NASDAQ | 米国 | Barbie、Hot Wheels、UNOなど |
| Hasbro | HAS | NASDAQ | 米国 | Transformers、My Little Pony、Peppa Pig、NERFなど |
| JAKKS Pacific | JAKK | NASDAQ | 米国 | Disney、Pokémon、Nintendo、Marvelなど |
POP MARTの人気商品とは?世界を席巻するLABUBU、MOLLY、SKULLPANDAの魅力
中国発のポップカルチャー企業として、いま世界的な存在感を高めているのがPOP MART(ポップマート)です。フィギュアやぬいぐるみ、キーホルダーなどを展開する同社の特徴は、単に「キャラクターグッズを販売する会社」ではないことにあります。アーティストと組んでキャラクターを育て、商品化し、コレクションしたくなる仕組みをつくることで、独自のIPビジネスを構築しています。
なかでも世界的なブームを巻き起こしたのが「LABUBU(ラブブ)」です。LABUBUはPOP MARTの代表的なIP「THE MONSTERS」に登場するキャラクターで、独特な表情と尖った耳、いたずらっぽい雰囲気が特徴です。フィギュアだけでなく、バッグなどに取り付けられるぬいぐるみペンダントが人気となり、「キャラクターを飾る」だけでなく「キャラクターと一緒に出かける」という楽しみ方を広げました。
THE MONSTERSは、2025年のPOP MARTの売上高において約141.6億元を稼ぎ、全売上高の38.1%を占めました。前年の約30.4億元から大幅に伸びており、現在のPOP MARTを象徴するIPといえます。2024年にもTHE MONSTERS関連売上高は前年比726.6%増と急拡大していました。
現在の人気商品を見ると、THE MONSTERSの存在感は圧倒的です。日本の公式サイトでも「Big into Energy」「Have a Seat」「FALL IN WILD」などのシリーズが展開され、ぬいぐるみやぬいぐるみペンダント、ブラインドボックスなど、さまざまな形の商品が並んでいます。なかには1万円を超える大型ぬいぐるみもあり、キャラクターグッズというよりコレクターズアイテムに近い商品も少なくありません。
POP MARTのもう一つの看板IPが「MOLLY(モリー)」です。大きな目と特徴的な表情を持つMOLLYは、POP MARTを代表する長寿IPの一つ。2025年には誕生20周年を迎える存在で、THE MONSTERSのような新しい人気キャラクターだけでなく、長期間ファンに支持されるIPを抱えていることがPOP MARTの強みです。
2025年のMOLLY関連売上高は約24.3億元。THE MONSTERSには及ばないものの、巨大な売上規模を持つ主力IPです。2024年も約20.9億元を売り上げており、単発のブームではなく、長期的なブランドとして定着していることが分かります。
MOLLYの商品はフィギュアだけではありません。ブラインドボックス、ぬいぐるみ、ペンダント、アクションフィギュアなどへ商品カテゴリーを広げています。現在の日本公式サイトでも「MOLLY ズートピア2シリーズ」など、新たなコラボレーション商品が展開されています。
「SKULLPANDA(スカルパンダ)」もPOP MARTを代表する人気IPです。パンダをモチーフとしながら、単純な「かわいい」だけではなく、ファッション性やアート性を感じさせるデザインが特徴です。シリーズごとに世界観が変化するため、同じキャラクターでも異なる表情や衣装を楽しめる点がコレクション需要につながっています。
2025年のSKULLPANDA関連売上高は約18.2億元で、POP MARTの主要IPの一つです。日本では「Off Mode」「Punk Panda」などの商品が展開され、ぬいぐるみキーホルダーから大型ぬいぐるみまで幅広い商品が販売されています。
そして近年急速に存在感を高めているのが「CRYBABY」です。泣いているような表情を持つキャラクターで、かわいらしさの中に少し切なさを感じさせるデザインが特徴です。2024年には年間売上高が初めて10億元を突破し、主要4IPの一つとなりました。POP MART自身もCRYBABYを急成長したIPとして位置付けています。
現在の商品を見ると、「CRYBABY Crying Again」などのフィギュアやぬいぐるみ系商品が展開されています。日本公式サイトでもCRYBABYとCare Bearsのコラボレーション商品などが販売されており、他ブランドとの組み合わせによって新たなファン層を取り込む戦略も目立ちます。
このほかにも「HIRONO」「DIMOO」「TWINKLE TWINKLE」「PUCKY」「HACIPUPU」など、POP MARTには数多くのIPがあります。2025年にはアーティストIPだけで約334億元の売上高を計上しており、会社全体の売上高に占める比率は90.0%に達しました。つまりPOP MARTは、外部企業からキャラクター商品を仕入れて販売する企業というより、自らIPを育て、そのIPから商品を生み出す企業なのです。
人気商品を見ても、POP MARTのビジネスモデルはよく分かります。代表的なのが「ブラインドボックス」です。箱を開けるまで中身が分からないため、購入そのものに「何が出るのか」というゲーム性があります。シリーズによっては複数種類が用意され、レアアイテムを狙ったり、コンプリートを目指したりする楽しみがあります。
さらに、近年はぬいぐるみペンダントが大きな存在感を持っています。バッグなどに付けて持ち歩けるため、従来のフィギュアとは異なる需要を生み出しました。LABUBUの人気拡大も、この「持ち歩くキャラクター」というスタイルと無関係ではありません。
そしてもう一つの特徴が、ディズニー、サンリオ、スポンジ・ボブ、ハリー・ポッター、MARVELなどとのコラボレーションです。POP MARTの公式サイトでは、こうした外部IPとの商品も幅広く展開されています。
こうした商品展開を見ると、POP MARTの人気の理由は「かわいいキャラクターを売っている」だけではないことが分かります。フィギュア、ブラインドボックス、ぬいぐるみ、キーホルダー、アクセサリーなど、同じIPを何度も別の商品として楽しめる仕組みがあります。さらにシリーズごとに世界観やデザインを変えることで、ファンが次の商品を待つ理由をつくっています。
2025年にはPOP MARTの自社IP商品が売上高の99.1%を占めました。これは同社がIPそのものを収益源として育てていることを示しています。
キャラクター市場では、一つのブームが終わると売上が急減するリスクがあります。しかしPOP MARTは、LABUBUだけに依存するのではなく、MOLLY、SKULLPANDA、CRYBABY、DIMOO、HIRONOなど複数のIPを並行して育成しています。実際、2024年には4つの主要IPがそれぞれ10億元を超える売上を記録しました。
「LABUBUで知ったけれど、次はMOLLY、その次はSKULLPANDA」とファンが別のIPへ移っていけば、一つのキャラクターの流行だけに左右されにくいビジネスになります。これはPOP MARTを単なる玩具メーカーではなく、IPを発掘し、育成し、世界へ展開する「キャラクタービジネス企業」として見るべき理由でしょう。
POP MARTの商品は、フィギュアからぬいぐるみ、キーホルダー、アクセサリーへと広がっています。そして人気の中心には、LABUBUを擁するTHE MONSTERS、MOLLY、SKULLPANDA、CRYBABYという強力なIPがあります。
キャラクターの魅力に加えて、ブラインドボックスの「開ける楽しみ」、コレクションする楽しみ、バッグなどに付けて持ち歩く楽しみ、さらに異業種・海外ブランドとのコラボレーションまで組み合わせる。これこそがPOP MARTが世界の若者を惹きつけている理由といえそうです。今後はLABUBUの人気がどこまで続くのかだけでなく、次の「世界的キャラクター」をPOP MARTが生み出せるのかにも注目が集まりそうです。
Funkoの人気商品とは?世界のキャラクターをコレクションに変える「Pop!」の魅力
アメリカ発のキャラクター商品メーカーとして、世界中のコレクターから支持を集めているのがFunko(ファンコ)です。映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、音楽、スポーツなど、誰もが知る人気コンテンツを独特のデフォルメデザインに落とし込み、フィギュアやぬいぐるみ、バッグ、アパレルなどに展開しています。
その象徴ともいえる商品が「Pop! Vinyl」です。大きな四角い頭とシンプルな顔、丸みを帯びた小さな体という特徴的なデザインは、一度見ると忘れにくいほど個性的です。2010年に登場したPop!は、Funkoを代表するブランドへ成長し、2025年12月期にはPop! Vinylなどを含むCore Collectible商品の売上高が全体の80%を占めています。
Pop!の最大の魅力は、キャラクターそのものだけでなく、「どんな作品でもPop!になる」という点にあります。例えばディズニーのキャラクター、マーベルのヒーロー、スター・ウォーズの登場人物、ハリー・ポッター、ゲームキャラクターなど、ジャンルを超えて商品化されています。
同じキャラクターでも、通常版だけでなく、映画の特定シーンを再現したもの、衣装違い、表情やポーズが異なるもの、限定版など、さまざまなバリエーションが存在します。そのため、最初は好きなキャラクターを1個買っただけだったファンが、いつの間にか同じ作品の商品を何種類も集めるという現象が起こります。
Funkoの商品は、一般的な高級フィギュアとは異なり、比較的手に取りやすい価格帯も特徴です。同社は2025年の年次報告書で、標準的なPop!について概ね15ドル未満の価格帯を基本としていると説明しています。高額なコレクター商品だけでなく、気軽に買える商品を大量に展開することで、子どもから大人まで幅広いファンを取り込んでいます。
近年、Pop!と並んで注目されているのが「Bitty Pop!」です。こちらはPop!をさらに小型化したミニサイズのフィギュア。小さいため複数の商品を並べやすく、机や棚など限られたスペースでもコレクションを楽しめます。
Bitty Pop!には、人気作品のキャラクターを小型フィギュアとしてまとめたセット商品などもあり、「たくさん集めたい」というコレクター心理との相性が良い商品です。Funko自身もBitty Pop!を成長させる商品カテゴリーとして位置付けており、今後はキャラクターだけでなく、世界観や背景まで含めた「小さな世界」をつくる展開にも力を入れる方針です。
また、Funkoの商品を語るうえで外せないのが「限定性」です。通常の商品だけでなく、特定店舗向け、イベント向け、地域限定、数量限定などの商品が存在し、コレクターの収集意欲を刺激します。
さらに、同じキャラクターでも通常版と限定版では価値が変わる場合があります。こうした仕組みは、単なる玩具ではなく「集める楽しさ」を生み出しています。Funkoは近年、コレクターとの関係を強化するため、限定商品や新商品の投入方法、ファンとのコミュニケーションを改善する方針も示しています。
そして、Funkoのもう一つの大きな柱が「Loungefly(ラウンジフライ)」です。こちらはフィギュアではなく、バッグ、リュック、財布、アパレルなどを中心としたファッション・アクセサリーブランドです。
Loungeflyの面白さは、キャラクターを「飾る」のではなく、「身につける」ことができる点です。ディズニーなどの人気キャラクターをモチーフにしたバッグや財布などを展開し、キャラクターファンとファッション市場をつなぐ役割を果たしています。
2025年12月期にはLoungeflyブランド商品の売上高が約1億5500万ドルとなり、Funko全体の売上高の17%を占めました。Core Collectibleほどの規模ではないものの、Pop!とは異なる市場を開拓する重要なブランドとなっています。
さらにFunkoには「Mystery Minis」というシリーズもあります。名前の通り、中身が分からない状態で購入するミニフィギュアで、開封するまで何が出るか分からないというブラインドボックス型の商品です。
この仕組みは、近年世界的に人気が高まっているコレクタブルトイ市場とも相性が良く、POP MARTなどの企業が展開するブラインドボックス商品とも共通点があります。Funkoも近年はブラインドボックス市場への取り組みを強化しており、アーティストと組んだPremium Blind Boxなどの新商品を展開しています。
そしてユニークなのが「Pop! Yourself」です。これは既存のキャラクターを買うだけではなく、自分自身をFunko風のキャラクターとして商品化するという発想です。つまりFunkoは、「好きなキャラクターを集める」だけでなく、「自分もFunkoの世界に入る」という新しい楽しみ方を提供しようとしています。
Funkoの強さは、こうした商品そのものの多様性だけではありません。最大の武器は、非常に幅広いライセンス網です。同社は映画、テレビ番組、ゲーム、音楽、スポーツなど、さまざまなポップカルチャーコンテンツを商品化しています。2025年には単一のIPが売上高の5%を超えることはなく、上位5つの第三者IPを合わせても19%でした。特定の一作品に依存しすぎない構造になっている点は注目できます。
一方で、ディズニー、Lucasfilm、Marvelの3つを合算すると、2025年の売上高の約28%を占めています。そのため、幅広いIPを扱っているとはいえ、大手コンテンツホルダーとのライセンス関係はFunkoの事業にとって非常に重要です。
また、近年のFunkoはアニメ、ゲーム、スポーツ、音楽など、従来以上に多様なファンダムへの進出を目指しています。2025年には「KPop Demon Hunters」の商品展開にもいち早く取り組み、同社は大きな予約販売イベントの一つになったと説明しています。K-POP、スポーツ、音楽ツアー、ゲーム、動画クリエーターなど、新しいファン層を商品に取り込もうとしていることが分かります。
このように考えると、Funkoの商品は単なる「キャラクターグッズ」ではありません。映画やゲームなどのコンテンツを、手頃な価格のフィギュアやバッグなどに変換し、ファンが「所有する」「飾る」「身につける」「集める」という体験を提供するビジネスです。
特にPop!は、世界中の有名キャラクターを同じデザイン体系に落とし込むことで、作品の垣根を越えたコレクションを可能にしました。例えば、映画のヒーローとアニメのキャラクター、ゲームの主人公を同じ棚に並べることができます。これは通常のキャラクターグッズにはないFunko独自の魅力です。
そして、Bitty Pop!、Mystery Minis、Pop! Yourself、Loungeflyなどへ商品を広げることで、一人のファンから複数のカテゴリーで売上を得られる仕組みを構築しています。
Funkoは2025年12月期において、Pop! Vinylなどを含むCore Collectibleが売上高の80%、Loungeflyが17%を占めています。まさに現在のFunkoは「Pop!を中心に、世界中のIPをコレクター商品へ変換する企業」といえるでしょう。
POP MARTがLABUBUやMOLLYなど「自ら育てたIP」を軸に成長しているのに対し、Funkoは世界中の映画、アニメ、ゲーム、音楽などのIPを独自のデザインで商品化するモデルが大きな特徴です。両社は同じコレクタブルトイ市場で存在感を高めていますが、そのビジネスモデルには明確な違いがあります。
これからのFunkoにとって重要なのは、次々と生まれる新しいポップカルチャーをどれだけ早く商品にできるか。そして、映画やゲームなどの一時的なブームを、一過性の商品ではなく長く集めたくなるコレクションへ変えられるかです。
「好きなキャラクターをフィギュアにして持っていたい」というシンプルな欲求を、世界規模のビジネスへと発展させたFunko。Pop!、Bitty Pop!、Loungefly、Mystery Minisなどの商品群は、キャラクター市場だけでなく、世界的に拡大する「大人も楽しむ玩具=キダルト市場」の動きを見るうえでも、注目すべき存在といえそうです。
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MINISOの人気商品とは?ディズニー、サンリオからブラインドボックスまで世界で広がるIP雑貨
「かわいい」「手頃」「思わず集めたくなる」。こうした消費者心理を巧みに捉え、世界で店舗網を拡大しているのが中国発のライフスタイルブランド「MINISO(メイソウ)」です。文房具や生活雑貨、ぬいぐるみ、化粧品、バッグなど幅広い商品を扱うMINISOですが、近年とくに存在感を高めているのが、人気キャラクターやIP(知的財産)を活用した商品です。
MINISOは、ディズニー、サンリオ、ハリー・ポッター、バービー、ONE PIECEなど、世界的に知名度の高いIPとのコラボレーションを積極的に展開しています。2025年には世界150以上のIPライセンサーと提携し、年間1万種類以上の新商品を投入しているとしています。つまりMINISOは、単なる「低価格雑貨店」から、IPを商品に落とし込む「グローバルIPリテール企業」へと変貌しつつあるのです。
MINISOの人気商品を語るうえで、まず注目したいのが「ぬいぐるみ」です。ディズニーやサンリオなどの人気キャラクターを使ったぬいぐるみは、MINISOの店頭でも目を引く存在となっています。とくに近年は、単なるキャラクターの再現ではなく、MINISO独自のデザインやサイズ、素材感を加えた商品が増えています。
代表的なのが、ぬいぐるみをバッグなどに取り付ける「ぬいぐるみペンダント」系の商品です。キャラクターを部屋に飾るだけではなく、バッグにつけて持ち歩くことができるため、ファッションアイテムとしても楽しめます。これは、近年世界的に広がっている「キャラクターを身につける」消費スタイルとも相性がよく、若年層を中心に人気を集めています。
MINISOでは、こうしたぬいぐるみ商品にオリジナルIPも組み合わせています。代表的なのが「Mini Family」です。MINISOによれば、Mini Familyは100以上の海外市場で展開されるまでに成長しており、外部IPだけに頼らず、自社独自のキャラクターを育てようとする姿勢が見て取れます。
そして、MINISO人気を語るうえで外せないのが「ブラインドボックス」です。箱を開けるまで中身が分からないブラインドボックスは、商品の購入に「何が出るのか」というゲーム性を加えます。欲しいキャラクターが出るまで買いたくなったり、シリーズをコンプリートしたくなったりするため、通常の商品とは異なる購買動機を生み出します。
MINISOはディズニーやサンリオなどの有名IPをブラインドボックス化することで、この市場を積極的に開拓してきました。同社によると、2024年の第1~3四半期だけで世界のブラインドボックス販売数は3000万個を超えています。また、毎年200種類以上の新しいブラインドボックスSKUを投入し、150以上のIPパートナーと深いコラボレーションを進めているとしています。
ブラインドボックスの魅力は、価格の手頃さとも相性が良いことです。高額なフィギュアを一つ購入するのではなく、比較的購入しやすい商品を少しずつ集められるため、「今日は一つだけ」という買い方ができます。それが何度も繰り返されることで、結果的に一人当たりの購入点数を増やす効果も期待できます。
さらにMINISOの商品で人気が高いのが、日常生活で使えるキャラクター雑貨です。ポーチ、バッグ、コップ、収納用品、文房具、スマートフォン関連グッズなど、キャラクター商品を「実用品」に変えることで、フィギュアやぬいぐるみを購入しない層にもアプローチできます。
例えば好きなキャラクターのポーチであれば、コレクション目的だけではなく実際に毎日使えます。キャラクターの世界観を生活空間に取り入れながら、価格も比較的抑えられている。この「かわいいだけではなく使える」という点が、MINISOの商品群の大きな特徴です。
こうした商品戦略を支えているのが、MINISO独自の「IP×商品カテゴリー」の考え方です。一つのキャラクターについて、ぬいぐるみだけを販売するのではなく、文房具、バッグ、キッチン用品、美容用品、生活雑貨など、さまざまなカテゴリーに展開します。
例えばディズニーやサンリオのような強力なIPを持っていれば、同じキャラクターが異なる商品として店頭に並びます。消費者からすれば「このキャラクターが好きだから、この商品も欲しい」という購買につながりやすくなります。MINISOはこうした商品開発を年間1万種類以上の新商品投入につなげています。
また、近年のMINISOを考えるうえでは、「TOP TOY」の存在も重要です。TOP TOYはMINISOグループが展開するポップトイブランドで、フィギュア、ブラインドボックスなど、コレクター向け商品により重点を置いています。
ここは、POP MARTとの比較でも非常に興味深い部分です。POP MARTがLABUBU、MOLLY、SKULLPANDAなどのIPを軸に世界的なコレクタブルトイ市場を開拓しているのに対して、MINISOは従来の生活雑貨店としての巨大な店舗網を生かしながら、TOP TOYによってポップトイ市場へ進出しています。
2025年末時点でMINISOの店舗数は世界で8485店。そのうちMINISOブランドが8151店、TOP TOYが334店となっています。2025年のTOP TOYの売上高は19.16億元で、前年比94.8%増と大きく伸びました。さらに2025年12月期の第4四半期だけを見ると、TOP TOYの売上高は前年同期比111.8%増となっています。
この数字は、MINISOが単なる雑貨チェーンではなく、「IP×コレクタブルトイ」という成長市場に本格的に踏み込んでいることを示しています。
MINISOのもう一つの特徴は、海外展開との相性の良さです。2025年のMINISOブランド売上高は214.4億元で、前年比26.2%増。そのうち海外市場の売上高は86.3億元となり、前年比29.3%増でした。2025年末時点で海外店舗は3583店まで拡大しています。
キャラクター商品は、国境を越えやすいという特徴があります。例えばサンリオ、ディズニー、ハリー・ポッター、ONE PIECEといったIPは、国によって言語が違ってもキャラクターそのものが認識されます。MINISOにとってこれは大きな武器です。
さらに、現地の人気IPを取り込むことも可能です。MINISOは中国で「Chiikawa(ちいかわ)」とのコラボレーションを展開し、大きな人気を集めたと説明しています。海外ではハリー・ポッターやONE PIECE、Stitchなどをテーマにした店舗やポップアップも展開しています。
つまりMINISOの商品戦略は、「世界共通の人気IP」と「地域ごとの人気IP」の両方を活用する方向へ進んでいるといえます。
そして、もう一つ見逃せないのがMINISO自身のオリジナルIP育成です。2025年には9人のアーティストと契約し、自社IPの育成を強化する計画を発表しました。その一例として「YOYO」が挙げられており、オンラインで早期に売り切れるなど人気を集めたとしています。
これはPOP MARTのビジネスモデルに近づく動きともいえます。外部の人気キャラクターを商品化するだけなら、ライセンス料や契約条件に左右されます。しかし自社IPを育てることができれば、商品開発や海外展開の自由度が高まり、長期的なブランド価値を構築できます。
MINISOの人気商品を見ていくと、「低価格だから売れる」という従来型の小売モデルだけでは説明できないことが分かります。人気キャラクター、ブラインドボックス、ぬいぐるみ、実用品、限定商品、コラボレーション、自社IPという要素を組み合わせ、「見つける楽しさ」「集める楽しさ」「使う楽しさ」を店舗に詰め込んでいるのです。
2025年にはMINISOブランドの海外売上高が前年比29.3%増となり、TOP TOYの売上高も前年比94.8%増となりました。店舗数も世界8485店まで拡大しています。
POP MARTが「キャラクターそのものの価値」を高める企業だとすれば、MINISOは「人気IPを日常生活の商品へ変換する力」に強みを持つ企業といえるでしょう。そしてTOP TOYを通じて、コレクタブルトイ市場にも攻勢をかけています。
ディズニー、サンリオ、ハリー・ポッター、ONE PIECEといった世界的IPから、Mini FamilyやYOYOといった自社IPまで、MINISOの商品は今後さらに多様化する可能性があります。世界中の店舗を「IP商品との出会いの場」に変えられるか。MINISOの人気商品は、同社が目指す「世界的なIP運営プラットフォーム」への進化を映す存在といえそうです。
Mattelの人気商品とは?バービー、ホットウィール、UNO――世界を魅了する玩具ブランドの強さ
世界の玩具市場を代表する企業の一つが、米国のMattel(マテル)です。1945年創業の同社は、「Barbie(バービー)」「Hot Wheels(ホットウィール)」「Fisher-Price(フィッシャープライス)」「UNO(ウノ)」など、世代を超えて知られるブランドを数多く抱えています。単に玩具を製造・販売するだけでなく、映画やアニメ、ゲーム、アパレル、イベントなどへIPを広げる「IP企業」として存在感を高めている点も特徴です。
Mattelの代表商品といえば、まず「Barbie」です。1959年に登場したバービーは、単なる着せ替え人形から、ファッション、映画、音楽、デジタルコンテンツなどへ広がる巨大ブランドへ成長しました。人形本体だけでなく、洋服、家具、車、ペット、ドールハウスなど商品カテゴリーが非常に幅広いことも特徴です。
2023年には映画「Barbie」が世界的な大ヒットとなり、バービーというブランドそのものが改めて世界から注目されました。映画によってキャラクターを知った新しいファンが玩具を手に取るという、エンターテインメントと玩具を組み合わせたビジネスモデルの可能性を示した事例ともいえます。
一方で、Mattelの商品群を現在の業績面から見ると、むしろ勢いが目立つのが「Hot Wheels」です。小型のミニカーを中心とするブランドで、実在する自動車だけでなく、映画やゲームなどに登場する車、オリジナルデザインの車両まで幅広く商品化しています。
2025年のMattelの世界売上高を商品カテゴリー別に見ると、「Vehicles(乗り物)」のグロス・ビリングスは19億9500万ドルとなり、前年比11%増加しました。この伸びを主にけん引したのがHot Wheelsです。特に第4四半期には、Vehiclesのグロス・ビリングスが前年同期比20%増となり、Hot Wheelsが成長の中心となりました。
Hot Wheelsの面白さは、子ども向け玩具でありながら、大人のコレクター市場も取り込んでいる点です。通常のミニカーだけでなく、限定モデルや特殊なデザインの商品などが存在し、「走らせて遊ぶ」だけでなく「集めて飾る」という楽しみ方が広がっています。
近年世界的に拡大している「キダルト」、つまり大人が玩具やコレクター商品を楽しむ市場との相性も良く、Hot WheelsはMattelにとって単なるミニカーシリーズを超えた重要ブランドとなっています。
そして、幼児向け商品で圧倒的な知名度を持つのが「Fisher-Price」です。ベビー向け玩具から幼児向け知育玩具、乗り物などまで幅広く展開しています。Mattelのブランドポートフォリオの中では、BarbieやHot Wheelsとは異なり、より低年齢層をターゲットにしていることが特徴です。
ただし、2025年の業績を見るとFisher-Priceは厳しい状況でした。Infant, Toddler, and Preschoolカテゴリーのグロス・ビリングスは7億8600万ドルで、前年比17%減。Mattelはこの減少について、Fisher-Price、Baby Gear & Power Wheels、Preschool Entertainmentなどの低迷が主因だったと説明しています。
このように、Mattelには「人気ブランドだから常に成長する」というわけではなく、子どもの人口動態や消費者ニーズ、競争環境によってブランドごとの勢いが変化するという側面もあります。それでもFisher-Priceは長い歴史を持つ重要ブランドであり、幼児市場への入り口として大きな役割を果たしています。
もう一つ、Mattelを語るうえで欠かせない人気商品が「UNO」です。ルールが比較的シンプルで、家族や友人同士で遊びやすいカードゲームとして世界的に普及しています。通常のUNOだけでなく、さまざまなキャラクターや作品とのコラボレーション商品も展開されており、ゲームとIPを組み合わせることで新しいファンを取り込んでいます。
MattelはUNO以外にも、「Magic 8 Ball」などのゲーム・玩具ブランドを持っています。また、「Masters of the Universe」「Monster High」「Polly Pocket」「Matchbox」「Thomas & Friends」など、非常に多彩なブランドを保有しています。
このブランド数の多さこそ、Mattelの強みの一つです。例えばBarbieが女性向けドール市場、Hot Wheelsがミニカー市場、Fisher-Priceが幼児市場、UNOがカードゲーム市場というように、それぞれ異なるカテゴリーにブランドを配置しています。
さらにMattelの重要な戦略となっているのが、映画や映像作品との連動です。自社ブランドを映画化したり、外部の人気IPについてライセンス契約を結んだりすることで、玩具だけに依存しない収益機会を生み出しています。
その代表例がDisneyとの関係です。MattelはDisney Princessや「Frozen(アナと雪の女王)」について複数年のグローバルライセンス契約を更新しており、ディズニープリンセスの人形などを展開しています。さらに「Frozen 3」も契約対象に含まれています。
これは、POP MARTやFunkoなどのキャラクター商品企業との比較でも興味深いところです。POP MARTがLABUBUなど自社で育てたIPを中心にコレクタブル商品を展開し、Funkoが映画やゲームなどの外部IPを独自のフィギュアへ変換するのに対して、Mattelは自社ブランドと外部ライセンスIPの両方を扱います。
さらにMattelは、自社ブランドを映画やテレビ、デジタルゲームなどへ展開することで、玩具を「入り口」にしてファンとの接点を増やそうとしています。2026年には、パラマウントと「Teenage Mutant Ninja Turtles(ミュータント・タートルズ)」の複数年グローバルライセンス契約も発表しました。
つまりMattelの商品は、箱に入った玩具だけではありません。キャラクター、ストーリー、映画、ゲーム、アパレル、イベントなどを組み合わせた巨大なエンターテインメント・エコシステムへと広がっています。
2025年のMattel全体の売上高は53億4800万ドル。前年比では1%減となりましたが、カテゴリー別では明暗が分かれました。Dollsは20億5600万ドルで7%減となった一方、Vehiclesは19億9500万ドルで11%増、Action Figures, Building Sets, Games, and Otherは12億4200万ドルで14%増となりました。
特に注目されるのがHot Wheelsの強さです。Barbieが映画をきっかけに大きな話題を集めたのに対し、Hot Wheelsは玩具そのものの魅力を軸に安定した成長を見せています。Mattelにとって、複数の巨大ブランドを持つことの強みが表れているといえるでしょう。
2026年に向けてもMattelはブランドを軸とした事業運営を強化しています。2026年7月には、Hot Wheels、Barbie、Fisher-Price、UNOなどを統括するブランド戦略・マーケティング体制をさらに強化すると発表しました。同社自身が「IP-driven play and family entertainment」、つまりIPを軸とした遊びとファミリーエンターテインメント企業への進化を掲げています。
Mattelの人気商品を見ていくと、同社が単なる玩具メーカーではないことがよく分かります。Barbieは人形から映画へ、Hot Wheelsはミニカーからコレクター市場へ、UNOはカードゲームから多彩なコラボレーションへと、それぞれのブランドが独自の広がりを持っています。
そして、この「一つのブランドを何十年にもわたって育てる力」こそがMattel最大の強みでしょう。1950年代から続くBarbie、1960年代から続くHot Wheels、長い歴史を持つFisher-Price、そして世界的なカードゲームとなったUNO。世代が変わっても、新しい商品や映画、コラボレーションを通じてブランドを再活性化できる点は大きな魅力です。
世界の玩具市場では、単に「子どもが遊ぶ商品」を売るだけではなく、ファンが大人になっても商品を買い続ける「IPビジネス」の重要性が高まっています。Mattelはその先駆者の一社といえます。
Barbie、Hot Wheels、Fisher-Price、UNO――。これらの商品は、それぞれ異なる世代や趣味をターゲットにしながら、Mattelという一つの巨大なブランドポートフォリオを形成しています。今後は映画やゲーム、デジタルコンテンツとの連動をさらに強めることで、「玩具メーカーから世界的IP企業へ」というMattelの進化がどこまで進むのか、注目されます。
まとめ キャラクターは「商品」から「世界観」へ
POP MART、MINISO、Funko、Mattel、Hasbro、JAKKS Pacificなどを見ていくと、世界のキャラクター市場が大きく変化していることが分かります。人気IPを商品化するだけではなく、フィギュアやぬいぐるみ、ブラインドボックス、アパレル、ゲーム、映像など複数のカテゴリーへ展開することで、ファンとの接点を増やしています。特にPOP MARTのLABUBUのように、一つのキャラクターが世界的なトレンドになるケースも生まれています。今後は、どれだけ魅力的なIPを発掘・育成できるか、そしてその世界観をどれだけ多様な商品へ広げられるかが、企業の成長を左右しそうです。「キャラクターを売る」のではなく、「キャラクターを中心とした体験を売る」。そんなビジネスモデルが、世界の玩具・雑貨市場でさらに存在感を高めていきそうです。




