
夏の風物詩「花火・祭り」を支える上場企業に注目!イベント市場の成長力を探る
夏の風物詩として多くの人に親しまれている花火大会や地域の祭りは、単なる季節のイベントではない。会場には多くの人が集まり、飲食や物販、交通、観光、宿泊など幅広い消費を生み出すとともに、地域の魅力を発信する重要な機会にもなっている。2026年も8月後半にかけて関東各地で花火大会が予定されており、高崎まつり大花火大会やいなしき夏まつり花火大会など、大規模な大会から地域密着型のイベントまで多彩な催しが開催される。
一方、観客が目にする花火の裏側には、イベントを成功させるためのさまざまな企業の存在がある。企画や演出、会場設営、運営、チケット販売、空間づくり、プロモーションなど、多くの業務が組み合わさることで一つのイベントが成立する。そこで今回は、花火そのものを製造する企業ではなく、花火大会や祭りを含む「リアルイベント」を支える上場企業に焦点を当てる。セレスポ、テー・オー・ダブリュー、博展といった企業を通じて、花火・祭りを起点としたイベント産業の現在地と、その成長可能性を探っていきたい。
| 開催日 | 都県 | 花火大会名 | 打ち上げ数 |
|---|---|---|---|
| 8月18日(火) | 群馬 | 千代田の祭 川せがき | 約6,000発 |
| 8月18日(火) | 神奈川 | マイアミビーチショー夏花火 | 非公開 |
| 8月22日(土) | 群馬 | 第52回高崎まつり大花火大会 | 約15,000発 |
| 8月22日(土) | 茨城 | 第40回きらっせ祭り花火大会 | 約3,400発 |
| 8月22日(土) | 埼玉 | 東武動物公園「打上げ花火2026」 | 約500発 |
| 8月22日(土) | 埼玉 | 西武園ゆうえんち 満点打上花火 | 非公表 |
| 8月22日(土) | 千葉 | 第33回野田市関宿まつり花火大会 | 約4,000発 |
| 8月22日(土)~23日(日) | 千葉 | マザー牧場 サマーナイトファーム | ― |
| 8月22日(土) | 神奈川 | 第52回金沢まつり花火大会 | 約3,500発 |
| 8月22日(土) | 神奈川 | 第49回綾瀬市花火大会 | 約2,500発 |
| 8月22日(土) | 神奈川 | 第25回あしがら花火大会 | 約1,300発 |
| 8月23日(日) | 群馬 | 2026おうら祭り花火大会 | 約8,000発 |
| 8月23日(日) | 茨城 | 第40回きらっせ祭り花火大会 | 約3,400発 |
| 8月23日(日) | 千葉 | 第35回四街道ふるさとまつり | 約200発 |
| 8月23日(日) | 埼玉 | ムーミン谷の湖上花火大会~夏2026 | ― |
| 8月24日(月) | 神奈川 | みなとみらいフェスティバル「スカイシンフォニー in ヨコハマ」 | 約18,000発 |
| 8月28日(金) | 神奈川 | 第74回湘南ひらつか花火大会 | 約3,000発 |
| 8月29日(土) | 東京 | 第54回昭島市民くじら祭 夢花火 | 約2,000発 |
| 8月29日(土) | 茨城 | 第28回阿字ヶ浦海岸花火大会 | 約75発 |
| 8月29日(土) | 埼玉 | 東武動物公園「打上げ花火2026」 | 約500発 |
| 8月29日(土) | 埼玉 | 西武園ゆうえんち 満点打上花火 | ― |
| 8月29日(土)~30日(日) | 埼玉 | ムーミン谷の湖上花火大会~夏2026 | ― |
| 8月29日(土)~30日(日) | 千葉 | マザー牧場 サマーナイトファーム | ― |
| コード | 企業名 | 花火・お祭りとの関連 |
|---|---|---|
| 9625 | セレスポ | 地域振興イベント、文化イベント、会場設営・運営 |
| 4767 | テー・オー・ダブリュー | パブリックイベント、イベント企画・制作・運営 |
| 2173 | 博展 | イベント・展示会の企画・制作・運営、空間演出 |
| 4337 | ぴあ | イベントのチケット販売、企画・制作・運営 |
| 9716 | 乃村工藝社 | イベント、公共イベント、空間演出・運営 |
| 9743 | 丹青社 | イベント空間の企画・デザイン・施工・運営 |
8月後半もまだまだ熱い!関東で楽しみたい花火大会のおすすめ
夏の風物詩といえば花火である。8月前半には全国各地で大規模な花火大会が相次いで開催されるが、実は夏の終盤となる8月後半にも、関東では魅力的な大会が数多く予定されている。2026年も8月22日(土)を中心に各地で花火大会が開催され、15,000発規模の大型大会から、地域の祭りと一体になった特色ある大会まで、さまざまな花火を楽しむことができる。
8月後半の花火大会でまず注目したいのが、8月22日に開催される「第52回高崎まつり大花火大会」である。群馬県高崎市を代表する夏の一大イベントで、約15,000発という大規模な打ち上げが予定されている。高崎市によれば、花火大会は午後7時30分から8時20分までの50分間にわたって開催され、短時間に約15,000発を打ち上げるスピード感が大きな特徴となっている。
高崎まつりの魅力は、単純に打ち上げ数が多いだけではない。8月22日、23日の2日間にわたって高崎まつりが開催され、山車や神輿など、地域の伝統文化と花火を同時に楽しめる。高崎市は「山車」「神輿」「花火」の競演を祭りの魅力として紹介しており、花火だけでなく、夏祭りそのものを楽しみたい人に向いた大会といえる。
同じ8月22日には、茨城県でも「2026いなしき夏まつり花火大会」が予定されている。こちらは約10,000発の花火が予定されており、夏祭りと花火を一緒に楽しめる大型イベントである。フィナーレのスターマインも見どころとされており、華やかな花火を目的に出かけたい人には候補の一つとなる。
8月22日はほかにも、埼玉県の「令和8年さいたま市花火大会 岩槻文化公園会場」、千葉県の「第33回野田市関宿まつり花火大会」、神奈川県の「第52回金沢まつり花火大会」や「第49回綾瀬市花火大会」など、多くの大会が集中する。まさに8月後半の関東における花火大会のピークの一つである。
規模だけでなく、地域色を楽しみたいのであれば、8月23日の「2026おうら祭り花火大会」も面白い。群馬県邑楽町で開催され、約8,000発が予定されている。大都市圏の大規模大会とは異なり、地域の祭りと花火が一体となったイベントを楽しめるのが魅力である。花火大会を「見る」だけでなく、地域の夏祭りの雰囲気まで味わいたい人に適している。
一方、都会的な花火を楽しみたい人には、8月24日に横浜で予定されている「みなとみらいフェスティバル」の花火も注目される。ウェザーニュースでは約18,000発の予定とされており、8月後半の関東では最大級の打ち上げ規模となる。横浜という都市景観と花火を組み合わせて楽しめる点も特徴であり、地方の河川敷や海岸で見る花火とは異なる魅力がある。
ただし、花火大会を選ぶ際には「打ち上げ数」だけを基準にする必要はない。花火大会によっては、打ち上げ時間、観覧エリア、屋台、祭り、音楽とのコラボレーションなど、楽しみ方が大きく異なる。例えば、約15,000発の高崎まつり大花火大会は短時間に集中して打ち上げるため、次々と花火が夜空を埋め尽くす迫力を味わいやすい。一方、地域の祭りと一体化した大会なら、花火が始まる前から屋台やイベントを楽しむことで、夏祭りらしい一日を過ごすことができる。高崎まつりでは実際に山車や神輿なども展開されるため、こうした「祭り+花火」という楽しみ方ができる。
8月後半は、夏休みの終盤ということも花火大会を選ぶうえで重要なポイントである。8月上旬と比べると、夏休みの旅行やレジャーのピークを過ぎている一方、まだ夏らしい暑さが残っている。家族で夏の思い出をもう一つ増やしたい人にとっても、花火大会は格好のイベントとなる。また、8月29日には東京都昭島市で「第54回昭島市民くじら祭 夢花火」が予定され、約4,000発が打ち上げられる。昭島市民くじら祭は花火だけでなく、地域の祭りとしても親しまれているため、東京で夏祭りと花火を楽しみたい人にとって貴重な選択肢である。
さらに8月28日には神奈川県平塚市で「第74回湘南ひらつか花火大会」が開催予定で、約3,000発が予定されている。大規模な打ち上げ数を誇る大会とは異なるものの、湘南エリアで夏の終わりを感じながら花火を楽しめる大会として注目したい。8月後半の花火大会は、単純な「発数競争」だけではなく、開催地の景観や祭りとの組み合わせを含めて選ぶのがポイントである。
8月29日には埼玉県の東武動物公園でも「打上花火2026」が予定されている。約500発と大規模大会ではないものの、テーマパークと花火を組み合わせて楽しめるため、家族連れやレジャー目的の人には向いている。ウォーカープラスによれば、8月15日、22日、29日に開催予定で、屋台なども用意される。
このように見ると、2026年の関東では8月後半にも花火を楽しむ機会が豊富に残されている。なかでも「とにかく迫力のある花火を見たい」という人なら高崎まつり大花火大会、「大型の夏祭りと花火を一緒に楽しみたい」なら高崎まつりやいなしき夏まつり、「都会的な雰囲気を重視する」なら横浜、「東京から近場で夏の終わりを楽しみたい」なら昭島市民くじら祭やテーマパークの花火、といった具合に目的に応じて選ぶとよい。
また、花火大会は地域経済への波及効果という面でも見逃せない。観客が会場周辺で飲食をしたり、鉄道やバスを利用したり、宿泊施設を利用したりすることで、花火そのものだけでなく周辺の観光・交通・小売・飲食などにも需要が広がる。花火大会を支えるイベント企画会社、会場設営会社、チケット関連企業などにもビジネス機会が生まれるため、花火は単なる夏の娯楽にとどまらず、地域経済を動かすイベントとしての側面を持っている。
8月後半の花火大会を楽しむ際には、開催日だけでなく、交通規制や会場へのアクセス、観覧席の販売状況なども事前に確認したい。特に大規模大会では混雑が予想されるため、公共交通機関の利用や有料観覧席の確保など、早めの準備が重要になる。また、花火大会は天候によって中止・順延となる可能性がある。高崎まつり大花火大会についても、公式情報では荒天時に翌日へ順延すると案内されている。
夏の終わりが近づくと、「今年の夏も終わる」という寂しさを感じる人も多い。しかし、関東では8月後半にもまだまだ花火を楽しむことができる。15,000発の迫力を短時間で味わえる高崎、1万発規模のいなしき、横浜の都市景観と組み合わせた花火、地域の祭りと一体となった昭島や湘南など、それぞれに異なる魅力がある。8月後半の花火大会は、夏休み最後の思い出づくりにも、夏の締めくくりにもぴったりである。開催地や規模だけでなく、祭り、食、観光、街の雰囲気まで含めて選べば、夏の終盤をより印象的に楽しめるだろう。
花火や地域の祭りを支えるセレスポ、イベント需要の拡大を追い風に成長へ
夏の風物詩である花火大会や地域の祭りは、私たちにとって身近なレジャーである。一方で、大規模なイベントを実際に開催するためには、企画立案から会場設営、警備、運営、進行、撤去まで多くの業務が必要になる。こうした「イベントを裏側から支える企業」の一つが、東証スタンダード市場に上場するセレスポ(9625)である。花火そのものを製造する企業ではないが、地域振興イベントや文化イベントなどを手掛ける同社は、花火大会や夏祭りを含むイベント市場を考えるうえで注目できる存在だ。
セレスポは1977年創業のイベント制作会社である。会社の経営理念として「イベントを通じて笑顔のある明るい社会づくりに貢献する」を掲げ、全国47都道府県で年間10,000件以上のイベントを手掛けている。事業領域は幅広く、セレモニー、スポーツイベント、プロモーションイベントなど、全国規模の大型イベントから地域密着型のイベントまで対応する。企画だけを請け負うのではなく、会場設営や運営までワンストップでサポートできる点が同社の大きな特徴である。
花火大会や祭りとの関係を見るうえで重要なのが、セレスポの「ベース事業」である。同社はベース事業で建設式典、記念式典、地域振興イベント、文化イベント、プロモーションイベントなどを手掛けている。つまり、地域の人々が参加するイベントを企画し、会場をつくり、当日の運営まで支える能力を持つ。花火大会も地域振興や観光振興を目的とするイベントの一つであり、こうしたイベント市場が活発になることは、セレスポの事業環境を考えるうえで重要なポイントになる。
特に近年は、コロナ禍によって大きな影響を受けたイベント市場が正常化し、リアルな場で人が集まるイベントの価値が改めて見直されている。オンライン配信やデジタルコンテンツが普及した一方、祭りやスポーツ大会、地域イベントなど、実際に会場へ足を運び、同じ空間を共有する体験には独自の魅力がある。セレスポはこうした「リアルイベント」の企画・運営を事業の中心としているため、イベント需要の回復・拡大は中長期的な事業機会につながる。
同社の強みは、単純なイベント企画会社にとどまらない点にもある。公式サイトでは、企画・演出から当日の設営・運営までトータルでプロデュースする体制を強みとして掲げている。イベントの現場では、会場レイアウト、ステージ、観客導線、スタッフ配置、進行管理など、さまざまな要素を同時に動かす必要がある。さらに、大規模イベントになるほど安全管理や突発的なトラブルへの対応力も重要になる。セレスポは全国の拠点や協力会社のネットワークを活用し、こうした現場対応力を強みとしている。
花火大会を例に考えると、観客が目にするのは夜空に上がる花火だが、その裏側には多くの準備が存在する。会場の設営、観客席の準備、導線の確保、案内、イベント進行、警備、撤去など、開催規模が大きくなるほど運営業務は複雑になる。もちろん花火の打ち上げ自体は煙火業者など専門企業が担うが、イベント全体を成立させるためには多くのプレーヤーが必要である。セレスポはこうした「花火を支える周辺産業」の一角を担う企業として見ることができる。
2026年3月期の業績にも、イベント市場の回復・拡大が表れている。同社の売上高は151億3852万円となり、前期の136億6739万円から増加した。営業利益は10億8313万円で、前期の7億9955万円から増加している。経常利益も10億8699万円となった。前期には独占禁止法関連損失引当金繰入額が特別損失として計上され、最終損益が赤字となっていたが、2026年3月期は当期純利益7億6677万円を確保した。
事業構成を見ると、2025年3月期の売上高ではベース事業が93億7100万円、全体の68.6%を占める。スポーツ事業は10億700万円で7.4%、ロイヤルイベント事業は32億8200万円で24.0%だった。ベース事業の比率が大きいことからも、地域振興イベントや文化イベント、プロモーションなど、幅広いイベント需要が同社の収益基盤となっていることが分かる。
今後の注目点は、イベント市場の拡大だけではない。セレスポはDX化への対応にも取り組んでいる。イベント業界では、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型のイベントや、デジタル技術を活用した情報発信、来場者管理など、開催方法そのものが変化している。イベントの現場力に加えてデジタル技術を組み合わせることで、顧客が求めるイベントの形に対応していくことが成長の鍵となる。
また、地方創生との関係も見逃せない。人口減少が進む地域では、地域の魅力を発信し、交流人口を増やすイベントの重要性が高まっている。花火大会や夏祭りは、地域住民だけでなく周辺地域から観光客を呼び込む役割も持つ。会場周辺での飲食、交通、宿泊、物販などにも経済効果が波及するため、自治体にとってイベントは単なる娯楽ではなく、地域活性化の手段となり得る。セレスポが地域振興イベントを事業領域としていることは、この流れとの親和性が高い。
一方で、イベント業界には課題もある。人件費や資材価格の上昇は、イベント運営会社にとってコスト増加要因となる。セレスポ自身も2026年の株主総会招集通知で、資材価格や人件費などの上昇によるコスト増加リスクを注視する必要があると説明している。イベント需要が増えても、コスト上昇を価格に適切に反映できなければ利益率が圧迫される可能性がある。
それでも、イベントには「その場でしか得られない体験」という強みがある。花火大会、地域の祭り、スポーツ大会、企業イベントなど、人が実際に集まる機会がなくなるとは考えにくい。むしろデジタル化が進むほど、リアルな体験の価値が相対的に高まる可能性もある。セレスポは、こうしたリアルイベントの企画から設営、運営までを一貫して担える体制を持つ。
花火や祭りをきっかけにセレスポを見る場合、「花火メーカー」という捉え方は正確ではない。むしろ、花火大会を含む地域イベントの開催を支える「イベントインフラ企業」として見るべきだろう。年間1万件以上のイベントに携わり、全国規模の大型イベントから地域密着型イベントまで対応する事業基盤は、イベント市場が拡大する局面で強みとなる。
夏の夜空を彩る花火は、一瞬で消えてしまう。しかし、その一瞬を実現するためには、数カ月、場合によってはそれ以上の準備が必要になる。会場をつくり、人を安全に誘導し、イベントを円滑に運営する企業の存在があってこそ、大勢の観客が安心して花火を楽しむことができる。セレスポはまさに、そうしたイベントの「裏側」を支える企業の一つである。花火大会や地域の祭りが持つ観光・地域振興の力が再評価されるなか、イベント市場の拡大とともに同社がどのように成長していくのか、今後の動向に注目したい。
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花火や祭りの「体験価値」を創るテー・オー・ダブリュー、リアルイベント復活を成長力に
夏になると全国各地で花火大会や夏祭りが開催され、多くの人が会場に足を運ぶ。夜空を彩る花火そのものに注目が集まりやすいが、大勢の観客を集めるイベントを成立させるためには、企画、演出、会場づくり、集客、プロモーション、当日の運営など、さまざまな仕事が必要になる。こうした「人が集まり、体験する場」をつくる企業の一つが、東証スタンダード市場に上場するテー・オー・ダブリュー(4767)である。花火を製造したり打ち上げたりする会社ではないものの、イベント市場の拡大という観点では、花火や祭りとの親和性が高い企業といえる。
テー・オー・ダブリューは、イベントやプロモーションの企画・制作を手掛ける企業である。同社は「体験」をキーワードに、リアルイベントだけでなく、デジタル、SNS、映像、PRなどを組み合わせたさまざまな施策を展開している。公式サイトでは、広報イベントや発表会、展示会、ポップアップストア、パブリックイベント、アワード・パーティーなどを活用したソリューションを紹介しており、企業のマーケティング活動から行政・団体による市民向けイベントまで幅広い領域をカバーしている。
この事業領域を花火大会に置き換えると、同社の位置づけが分かりやすい。花火大会で観客が楽しむのは花火だけではない。会場に向かう途中の街の雰囲気、屋台、ステージイベント、音楽、演出、観覧エリア、SNSでの情報発信などを含めた「イベント全体の体験」が満足度を左右する。花火を一つのコンテンツと考えれば、それをどのように見せ、どのように人を集め、どのような記憶として残すのかという部分に、イベントプロデュース会社の役割がある。
テー・オー・ダブリューが掲げる「リアルエンタメ領域」は、こうした流れをさらに広げるものだ。同社は、エンターテインメントによって人を惹きつけ、参加者が時間や対価を使って参加し、共感や熱量が広がるリアルな体験そのものを価値化する考え方を示している。これは従来型の広告代理店とは異なり、「広告を見る」だけではなく、「実際に参加する」ことでブランドやコンテンツへの接触を深めるビジネスモデルといえる。
背景にあるのが、コロナ禍を経たリアルイベント需要の回復である。オンラインイベントが普及した一方で、スポーツ、音楽、祭り、展示会、フードフェスなど、実際に人が集まるイベントの価値も改めて認識されるようになった。テー・オー・ダブリューの2026年6月期第3四半期決算では、イベントなどのリアルな体験への需要や広告におけるプロモーション市場が堅調だったことに加え、大阪・関西万博の開催もあり、売上高は前年同期比10.1%増となったと説明している。
2026年に入ってからは、リアルエンタメ領域をさらに強化する動きも相次いでいる。2月にはディー・エヌ・エー(DeNA)と、IPコンテンツやスポーツを中心としたリアルエンタメ領域の強化に向けて業務提携した。さらに4月には、フードフェス主催大手のブルースモービルを100%連結子会社化した。これによって、従来の企業向けイベントやプロモーションに加え、消費者が直接参加するエンターテインメント型イベントの領域を広げようとしている。
ブルースモービルの連結子会社化は、花火や祭りというテーマから見ても興味深い。フードフェスと花火大会は一見すると異なるイベントだが、どちらも「人を会場に呼び込み、そこで飲食やエンターテインメントを楽しんでもらう」というリアル体験型ビジネスという共通点がある。イベントの主催・運営ノウハウを蓄積することで、単に企業から依頼を受けてイベントを制作するだけでなく、自らイベントを企画・運営し、集客や収益化まで行うビジネスへ展開できる可能性がある。
実際、2026年6月には、TOWグループが約40万人規模を想定する大型フードフェスプロジェクト「新宿グルメパーク大作戦」を約100日間開催すると発表している。また、5月にはグループ横断の「リアルエンタメユニット」を設立した。イベント制作会社から「リアルな体験を事業として創出する会社」へと事業領域を広げる姿勢が鮮明になっている。
こうした事業展開は、花火大会や地域の祭りを考える際にも重要である。近年は単に花火を打ち上げるだけでなく、音楽や映像、ドローン、ライトアップ、飲食、観光などを組み合わせ、イベント全体の付加価値を高める動きが広がっている。SNSによる拡散も重要になり、会場に来た人が写真や動画を投稿することで、イベントそのものが広告媒体として機能するケースもある。リアルとデジタルを組み合わせるテー・オー・ダブリューの事業モデルは、こうしたイベントの高度化と相性がよい。
一方、イベント業界には課題もある。人件費や会場費、資材費などの上昇は、イベント制作会社にとってコスト増加要因となる。また、イベントは景気や企業の広告予算、天候、社会情勢などにも左右されやすい。テー・オー・ダブリューも2026年6月期には、コーポレートガバナンス体制の再構築や経営基盤の強化、労働環境改革に伴う投資などによって販管費・人件費が増加していると説明している。
それでも、同社には比較的再投資負荷が小さい受託型ビジネスという特徴があり、会社側も人的資本の拡充やM&Aを成長戦略として掲げている。株主還元についても、将来の事業展開に必要な内部留保を確保しながら、安定した配当を継続する方針を示している。2026年6月期以降は、連結ベースの配当性向50%と株価配当利回り5.5%を基準とした最低配当金の考え方も示しており、成長投資と株主還元の両立を意識した姿勢がうかがえる。
花火や祭りという視点からテー・オー・ダブリューを見る場合、「花火関連企業」と単純に位置付けるのは適切ではない。むしろ、花火大会を含むイベント市場の拡大によって恩恵を受ける可能性がある「イベント・リアルエンタメ関連企業」と捉えるべきである。特に同社が強化しているリアルエンタメは、スポーツ、IPコンテンツ、フードフェスなど、花火や地域イベントと共通する「人を集めて体験価値を生み出す」領域である。
夏の夜空を彩る花火は、一瞬で消えてしまう。しかし、その一瞬を多くの人に楽しんでもらうためには、企画、演出、集客、会場運営など膨大な準備が必要になる。そして今後は、花火単体ではなく、食、音楽、映像、観光、SNSなどを組み合わせた「総合的な体験」がイベントの価値を左右する可能性が高い。テー・オー・ダブリューが目指すリアルエンタメは、まさにこの変化を捉えたものといえる。花火や祭りをきっかけにイベント産業全体を見るなら、企業や自治体のイベント需要だけでなく、リアルな体験そのものを事業化するテー・オー・ダブリューの今後の展開にも注目したい。
花火や祭りを「体験」に変える博展、リアルイベント市場で高まる存在感
夏の夜空を彩る花火大会や地域の祭りは、日本の夏を象徴する風景である。花火そのものは一瞬で終わるが、会場に集まった人々が共有する時間や空間、音楽、飲食、地域文化などを含めれば、そのイベントが生み出す「体験」は長く記憶に残る。こうした体験価値を企業や団体のマーケティングに結びつけているのが、東証グロース市場に上場する博展(2173)である。花火の製造・打ち上げを手掛ける企業ではないものの、イベントや空間づくりを通じて人を集め、ブランドや地域との接点を生み出すという点で、花火・祭り関連のイベント市場を見るうえで注目できる企業である。
博展は1970年設立の企業で、現在は「Experience Marketing」を事業領域としている。企業や団体が抱えるマーケティング課題に対して、リアルとデジタルを組み合わせながら、人の「体験」を統合的にデザインすることを事業の軸としている。具体的には、イベントプロモーション、展示会出展、商談会・プライベートショー、セミナー・カンファレンス、店舗・ショールーム、オンラインイベント、デジタルコンテンツなど幅広いサービスを提供している。さらに、街づくり・文化開発支援も手掛けている点は、地域の祭りや観光イベントを考えるうえでも興味深い。
博展の特徴は、単にイベント会場を設営するだけの会社ではないことだ。企画営業、空間デザイン、グラフィックデザイン、プランニング、テクニカルディレクション、映像、制作など、さまざまな専門職を組み合わせ、企画から実現までを一貫して進める体制を整えている。展示会やイベントなどの仮設案件では、企画、創造、実現、分析という一連の力を組み合わせてプロジェクトを推進している。
この強みは、花火大会や祭りのような「リアルな体験」を考える際にも応用できる。例えば花火大会では、花火を打ち上げることだけが目的ではなく、観客が会場へ向かう段階からイベントが始まっている。会場の装飾、観覧スペース、飲食ブース、ステージ、音響、映像、照明、案内表示など、さまざまな要素が組み合わさってイベント全体の印象をつくる。博展が得意とする空間演出やイベントプロモーションは、こうした「花火以外の体験価値」を高める領域と親和性が高い。
同社の実績を見ると、企業の展示会やイベントだけにとどまらず、BtoCイベント、行政・自治体・官公庁、アートイベント、街づくり・文化開発支援などにも領域を広げている。公式サイトの実績紹介には、2026年の「TOKYO AUTO SALON 2026」におけるブリヂストンブースの企画・デザイン・施工・当日運営・ステージ進行などが掲載されている。こうした大型イベントをトータルでプロデュースする能力は、イベントの規模が大きくなるほど重要性を増す。
花火や祭りとの関係で特に注目したいのが、同社が「街づくり・文化開発支援」をサービスの一つとしている点である。地域イベントは、単独の催事として成立させるだけでなく、地域の魅力をどのように発信し、観光や交流人口の増加につなげるかが重要になっている。人口減少が進む自治体にとって、祭りや花火大会は地域住民の交流だけでなく、域外から人を呼び込む観光資源にもなり得る。博展が培ってきた「体験をデザインする」という考え方は、こうした地域活性化のニーズとも重なりやすい。
また、リアルイベントとデジタルの融合も同社の成長テーマの一つである。イベントの情報をウェブやSNSで発信し、来場前から参加者との接点をつくることは、現在のイベント運営では欠かせない。さらに、会場で得られた体験を写真や動画としてSNSで共有してもらうことで、イベントそのものが次の集客につながる可能性もある。博展はオンラインイベント・セミナーやデジタルコンテンツ&マーケティングもサービス領域としており、リアルだけに依存しない体験設計を進めている。
会社規模も拡大している。博展の会社概要によると、2025年12月末時点の連結売上高は233億3,600万円、連結従業員数は586人となっている。取引先業種も情報・通信、製造、食品、医療、自動車、スポーツなど幅広く、特定業界だけに依存しない顧客基盤を構築している。東京証券取引所グロース市場に上場する証券コード2173の企業である。
今後の成長を考えるうえでは、博展が策定している中期経営計画も重要になる。同社はFY2026~FY2028の中期経営計画において、イベント・ディスプレイ・広告の3領域にまたがる独自の事業ドメインを「Experience Marketing領域」と定義している。重点戦略として「提供価値の強化」「経営基盤の刷新」「非連続成長の追求」を掲げており、単なるイベント制作会社から、体験価値を軸にしたマーケティング企業へと事業モデルを進化させようとしている。
この方向性は、花火大会や祭りの変化とも重なる。近年のイベントでは、花火を打ち上げて終了するのではなく、音楽、照明、映像、飲食、観光、物販などを組み合わせてイベント全体の価値を高める動きが見られる。SNSで話題になることも重要であり、「その場に行ったからこそ得られる体験」をいかに設計するかが集客力を左右する。博展のビジネスは、まさにこうした「体験そのものを価値にする」市場の拡大と相性がよい。
さらに、サステナビリティへの対応もイベント業界では重要なテーマとなっている。イベントでは大量の資材を使うことがあり、会場設営や撤去の過程で廃棄物が発生する。博展はサステナブルなイベントや空間づくりについても取り組みを進めており、環境負荷を抑えながらイベントを実施するための提案力が今後の競争力につながる可能性がある。単に華やかな空間をつくるだけでなく、循環型のイベント設計まで求められる時代になれば、こうしたノウハウの価値はさらに高まるだろう。
もちろん、イベント関連企業には景気や企業のマーケティング予算、原材料費、人件費などの影響を受けやすいという側面もある。また、花火大会のような屋外イベントでは天候や安全面のリスクも存在する。そのため、博展を花火関連企業として直接評価するのではなく、企業のマーケティング活動や展示会、イベント、地域・文化開発などを含む「体験マーケティング市場」の成長性を見ることが重要である。
花火や祭りは、単なる娯楽ではなく、人と地域、人と企業をつなぐコミュニケーションの場でもある。企業にとっては商品やブランドを知ってもらう機会となり、自治体にとっては地域の魅力を発信する機会となる。そして来場者にとっては、普段とは異なる空間で家族や友人と時間を共有する特別な体験になる。博展は、こうした「人が集まり、心を動かされる場」を企画・デザインする企業である。
夜空に打ち上がる花火は数秒で消えるが、その瞬間に感じた驚きや感動は記憶に残る。イベント産業が「モノを売る」だけではなく「体験をつくる」方向へ進むなか、博展が掲げるExperience Marketingは今後さらに重要な意味を持つ可能性がある。花火大会や地域の祭りを入り口にイベント市場を見るのであれば、花火そのものではなく、その周囲に広がる空間演出、集客、デジタル、地域活性化まで含めた「体験価値」に注目することが重要であり、その一角を担う博展の事業展開は引き続き注目される。
まとめ
花火大会や祭りは、夏の娯楽という枠を超え、地域経済や観光、企業のマーケティングを支える重要なイベントへと進化している。特に近年は、花火を打ち上げるだけではなく、音楽や映像、飲食、物販、SNSなどを組み合わせ、イベント全体を一つの「体験」として楽しんでもらうことが重要になっている。そのため、企画・制作・会場設営・運営・空間演出などを担う企業の役割はますます大きくなっている。
今回取り上げたセレスポは地域振興イベントなどの企画・運営、テー・オー・ダブリューはイベントプロデュースやリアルエンタメ、博展はExperience Marketingを軸としたイベントや空間づくりに強みを持つ。いずれも花火そのものを製造する企業ではないが、「人が集まり、楽しみ、記憶に残る場」をつくるという点で、花火や祭りとの接点を持つ企業である。今後、リアルイベントの価値が再評価され、地域活性化や観光振興とともにイベント市場が拡大すれば、こうした企業にも新たなビジネス機会が生まれる可能性がある。夜空を彩る一瞬の花火の裏側で動くイベント産業と、それを支える上場企業の動向に注目したい。




