「日経平均株価と日経平均先物って、何が違うんだろう?」
「どちらを見ればいいんだろう?」
「そもそも日経平均先物って何かよくわからない」
この記事を読んでいるあなたは、上記のような疑問をお持ちではないかと思います。
相場の雰囲気や流れの確認のために日経平均株価を調べてみると、日経平均先物の情報もセットで出てくる事が多く、上記の疑問を持つのも当然と言えるでしょう。
結論として、日経平均株価と日経平均先物には以下のような違いがあります。
こういった違いを理解することで、一歩踏み込んだ視点で、相場の全体像を掴めるようになるかもしれません。
そんな分析のお役に立つよう、本記事では、日経平均株価と日経平均先物、それぞれの定義の違いや、上記の違いについて解説しています。
さらに、この違いを前提にどのようにこれらを活用すると良いかもお伝えしているので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
日経平均株価と日経平均先物の定義
まず日経平均株価と日経平均先物のそれぞれの定義について、改めて確認していきましょう。
・日経平均株価
始めに、日経平均株価の内容から確認していきます。
日経平均株価の定義
日経平均株価は、日経新聞社が算出する指数であり、プライム市場に上場している銘柄から選ばれた225銘柄で構成されています。
この225社の選定基準として、
・取引のしやすさ(市場流動性の高さ)
・6つのセクター(技術、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共)のバランス
の2要素が重要視されます。
また、見直しが春と秋の年2回あり、一度に3銘柄を上限に、市場流動性が低いと判断したものを入れ替えの対象として除外し、新しく選定された銘柄が加わることとなります。
なお、日経平均株価の構成銘柄入れ替えについては、こちらの記事で詳しく解説しています
日経平均株価の算出方法
基本的には単純平均の考え方、つまり対象銘柄の株価を合計して銘柄数で割って算出されます。
日経平均の場合は「225銘柄の株価を合計し、225で割る」との理解になります。
厳密には修正単純平均と言って、そもそもの株価水準の高低や、銘柄入れ替えの際に生じる株価の差によって大きく変化してしまうことがないよう、調整した計算式を組み込んで、算出されます。
しかし細かく理解するよりも「225社の平均株価」と認識ができれば概ね問題ないと言えます。
日経平均株価は指数
先述の通り、日経平均株価は225社の株価平均で求められるので、いわゆる指数としての役割があります。
簡単に「経済の状況を計るものさし」と言えばイメージしやすいかもしれません。
例えば、学校のテストの平均点を求め、自分の点数と比較すれば、自分の成績が高いのか低いのか、前回よりも平均点が上がったのか、などがわかります。このように何かを評価したい時の一つの基準になり得るものと言えます。
ただ、株価の場合はそもそも銘柄ごとの株価の高低には優劣がないので「経済全体が昨日よりも上昇している」や「日経平均が上昇している中、特定の銘柄は下落している」などの文脈で基準にされることが多いです。
・日経平均先物
続いて、日経平均先物について、確認していきます。
日経平均先物の定義
日経平均先物とは、日経平均株価を原資産として行われる「先物取引の価格」です。
先物取引とは、将来のあらかじめ定められた期日に、特定の商品を現時点で決めた価格で売買する取引のことを指します。
少し難しいかもしれませんが、「新作のゲームを発売前に予約購入する」と例えてみると、原資産は「ゲーム」、先物取引の価格は「ゲームを予約購入した価格」と言い換えることができます。このように考えると少しイメージしやすいでしょう。
もしゲームを1000円で予約したなら、発売後、基本的には1000円で購入できます。仮にそのゲームが発売前からとても人気になり、発売時に2500円に値上がりしていたとしても、1000円で購入できるわけです。反対に、あまり評価を得られず発売時に700円になってしまった場合でも、1000円で予約したのであれば、1000円でゲームを購入することになります。これが先物取引の基本理解となります。
日経平均先物の価格算出方法
日経平均先物の価格は基本的に需要と供給で決まります。
先ほどの例で言うと、定価1000円のゲームの人気が上がれば「今は1000円で予約できるけど、発売価格はもっと上がるだろう」と見込んで、予約したい人が増えます。
するとお店も「価格をもう少しあげても予約してくれる人がいそうだ」と思い、予約価格も上がっていきます。反対にゲームの人気がなさそうであれば、お店側も予約してくれる人が出るまで価格を下げます。
このように、市場参加者の先物の取引需給で予約価格(先物の価格)も常に上下します。
また、日経平均先物には「限月」という取引期限があります。先述の例で言えば、「ゲームの発売日」です。
発売日がまだ遠ければ価格は不安定ですが、発売日が近くなるにつれ「だいたいこのくらいの価格になるだろう」という予想もしやすくなり、予約価格と発売価格の差は小さくなっていくと言えます。このように、限月からどのくらい日数があるか、という要素も含め、先物価格は決まっていくのです。
日経平均先物は金融商品の価格
先述の通り、日経平均先物は先物取引における金融商品であり、先物価格はその金融商品の価格です。
何かを足し合わせたりして合理的に算出されるものではなく「将来の日経平均株価がいくらになるか」の予測によって形成される商品の価格です。この点を覚えておきましょう。
日経平均と日経平均先物の違い
前章で、日経平均株価と日経平均先物、それぞれ定義を確認しました。
ここで改めて、日経平均株価と日経平均先物の違いを比較し、一つずつ確認していきましょう。
・対象の違い
1章で確認したように、日経平均株価は選定された225社の現時点での株価の修正平均です。そのため、225社の一社ずつの株価の動きがダイレクトに影響してきます。
対して日経平均先物は、日経平均株価を原資産としていますが、直接225社の価格を参照しているわけではないため、一社の株価が動いたとしても日経平均先物の価格が必ず動く、というものではありません。
・価格の意味の違い
時間軸でみると日経平均株価の価格は「現在」を表しているのに対し、日経平均先物は「未来の予想」を表しています。
そのため、目の前で大きく日経平均株価が下落しても「今後、日経平均は回復、上昇する」と考える人が多ければ、日経平均先物の価格はそこまで下落しない、と言ったことも起こります。
また、日経平均株価はあくまで「指数」であり、何か特定の商品の値段を直接表しているものではありません。一方、日経平均先物は「金融商品」なので、先物価格はその金融商品の取引価格そのものを表していることになります。
・取引方法
日経平均株価は、先述の通り、特定の商品の価格を表しているわけではないため、直接この価格をもとに売買することはできません。取引、投資をしたい場合は、日経平均株価に連動するETFや投資信託を通じて、間接的に行うことになります。
対して、日経平均先物は先物取引によって直接売買することができます。なお、先物取引は証拠金という担保の入金が必要ですが、その証拠金の数十倍の取引をすることも可能です。いわゆるハイリスクハイリターンなものと言えます。
日経平均株価と日経平均先物の見るべきポイント
改めて日経平均株価と日経平均先物の違いを確認できたところですが、これらの違いを前提に、具体的にどのような視点でそれぞれを見ておけばいいのか、という部分がやはり疑問なのではないかと思います。
そこで本章では、日経平均株価と日経平均先物の見るべきポイントをお伝えします。あくまで「見方の一つ」ではありますが、迷っている人はぜひ参考にしてみてください。
・日経平均株価と日経平均先物の価格差に注目する
ポイントの一つ目は、日経平均株価と日経平均先物の価格差に注目することです。
1章で説明した通り、先物の価格は限月までの日数が近くなるほど価格が予想しやすくなる、つまり日経平均株価と近くなるという要素があります。
また、先物価格は需給で決まるため、例えば大きく下落したとしても「流石に次の限月までに、流石にそこまで日経平均株価自体が下落することはないだろう」と考え、先物を買う人も一定数出てきて、結果的に日経平均株価に近しいところまで、先物価格が上昇することもあります。
これらのことは、つまり「先物の価格と日経平均株価は、最終的には同じくらいに収束する」という性質を表していると言えます。このポイントに注目するのです。
日経平均株価は先物に、先物は日経平均株価に近づこうとするので、例えば、先物価格が現物株価より高い状態(順ザヤ)であれば、「現状を表す日経平均株価の相場は少し強気。先物は今の価格よりもう少し下がるかも」といったような視点で考えることができそうです。
反対に先物価格が現物株価より低い状態(逆ザヤ)であれば「日経平均株価は少し弱くなりそう。でも先物価格は上がる見込みもある」という見方もできるのではないでしょうか。
もちろん、季節要因や経済イベントの影響などでそれぞれが大きく動くこともあるので、一概にこの見方ができるわけではありませんが、有効な視点の一つと言えます。
・日経平均先物の出来高に注目する
日経平均先物について、どのくらいの出来高あるかに注目することも、一つのポイントと言えます。
つまり、日経平均先物の取引が活発に行われているかどうか、を確認するのです。
なお、出来高の基礎知識はこちらの記事で詳しく解説しています。
【おすすめ記事】
例えば、先物価格が大きく下落方面に動いた際、出来高も大きくなっていれば「この先で日経平均が下がると予想する人が多い」という解釈ができ、日経平均株価もその下落方面に収束して動く力が強くなりそう」と連想して考えることができます。
一方、先物価格が下落しても相対的に出来高が少なければ「少し売られすぎかもしれない」などと判断することも可能です。
出来高は証券アプリやWEBサイト等でチャートと一緒に確認できるので、日経平均株価や先物を見る際は、価格や指数のみではなく、先物の出来高にも注目して見ると良いです。
まとめ
いかがでしたか。
調べると、よくセットになって出てくる日経平均株価と日経平均先物。名前は似ていますが、値段が異なっていたり、先物は夜間でも値動きがある等、比較すると違いも多くあることに気づきます。
しかし「違いがあるのだから、何か見方があるはずだ」とは思っても、具体的な違いや活用の仕方がイマイチよくわからない、と感じた部分も大きいのではないでしょうか。
本記事の内容が、違いの理解や今後の投資戦略立案の参考になれば幸いです。
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