「日経225」は正しくは「日経平均株価」と言い、日本を代表する株価指数です。
225銘柄の株価を平均して算出することから「日経225」と呼ばれます。
この225銘柄は年に1~2度、定期的に入れ替えがなされます。
入れ替えは日経225が常に時代を映す株価指数であるためのいわば“新陳代謝”のようなもので、とても大切な作業と言えるでしょう。
とはいえ、新たに採用される銘柄は株価が急騰し、除外される銘柄は急落するなど、入れ替えによって大きな変化が伴います。
株を保有している投資家にとっても当該企業にとっても、まさに一大イベントとなるのです。
本記事では、お金と投資の学校GFS(グローバルファイナンシャルスクール)監修のもと、個人投資家家でもある筆者が、日経225の銘柄入れ替えについて、採用・除外の基準や入れ替えスケジュールを整理するとともに、このイベントに合わせて投資家はどう動くべきか、値動きの実例や投資戦略などを解説していきます。
あらかじめ知っておくことで、ご自身の投資判断に役立てていただければ幸いです。
なお、「日経平均上がるとどうなる?」「日経平均とTOPIXどっちを買う?」については、別の記事で書いていますので合わせてご覧いただければと思います。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、「会社四季報」編集長との共同セミナーに講師として登壇(東京証券取引所主催)するなど、著書に講演依頼、メディア出演も多数。「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
①日経225の概要
1-1 日経225の基本概要
入れ替えの方法などを説明する前に、日経225の概要をおさらいしておきましょう。
日経225(日経平均株価)は1950年に算出を開始した株価指数です。
はじめに売買高の多い銘柄を業種のバランスを考えて選定した結果、225銘柄を数え、そのまま今に続いているようです。
株価の平均値であるため、時価総額が高い企業より価格の高い企業のウェイトが高くなり、日本経済の実態を必ずしも反映していないなどの批判もありますが、70年超にわたり戦後の日本経済の歴史を刻んできた重要な指標であることには間違いありません。
2024年には34年ぶりにバブル時の最高値を更新し、これをどこまで伸ばせるのか、投資家の注目を集めています。
1-2 銘柄選定の基準
現在の銘柄は東京証券取引所のプライム市場に上場する銘柄のうち、 ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などを除く普通株式から選定されています。
算出する日本経済新聞社が、有識者の意見も踏まえつつ、市場流動性の高さとセクター(業種)のバランスを考えて選抜しています。
市場流動性とは、発行済み株式のうちどれだけの浮遊株があり、それが市場で売買されるかを測る指標です。
を重視するようになったのは、日経平均銘柄を対象とする先物取引が始まり、流動性の低いいわゆる「品薄株」の売買によって著しく実勢にそぐわない株価が記録されるようになったことが理由とされます。
1-3 現在の構成銘柄
現在の構成銘柄225社は以下の通りです(2024年7月末現在)。
日経225の中身って意外と知らない人も多いと思うので、この際どんな製品・サービスを提供している会社かを調べてみるのもいいかもしれません。
ここにあるのは銘柄名ではなく正式社名です。数字は証券コード。
医薬品
4151 協和キリン
4502 武田薬品工業
4503 アステラス製薬
4506 住友ファーマ
4507 塩野義製薬
4519 中外製薬
4523 エーザイ
4568 第一三共
4578 大塚ホールディングス
電気機器
6479 ミネベアミツミ
6501 日立製作所
6503 三菱電機
6504 富士電機
6506 安川電機
6526 ソシオネクスト
6594 ニデック
6645 オムロン
6674 ジーエス・ユアサコーポレーション
6701 日本電気
6702 富士通
6723 ルネサスエレクトロニクス
6724 セイコーエプソン
6752 パナソニックホールディングス
6753 シャープ
6758 ソニーグループ
6762 TDK
6770 アルプスアルパイン
6841 横河電機
6857 アドバンテスト
6861 キーエンス
6902 デンソー
6920 レーザーテック
6952 カシオ計算機
6954 ファナック
6971 京セラ
6976 太陽誘電
6981 村田製作所
7735 SCREENホールディングス
7751 キヤノン
7752 リコー
8035 東京エレクトロン
自動車
7201 日産自動車
7202 いすゞ自動車
7203 トヨタ自動車
7205 日野自動車
7211 三菱自動車工業
7261 マツダ
7267 本田技研工業
7269 スズキ
7270 SUBARU
7272 ヤマハ発動機
精密機器
4543 テルモ
4902 コニカミノルタ
6146 ディスコ
7731 ニコン
7733 オリンパス
7741 HOYA
7762 シチズン時計
通信
9432 日本電信電話
9433 KDDI
9434 ソフトバンク
9613 NTTデータグループ
9984 ソフトバンクグループ
銀行
5831 しずおかフィナンシャルグループ
7186 コンコルディア・フィナンシャルグループ
8304 あおぞら銀行
8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ
8308 りそなホールディングス
8309 三井住友トラスト・ホールディングス
8316 三井住友フィナンシャルグループ
8331 千葉銀行
8354 ふくおかフィナンシャルグループ
8411 みずほフィナンシャルグループ
その他金融
8253 クレディセゾン
8591 オリックス
8697 日本取引所グループ
証券
8601 大和証券グループ本社
8604 野村ホールディングス
保険
8630 SOMPOホールディングス
8725 MS&ADインシュアランスグループホールディングス
8750 第一生命ホールディングス
8766 東京海上ホールディングス
8795 T&Dホールディングス
水産
1332 ニッスイ
食品
2002 日清製粉グループ本社
2269 明治ホールディングス
2282 日本ハム
2501 サッポロホールディングス
2502 アサヒグループホールディングス
2503 キリンホールディングス
2801 キッコーマン
2802 味の素
2871 ニチレイ
2914 日本たばこ産業
小売業
3086 J.フロント リテイリング
3092 ZOZO
3099 三越伊勢丹ホールディングス
3382 セブン&アイ・ホールディングス
8233 高島屋
8252 丸井グループ
8267 イオン
9843 ニトリホールディングス
9983 ファーストリテイリング
サービス
2413 エムスリー
2432 ディー・エヌ・エー
3659 ネクソン
4324 電通グループ
4385 メルカリ
4661 オリエンタルランド
4689 LINEヤフー
4704 トレンドマイクロ
4751 サイバーエージェント
4755 楽天グループ
6098 リクルートホールディングス
6178 日本郵政
7974 任天堂
9602 東宝
9735 セコム
9766 コナミグループ
鉱業
1605 INPEX
繊維
3401 帝人
3402 東レ
パルプ・紙
3861 王子ホールディングス
3863 日本製紙
化学
3405 クラレ
3407 旭化成
4004 レゾナック・ホールディングス
4005 住友化学
4021 日産化学
4042 東ソー
4043 クヤマ
4061 デンカ
4063 信越化学工業
4183 三井化学
4188 三菱ケミカルグループ
4208 UBE
4452 花王
4631 DIC
4901 富士フイルムホールディングス
4911 資生堂
6988 日東電工
石油
5019 出光興産
5020 ENEOSホールディングス
ゴム
5101 横浜ゴム
5108 ブリヂストン
窯業
5201 AGC
5214 日本電気硝子
5233 太平洋セメント
5301 東海カーボン
5332 TOTO
5333 日本碍子
鉄鋼
5401 日本製鉄
5406 神戸製鋼所
5411 JFEホールディングス
非鉄・金属
3436 SUMCO
5706 三井金属鉱業
5711 三菱マテリアル
5713 住友金属鉱山
5714 DOWAホールディングス
5801 古河電気工業
5802 住友電気工業
5803 フジクラ
商社
2768 双日
8001 伊藤忠商事
8002 丸紅
8015 豊田通商
8031 三井物産
8053 住友商事
8058 三菱商事
建設
1721 コムシスホールディングス
1801 大成建設
1802 大林組
1803 清水建設
1808 長谷工コーポレーション
1812 鹿島建設
1925 大和ハウス工業
1928 積水ハウス
1963 日揮ホールディングス
機械
5631 日本製鋼所
6103 オークマ
6113 アマダ
6273 SMC
6301 小松製作所
6302 住友重機械工業
6305 日立建機
6326 クボタ
6361 荏原製作所
6367 ダイキン工業
6471 日本精工
6472 NTN
6473 ジェイテクト
7004 日立造船
7011 三菱重工業
7013 IHI
造船
7012 川崎重工業
その他製造
7832 バンダイナムコホールディングス
7911 TOPPANホールディングス
7912 大日本印刷
7951 ヤマハ
不動産
3289 東急不動産ホールディングス
8801 三井不動産
8802 三菱地所
8804 東京建物
8830 住友不動産
鉄道・バス
9001 東武鉄道
9005 東急
9007 小田急電鉄
9008 京王電鉄
9009 京成電鉄
9020 東日本旅客鉄道
9021 西日本旅客鉄道
9022 東海旅客鉄道
陸運
9064 ヤマトホールディングス
9147 EXPRESSホールディングス
海運
9101 日本郵船
9104 商船三井
9107 川崎汽船
空運
9201 日本航空
9202 ANAホールディングス
倉庫
9301 三菱倉庫
電力
9501 東京電力ホールディングス
9502 中部電力
9503 関西電力
ガス
9531 東京瓦斯
9532 大阪瓦斯
(出典:日経平均プロフィル「構成銘柄一覧」)
業種別の比率は以下の通り。
(出典:東証マネ部)
銘柄数の多い電気機器の比率が一番高いですね。その次が小売ですが、これはユニクロでおなじみのファーストリテイリングの株価の高いせいです。
日経225でウェイトの高い上位銘柄を見てみましょう(2024年7月の日経平均「月次ファクトシート」より)。
表の一番右の数字が構成比率です。ファーストリテイリングがなんと1社で10%もウェイトを占めていますね。株価が飛びぬけて高いせいです。
日経225が“ユニクロ指数”と揶揄される理由です。
②日経225入れ替え、スケジュールとルール
2-1 定期入れ替えの時期
構成銘柄の入れ替えには、日経が定期的に実施する「定期見直し」による入れ替えと、上場廃止など構成銘柄に欠員が生じる場合に不定期に銘柄を補充する「臨時入れ替え」があります。
定期見直しの入れ替えは年に一度、秋に行われます。このタイミングは、日本の企業決算や経済状況を反映しやすいためでしょう。
具体的には、9月の最終営業日に入れ替え銘柄が日本経済新聞社より発表され、翌10月の第一営業日に新たな構成銘柄を組み入れて算出が開始されます。
とはいえ、適切な銘柄がない場合はあえて入れ替えしないこともあるし、4月1日から入れ替えというケースもあるようです(第3章「過去の入れ替え事例」の項参照)。
一連のスケージュールは投資家にとってはもちろん、採用・除外企業にとっても重要なイベントとなります。
なぜなら、日経225に連動する多数の投資信託が、採用銘柄を買い入れ、除外銘柄を売却することから、大きく値が動くからです。
2-2 選定方法と評価基準
日経225の銘柄入れ替えは、定期見直しにせよ、臨時入れ替えにせよ、基本的に流動性や時価総額、業績などを基に銘柄が選ばれます。
前章でも触れた通り、特に流動性の大きさは大事な要素です。個々の銘柄の市場流動性を測定する指標は、
- 過去5年間の売買代金
- 過去5年間の売買高当たりの価格変動率
の両指標とし、これが高い450銘柄を「高流動性銘柄群」とし、その中でも流動性の高いものから選抜します。
市場での取引量が多い銘柄、従って市場に与える影響の高い銘柄が新規採用にあたっては重視されるわけですね。また、セクター間のバランスも考慮されます。
セクターとは36の業種を6つのグループに分類したもの。セクターとその業種グループは以下の通りです。
セクター | 業種 |
---|---|
技術 | 医薬品、電気機器、自動車、精密機器、通信 |
金融 | 銀行、その他金融、証券、保険 |
消費 | 水産、食品、小売業、サービス |
素材 | 鉱業、繊維、紙・パルプ、化学、石油、ゴム、窯業、鉄鋼、非鉄金属、商社 |
資本財・その他 | 建設、機械、造船、輸送用機器、その他製造、不動産 |
運輸・公共 | 鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス |
2-3 除外銘柄の選定基準
除外基準としては、前項で説明した450銘柄の「高流動性銘柄群」からはずれたものが除外の対象になります。
またセクターの過不足をもとに採用銘柄が見直されることもあり、この場合もやはり、銘柄数の過剰なセクター内の流動性の低い銘柄が除外の対象となります。
一方、臨時見直しの場合は、業績不振などによりプライム市場から他の市場に変更となった銘柄や、倒産・債務超過・被合併などにより上場廃止した銘柄が除外となります。
2-4 過去の入れ替え事例
近年では、技術革新や新興企業の台頭を背景に、新たな企業が日経225に加わっています。
ここ10年の銘柄入れ替えは以下の通り(左:除外 右:採用)。
(「日経平均株価銘柄変更履歴」より2024年4月1日現在)
ディーエヌエー、楽天、サイバーエージェント、メルカリ、ZOZOなどネットサービス関連銘柄の採用は象徴的な銘柄変更の例と言えるでしょう。
一方で、重厚長大産業いわゆる「オールドエコノミー」と呼ばれる銘柄が次々と除外されていますね。
このように時代に合わせて構成銘柄をアップデートすることで、日経225は日本の経済の変化をより正確に反映する指数として支持されてきたのです。
ただし相変わらず値がさ株の影響が大きいのがネックであり、海外投資家はより実態に沿うTOPIXの方を重視しているとの声も聞かれます。
③日経225の入れ替えに備えるための投資戦略
日経225の銘柄入れ替えを使い、実際に投資家はどのようなことができるのでしょうか。
ここでは筆者のささやかな経験も入れながら、入れ替え前と後でそれぞれどんなアプローチができるのかを考えてみました。
3-1 入れ替え前の投資アプローチ
日経225の入れ替えに備えるための投資戦略としては、
- 新規採用銘柄を予想して発表前に買い入れておく
- 逆に除外されそうな銘柄を発表前に空売りする
という戦略が考えられます。
実際に定期見直しの季節が近づくと、アナリストがこぞって新規採用と除外銘柄を予想して各紙誌で発表しています。
これに乗って、事前に有望銘柄を買っていくのもありかもしれません。
ただし、採用銘柄を当てるのはけっこう至難のわざです。
過去5年の流動性を確認するのは個人にはほぼ不可能であり、高流動性銘柄が450銘柄わかったところで、上位から順に採用されるわけでもありません。
筆者は2019年3月、倒産で除外になったパイオニアの替わりにどの銘柄が日経225に採用されるかを予想し、オムロンの採用をずばり的中したことがあります(なぜ当たったかはもう忘れました)。そのときのチャートが下図です。
発表前に100株購入しましたが、発表までにどんどん上がっていきました。
そんなに有力候補でもなかったですが、それでも期待で買っている投資家が大勢いたわけですね。
で、結局発表を待たずに利確してしまいました(笑)。
結果は採用となり、発表の翌営業日に株価はストップ高、さらに翌日も高値で寄り付いたのを見て、歯がみをしたのを覚えています。
でも、もし採用されなかった場合、期待で上がってた分だけ下落したはずです。
つまりこれは、長半博打のようなギャンブルにすぎないわけです。
なので、イベントはイベントとして予想を楽しむのはいいですが、仮に自信があっても、これでたくさん儲けようなどとはあまり思わないほうがいいと思います。
もしやるなら余裕資金でやりましょう。
3-2 入れ替え後の投資アプローチ
オムロンのチャートを見てもわかる通り、採用が決まって一気に上げてからは、下げるのも早かったです。
結局その場限りのギャンブルですから、買っていた人は一刻も早く利確しいんですね。
これはIPOに当選した人が上場当日に寄り値で売ってしまうのと似たような心理かもしれません。
でも、IPOにセカンダリー投資があるように、長期で保有するつもりなら、値動きが落ち着いてからゆっくり購入するのがいいでしょう。
日経225連動の投資信託が、採用銘柄を買い付けたり、除外銘柄を売却したりするのは、発表翌日の値動きの荒い時ではなく、実際の日経225組み入れ日以降になるのでしょうから。
ちなみに2024年4月に新規採用されたZOZOと除外された宝ホールディングスの値動きもお見せしましょう。
まずはZOZO。
続いて宝ホールディングス。
まるで天国と地獄のような対照的な値動きです。
これらの値動きに乗ってトレードする場合、どちらも発表後に参加していっても十分間に合う感じですね。
とはいえ、それは後から言えることで、やはり直後の投資(投機)は危険なギャンブルと言わざるを得ません。
銘柄入れ替えのスケジュールを把握し、採用銘柄や除外銘柄がどんな値動きになるかを予想することで、下手に手を出して大けがをするミスは避けられます。
たとえば除外を発表された銘柄が翌日大きく下落した場合、理由もわからず「押し目」と勘違いして買ってしまうと、その後もずるずると下落が続くことになります。
なので、入れ替えについての情報は事後でも確認しておいて損はないでしょう。
まとめ
日経225の入れ替えは、投資家にとっても企業にとっても重要なイベントです。
入れ替え基準やスケジュールを理解し、予測してそれに備えることは可能でしょう。
ただ、採用・除外銘柄を予想するのはかなり難しく、事前に買いや売りを入れるのは避けた方が無難です。
日経225の入れ替えに関する情報を常にチェックし、発表から数日の値動きの荒い期間に手を出して巻き込まれないように注意しましょう。
なお、独学で投資を勉強することに不安を感じる人もいると思います。
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