不労所得も狙える? 不動産投資で家賃収入を得る方法と注意点

NISAの普及によって、給与以外の収入を求める層が増えているのは言わずもがなです。株式や債券をはじめとする金融商品への投資はさておき、税金対策や不労所得を得るための手段として定番化しているのが「不動産投資」です。

しかし、リスクの程や初期費用の高さなどから、中々敬遠されがちな手法であることは否めません。

もちろん、不動産ファンドへの投資であれば、さほど大きな資金を要することもなければ、分散投資などでリスクヘッジも可能。では「現物投資」の場合はどうでしょうか? 

高い節税効果をはじめとするメリットこそあるものの、敬遠されるだけのリスクを孕んでいることは確かです。そこで今回は、不動産投資で家賃収入を獲得する場合の注意点や方法などについて詳しく紹介していきます。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

不動産投資で家賃収入を得る方法

ファンドではなく現物の不動産投資をする場合、手順は非常にシンプルです。端的に言うと物件を購入し、入居者を集めることができればそれで完了になります。ちなみに住居だけでなく、駐車場経営も不動産投資と言えるでしょう。そこでまず第一章では、不動産投資の種類や家賃収入を得るまでの流れについて簡単に説明していきます。

不動産投資の種類を知ろう

一口に不動産投資と言っても、種類は様々あります。簡単に分けると以下の通りです。

不動産投資の種類

⚫︎戸建て運用

戸建ての住宅物件を購入して賃貸用に提供する方法。家族世帯の入居が主であることから長期間の賃貸契約が見込めるため、空室リスクは低め。しかし、戸建てを購入すると初期費用がかかる点が一番のネック。

 

⚫︎アパート・マンションの一棟運用

その名の通り、集合住宅を一棟丸ごと購入し、運用する方法。区分運用の場合は一部屋のみの家賃収入しか見込めないが、一棟になると貸し出す部屋数が一つではないため、複数の契約が見込める。ただし、戸建て運用同様、一棟購入する費用が最大のネックとなる。

 

⚫︎アパート・マンションの区分運用

不動産運用初心者にうってつけなのがこの区分運用。一部屋単位で運用できるため、初期投資費用を大きく抑えることができる。その分大きな収益は見込めないが、空室リスクさえ回避できれば、定期的に固定収入を得る期待が持てる。

 

⚫︎駐車場運用

固定の月額を徴収する形の「月極」は安定した収益が見込めるが、立地によっては空きリスクを伴う。一方、空き地を利用してコインパーキングを運営するのも駐車場運用の一つであり、立地によっては利用者数を稼ぐことができる反面、時間帯や季節によって需要が大きく変動する。

家賃収入を得るまでの流れ

不動産投資における利益とは、すなわち「家賃収入」を指します。やるべきことはご存じの通りで、購入した物件を他者に貸すことで賃料をもらう。そのやり取りこそが全てです。簡単に流れを紹介すると、以下の通りです。

STEP1:適切な物件を選び、購入する

最も大事な工程がココです。駅までのアクセスが良い点や、スーパーが近いなど、利便性によって人気の程は大きく異なります。人気のエリアにある分譲マンションを購入するのも良いでしょうし、資金に余裕があるなら空き地に一棟集合住宅を建て、そこを運用するのも悪くありません。

しかし大事なのは、融資を受けるなどで購入資金を担保し、確実に購入することです。それができなければ不動産投資を始めることができません。

 

STEP2:入居者を募る

購入できたら、次は入居者の募集です。広告を出すなどの手段を講じ、自力で入居者を集めることも可能ですが、あまり効率が良い手段とは言えません。費用こそかかるものの、建物のある地域の不動産店に委託するなどの手段を講じ、より早く、確実に入居者を確保すべきでしょう。

さらに、入居者が見つかってから負担になるのは「管理業務」です。消耗品の交換や設備の修理・修繕など、もちろん自ら対応することも可能ですが、本業がある方にとっては時間的な負担が大きいため、こちらもある程度の費用がかかりますが、外部の管理会社を利用するのが良いでしょう。

 

STEP3:家賃収入の獲得

最後が家賃収入の獲得であり、ここまでが一連の流れとなります。もちろん得た収入は運用者の口座に全て振り込まれることになる訳ですが、管理会社を利用している場合はそこから経費として差し引くことになる上に、さらに固定資産税分の確保も忘れてはいけません。

また、この他もマンションの場合は修繕積立金、築年数の経過によってリフォーム代などが発生することも覚えておくべきでしょう。

不動産投資で家賃収入を得る3大メリットとは?

何をどうやって不動産投資で収入を得るのか? については前章で解説した通りです。しかし、ある程度の経費がかかる上に、何より物件を購入するのはかなり高額な出費となるため、怖さが優先されるのは当然のことと思います。そこまでして不動産投資をやるべきメリットとは何でしょうか? ここではそのメリットにフォーカスして解説していきます。

①安定的に副収入を獲得できる

空室にならない限り毎月家賃収入が入るため、非常に安定的です。立地や賃料によって異なりますが、不動産投資は金融投資よりも景気に左右されにくいため、不況になると不動産投資を始める方が増えると言われています。

その特徴こそ、不動産投資が選ばれる最大の魅力であり、メリットと言えるでしょう。

②節税効果が見込める

不動産投資は節税効果があるという話を聞いたことがあると思います。簡単に仕組みを解説すると、減価償却費を利用して会計上の赤字を作り、給与をはじめとする他の所得と損益通算し、所得を圧縮することで節税につながると言うわけです。

さらに、不動産投資にかかるいくつかの経費、例えば固定資産税などの租税公課や損害保険料、広告宣伝費、管理会社に支払う費用なども経費計上できるため、その分総所得を減らし、益々の減税効果を得ることができます。

③インフレ対策になる

一体なぜ不動産投資がインフレ対策になるのか? というと、まずインフレになると物価が上昇するため、お金の価値は相対的に下がります。しかし、現物資産である不動産はその影響を受けにくく、それどころか需要の増加に伴って、インフレ時に価値を上げる物件もあるほどです。そして、インフレが持つもう一つの特徴が物価の上昇です。

つまり、建物自体の価格はもちろん賃料も増加する傾向にあり、収入アップが見込めます。ただし、一点気にしておくべきなのは「金利」です。インフレになるとローンの金利が上昇しやすく、つまり不動産投資ローンを利用して物件を購入している場合は、支払額が圧迫される可能性が高まります。その一点を除けば、不動産投資がインフレ時に有利に働くと言って相違ないでしょう。

不動産投資で効率よく家賃収入を得る方法

方法やメリットを知ったところで、必ず成功できるほど不動産投資は甘くありません。効率よく利益を出していくために必要なのはズバリ「質の高い情報」です。「人が集まるエリアだから問題ないだろう」「駅前だから入居希望者は多いはず」「新築物件だから抽選になってもおかしくない」など、安直な考えだけを頼りに物件を選んだところで、結果の程は知れています。では、人が集まる良質な物件を選ぶ際に知っておくべき情報とは一体何なのか? 以下で詳しく解説していきましょう。

①人口流入が見込める・人口密度の高いエリアを狙う

単純な話ですが、人口密度が高い程、空室リスクは低くなります。ただし、数値だけを頼りにするのは非常に危険です。見るべき点は居住者の数に加え、周辺事情の詳細も欠かせません。例え居住者が多くても、人口の減少が進んでいるエリアだったら購入する価値はありませんし、店舗や学校が少ない生活利便性が低いエリアなら、尚更価値などないと言って相違ないでしょう。

とは言え、全ての項目を満たす物件を見つけるのは非常に難しく、もし見つかったとしても価格が高くて手が届かないなんてことが主。そこで注目すべきなのは都市開発化が計画されている新興住宅地の候補を見つけることです。

例えば、新しくできた駅の周辺や、再開発計画が進んでいるエリアなどが代表的と言えます。既に人口密度が高く、利便性も高いエリアより、土地・建物の相場が低いケースが多いため、それら条件を満たしているかどうかで大体の「場所」を決めるところから始めるのが良いでしょう。

②評判の高い管理会社に委託する

不動産投資で良い結果を出すには、不動産管理会社の選択が大きな鍵を握っていると言っても過言ではありません。しかし、数多ある管理会社の中から最良の一社を選ぶのは至難の業です。そこで携えておくべき良い管理会社の特徴についていくつか挙げておくと・・・

⚫︎長く地域に根付いている

⚫︎手数料がさほど高くない

⚫︎トラブル時の対応が良い

⚫︎担当者がある程度固定される

以上になります。

どれも言われてみれば確かにその通りという内容なのですが、問題は契約しないと実際のところがわからない点です。

そこで、外からチェックできるポイントとして「経営状況が良好かどうか」「ネットでの評価・評判の程はどうか」「入居率の実績値はどうか」などを調べ、それを基に選ぶのが良いでしょう。

③利回りの高い物件を選ぶ

不動産投資における「利回り」とは、物件価格に対する満室時の家賃収入の割合を指します。つまり、年間の家賃収入が120万円で物件価格が1,200万円だった場合、利回りは10%になるでしょう。しかし、都心部など人口密度の高いエリアではあまり利回りの高い物件がなく、どちらかと言うと地方に多いと言われています。

さらに、高い収益が見込めると同時に、空室リスクが高く管理修繕費がかかりやすい。さらに流動性が低い(不人気)というリスクを孕んでいるあたりは否めず、単純に利回りが高い物件であればどこでも良いという訳ではないのです。気になるエリアの中で比較的利回りが高く、それでいて人気物件の要点を押さえているところを根気よく探すべきだと思います。肝心の選ぶべき理想の利回りについては、以下にまとめた通りです。

⚫︎区分マンション(新築)・・・3~4%

⚫︎区分マンション(中古)・・・5.5%~8%

⚫︎一棟アパート(新築)・・・8%

⚫︎一棟アパート(中古)・・・9~10%

⚫︎一棟マンション(新築)・・・6%

⚫︎一棟マンション(中古)・・・7~8%

⚫︎戸建(新築)・・・10%

⚫︎戸建(中古)・・・15%

家賃目的で不動産投資をする際の注意点

インフレに強く定期的に固定収入を得やすいという特徴を持つ不動産投資ですが、誰もがその通りに上手くいくとは限りません。つまり、人気条件を満たした物件を購入するだけで上手くいくと思ったら大間違いということです。

効率よく利益を出し、それを持続させるためには、あらゆる注意点を抑え、対策を講じる必要があります。そこで最後に紹介するのは、不動産投資で利益を出し続けていくために注意すべき点、やるべきことなどについてです。

①可能な限りリスクヘッジをする

不動産投資においてリスクヘッジすべき項目は非常に多く、代表的なものをチョイスすると・・・

⚫︎空室リスク

⚫︎災害リスク

⚫︎家賃滞納リスク

個々に講じる手段は異なり、例えば「空室リスク」に備える場合、やるべきことは前章で紹介した「選ぶべき物件の特徴」を基準に物件を選び、長期的に賃料を得られる可能性を高めること。「災害リスク」に対してやるべきことは、過去の災害事例を調べ、当時の対処法を把握しておくことや、付近のハザードマップを注視して、災害のリスクがあるかどうかはもちろんその程度についても確認しておくことです。

さらに「家賃滞納リスク」については賃貸契約時に借主へ「家賃保証会社」への加入を必須とさせることで「もらいそびれ」のリスクを避けることが可能になります。どれも発生するリスクが高いため、あらかじめ手段を講じておくことは必須と言えるでしょう。

②あらかじめある程度の費用を準備しておく

不動産投資を始めるにあたって、最初にぶつかる壁は何と言っても「資金を準備できるかどうか」でしょう。オーナーになる以上、物件自体を購入する必要があり、数十万、数百万といったレベルを超えた大金がかかることは想像に難くありません。

もちろん、手元に資金がない場合はローンを組むことも可能ですが、誰でも審査に落ちてしまう可能性はゼロではないという点を認知しておくべきでしょう。そこでやるべきことは「少しでもローン審査を通りやすくする工夫」になります。ポイントは以下の通りで・・・

⚫︎ある程度自己資金を準備しておく

⚫︎担保を用意する

⚫︎利回りが高く人気が出そうな物件を選ぶ

以上です。

まず、それなりに年収がある方であればあまり問題ないと思いますが、平均的な収入にも関わらず自己資金ゼロというケースは審査に落ちやすいと言われています。ただし、審査の基準については明かされていないため、一体何をどうすれば審査に通るのかを明言することはできませんが、どうしても自己資金を工面するのが難しい場合は「担保」を用意することで解消できたケースも多くあるそうです。

例えば自宅など、融資してもらう金額に見合った担保を設定することで、審査に通過する可能性も高まると考えて良さそうです。

そして最後に挙げた「利回りが高く人気が出そうな物件を選ぶ」について説明すると、購入予定の物件が「利益にならない」と融資先が判断した場合、審査を受ける前に融資そのものを断られてしまう恐れがあるということになります。前章で紹介した『良い物件の特徴』を参考に物件をチョイスし、ハナから断られてしまうリスクを回避しておくべきでしょう。

③リスクの高い物件のチョイスを避ける

そもそもリスクの高い物件とは何か? というと・・・

⚫︎家賃が適正価格でない物件

⚫︎設備が古すぎて修理修繕が必須の物件

⚫︎近所に建設予定の大規模なマンションがある

以上が代表的な例です。

賃料が高く利回りが良い物件の場合、建物自体のスペックが低い、もしくはさほど立地が良くないなどの理由により、過大評価されているケースがあります。言い換えれば「家賃が高すぎる」ということです。

逆に、利便性に富んだ立地にあるにも関わらず、家賃が平均より安い物件などは、設備が古く修理・修繕が欠かせない場合も多くあるあたりにも注意すべきでしょう。初期投資が高い上に、最初から設備投資に資金を投入するのは効率が悪いと言わざるを得ません。上手い話には乗らず、想定できるリスクの高低を基準に物件を選ぶべきです。

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