今さら言うまでもないことかもしれませんが、株式をはじめとする投資で得た利益には、一様に税金がかかります。それらは所得税法や税法によって規定されており、利益の大きさによってかかる税金の額は異なり、支払うタイミングもまた然りです。
そこで今回は、株取引の利益にかかる税金の額やタイミング、さらには支払う方法にフォーカスし、詳しく紹介していきます。
この記事で学べること
⚫︎税金が引かれるタイミングや支払い方法
⚫︎株式投資で税金がかかる利益について
⚫︎株取引の税金を抑える方法
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、「会社四季報」編集長との共同セミナーに講師として登壇(東京証券取引所主催)するなど、著書に講演依頼、メディア出演も多数。「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
目次
税金が引かれるタイミングや支払い方法は口座の種類によって異なる
まず最初に紹介していくのは「利用口座ごとの支払いタイミングや方法」についてです。まず、株式の取引に使える口座の種類は、源泉徴収ありの特定口座・源泉徴収なしの特定口座・NISA口座・一般口座の4つに大別でき、それぞれに税金が引かれるタイミングや支払い方法が異なります。以下をよくお読みいただき、ご自身が利用している口座と照らし合わせて確認してみてはいかがでしょうか?
口座ごとの税金が引かれるタイミングについて
NISAは一定の利益に対して非課税になるため、ここでは特定口座と一般口座のケースについて紹介していきます。
⚫︎特定口座(源泉あり)・・・翌年に証券会社がまとめて納税
⚫︎特定口座(源泉なし)・・・翌年に自分で申告・納税
⚫︎一般口座 ・・・翌年に自分で申告・納税
口座ごとに支払うタイミングについては以上の通りです。
しかしながら気になるのは、特定口座と一般口座の差異についてです。源泉ありの特定口座は、証券会社の方で計算した分をまとめて納税してくれるので、選ぶメリットはあると思います。
一方、源泉なしの特定口座を選ぶメリットは、確定申告しなくても年内の損益通算ができる点でしょう。
口座ごとの支払い方法について
投資を始めて間もない方などは、いつ、どうやって利益に対する税金を支払えば良いのか? について気になると思いますが、別段特別なことはありません。
一般口座、並びに源泉なしの特定口座を利用している場合は、その年の12月までに得た利益を、翌年の3月15日までに確定申告し、決定した税額を然るべきところで支払えば良いだけです。
無論言うまでもありませんが、忙しくて申告する時間がない方や手続き事が苦手な方などは、申告する必要のない源泉ありの特定口座を利用するのがおすすめです。
株式投資で税金がかかる利益は次の2つ
株式投資で得た利益には必ず税金がかかるのか? 実はそういう訳ではありません。利益の中でも、税金がかかる利益は「2種」に限定されます。ここでは、株式投資で出た利益のうち、税金がかかるものについて詳しく紹介していきます。補足として税金がかからない利益についても言及していきますので、是非ご一読下さい。
株式投資による利益①譲渡益(売却益)
まず一つ目は『譲渡益(売却益)』です。簡単に言うと「株式を取得してから売却する際に、取得価格よりも高い価格で売却することで得られる利益」のことになります。譲渡益は株式の売買によって生じるため、その額は購入価格と売却価格の差額によって決まるものです。ちなみに、税率は保有期間に関わらず20.315%になります。
株式投資による利益②配当金
株式における配当金とは、株主に支払われる利益の一部のこと。一般的に企業が利益を上げた場合、その利益の一部は株主に配当金として支払われるのが一般的です。尚、配当金は株主総会によって承認され、個々の株主に支払われることになります。
そして株主が保有している株式の数に応じて分配され、例えば1株当たりの配当金が100円であれば、100株保有している株主は10,000円の配当金を受け取ることになるといった具合に決められているのです。
そして配当金にかかる税金についてですが、支払い時に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要となります。もし配当金を確定申告する場合は、総合課税と申告分離課税が選択できることを覚えておきましょう。
税金がかからないケースについて
補足になりますが、税金がかからないケースについても紹介しておくと、給与所得者等で、株式の譲渡益、配当金などを含む本業以外の収入が20万円以下の場合は、確定申告は必要ありません。
しかしながら例外として、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合は年間の利益が20万円以下の場合でも課税されてしまいます。少額投資などで年間の利益が少ないことが見込める場合は、事前に一般口座や源泉徴収なしの口座を選択するのが良いでしょう。
株取引の税金を抑える方法
NISAを利用している場合なら、非課税の枠内であれば税金を気にすることなく運用できます。しかし、非課税制度を利用していない場合は、当然利益に対して税金がかかるため、都度利益の程を理解しておく必要があります。
気になるのは『株取引で得た利益にかかる税金を抑えることができるのか?』についてです。しかし、そんなことが本当にできるのか? 利益が減らない限りそれは叶わないのではないか? と思われるでしょう。そこで同章では、株取引における節税にフォーカスして紹介していきます。
譲渡損失の繰越控除
譲渡損失の繰越控除とは、一年間の売買取引のトータルがマイナス(損失)だった場合、これを確定申告することで、株式を譲渡した際に生じた損失のうち、その年に控除できない分を翌年以降の3年間にわたって、上場株式等の譲渡益や配当金などから控除できることを言います。
メリットは、将来の利益から損失を差し引くことで、税金の支払額を減らすことができる点に尽きます。ちなみに、源泉ありの特定口座を利用している場合でも、確定申告を行うことによって損失の繰越控除ができる場合があるので、該当する方は是非調べてみて下さい。
非課税投資制度の利用
効率よく投資をしていくには、やはり税金の存在が厄介なもの。そこでおすすめなのが、非課税投資制度の利用です。NISA、iDeCoといった2種類の非課税投資制度は、どちらも節税メリットが高いので、節税の手段として非常に優秀と言えます。
用途としては、iDeCoは60歳を超えないと引き出すことができないため、老後資金専用としてのiDeCo、普段使いとしてのNISAといったように使い分けるのが良いでしょう。
ちなみにNISAの非課税投資上限は、成長投資枠で年間240万円、積立投資枠で120万円と決まっています。旧制度よりも倍以上限度額がアップしているので、より利便性が向上しているため、これまで利用していなかった方にもおすすめできます。
尚、NISA口座で発生した損失は、他口座で得た利益と損益通算することができませんので覚えておきましょう。
まとめ
⚫︎税金が引かれるタイミングは口座の種類によって異なる
・特定口座(源泉あり)の場合・・・翌年に証券会社がまとめて納税
・特定口座(源泉なし)の場合・・・翌年に自分で申告・納税
・一般口座 ・・・の場合翌年に自分で申告・納税
⚫︎株式投資で税金がかかる利益
・譲渡益(売却益)
・配当金
⚫︎税金がかからないケース
1年間のトータルの利益が20万円以下の場合
⚫︎株取引の税金を抑える方法
・譲渡損失の繰越控除
・損益通算の利用
・非課税投資制度の利用
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