「掛け捨てじゃない保険は損?」貯蓄型の罠とメリット、新NISAとの違いをプロが初心者に解説

「掛け捨てじゃない保険は損?」貯蓄型の罠とメリット、新NISAとの違いをプロが初心者に解説

「毎月の保険料を支払うだけで、何もなければ1円も戻ってこないのはもったいない…」

「万が一の保障を用意しながら、将来のためにお金も貯められたら一石二鳥なのに」

保険を検討する際、このように考える方は非常に多くいます。いわゆる「損をしたくない」という心理から注目されるのが、「掛け捨てじゃない保険(貯蓄型保険)」です。

しかし、ネットやSNSでは「掛け捨てじゃない保険は損をするからやめとけ」「いや、今の時代だからこそ必要だ」など、正反対の意見が飛び交っており、初心者の方は「結局どちらが正解なの?」と混乱してしまうのではないでしょうか。

結論から言うと、掛け捨てじゃない保険には明確なメリットがある反面、人によっては大きなデメリット(リスク)になる特徴もあります。 大切なのは、その仕組みを正しく理解し、自分の人生設計(ライフプラン)に合っているかどうかを見極めることです。

本記事では、保険の知識が全くない初心者の方でも体系的に理解できるよう、「掛け捨てじゃない保険」の概要から、具体的な種類、メリット・デメリット、そして「自分に向いているかどうか」の判断基準まで徹底的に解説します。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

第1章:そもそも「掛け捨てじゃない保険」とは何か?

まずは基本となる仕組みから紐解いていきましょう。「掛け捨てじゃない保険」は、金融・保険業界では一般的に「貯蓄型保険(ちょちくがたほけん)」と呼ばれます。

1. 「掛け捨て型」と「貯蓄型」の根本的な違い

生命保険は、大きく分けると「掛け捨て型」と「貯蓄型(掛け捨てじゃない保険)」の2つに分類されます。この2つの違いを、表を使ってシンプルに比較してみましょう。

比較項目掛け捨て型保険貯蓄型保険(掛け捨てじゃない保険)
主な目的万が一のトラブル(死亡・病気)への備え保障 + 将来に向けた資産形成(貯蓄)
保険料の安さ安い(少額で大きな保障を持てる)高い(掛け捨て型の数倍〜十数倍になることも)
解約返戻金なし(あってもごくわずか)あり(時期によっては支払った以上に増える)
満期保険金なしあり(商品による)
保険期間一定期間(10年、60歳までなど)が多い終身(一生涯)または一定期間

仕組みのイメージ

  • 掛け捨て型保険: いわば「サービスの利用料」です。プールやジムの月会費のように、その期間中に万が一のことがあれば大きなお金(保険金)が支払われますが、何もなければお金は戻ってきません。その分、原価が安いため、月々わずかな支払いで数千万円もの保障を買うことができます。

  • 貯蓄型保険: 「保障のための費用」に加えて、「将来のための貯蓄(積立金)」がセットになっています。あなたが支払った保険料の一部は、保険会社が将来の支払いに備えて大切に積み立て、運用しています。そのため、途中で解約したり、満期を迎えたりしたときに、まとまったお金が戻ってくるのです。

2. なぜお金が戻ってくるのか?(仕組みの裏側)

「保険会社はどうやって保障を提供しながら、同時にお金を増やして返しているの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

その秘密は、「責任準備金(せきにんじゅんびきん)」「予定利率(よていりりつ)」にあります。

あなたが支払った保険料は、すべてが掛け捨てられているわけではありません。保険会社は、支払われた保険料を以下のように3つに分解して管理しています。

  1. 純保険料(保障のあて先): 万が一の際、保険金を支払うためにプールされるお金。

  2. 純保険料(積立のあて先): 将来、あなたに解約返戻金や満期金を返すために貯められるお金(これが責任準備金です)。

  3. 付加保険料: 保険会社の運営費や人件費、パンフレット代などに使われるお金。

保険会社は、この「2. 積立のあて先」のお金を、国債や格付けの高い債券などで安全に運用しています。この運用する際の「見込みの利回り」のことを予定利率と言います。

予定利率が高ければ高いほど、効率よくお金が増えるため、将来戻ってくるお金(解約返戻金など)が多くなります。

【注意】預貯金との違い

銀行の定期預金は、預けたお金のほぼ100%がそのまま貯蓄に回ります。しかし貯蓄型保険は、上記の「1. 保障のあて先」や「3. 運営費」が最初に差し引かれます。そのため、加入してすぐに解約すると、支払った金額よりも大幅に少ない金額しか戻ってこない(元本割れする)という特徴があります。

第2章:掛け捨てじゃない保険(貯蓄型保険)の代表的な4つの種類

一言に「掛け捨てじゃない保険」と言っても、その目的や仕組みによっていくつかの種類に分かれます。ここでは、代表的な4つの保険商品について詳しく解説します。

1. 終身保険(しゅうしんほけん)

終身保険は、保障が「一生涯(終身)」続く死亡保険です。何歳で亡くなったとしても、必ず遺族に死亡保険金が支払われます。

特徴と仕組み

  • 一生涯の保障: 更新がないため、途中で保険料が上がることはありません(加入時の保険料がずっと続きます)。

  • 解約返戻金(かいやくへんれいきん)がある: 長く加入していればいるほど、内部で積立金が膨らんでいきます。そのため、途中で保険を解約した際、それまでに払い込んだ保険料の総額に近い、あるいはそれ以上のお金(解約返戻金)を受け取ることができます。

  • 主な使われ方:

    • 自分が亡くなったときの「お葬式代」や「遺品整理費用」の確保。

    • 残された家族の生活費。

    • 老後にお金が必要になった際、あえて解約して「老後資金」に充てる(保障は消滅します)。

2. 養老保険(ようろうほけん)

養老保険は、「保障」と「貯蓄」を完全に両立させた、期間の決まった保険です。

特徴と仕組み

  • 満期がある: 「10年間」や「60歳まで」といったように、あらかじめ期間を定めて加入します。

  • 生死混合保険: 保険期間中に亡くなった場合は、死亡保険金が支払われます。そして、何事もなく無事に満期を迎えた場合は、死亡保険金と同額の「満期保険金」が支払われます。

  • 確実性: 死んでも生きても、最終的に同額のお金が手に入るため、非常に計画的な貯蓄が可能です。

  • 主な使われ方:

    • 「10年後の車の買い替え費用」や「住宅購入の頭金」の準備。

    • 定年退職を迎える時期に合わせた「退職金のセルフ上乗せ」。

3. 学資保険(がくしほけん) / こども保険

学資保険は、子どもの教育資金(特に大学の入学金や授業料など)を準備するための専用保険です。

特徴と仕組み

  • 教育資金の積立: 毎月コツコツと保険料を支払い、子どもが17歳や18歳など、お金がかかるタイミングで進学祝金や満期保険金を受け取ります。

  • 保険料払込免除(ほけんりょうはらいこみめんじょ): これが学資保険の最大の強みです。契約者である親(多くの場合は父親や母親)が、万が一死亡したり、重度の障害を負ったりした場合、それ以降の保険料の支払いが免除されます。しかも、保障はそのまま継続され、子どもは予定通り満期保険金を受け取ることができます。

  • 主な使われ方:

    • 大学進学時のまとまった費用の準備。

4. 個人年金保険(こじねんきんほけん)

個人年金保険は、公的年金(国民年金・厚生年金)だけでは足りない老後の生活費を、自助努力で準備するための保険です。

特徴と仕組み

  • 現役時代に積み立て、老後に受け取る: 60歳や65歳まで保険料を支払い、その後、5年、10年、あるいは一生涯にわたって毎年(毎月)年金としてお金を受け取ります。

  • 受け取り方の種類:

    • 確定年金:本人の生死に関わらず、10年間など定めた期間必ずもらえる。

    • 終身年金:生きている限り、一生涯もらい続けられる。

  • 主な使われ方:

    • 老後の生活費のベースアップ。

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第3章:掛け捨てじゃない保険のメリット

それでは、なぜ多くの人が掛け捨てではない保険を選ぶのでしょうか。具体的なメリットを5つの視点から詳しく見ていきましょう。

メリット1:保障を得ながら「強制的な貯蓄」ができる

現代社会において、貯金が苦手な人は少なくありません。「給料が余ったら貯金しよう」と思っていても、ついつい使ってしまうのが人間の心理です。

掛け捨てじゃない保険に加入すると、毎月の保険料が銀行口座から自動的に引き落とされます。

これは言い換えれば、「強制的に先取り貯蓄をしている」状態です。しかも、銀行預金と違って「今月はスマホが欲しいから、ちょっと引き出そう」ということが簡単にできません(解約すると損をする可能性が高いため)。この適度な強制力と流動性の低さが、意思の弱い人にとっての確実な資産形成につながります。

さらに、貯金をしている最中に万が一のことがあっても、その時点から大きな保障(死亡保険金など)が発動するため、「貯金中に死んでしまったら家族が困る」というリスクを完全にカバーできます。

メリット2:最終的に支払った以上のリターン(解約返戻金・満期金)が期待できる

掛け捨て保険の場合、10年、20年と加入して支払った総額が100万円、200万円になっても、解約時の手戻りは原則「ゼロ」です。

一方、貯蓄型保険であれば、一定の期間(多くは保険料の払い込みが完了する時期)を過ぎてから解約すると、「払い込んだ総額以上の解約返戻金」を受け取ることができる設計の商品が多く存在します。

(例)30歳男性が60歳払込満了の終身保険に入った場合(イメージ)

  • 毎月の保険料:15,000円

  • 30年間の総払込保険料:540万円

  • 65歳時点での解約返戻金:約600万円(返戻率 111%)

このように、万が一の保障を30年間もキープし続けながら、最終的には預けたお金に利息が乗って戻ってくる。これが「掛け捨てじゃない保険」の最大の魅力です。

メリット3:生命保険料控除による「節税効果」がある

日本には、生命保険料を支払っている人に対して、税金(所得税・住民税)を軽減してくれる「生命保険料控除(せいめいほけんりょうこうじょ)」という制度があります。

貯蓄型保険であってもこの制度の対象になります。特に「個人年金保険」は、一定の条件を満たすと一般の生命保険枠とは別枠の「個人年金保険料控除」を使うことができます。

  • 所得税: 最大4万円の所得控除

  • 住民税: 最大2.8万円の所得控除

毎月支払う保険料の一部が、毎年の年末調整や確定申告によって手元に税金(還付金)として戻ってくるため、実質的な利回りをさらに高める効果があります。銀行の定期預金に預けても税金は安くなりませんので、これは保険ならではの明確なメリットです。

メリット4:資産の一部として「インフレ対策」や「外貨運用」も選べる

「今の日本の超低金利じゃ、保険にお金を預けても全然増えないのでは?」

その指摘は半分正解ですが、半分は対策が可能です。

最近の貯蓄型保険には、日本の円建てだけでなく、以下のような進化したタイプが存在します。

  • 外貨建て保険(米ドル建てなど): 日本よりも金利が高いアメリカの国債などで運用するため、円建ての保険に比べて予定利率が大幅に高く、解約返戻金が大きく増える可能性があります。

  • 変額保険(へんがくほけん): 集めた保険料を、投資信託(株式や債券)などで運用する保険です。運用の実績次第で、将来もらえる満期金や解約返戻金が大きく増える(インフレに強い)特徴があります(※ただし元本割れリスクもあります)。

これらを選ぶことで、単なる貯蓄を超えた「資産運用」としての機能を持たせることも可能です。

メリット5:万が一の時の遺産相続対策(相続税・遺産分割)になる

貯蓄型保険(特に終身保険)は、自分の老後資金としてだけでなく、「次の世代にお国を通さず、スムーズにお財産を渡すツール」として最強の効果を発揮します。

  1. 相続税の非課税枠: 死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。例えば、妻と子ども2人の計3人が相続人の場合、1,500万円までの死亡保険金には相続税がかかりません。現金で1,500万円を遺すよりも、保険という形で遺した方が、税金を大幅に減らせるのです。

  2. 遺産分割協議の対象外: 銀行預金は、名義人が亡くなると口座が凍結され、遺族全員の話し合い(遺産分割協議)が終わるまで1円も引き出せなくなります。しかし、生命保険金は「受取人固有の財産」とされるため、受取人が請求すれば、数日から1週間程度でスピーディーに現金が振り込まれます。葬儀費用や当面の生活費として、遺族を即座に救うことができます。

第4章:掛け捨てじゃない保険のデメリットとリスク

物事には必ず裏表があります。多くのメリットを持つ貯蓄型保険ですが、実は「デメリットをよく理解せずに加入して後悔する人」が後を絶ちません。 ここからは、絶対に知っておくべき5つのデメリットを、包み隠さず解説します。

デメリット1:途中で解約すると「元本割れ(損)」をする

貯蓄型保険の最大のトラップであり、最も注意しなければならないのが「早期解約による元本割れ」です。

先述の通り、あなたが支払った保険料からは、保険会社の経費や保障のための費用が引かれています。そのため、加入してから数年〜十数年の間に途中で解約すると、「戻ってくるお金(解約返戻金)が、それまで支払った総額を大幅に下回る」ことになります。最悪の場合、加入後1〜2年での解約だと、1円も戻ってこないことすらあります。

【超重要】ライフプランの急変に弱い

「結婚した」「子どもが生まれた」「家を買った」「会社をリストラされた」など、人生にはお金の出入りが激しくなるタイミングがあります。その際、「毎月の保険料の支払いが苦しいから一度解約しよう」となると、その時点で大損が確定してしまいます。

デメリット2:毎月の保険料が「掛け捨て型」に比べて圧倒的に高い

同じ「死亡時に1,000万円が支払われる」という保障を買う場合、掛け捨て型と貯蓄型では、毎月の保険料に以下のような劇的な差が生まれます。

  • 掛け捨て型(定期保険・30歳加入): 月々 約1,500円〜2,000円

  • 貯蓄型(終身保険・30歳加入): 月々 約20,000円〜30,000円

貯蓄型は、将来お金を返すための「積立金」が含まれているため、どうしても1回あたりの支払額が重くなります。

これにより、「保障をたくさん準備したいから貯蓄型にしよう!」と欲張ると、毎月の固定費が跳ね上がり、現在の生活を圧迫してしまうという本末転倒な事態を引き起こしかねません。

デメリット3:長期の「固定金利」であるためインフレに弱い(円建ての場合)

現在、日本で販売されている一般的な円建ての貯蓄型保険の多くは、加入した時点の金利(予定利率)が満期までずっと固定される「固定金利型」の商品です。

これが何を意味するかというと、将来、世の中の物価が上がってお金の価値が下がる「インフレ」が起きたときに、大損をするリスク(インフレリスク)があるということです。

インフレリスクの具体例

本日、30年後に「満期金 500万円」がもらえる養老保険に加入したとします。現在の500万円は、新車が買えたり、数年分の生活費になったりする大金です。

しかし、30年後に激しいインフレが起き、物価が2倍になっていたとします。当時は150円で買えた自動販売機のジュースが300円になっているような世界です。

その世界で受け取る「500万円」は、実質的に現在の250万円分の価値しかありません。保険会社は約束通り500万円を払ってくれますが、買い物の力(購買力)としては半分に目減りしてしまっているのです。

デメリット4:お金の「流動性(自由度)」が著しく制限される

銀行の預金であれば、急に現金が必要になった時、ATMに行けば手数料数百円でいつでも引き出せます。手数料を引かれても、預けた元本が減ることはありません。

しかし、貯蓄型保険に預けたお金は、そう簡単には動かせません。

どうしても解約せずにお金が必要な場合、「契約者貸付(けいやくしゃかしつけ)」という制度を使って、自分の解約返戻金の一定範囲内でお金を借りることはできます。しかし、これはあくまで「保険会社からお金を借りる」仕組みであるため、自分の積み立てたお金であるにもかかわらず、保険会社に対して利息(年1%〜3%程度)を支払わなければならないという、少し理不尽に感じられる制約が生じます。

デメリット5:保険会社の破綻リスクがゼロではない

滅多にあることではありませんが、保険会社も民間企業である以上、倒産(破綻)するリスクはゼロではありません。

もし加入している保険会社が破綻した場合、「生命保険契約者保護機構」という組織によって一定の救済措置が取られますが、貯蓄型保険の肝である「責任準備金(積立金)」の最大90%までしか補償されない仕組みになっています。また、破綻後の予定利率(増える割合)を引き下げられるケースがほとんどであるため、将来もらえるはずだった満期金や解約返戻金が大きく減額される可能性が高いです。

第5章:【徹底比較】「貯蓄型保険」vs「掛け捨て保険+新NISA・iDeCo」

現代の資産形成を語る上で、外すことができないのが「新NISA(少額投資非課税制度)」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の存在です。

金融の専門家の多くが「貯蓄型保険はやめとけ、新NISAをやれ」と言うのはなぜでしょうか。ここでは、現代における最適解を探るため、「保険で貯める」のと「投資で貯める」のを徹底比較します。

1. 最大の違いは「コスト(手数料)の透明性」

貯蓄型保険を資産運用の道具として見たとき、最大の弱点は「手数料がいくら引かれているか、契約者からは一切見えない」という点です。

  • 貯蓄型保険: 支払った保険料から、保険会社の利益、営業マンの歩合給、店舗の家賃などがどれだけ引かれて、残りのいくらが運用に回っているのか、パンフレットや契約書を見ても絶対に分かりません。一般的に、加入初期はかなりの割合が手数料として引かれていると言われています。

  • 新NISA(投資信託): 手数料(信託報酬など)が「年0.09%」などと、小数点以下まで完全に開示されています。しかも現代のネット証券を使えば、購入手数料などはすべて無料(0円)です。

手数料が安いということは、それだけ預けたお金がダイレクトに増えるエンジンに回るため、「お金を増やす効率」だけで言えば、圧倒的に【掛け捨て保険 + 新NISA】の組み合わせの方が有利になります。

2. シミュレーションで見る明確な差

例えば、毎月3万円のお金を「老後のため」に用意する場合の2つのパターンを比較してみましょう。

  • パターンA: 貯蓄型の「個人年金保険」に月3万円支払う(30年間)

  • パターンB: 掛け捨ての死亡保険(月3,000円)に入り、残りの2万7,000円を「新NISA(全世界株などの投資信託)」で運用する(30年間)

30年後の結果(予測値のイメージ)

  • パターンA(個人年金保険): 総払込額1,080万円に対し、将来もらえる年金総額は約1,150万円〜1,200万円(返戻率 約106%〜111%)。確実に増えるが、30年かけてこの程度です。

  • パターンB(掛け捨て+新NISA):

    掛け捨て保険料の総額108万円は消滅します。しかし、新NISAに回した2万7,000円が、過去の世界経済の平均的な成長率(年利5%と仮定)で増えた場合、30年後の資産総額は約2,200万円になります。保険料の掛け捨て分を差し引いても、手元には約2,100万円が残ることになります。

もちろん、リスクの度合いが違います

パターンA(保険)は、日本の円建てであれば「ほぼ確実」にその金額がもらえます。

パターンB(NISA)は、30年後に世界的な大不況が来ていれば、元本を割り込んでいるリスクが僅かながらあります。ただし、30年という長期の分散投資であれば、歴史的にはほぼ確実にプラスに収束しています。

3. メリット・デメリットの比較表

評価軸貯蓄型保険(掛け捨てじゃない)掛け捨て保険 + 新NISA
お金の増えやすさ低い(安全第一の運用の利回りのため)高い(世界経済の成長に乗れる)
確実性(元本保証)高い(途中でやめなければ確実)低い(相場の変動で増減する)
万が一の保障あり(最初から大きな保障がある)あり(掛け捨て保険でカバー)
途中の引き出しやすさ非常に悪い(解約すると損をする)非常に良い(いつでも非課税で売却・現金化可能)

第6章:あなたはどっち?「掛け捨てじゃない保険」が向いている人・向いていない人

ここまでの内容を踏まえ、あなたが貯蓄型保険を選ぶべきか、それとも掛け捨て型を選ぶべきか、明確なチェックリストを用意しました。自分の性格やライフスタイルと照らし合わせてみてください。

1. 掛け捨てじゃない保険が「向いている人」

以下のような項目に複数当てはまる方は、掛け捨てじゃない保険を前向きに検討する価値があります。

  • 【とにかく貯金が苦手な人】

    銀行口座にお金があると、あるだけ使ってしまうという人。保険の「強制力(引き出せない不便さ)」を味方につけるのが一番確実な貯蓄方法になります。

  • 【投資や元本割れが絶対に嫌な人(極度の安定志向)】

    「新NISAが良いと言われても、株価が下がって自分の資産が減るのを見るだけで夜も眠れなくなる」という人。精神的な安定を最優先し、多少増え方が少なくても、契約で約束された金額が確実に戻ってくる保険が合っています。

  • 【すでに十分な資産があり、相続対策をしたい人】

    すでに手元に数千万円〜数億円の現金があり、それを次の世代にできるだけ税金をかけずに、かつ特定の子供に確実に遺したいと考えている高齢者や資産家の方。

  • 【自営業・フリーランスで節税枠を使い切りたい人】

    iDeCoや小規模企業共済などの節税枠をすべて使い切った上で、さらに「生命保険料控除」を使った節税を行いたい人。

2. 掛け捨てじゃない保険が「向いていない人」(掛け捨て+NISAが向いている人)

逆に、以下のような方は、貯蓄型保険に入ると高確率で後悔することになります。

  • 【毎月の収入が不安定な人】

    フリーランスになりたての方や、転職を考えている方、今後育休などで収入が下がる予定がある方。高い保険料が足かせになり、途中で払えなくなって早期解約(元本割れ)のリスクが非常に高くなります。

  • 【「保障」と「貯蓄」は別々で管理したい合理的な人】

    「万が一の備えは安価な掛け捨て保険で最低限確保し、余ったお金は手数料の安い新NISAで効率よく運用する」という組み立てを自分で管理・実行できる人。

  • 【10年〜20年以内にそのお金を使う可能性がある人】

    近々、結婚、出産、住宅購入、車の買い替えなどのライフイベントが控えている人。保険に一度お金を入れてしまうと、必要な時にペナルティなしで引き出すことができません。

  • 【インフレ(物価上昇)が起こると思っている人】

    将来的に日本の物価が上がっていくと予想するなら、長期の固定金利商品である円建て貯蓄型保険にお金をロックするのは悪手です。

あなたに本当に適した投資はどれ?

・投資で収入を得たい、資産を増やしたい YES or NO
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第7章:初心者が騙されないための「失敗しない選び方・見極め方」

もし、あなたが「自分は掛け捨てじゃない保険が向いている」と判断した場合でも、契約書にサインをする前に、必ず以下の5つの防衛策を確認してください。保険の営業マンはメリットを強調しがちですが、自分で自分の資産を守る目を持つことが大切です。

1. 「返戻率(へんれいりつ)」の計算マジックに騙されない

貯蓄型保険の提案書には、必ず「返戻率 110%」といった数字が大きく書かれています。これは「支払った総額に対して、10% 増えて戻ってきますよ」という意味です。

一見、魅力的に見えますが、ここで必ず「何年かけてその返戻率になるのか」を確認してください。

  • 罠の例: 30年加入して、30年後の返戻率が 110% の場合。

    これを1年あたりの利回りに換算(複利計算)すると、年利わずか 0.3% 程度にしかなりません。30年間という超長期にわたってお金を拘束されるリスクに対して、年 0.3% というリターンが見合っているかどうかを冷静に考える必要があります。

2. 「外貨建て保険」は為替リスクを徹底的に理解する

「日本の保険は増えないけれど、米ドル建てなら返戻率 130% を超えます!」というセールストークをよく耳にします。確かに金利は高いのですが、これには「為替リスク(かわせりすく)」があります。

  • 加入時: 1ドル=130円(円高)

  • 30年後の満期時: 1ドル=100円(円高ドル安)になっていた場合。

  • ドルベースでは約束通り大きく増えていても、それを日本円に戻した時に、円高のせいで「支払った円の総額よりも、戻ってきた円の総額の方が少なくなってしまった」という元本割れが起こる可能性があります。

  • さらに、円からドル、ドルから円に換えるたびに「為替手数料」が差し引かれる点も忘れてはいけません。

3. 保険料の支払期間は「短期払(たんきばらい)」を検討する

貯蓄型保険(特に終身保険)に入る場合、保険料の支払い方法には以下の2つがあります。

  1. 終身払(しゅうしんばらい): 生きている限り、一生涯保険料を支払い続ける。

  2. 短期払(たんきばらい): 「60歳まで」「10年間」など、期間を区切って支払いを終わらせる。

貯蓄型を目的とするなら、絶対に「2. 短期払」にするべきです。なぜなら、早く支払いを終えた方が、保険会社の中でそれだけ長くお金を運用できるため、払い込みが終わった後の解約返戻金の立ち上がりが急激に良くなる(増えやすくなる)からです。逆に終身払いにすると、いつまでも返戻率が100%を超えず、貯蓄としての意味をなさなくなってしまいます。

4. 特約(オプション)は極力つけない

貯蓄型保険を契約する際、「ついでに医療特約(病気での入院保障)や、がん特約もつけておきますか?」と勧められることがよくあります。

しかし、貯蓄型保険に掛け捨ての特約をベタベタとくっつけるのは絶対にやめてください。

特約をつけると、その分の保険料はすべて掛け捨てとして消費されるため、主契約の貯蓄部分の効率(全体の返戻率)が著しく低下します。「せっかく貯蓄型に入ったのに、特約のせいで満期になっても元本割れしている」という悲劇は、このケースが原因です。保障が必要なら、それだけ単体の安い掛け捨て医療保険に別で加入するのが鉄則です。

5. 「契約者貸付」や「払済保険(はらいずみほけん)」という逃げ道を知っておく

人生何があるか分かりません。万が一、途中で保険料の支払いがどうしても厳しくなった時のために、解約して大損する手前の「救済策」があることを知っておきましょう。

  • 払済保険(はらいずみほけん): 保険料の支払いを途中で完全にストップし、その時点の解約返戻金を元手にして、「保障額は小さくなるけれど、期間はそのまま継続する保険」に切り替える方法です。これを行えば、以降の支払いはゼロになり、かつ今までに貯まったお金は中で運用され続けるため、早期解約による大損を避けることができます。

第8章:まとめ 〜賢い選択をするための最終ステップ〜

長長とお疲れ様でした。「掛け捨てじゃない保険(貯蓄型保険)」についての疑問やモヤモヤは解消されたでしょうか。

最後に、これまでの内容を最も重要なポイントに凝縮して振り返ります。

  1. 掛け捨てじゃない保険(貯蓄型)は、「保障」と「将来の積立」がセットになった保険。

  2. 最大のメリットは、「万が一の保障を持ちながら、意思が弱くても強制的に資産形成ができること」「確実性(円建ての場合)が高いこと」

  3. 最大のデメリットは、「途中で解約すると元本割れして大損すること」「毎月の保険料が非常に高いこと」「インフレに弱いこと」

  4. 現代においては、「新NISA」などの投資制度の方がお金を増やす効率(コスト面)では圧倒的に有利

  5. そのため、まずは「安い掛け捨て保険 + 新NISA」をベースに検討し、それでも「どうしても投資は怖い」「強制的にやらないと貯金できない」「相続対策がしたい」という場合にのみ、貯蓄型保険を選択するのが最も賢明なアプローチ。

保険は、一度加入すると10年、20年、あるいは一生涯にわたってあなたの財布からお金を引いていく「人生で2番目に高い買い物(1番目はマイホーム)」と言われています。

「掛け捨てはもったいない」という目先の感情だけで決めるのではなく、あなたの現在の家計の体力、そしてこれから迎えるライフイベント(結婚・出産・老後)を冷静に見つめ直し、 自分にとって本当に最適なパートナーとなる選択をしてください。この記事が、あなたのこれからの安心なマネープランの一助となることを心から願っています。

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  • 成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。

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  • 損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。

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