【本質】自分のためのファイナンシャルプランナー活用術:資格を超えた「実践的資産作り」の全体系

【本質】自分のためのファイナンシャルプランナー活用術:資格を超えた「実践的資産作り」の全体系

「FP(ファイナンシャルプランナー)の知識は、あくまで社会のルールブックであり、それだけでは試合(資産形成)に勝てない」という視点は、実生活において極めて本質的です。

職業としても投資のプロではなく金融商品(保険など)を売るプロです。

多くの人が「資格を取ればお金持ちになれるかも」と誤解しがちですが、実際には「制度を知ること」と「資産を増やすこと」の間には大きな隔たりがあります。

本記事では、初心者が誤解しがちな「FP知識の限界」を明確にしつつ、それでも「自分のため」に最低限知っておくべきルールと、それを超えた「実践的金融知識」を体系的にまとめます。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

第1章:FP知識の正体と「ルールブック」の限界

FP(ファイナンシャルプランナー)の学習を始めた人が最初に突き当たる壁、それは「知識は増えたが、具体的にどう稼げばいいか分からない」という感覚です。この違和感の正体を解明するために、FP知識の構造を「ルール」「フィールド」「プレイヤー」という3つの視点から分解していきます。

1.1 FP知識は「社会のインフラ」の仕様書である

FPの試験科目を構成する6分野(ライフプラン、保険、金融資産、税金、不動産、相続)は、日本という国が設計した「社会・経済システム」の仕様書そのものです。

  • ライフプラン・年金: 日本政府が提供する「長生きリスク」への最低限の防衛策。

  • 税金(タックス): 国家を維持するための「会費」の徴収ルール。

  • 不動産・相続: 私有財産を公的に証明し、次世代へ移転するための法的プロトコル。

これらは、個人が「日本社会」という巨大なゲームに参加する上で知っておくべき標準規格(プロトコル)に過ぎません。仕様書を熟読しても、そのシステム上で「どうやって他者より優れた成果を出すか」という戦略は、システムの設計外(=試験範囲外)のことなのです。

1.2 「守りのルール」と「攻めの技術」の決定的違い

スポーツにおいて、ルール(FP知識)と技術(投資・実践)は明確に分かれています。

項目ルール(FP知識・制度)技術(投資実践・金融知識・資産形成)
性質静的・固定的(法律が変わるまで不変)動的・流動的(市場環境で毎日変わる)
目的「失点を防ぐ」(脱税、破産、無駄な出費)「得点する」(利回り、利益、資産増殖)
学習方法暗記と理解、制度の確認実践、リスクテイク、試行錯誤
例えサッカーの「手を使ってはいけない」サッカーの「カーブシュートの打ち方」

FP知識は、あなたが「社会的な反則(脱税など)」で退場させられたり、知らない間に「不当な手数料(割高な保険など)」を徴収されたりすることを防ぐ強力な盾にはなります。しかし、その盾を持って立っているだけでは、資産は一円も増えません。資産を増やすには、剣(リスクテイクと運用技術)を振るう必要がありますが、FPの教科書には「剣の振り方」は具体的に記されていないのです。

1.3 なぜFP資格は「セールスマンの肩書き」になるのか

FP資格が実社会で「仕事」として成立するのは、主に金融商品のセールスの現場です。これには明確な理由があります。

  • 情報の非対称性の利用: 一般の消費者は「ルール」すら知らないことが多い。そのため、ルールを詳しく解説してくれる人を「プロ」と誤認しやすい。

  • 信頼のパッケージ化: 「FP1級」「CFP」という名称は、その人物が「国の制度や計算に精通している」という公的な証明になります。

  • 「中立」という幻想: FPは中立的なアドバイスを期待されますが、仕事として成立させるためには「商品を売る(コミッション)」か「相談料を取る」必要があります。

つまり、資格としてのFPは、「私はルールを熟知しているので、あなたに代わって複雑な計算や手続きを代行できますよ」というサービス提供のためのライセンスなのです。自分自身の資産を自分で管理する「自分FP」にとっては、この「他人への信頼証明」としての機能は、本来不要なコストとも言えます。

1.4 初心者が陥る「資格の罠」

初心者が「自分のため」にFPを学び始めると、しばしば「知識の収集=資産の形成」であると錯覚してしまいます。

  1. 用語の暗記に満足する: 「PER(株価収益率)」の計算式を覚えても、その銘柄が明日上がるかどうかは別の問題です。

  2. 制度の隙間に固執する: 数千円の節税のために数十時間を費やすのは、時間対効果(時給)の観点から見ればマイナスです。

  3. 「正解」を探してしまう: FP試験には必ず1つの正解がありますが、投資の世界には「その時の正解」しかなく、後から見れば不正解だったということが多々あります。

1.5 ルールを知った上で「試合」をどう戦うか

第1章の結論として強調したいのは、「FP知識は、試合に出場するための最低条件(ライセンス)に過ぎない」ということです。

ルール(FP知識)を無視すれば、社会的なペナルティを受けるリスクが高まります。しかし、ルールを覚えただけで満足しては、いつまでもピッチに立てません。

自分のためにFPを学ぶのであれば、「ルールの確認は最短で終わらせ、いかに早く実践(投資やビジネス)という試合に時間を割くか」という視点が重要になります。

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第2章:実生活で役に立つ知識 vs 役に立たない知識

FPの試験範囲を漫然と学ぶことは、辞書をAから順に暗記するようなものです。自分のためにFP知識を最適化するなら、「自分の財布に直結するかどうか」という極めて即物的な基準で知識を仕分けする必要があります。

2.1 「役に立つ知識」:一生モノの武器になる3つの領域

実生活で大きなリターンをもたらすと言えるのは、主に「固定費の削減」「公的制度のハック」「税制優遇の最大化」に関わる知識です。

① 公的保険の「真の保障内容」

日本の社会保険制度(健康保険、年金、雇用保険)は、世界でも類を見ないほど強力な「守りの盾」です。

  • 高額療養費制度: どんなに重い病気で手術をしても、一般的な所得なら月額の自己負担には上限(約8〜9万円程度)があるという事実。これを知るだけで、月々数千円〜数万円払っている民間医療保険の大部分が不要であると論理的に断言できます。

  • 遺族年金・障害年金: 万が一の際、国からいくら支払われるか。これを「ねんきんネット」等で試算できる能力があれば、過剰な死亡保障という名の「掛け捨てコスト」を大幅にカットできます。

② 所得税・住民税の「構造」

所得税は「稼いだ額」ではなく「課税所得(稼いだ額 − 控除)」に対してかかります。

  • 控除の積み上げ: iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、ふるさと納税(寄附金控除)、医療費控除、セルフメディケーション税制。これらは「知っているか、申請するか」だけで手取り額が変わる、確実な利益確定作業です。

  • 分離課税と総合課税の選択: 投資の利益をどう申告すれば最も有利か。この仕組みを知ることは、利回りを1〜2%高めることと同じ価値があります。

③ 資産運用の「コスト」と「非課税枠」

投資の世界において、私たちが唯一コントロールできるのは「コスト(手数料)」と「税金」だけです。

  • NISAの仕組み: 運用益が非課税になる「箱」をどう使うか。

  • 信託報酬の差: 0.1%と1.0%の手数料の差が、30年後に数百万円の差になるという数学的現実。


2.2 「役に立たない知識」:覚えるだけ時間の無駄な3つの領域

一方で、試験には頻出するものの、個人として生活する上では、ほぼノイズとなる知識もあります。

① 複雑な数式の暗記と係数

  • 6つの係数: 終身年金現価係数や減債基金係数など、将来の積立額を計算するための数式。これらは現在、シミュレーターやExcelで一瞬で算出できます。概念(複利の効果)さえ理解していれば、公式を暗記する必要性は皆無です。

  • 相続税の速算表: 税率のテーブルを暗記しても意味がありません。相続が発生する頻度は一生に数回であり、その都度最新の税率表をネットで確認すれば十分です。

② 実務上の細かな手続き・書類名

  • 不動産登記の必要書類: 実際に不動産を売買する際は、司法書士がすべて指示してくれます。

  • 贈与税の申告書第1表の書き方: 手続きの詳細は、国税庁のHPにあるガイドや、e-Taxの案内に従えば事足ります。「制度が存在すること」さえ知っていれば、手続きの詳細は「外注」または「検索」で解決します。

③ 「一般的」なライフプランモデル

  • 平均的なサラリーマンの収支モデル: 教科書に出てくる「平均的な生活」は、あなたには当てはまりません。

  • 物価上昇率1.0%固定の試算: インフレや為替は動的なものであり、固定値での30年シミュレーションは、安心を得るための「気休め」にはなっても、現実に即した「戦略」にはなり得ません。


2.3 知識を「資産」に変えるための選別基準

自分にとって何が重要かを見極めるためには、以下の「選別質問」を自分に投げかけてみてください。

  1. 「それは今すぐ私の支出を減らすか?」 → 減らすなら、最優先(例:保険、格安SIM)。

  2. 「それは今すぐ私の手取りを増やすか?」 → 増やすなら、優先(例:節税、NISA)。

  3. 「それは起きた時に壊滅的な損害を与えるか?」 → 与えるなら、知識として定着させる(例:相続、賠償責任)。

  4. 「それは専門家に数万円払えば解決するか?」 → 解決するなら、概要だけ知って詳細は忘れる。


第3章:金融資格の比較 — 目的別・習得すべき知識

FPの知識だけでは「社会の仕組み」は分かっても、「お金の動き」の解像度は上がりません。ここでは、主要な金融・会計資格を、「自分のために活用するなら、どのエッセンスを抜き出すべきか」という観点で比較・分析します。

3.1 簿記(日商簿記):家計を「構造」で捉える最強の武器

FPが「制度」を学ぶのに対し、簿記は「経済の言語」を学びます。自分FPにとって、簿記の知識はFP以上に実生活を激変させる可能性があります。

  • 抜き出すべきエッセンス:B/S(貸借対照表)的思考

    多くの人は「今月いくら残ったか(P/L的思考)」しか考えません。しかし、簿記を学ぶと「その支出は消費か、資産形成(投資)か、あるいは負債の返済か」という資産の質に目が向くようになります。

  • 実践でのメリット:

    個別株投資をする際、企業の「現金が枯渇していないか」「不健全な借金がないか」を自分の目で判断できるようになります。これは、FPの「分散投資しましょう」という一般論を超えた、具体的な「選別眼」になります。

3.2 証券外務員:金融業界の「裏側」を知る防衛術

証券外務員は、本来は「売る側」のルールを学ぶための資格です。

  • 抜き出すべきエッセンス:コンプライアンスと「禁じ手」の把握

    この資格の学習では、証券会社が顧客に対して「やってはいけないこと」を徹底的に叩き込まれます。

  • 実践でのメリット:

    これを知っていると、対面証券や銀行の窓口で担当者が「断定的な判断(必ず上がりますよ等)」を提供したり、不適切な勧誘をしたりした瞬間に、「あ、これはルール違反だ」と即座に見抜けます。相手がプロの顔をしていても、その裏にある「業者の力学」を察知できるため、カモにされるリスクを最小限に抑えられます。

3.3 プライベートバンカー(PB):富裕層の「資産防衛思想」

日本証券アナリスト協会が認定するPB資格は、FPをより高度かつ「資産を守る・引き継ぐ」ことに特化させたものです。

  • 抜き出すべきエッセンス:ファミリー・ガバナンスと資産の「囲い込み」

    PBの領域では、個人の収支を超えて「一族の資産をどう次世代へ減らさずに渡すか」を考えます。

  • 実践でのメリット:

    自分の代で終わらない資産形成、例えば「子供への生前贈与をいつ、どのスキームで始めるのが最適か」といった、時間軸の長い戦略が立てられるようになります。単なる節約術を超えた「富の要塞化」という視点が得られます。


資格名特徴(自分にどう役立つか)実践的な「攻め」の要素
FP(技能士)「守りのルール」。 制度の穴を埋め、搾取を防ぐ。低い(現状維持・防御中心)
証券外務員「販売のコンプラ」。 金融商品の裏側の仕組みを知る。低い(法規制がメイン)
簿記(日商)「数字の解読力」。 企業や自分の健康状態を可視化する。高い(投資分析に直結)
PB(プライベートバンカー)「富裕層の哲学」。 資産を守り、継承する高度な手法。中程度(管理・保全がメイン)

投資の実践には「簿記」が強力

個別株投資やビジネスを自分で行うなら、FPよりも簿記の方が「実益」を感じやすいでしょう。損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)を理解することは、投資先の企業の「本当の価値」を見抜く力になります。

あなたに本当に適した投資はどれ?

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「FP(ファイナンシャルプランナー)」という資格が、そのカードを提示するだけで実利を生む場面を絞り込むと、最終的には「労働市場における評価(転職・就職)」に行き着きます。

この「資格の社会的機能」と「個人の実利」の乖離についてまとめます。


補論:資格としてのFPが「外」に向けて輝く唯一の瞬間

あなたが指摘するように、FP資格が「自分の外側」に対して効力を発揮するのは、ほぼキャリア形成の文脈に限られます。

1. 転職・就職における「最低限の知能と意欲」の証明

金融業界(銀行、証券、保険、不動産)への転職において、FP2級程度は「持っていて当たり前」の免許証のようなものです。これがないと土俵にすら乗れないことがありますが、逆に言えば、持っているからといって採用が決まるわけではありません。

  • 実務未経験者の場合: 「私は金融全般の基礎知識を習得するだけの学習能力と意欲があります」という非認知能力の証明として機能します。

  • 履歴書の空白を埋める: 企業側に対し「この期間、遊んでいたわけではなく体系的な知識を学んでいた」という言い訳(客観的なエビデンス)を与えます。

2. 「専門家」という演出のための小道具

独立系FPや士業(税理士・行政書士など)が、自身の専門性に「親しみやすさ」や「幅広さ」を加えたい場合、FPの肩書きは有効なマーケティングツールになります。

  • 顧客は「税理士」には堅苦しさを感じますが、「FP」には家計の相談がしやすそうな印象を持ちます。

  • これはあくまで「集客のための看板」であり、実際のコンサルティング能力(実力)とは別次元の話です。

3. 「実生活」では資格の有無は関係ない

一方で、自分の資産を築く、あるいは親の相続を円滑に進めるといった「実生活のミッション」において、「資格を持っていること」自体は何の効力も持ちません。

  • 役所の手続きで「私はFP1級です」と言っても、提出書類が減るわけではありません。

  • 投資の世界では、FPだろうが無資格だろうが、市場は平等にリスクとリターンを突きつけてきます


資格を「使う」か、知識を「活かす」か

FPという存在をどう扱うべきか、その答えは明確です。

  • 他人の評価が欲しいなら「資格(合格証)」を取る: 就職、転職、あるいはセールスマンとしての信頼獲得のために、最短ルートで合格を目指すべきです。

  • 自分の人生を豊かにしたいなら「知識(エッセンス)」を活かす: 資格そのものに固執せず、投資の実践、簿記による管理、社会保障のハックなど、「金になる知恵」だけを自分の血肉にし、試験勉強というサンクコスト(埋没費用)に囚われないことです。

「ルールブック(資格)を崇める審判」になるのではなく、「ルールを利用して勝利を掴むプレイヤー」になる。


第4章:FP知識を超えた「実践的金融知識」とは何か

FP知識が「地図」だとするなら、実践的金融知識は「コンパスと歩法(歩き方)」です。地図を持っていても、嵐の中でパニックになり、崖に向かって歩き出してしまえば意味がありません。

4.1 「期待値」で思考し、「確率」に賭ける

FPの教科書は「分散投資をしましょう」とは言いますが、「なぜそれをするのか」という数学的根拠(期待値)への理解が薄いのが弱点です。

  • 期待値の計算習慣: 全ての投資や支出を、(成功確率 × 利益) – (失敗確率 × 損失) で考える癖をつけます。

    • 例:手数料1%の投資信託を買うことは、期待値を確実に1%下げる行為です。

    • 例:宝くじの期待値は約45%です。FP知識として「夢を買う」と片付けるのではなく、実践的知識として「期待値が極端に低い勝負には乗らない」という冷徹な判断を下します。

  • 大数の法則の活用: 一時的な暴落(負け)に一喜一憂せず、期待値がプラスの行動を何百回、何千回と繰り返す(積立投資など)ことで、最終的な勝利を統計的に確定させる思考法です。

4.2 行動経済学:自分という「最大の敵」を制御する

FPの理論は「人間は常に合理的な判断をする」という前提で書かれています。しかし、現実は異なります。自分自身の脳に備わっている「バグ(認知バイアス)」を知ることこそが、最強の防衛策になります。

  • プロスペクト理論への対策: 人間は「10万円得した喜び」より「10万円損した痛み」を2倍強く感じます。この痛みを回避しようとして、損切りができずに損失を拡大させたり、わずかな利益ですぐに利益確定(利小損大)してしまいます。

  • サンクコスト(埋没費用)の呪縛: 「せっかくここまで高い保険料を払ったから」「勉強に時間をかけたから」という理由で、不合理な選択を継続してしまう心理です。

  • 実践的解決策: 感情が動く前に「仕組み」で解決する(自動積立、逆指値注文など)。知識を増やすことより、自分の意志力を使わないシステムを構築することが実践知の真髄です。

4.3 情報の「一次ソース」と「解釈力」

FP知識は、誰かがまとめた「二次情報」です。実践者は、情報の鮮度と精度にこだわります。

  • 「原文」に当たる能力: ネット記事やFPの解説ではなく、国税庁のタックスアンサー、厚生労働省のリリース、企業の決算短信、米国連邦準備制度理事会(FRB)の声明など、加工されていない一次ソースを確認する習慣です。

  • 相関関係の読み解き: 「金利が上がると、なぜ株価や債券価格が動くのか」「インフレが起きると、自分の持っている現金の価値はどう目減りするのか」。これらを、単なる暗記ではなく、自分の生活に引き寄せて「因果関係」で理解する力です。

4.4 キャッシュ・イズ・キング(現金の多機能性)の理解

FPは「余剰資金を運用に」と言いますが、実践者は「現金の持つオプション価値」を高く評価します。

  • 流動性の価値: 暴落が起きた時、現金を持っている者だけが「バーゲンセール」に参加できます。

  • 精神的バッファ: 2年分の生活費がキャッシュであれば、市場が30%暴落しても平気でいられます。この「平気でいられること」が、長期投資を継続させ、最終的なリターンを最大化させる最大の要因となります。

  • 現金は「待機」という名の戦略: 何も買わずに待つこともまた、高度な投資判断であるという認識です。

4.5 知識を「知恵」に昇華させる

第4章の結論は、「資産形成の成否は、IQ(知識量)ではなくEQ(感情の制御)と実践量で決まる」ということです。

FP知識というルールを知った上で、

  1. 期待値の高い場所に資金を置き、

  2. 自分の感情のバグを仕組みで封じ込め、

  3. 一次情報に基づいて淡々と修正を繰り返す。


第5章では、これまで蓄積した「ルール(FP知識)」と「武器(周辺資格)」、そして「思考法(実践的知識)」を、具体的にどう動かして資産を築くか、その「初陣」から「継続」までのロードマップを詳述します。

ここでは特に、FP知識という「守り」を超えた、「投資という実践」がなぜ人生の最適化において決定的な重要性を持つのかに焦点を当てます。

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第5章:初心者向けの実践ロードマップ — 「投資」が人生の主導権を握る

FP知識を学んだだけでは、あなたの銀行残高は変わりません。人生を劇的に変えるのは、常に「知識を資本に変える行動(投資)」です。ここでは、初心者が踏むべき4つのステップを解説します。

5.1 【Step 1】 守りの固めと「投資余力」の捻出(FP知識の活用)

投資を始める前に、まずは「戦える状態」を作ります。ここでFP知識をフル稼働させます。

  • 「生活防衛資金」の確保: 半年〜2年分の生活費を現金で確保します。これがない状態での投資は「ギャンブル」になります。

  • 固定費の断捨離: FP知識を使って、不要な民間保険の解約、格安SIMへの移行、サブスクの整理を行います。

  • 「営業利益」の算出: 簿記の視点を用い、毎月の「収入 − 支出」を最大化させます。この「残ったお金」こそが、あなたの人生を自由にするための軍資金(種銭)です。

5.2 【Step 2】 投資という「実戦」の重要性を理解する

なぜ「節約」や「貯金」だけでは不十分で、投資が必要なのでしょうか。その理由は、「インフレ」と「資本収益率」という2つの残酷な現実にあります。

  • インフレという名の「見えない税金」: FPの教科書には「物価変動」と書かれていますが、実生活では「現金の価値が目減りすること」を意味します。100万円を貯金していても、物価が2%上がれば、その価値は実質98万円になります。投資をしないことは、リスクを避けているのではなく、「現金の価値が下がるリスク」を100%引き受けていることに他なりません。

  • r > g の法則(ピケティの理論): 資本から得られる収益(r)は、労働によって得られる経済成長(g)を常に上回るという歴史的証明です。自分の体(労働)だけで稼ぐのには限界があります。「自分のお金に働かせる(投資)」というサイドエンジンを積まない限り、豊かさのスピードは加速しません

5.3 【Step 3】 少額からの「仕組み化」と「経験値の獲得」

投資の知識は、本を100冊読むよりも、1万円分の株を買うことで飛躍的に深まります。

  • 非課税口座(NISA)の開設: FP知識で学んだ「制度」を使い、最も有利な戦場を確保します。

  • インデックス投資での自動化: 最初は全世界や全米の指数に連動する投資信託を「毎月定額」で積み立てます。これは期待値をプラスにしつつ、感情のバグを排除する「実践的知恵」の結晶です。

  • 「身銭」を切る効果: 自分の金が100円でも動けば、ニュースの見え方が変わります。FRBの金利政策や円安のニュースが、自分事として脳に定着し始めます。この「情報の自分事化」こそが、本当の金融教育です。

5.4 【Step 4】 簿記と市場分析による「攻め」の拡張

インデックス投資に慣れたら、より高いリターンを目指すために「攻め」の知識を拡張します。

  • 個別株への挑戦: 簿記の知識を使い、企業の決算書を読みます。「この会社はキャッシュが豊富で、かつ成長している」と自分の根拠で判断するプロセスが、投資を「運」から「技術」に変えます。

  • アセットアロケーションの調整: 年齢や資産額の変化に応じ、現金、株、債券、不動産の比率を最適化し続けます。これは一生続く「自分FP」としてのメイン業務です。


5.5 投資は「人生の選択肢」を買う行為である

投資の知識が重要な本当の理由は、単に金を増やすためではありません。「嫌な仕事にNOと言える」「大切な人を助けられる」「好きな場所に住める」といった「人生の選択肢(オプション)」を手に入れるためです。

FP知識という「ルール」を知り、投資という「実践」を繰り返すことで、あなたは「お金に支配される側」から「お金を使いこなす側」へと回ります。

資格試験の合格はゴールではありません。その知識を武器に市場という大海原へ漕ぎ出し、自分の手で富を掴み取ること。それこそが、この記事が提唱する「自分のためのファイナンシャルプランニング」の完結です。

最も重要なのは「今日、何を変えるか」です。

  • まずは1枚、自分のB/S(資産負債表)を書いてみてください。

  • 次に、不要な保険を1つ解約する検討をしてください。

  • そして、NISAの口座開設ボタンを押してください。

「知っている」を「やっている」に変える。 その瞬間、あなたの本当の「自分FP」としての人生が始まります。

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