株がストップ高になると売買はどうなる?押さえるべき注意点を解説

最近、株式投資を始めた方で、株価をチェックしていて、たまに激しく値動きしているものを見つけることがあって驚いた、と思った人もいると思います。

株価というものは、業績など、その企業内での出来事である内部要因、経済全体や金利、政治動向など環境全体に関わる出来事である外部要因が、複雑に絡み合って形成されるので、時には私たち投資家が予想もしないような、激しい上昇、下落をすることがあります。

そのように乱高下する株価を色々見ている中で、株価が上限いっぱいまで上昇した「ストップ高」になっているものを見つけたことがある人も多いでしょう。
また、そのように急激に上昇する株価を前に「こういうストップ高の銘柄にうまく乗れれば、利益を取れるのかな」と、一緒に想像していたのではないかと思います。

しかし、いざストップ高になった銘柄を取引しようと思っても「”ストップ高”ということで何か特別に考えなければいけないことがあるだろうか」と漠然と考えてしまったり、そもそも初めて見た、という方は「この後どうなるの?」と単純に疑問を持つのではないかと思います。

そこで、本記事ではストップ高について、よくある以下の疑問について解説していきます。

【この記事でわかること】

・ストップ高になるとどうなるのか?
・ストップ高になると取引できないのか?
・ストップ高は、買うべきか?買わざるべきか?

最後まで読むことで、ストップ高が発生した時にどう考えればいいか、売買する場合はどうすればいいか、などが自分で判断できるようになるでしょう。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

ストップ高とは 

まずストップ高とはどういうものか、改めて確認していきます。

ストップ高とは、売りを大きく上回るほど買いが殺到し、その日の上限いっぱいまで株価が上昇して、取引が停止している状態を指します。

「そもそも上限があるの?」といった疑問もその通りで、実は株価には、1日の間で株価が一定水準以上、もしくは以下にならないように、株価が動ける値段の幅が上限、下限が設けられています、その設けられた上限、下限を制限値幅といいます。

つまり、ストップ高とは
「買いの数が、売りの数よりも圧倒的に多く、株価がその日の制限値幅の上限に達し、取引が成立しない状態」ということができます。

1つ、具体例を出します。

こちらは、ある日のシンバイオ製薬(4582)の注文状況です。こちらの例では、310円が上限となっており、それ以上の株価が表示されていないことがわかります。また、310円の右側の買数量が左側の売数量を大きく上回っていて、取引が停止していることもわかります。

上記のような状態をストップ高になっている」といいます。

制限値幅の範囲と、設定される理由 

【制限値幅の範囲】

株価を一定水準に保つための制限値幅ですが、これは前日の終値(おわりね)を基準に、段階的に決められています。
以下、前日の終値が1万円までの株価の制限値幅の一覧表です。

銘柄によっては1万円以上の株価になっているものもありますが、1万円以上についても段階的かつ詳細に制限値幅が決まっています。
日本取引所グループHP:内国株の売買制度」にて詳細が確認できますので、1万円以上の株価の制限値幅をチェックしたい方は、上記を参照すると良いでしょう。

また、この制限値幅は、株価の上昇に伴って、原則は上記の表に沿って広くなっていきますが、一定の条件を満たした場合、制限値幅の範囲が一気に拡大されることがあります

条件とは、2営業日連続で以下のいずれかに該当した場合です。

① ストップ高(安)となり、かつ、ストップ配分も行われず売買高が0株

② 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)に買(売)呼値の残数あり

※ストップ配分:注文数が多い証券会社ごとに、配分を行う方式のこと
引用:「
日本取引所グループHP:内国株の売買制度

少々わかりづらい表現ですが、イメージとしては、

「猛烈な買いの殺到で、マーケットの開始から終わりまで取引が行われず、①1株も売りが出ずにそのまま終わった場合、②もしくは、取引終了時だけ売りが出ていた分の売買が行われたけど、まだ買いが残っている」

といった状況に該当した場合、その翌営業日から制限値幅が4倍に拡大されます。

例:前日終値が100円の株が2連続でストップ高になった場合

営業日

制限値幅

備考

1日目
(前日終値:100円)

下限50円
〜上限150円

前日終値100円を基準に±50円

2日目
(前日終値:150円)

下限100円
〜上限200円

前日終値150円を基準に±50円

3日目
(前日終値:200円)

下限120円
上限520円

前日終値200円を基準に、上限が+80円→+320円に。下限は-80円で変更なし。

 

なお、値幅制限が拡大される場合は、証券取引所より以下のようにお知らせがされるので、確認すると良いです。


引用:「日本取引所グループHP:マーケットニュース

【制限値幅が設定される理由】

株価を一定水準に保つための制限値幅ですが、そもそもどういった目的でこのような制度が設定されているのでしょうか。

結論としては、株価が急激に変化することで、マーケットの健全な育成が阻害されることや、投資家のリスクが高まってしまうことを回避するためです。

際限なく株価が動いてしまう場合、これまで順調に形成されてきた株価が、短期的な大暴落で一気に元に戻ってしまうこともあり、その後の順当な株価形成を阻害することにつながってしまいます。また、参加している投資家としても、際限なく株価が動くとなったら、リスクが高く、安心して売買ができません。

これらを防ぐために、制限値幅というものが設けられているのです。

なぜ、ストップ高は発生するのか 

ストップ高になるとは、つまりそれだけ「強烈に買いたい人や注文が殺到している」ということです。

つまり、会社にとって好材料が発表され、かつ、その内容が投資家の期待を大きく上回る内容だった、といったような時に発生しやすいと言えます。

好材料の一例としては

・業績の上方修正や赤字からの黒字転換
・TOBや業務提携
・自社株買いや増配

などが挙げられます。

ストップ高になった時の売買

前章でストップ高とはどういう状態か、について確認しました。ここで、実際にストップ高になった時の売買についてどのようになるか、見ていきましょう。

購入したい場合 

「狙っていた銘柄がストップ高になった」
「ランキングなどを見てストップ高の銘柄が気になった」

などで、ストップ高になっている銘柄を購入したい場合、上限の株価で指値買い注文を出しておくか、もしくは成り行き注文を入れておくことで、購入できる可能性があります。

先述の通り、ストップ高になっている場合、売りよりも買いが圧倒的に多いことで、取引が停止になっています。取引が再開されるには、買い注文を満たすほどの売り注文が出るまで待つことが必要です。

マーケットが空いている時間(ザラ場)中に、買いと同程度を上回る売りが出れば、取引が再開され、注文を出しておいた上限の株価で購入することができます。

もし買いを満たす売りが出ない状態が続き、そのままマーケットが終了した場合は、終了した段階で、注文数が多い証券会社順に、売りに出ている分の株を比率で割り当てて、配分します。(ストップ配分と言います)

そのため、注文を出していても必ず約定するわけではありません。
ただ、購入できる可能性はあるため、「どうしてもこのタイミングで購入したい」ということであれば、現在ストップ高になっている制限値幅の上限に買い注文を出してみてください。

売却したい場合  

保有している株がストップ高になった、などで売却したい場合、これも制限値幅の上限で指値売り注文、もしくは成り行き注文を入れておくと良いです。

自分の売り注文も含め、売り注文が増えて買い注文を満たす状況になった場合は、取引が再開され、ザラ場中に制限値幅の上限額で売却が可能です。
また、買いを満たす売り注文が集まらず、取引停止したままマーケットが終了しても、出していた売り注文は、マーケット終了と同時に必ず上限の価格で売却が実行されます。

なので、購入の場合と異なり、売却は確実に成立するため、絶対に売っておきたい、といった場合には売り注文を出しておきましょう。

ストップ高になった時に注意すること

前章で、ストップ高になった時の売買について確認しました。

最後に、ストップ高になったものを見つけたり、売買しようと思う場合、そもそもどんな部分に気をつければいいか、ということを説明します。

途中でストップ高が解除され、その後株価が下落することがある 

まず1つ目に、 ストップ高の価格から、途中で下落に転じる可能性があることです。

前章の購入したい場合にてお伝えした通り、ストップ高になって取引停止している状態でも、マーケットが開いている時間内に、買いを満たすほど売り数が集まると、取引が再開され、通常通り売買が可能となります。

そうなると、その後、株価が転じて下落することもあるため、制限値幅の上限で注文が約定すると、結果的に高値掴みになってしまうこともあります

そのため、ストップ高になっている銘柄を購入しようと思って、制限値幅の上限で指値注文、もしくは成り行き注文を入れる場合は、その後下落リスクがあることも把握した上でやることが望ましいです。

翌日、ストップ高以下の値段で始まることもある 

2つ目は、ストップ高となった翌日以降に、ストップ高以下の価格で取引が開始となる可能性があることです。

ストップ高で取引が停止したままその日が終わった場合、確かに翌日以降、さらに上昇して寄り付くケースも多いですが、必ずしもそうなるわけではなく、翌日になったら、ストップ高以下の金額で寄り付く可能性もあります。

何か好材料が出るなどで、買いが集まると、買いが集まっていること自体でも投資家の注目を呼びやすく、結果ストップ高になる、ということもあります。心理学で言うところの「バンドワゴン効果」を想像していただくとわかりやすいかと思います。

しかし、実際あとで材料を確認してみたら、そこまでのインパクトではないことがわかり、翌日では売りが集まって、結局前日のストップ高よりも下落する、などということもあります。

 

ストップ高の銘柄に短期的に乗って利益を狙おうとする場合、これらのことに巻き込まれることもある、ということを前提に考えておくことが望ましいです。

投資スタイルも人それぞれですが、もしこのような「下落するリスクをあまり取りたくない」という人は、ストップ高になっている銘柄の売買は、なるべく控えた方が良いとも言えます。

売買するにしても、いつも以上により慎重に調べ、分析し、売買するのが妥当かどうかを判断した上で行いましょう。

まとめ 

いかがでしたか。実は、ほぼ毎日、何かしらの銘柄がストップ高になっていることが多いですが、実際に自分が監視していたり、保有している銘柄がストップ高になる場面は少ないのではないかと思います。

そのような中、実際にストップ高になっているのを目の当たりにすると、「取引も停止していて売買できないし、これはどうなるんだろう」と驚いてしまいますよね。また、「購入できるなら今のうちに」などと焦ってしまうこともあるでしょう。

しかしよく知らずに手を出すと損する危険もあります。今回でいえば、ストップ高の仕組みや、なぜストップ高になっているのか、と言う部分までわかっていないと、リスクが高い取引をしてしまうことになります

ストップ高の仕組みや売買時のリスクをしっかり理解し、また、ストップ高の理由をまず確認する癖をつける、等、本記事の内容を参考にして、今後の株式投資の戦略構築にお役立ていただけましたら幸いです。

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