
配当も優待も狙える「二刀流銘柄」――成長性も兼ね備えた企業に注目
株式投資では値上がり益だけでなく、配当金や株主優待を長期的に受け取る楽しみも大きな魅力である。なかでも、一定水準以上の配当利回りを確保しながら株主優待も実施し、さらに売上高が着実に成長している企業は、「二刀流銘柄」として個人投資家から高い人気を集めている。
今回は、「配当利回り3.5%以上」「3年平均売上高成長率5%以上」「1株当たり利益が黒字」「株主優待を実施」といった条件でスクリーニングを行い、その中から特色ある上場企業を取り上げる。海外ブランドをつなぐ越境ECを展開するエニグモ、食品業界の“縁の下の力持ち”として天然調味料を世界へ供給するアリアケジャパン、海外通信サービスで旅行需要を支えるビジョン、住まいに関する総合サービスを展開するAnd Doホールディングスなど、業種はさまざまだが、いずれも独自の強みを武器に事業を拡大してきた企業である。
高配当や株主優待だけに目を向けるのではなく、その配当を支える利益成長や事業の持続性まで見極めることが、長期投資では重要になる。本稿では、それぞれの企業がどのようなビジネスモデルで収益を生み出し、今後どのような成長機会を持っているのかを探っていく。
越境ECの先駆者、その先へ――エニグモが築く「世界中の欲しい」をつなぐビジネス
インターネットの普及によって国境を越えた買い物は身近になった。しかし、海外ブランドの商品を個人が直接購入するには、言語や決済、配送、関税など多くのハードルが存在する。そうした「海外でしか買えないものを手に入れたい」というニーズを、日本でいち早くビジネスとして形にした企業が東証プライム市場に上場するエニグモ(3665)である。同社はソーシャル・ショッピング・サイト「BUYMA(バイマ)」を運営し、世界中の個人バイヤーと購入者を直接結び付ける独自のマーケットプレイスを構築してきた。EC市場が成熟し、Amazonや楽天市場、ZOZOなど大手プレイヤーが存在感を高める中でも、エニグモは「他では買えない商品」に特化した独自路線で存在感を発揮している。
エニグモが設立されたのは2004年である。当時はまだスマートフォンが普及しておらず、越境ECという言葉も一般的ではなかった。同社は「世界中の個人が自由に売買できる市場をつくる」という発想から事業をスタートさせ、2005年にBUYMAを開始した。当初は海外在住の日本人が現地の商品を日本の購入者へ届けるサービスとして注目を集め、その後、世界各国のパーソナルショッパーが参加する巨大なプラットフォームへと成長していった。
BUYMA最大の特徴は、一般的なECサイトとは異なり、エニグモ自身が商品を仕入れて販売するのではなく、世界中の「パーソナルショッパー」が商品を出品するマーケットプレイス型である点にある。パーソナルショッパーとは海外在住者や現地事情に詳しい個人であり、現地店舗やブランドショップから商品を買い付け、日本の利用者へ届ける役割を担う。この仕組みにより、エニグモは在庫を抱えることなく、多様な商品ラインアップを実現している。在庫リスクを負わないアセットライトなビジネスモデルは、高い利益率を維持できる理由の一つとなっている。
取り扱う商品はファッションを中心に、バッグ、財布、時計、アクセサリー、スニーカー、コスメ、インテリア用品など多岐にわたる。特にラグジュアリーブランドの人気が高く、日本未発売の商品や海外限定カラー、発売直後の商品など、「希少性」が大きな魅力となっている。近年では円安の影響で海外ブランド品の国内価格が上昇しているが、それでも現地価格との差や限定商品の魅力からBUYMAを利用する消費者は少なくない。
同社の競争力は商品数だけではない。プラットフォームにはレビュー機能やショッパー評価制度が整備されており、利用者は信頼できるショッパーを選択できる。また、鑑定サービスや補償制度を導入することで、高額ブランド品を購入する際の不安軽減にも取り組んできた。ブランド品市場では偽物問題が常につきまとうが、安心して利用できる環境整備はBUYMAの価値向上につながっている。
収益構造もシンプルである。商品が売買された際に販売手数料を受け取るストック型に近いビジネスモデルであり、流通総額(GMV)が拡大すれば収益も増加する。物流施設や店舗網を持たないため固定費が比較的少なく、利益率が高いことも特徴である。一般的な小売企業のように在庫評価損や廃棄リスクを抱えない点は、投資家からも評価されやすいポイントである。
もっとも、近年は事業環境にも変化が生じている。コロナ禍では海外旅行が制限されたことで「現地で買えない商品」を求める需要が高まり、BUYMAの利用も拡大した。一方、旅行再開後は海外で直接買い物を楽しむ消費者が戻り、コロナ特需の反動も見られる。また、世界的なインフレや円安は海外ブランド価格を押し上げ、消費者の購買意欲にも影響を与えている。
さらに競争環境も変化している。近年は海外ECサイトへのアクセスが容易になり、ブランド公式サイトが直接海外発送に対応するケースも増えた。中国発のSHEINやTemuのような低価格ECも急速に存在感を高め、海外通販そのもののハードルは下がっている。こうした中でBUYMAが強みを維持するためには、「限定商品」「現地ならではの商品提案」「信頼できるショッパー」という付加価値をさらに高めることが重要になる。
エニグモはBUYMA以外にもサービス展開を進めている。ファッション情報メディアやスタイル提案コンテンツを通じて、単なるECサイトではなく「欲しい商品との出会い」を提供するプラットフォームを目指している。検索して買うだけではなく、SNSのように新しいブランドやコーディネートを発見できる体験を提供することで、ユーザーの滞在時間や購買機会を増やそうとしている。
また、AIの活用も今後の成長テーマとなる可能性がある。膨大な商品データやユーザーの閲覧履歴を分析することで、一人ひとりに最適な商品提案やレコメンド精度を向上させることが期待される。生成AIによる商品説明の自動生成や多言語対応、カスタマーサポートの効率化など、EC運営におけるAI活用余地は大きい。エニグモのようなデータを蓄積するプラットフォーム企業は、AIとの親和性も高い。
投資家の視点では、エニグモは「越境EC」という成長テーマへの投資対象として位置付けられる。世界のEC市場は今後も拡大が予想され、その中でも国境を越えた取引は成長余地が大きい。一方で、景気後退局面では高級ブランド品への支出が減少しやすく、円相場や海外ブランド価格の変動も業績へ影響を与えるため、外部環境への感応度は比較的高い企業ともいえる。
同社を分析する際には、売上高だけではなく流通総額(GMV)、アクティブ会員数、新規購入者数、リピート率などのKPIを確認することが重要である。マーケットプレイス企業では利用者基盤そのものが企業価値の源泉となるため、会員数の拡大や継続利用率が将来の収益性を左右する。さらに営業利益率や販管費率なども、プラットフォームの収益力を測る重要な指標となる。
エニグモは「世界中の欲しいを叶える」というコンセプトを、20年以上にわたって磨き続けてきた企業である。巨大なEC市場では価格競争に陥りやすいが、同社は希少性や体験価値、コミュニティ性という独自の強みを武器に差別化を図ってきた。越境ECが一般化した現在も、「どこでも買える商品」ではなく「ここでしか出会えない商品」を提供できるかどうかが競争力の源泉となる。世界中のパーソナルショッパーと消費者を結び付けるBUYMAのネットワークは、単なる通販サイトではなく、人と人をつなぐグローバルマーケットとして、今後も独自の価値を発揮し続ける可能性を秘めている。
ラーメン、スープ、世界の食卓へ――アリアケジャパンが支える「だし」のグローバル戦略
私たちがラーメン店で飲む濃厚なスープ、コンビニで買うカップ麺、レストランのソースやスープ、さらには海外の加工食品。その「おいしさ」の決め手となる“だし”やエキスを、実は一社が数多く支えている。東証プライム市場に上場するアリアケジャパン(2815)は、天然調味料の専業メーカーとして世界トップクラスの地位を築く企業である。一般消費者向けの商品はほとんど販売していないため知名度は決して高くないが、食品業界では「知らない人はいない」と言われる存在だ。BtoB企業でありながら、日本だけでなく欧州、中国、東南アジア、北米など世界各地へ事業を展開し、「うま味」を輸出する企業として成長を続けている。
アリアケジャパンの創業は1966年。佐賀県に本社を構え、鶏や豚、牛、野菜、魚介などから天然エキスやブイヨン、スープベースを製造することを主力事業としてきた。現在ではラーメンスープ、レトルト食品、冷凍食品、カレー、シチュー、コンビニ惣菜、ファストフード、外食チェーンなど、幅広い食品の「味の土台」を支えている。スーパーの棚に並ぶ商品を見ても、アリアケジャパンの名前はほとんど表に出ない。しかし、その味づくりには同社のエキスや調味素材が使われているケースが数多くある。
同社最大の特徴は、「天然素材」に徹底してこだわっていることである。鶏ガラや豚骨、牛骨、野菜、魚介類などを長時間煮込み、素材本来のうま味や香りを抽出する独自技術を確立してきた。単なる粉末調味料ではなく、本格的なスープの風味を工業的に大量生産できる技術は、食品メーカーにとって非常に価値が高い。大量生産でありながら、職人が炊き出したような味わいを再現する技術こそ、アリアケジャパンの競争力の源泉となっている。
食品メーカーにとって「味」は最大の差別化要素である。しかし、自社でスープやエキスを一から開発するには膨大な時間と設備投資が必要となる。そこでアリアケジャパンが開発した天然調味料を採用することで、開発期間の短縮と品質の安定化が可能になる。顧客企業と共同でレシピを開発するケースも多く、単なる材料メーカーではなく「味づくりのパートナー」として事業を展開している点も特徴である。
近年はラーメン市場の拡大も追い風となっている。日本国内では有名ラーメン店とのコラボ商品が数多く発売され、海外でも日本式ラーメンの人気は高まり続けている。濃厚な豚骨スープ、鶏白湯、醤油、味噌、塩といった多様な味を工業生産できる技術は、日本食の世界展開を支える重要なインフラとも言える。ラーメンだけでなく、鍋つゆや即席スープ、冷凍食品などの市場拡大も、天然エキス需要を押し上げる要因となっている。
アリアケジャパンが他社と一線を画すのは、早くから海外展開を進めてきた点にもある。同社は日本国内だけでなく、中国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、フランス、ベルギー、英国など世界各地に生産・開発拠点を設置している。特に欧州では現地企業の買収を通じて事業基盤を拡大し、欧州の食品メーカーにも天然調味料を供給している。日本の「だし文化」をそのまま輸出するのではなく、それぞれの地域の食文化に合わせたスープやソースを開発できることが、世界市場で評価される理由となっている。
また、食品業界では健康志向も大きなテーマとなっている。塩分を減らしながら満足感を維持する「減塩」、化学調味料への依存を減らす「クリーンラベル」、天然素材へのこだわりなど、消費者のニーズは年々高度化している。天然由来のうま味を活用できるアリアケジャパンの技術は、こうしたトレンドとも親和性が高い。素材そのものが持つ深いうま味を引き出すことで、塩分や添加物を抑えながら満足度の高い味づくりを実現できるからである。
一方で、同社を取り巻く経営環境には課題もある。原材料となる鶏肉や豚肉、牛肉の価格変動は利益率へ影響を与える。世界的なインフレやエネルギー価格の高騰は、長時間加熱による製造工程のコスト増加にもつながる。また、為替相場の変動は海外事業の収益に影響を及ぼすため、グローバル企業ならではのリスク管理も重要になる。
それでもアリアケジャパンは、海外比率の高い事業構造を武器に成長を続けている。国内人口が減少する日本市場だけではなく、世界人口の増加と中間所得層の拡大を取り込める点は大きな強みだ。アジアでは外食市場や加工食品市場が急速に拡大し、欧米では日本食人気が高まっている。こうした世界的な食文化の変化は、天然調味料メーカーにとって長期的な追い風となる可能性が高い。
投資家の視点から見ると、アリアケジャパンは「食品メーカー」というより「食品素材メーカー」と捉えるべき企業である。自社ブランド商品を大量に販売する企業とは異なり、顧客企業の商品開発を支えるBtoB企業であるため、比較的安定した取引関係を築きやすい。食品は景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな業界であり、その中でも天然調味料というニッチながら高付加価値分野で競争優位を築いていることが評価されている。
今後の成長を見る上では、海外売上比率、新規顧客の獲得状況、設備投資、生産能力の拡大などが重要なポイントとなる。また、生成AIやデータ分析を活用した味覚設計、研究開発の高度化も将来的な競争力につながる可能性がある。食品業界では「おいしさ」を数値化・分析する技術も進歩しており、経験だけではなくデータに基づく商品開発が重要になりつつある。
食品メーカーのブランドは消費者の目に触れるが、その裏側には味を支える企業が存在する。アリアケジャパンはまさにその代表例であり、日本の食文化を支える「黒子」として世界市場で存在感を高めてきた企業である。表舞台に立つことは少なくても、ラーメン一杯のスープ、コンビニの総菜、レストランのソース、その一口のおいしさを陰から支えている。同社が培ってきた天然エキスの技術は、日本の「だし文化」を世界へ広げる重要な架け橋であり、食のグローバル化が進む時代において、その価値はますます高まっていくことだろう。
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海外旅行の「つながる」を支える黒子――ビジョンが切り開く通信インフラの新戦略
海外旅行や海外出張に出かける際、多くの人がまず気にするのが「現地でスマートフォンが使えるか」という問題である。地図アプリ、翻訳、SNS、キャッシュレス決済など、現代の旅行ではインターネット接続が欠かせない。かつては高額な国際ローミング料金が障壁となっていたが、現在ではWi-FiルーターのレンタルやeSIMの普及によって、海外でも手軽に通信環境を確保できるようになった。その市場を日本で切り開き、業界を代表する企業へ成長したのが、東証プライム市場に上場するビジョン(9416)である。同社は「グローバルWiFi」のブランドで知られ、海外渡航者向け通信サービスを中核事業として成長してきた企業であり、近年は法人向けDXや通信インフラサービスへも事業領域を広げている。
ビジョンは2001年に設立された。当初は通信回線の販売代理店として事業を展開していたが、2012年に海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」を本格展開すると、急速に利用者を拡大した。スマートフォンが世界中に普及し始めた時期と重なったこともあり、「海外でも普段と同じようにインターネットを使いたい」というニーズを取り込むことに成功したのである。
グローバルWiFiのビジネスモデルは比較的分かりやすい。利用者は出発前にインターネットで予約し、空港カウンターなどでWi-Fiルーターを受け取り、帰国後に返却するだけである。世界200以上の国・地域に対応し、定額料金で高速通信を利用できる利便性から、個人旅行者だけでなく企業の海外出張需要も取り込んできた。空港で見かける「Global WiFi」のカウンターは、海外旅行経験者には馴染み深い存在だろう。
同社の強みは単にルーターを貸し出すことではない。各国の通信事業者と提携し、最適な通信回線を提供できるネットワークを構築している点にある。国や地域によって通信事情は大きく異なり、通信速度や対応周波数もさまざまだ。ビジョンは長年蓄積したノウハウを活用し、安定した通信品質とサポート体制を提供してきたことが競争力となっている。
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大はビジョンにとって大きな試練となった。世界各国で渡航制限が導入され、海外旅行や出張はほぼ停止した。主力事業であるグローバルWiFiの需要は急減し、業績にも大きな影響が及んだ。しかし同社はこの危機を乗り越えるため、国内向けWi-Fiレンタルやテレワーク需要への対応、法人向け通信サービスの強化など、事業の多角化を進めた。
その後、各国で入国規制が緩和されると、海外旅行需要は急速に回復した。円安の影響で旅行費用は上昇したものの、コロナ禍で抑えられていた旅行需要、いわゆる「リベンジ旅行」が追い風となり、海外渡航者数は回復基調をたどっている。ビジョンもこの恩恵を受け、グローバルWiFi事業は再び成長軌道へ戻りつつある。
もっとも、通信市場そのものは大きく変化している。その象徴がeSIMの普及である。eSIMとは、物理的なSIMカードを差し替えることなく、スマートフォンだけで通信契約を切り替えられる技術である。近年発売されるスマートフォンの多くがeSIMに対応しており、旅行者はアプリ上で契約するだけで海外通信を利用できるようになった。Wi-Fiルーターを持ち歩く必要がないため、今後はeSIM利用者がさらに増える可能性がある。
ビジョンもこの変化に対応し、Wi-FiルーターだけではなくeSIMサービスの提供を積極的に進めている。同社の強みは「通信手段」そのものではなく、「海外で確実につながる通信サービス」を提供することにある。利用者のニーズに応じてWi-FiルーターとeSIMを使い分けられる体制を整えることで、市場環境の変化へ柔軟に対応している。
さらに同社は法人向け事業にも力を入れている。通信回線の販売、オフィスのインターネット環境構築、OA機器、クラウドサービス、ホームページ制作、DX支援など、中小企業向けのITソリューションを幅広く提供している。日本にはIT専任部署を持たない中小企業が数多く存在するため、「通信やITをまとめて任せられるパートナー」としての需要は依然大きい。こうした法人向けストック型ビジネスは、旅行需要に左右されやすいグローバルWiFi事業を補完する役割も担っている。
また、訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加も追い風となる。日本を訪れる外国人観光客にとっても通信環境は不可欠であり、SIMカードやWi-Fiレンタル需要は引き続き拡大が期待される。政府は観光立国を掲げ、訪日客数のさらなる増加を目指しており、通信インフラを提供するビジョンにも恩恵が及ぶ可能性がある。
投資家の視点では、ビジョンは「旅行関連銘柄」と「通信関連銘柄」の両方の側面を持つ企業と言える。海外旅行需要の回復局面では業績拡大が期待できる一方、感染症の流行や地政学リスクなどによって海外渡航が減少すれば影響を受けやすい。また、eSIMの普及や通信料金の低下など、技術革新への対応力も企業価値を左右する重要なポイントとなる。
同社を分析する際には、海外渡航者数だけではなく、グローバルWiFi利用件数、法人向けストック収益、インバウンド関連売上、eSIM事業の成長なども注目すべき指標である。旅行市場だけではなく、通信・DX市場へ事業領域を広げられるかが、中長期的な成長を占う鍵となる。
「通信」は電気や水道と同じように、現代社会を支えるインフラとなった。海外旅行中も、海外出張中も、「いつでもつながること」が当たり前になった時代、その裏側には通信ネットワークを支える企業が存在する。ビジョンは、Wi-Fiルーターという一つのサービスからスタートし、通信ソリューション企業へと進化を続けてきた。今後、eSIMや5G、さらには次世代通信技術が普及しても、「世界中の人と情報をつなぐ」という同社の役割は変わらないだろう。旅行需要の回復とデジタル化の進展という二つの追い風を受けながら、ビジョンは「つながる安心」を提供する企業として、新たな成長ステージを目指している。
「家を売る」から住まいの生涯パートナーへ――And Doホールディングスが挑む不動産サービスの進化
人生で最も大きな買い物の一つとされる住宅。しかし、住まいに関する悩みは購入時だけでは終わらない。住み替え、相続、空き家、リフォーム、住宅ローン、老後資金の確保など、住宅にはライフステージごとにさまざまな課題が生じる。こうした住まいに関するあらゆるニーズを一つのグループで支えようとしているのが、東証プライム市場に上場するAnd Doホールディングス(3457)である。「HOUSE DO(ハウスドゥ)」ブランドで全国に店舗網を展開し、不動産売買仲介だけでなく、買取再販、リフォーム、住宅ローン、ハウス・リースバックなど多彩なサービスを展開する同社は、日本の不動産業界に新たなビジネスモデルを築いてきた企業として注目されている。
同社の前身は1991年に創業した住宅リフォーム会社である。その後、不動産売買仲介へ進出し、2009年には「HOUSE DO」ブランドによるフランチャイズ事業を開始した。当時、不動産仲介業界は地域密着型の中小企業が数多く存在し、全国ブランドとして統一されたサービスを提供する企業は限られていた。And Doホールディングスはコンビニエンスストアのようなフランチャイズモデルを不動産業界へ導入し、ブランド力と経営ノウハウを加盟店へ提供することで急速に店舗網を拡大していった。
「HOUSE DO」の特徴は、店舗の入りやすさにある。従来の不動産会社は「売買するときだけ訪れる場所」というイメージが強かったが、ハウスドゥは明るい店舗づくりや親しみやすい接客を重視し、「気軽に相談できる不動産会社」を目指してきた。住宅購入だけではなく、売却相談や資産活用、リフォーム相談まで幅広く対応することで、地域住民との接点を増やしている。
同社の収益の柱は複数存在する。まず、不動産売買仲介事業では、住宅や土地の売買を仲介し、手数料収入を得る。加えて、フランチャイズ事業では加盟店から加盟金やロイヤルティを受け取るストック型収益を確保している。さらに、不動産を自ら買い取り、リフォームやリノベーションを施して再販売する「買取再販事業」も重要な収益源だ。中古住宅市場の拡大を背景に、物件に新たな価値を加えて販売するこの事業は、近年ますます存在感を高めている。
And Doホールディングスを語るうえで欠かせないのが、「ハウス・リースバック」である。このサービスは、自宅を同社へ売却した後も、そのまま賃貸住宅として住み続けられるという仕組みだ。通常、自宅を売却すると転居しなければならないが、ハウス・リースバックでは住み慣れた家に住み続けながら資金を確保できる。まとまった資金が必要な高齢者や、老後資金を確保したい人、相続対策を考える家庭などから利用が広がっている。
日本では高齢化が進み、多くの高齢者が「資産はあるが現金が少ない」という状況にある。いわゆる「アセットリッチ・キャッシュプア」と呼ばれる課題だ。自宅という資産を持ちながら、年金だけでは生活資金が不足するケースも少なくない。ハウス・リースバックは、こうした社会課題に対応するサービスとして注目され、不動産業界だけでなく金融業界からも関心を集めている。
また、日本では空き家問題も深刻化している。総務省の住宅・土地統計調査では全国の空き家数は増加傾向が続き、相続した実家をどうするかという問題も社会課題となっている。And Doホールディングスは中古住宅の流通や買取再販を通じて、既存住宅の有効活用にも取り組んでいる。新築住宅だけでなく中古住宅市場を活性化することは、資源の有効活用や環境負荷の軽減という観点からも重要性が高まっている。
近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的だ。AIによる不動産価格査定やオンライン相談、電子契約、デジタル広告を活用した集客など、不動産取引のデジタル化を進めている。不動産業界は紙の契約書や対面手続きが多い業界だったが、法制度の整備も進み、オンライン化が急速に進展している。全国のフランチャイズ加盟店がこうしたシステムを利用できることも、同社の競争力につながっている。
もっとも、不動産業界は景気や金利の影響を受けやすい。住宅ローン金利が上昇すれば住宅購入需要は鈍化し、不動産価格にも影響が及ぶ可能性がある。日本銀行が金融政策の正常化を進めるなか、市場金利の動向は住宅市場全体にとって重要なテーマとなっている。また、人口減少が進む地方では住宅需要の縮小も避けられず、地域ごとの市場環境を見極めた事業運営が求められる。
一方で、中古住宅市場には依然として大きな成長余地がある。欧米では中古住宅の流通が住宅市場の中心となっているのに対し、日本では新築住宅志向が長く続いてきた。しかし近年は住宅価格の上昇や建築コストの高騰を背景に、中古住宅を購入してリノベーションする選択肢が広がっている。政府も既存住宅の流通促進を政策として掲げており、この流れはAnd Doホールディングスにとって追い風となる可能性がある。
投資家の視点では、同社は単なる不動産仲介会社ではなく、「住まいの総合サービス企業」として評価することが重要だ。不動産仲介、フランチャイズ、金融サービス、買取再販、リフォームといった複数の事業を持つことで、特定市場への依存度を抑え、収益源を多様化している。特にフランチャイズ事業は加盟店の増加に伴って安定収益が期待でき、ハウス・リースバックは高齢化という長期的な社会変化を取り込む成長分野として注目されている。
今後の成長を占うポイントとしては、加盟店舗数の拡大、買取再販事業の収益性、ハウス・リースバックの契約件数、DX投資の成果などが挙げられる。また、住宅市場全体の動向だけでなく、高齢化や相続、空き家問題といった社会課題への対応力も企業価値を左右するだろう。
「家を売る」という行為は、かつては人生で一度あるかないかのイベントだった。しかし今では、住み替え、資産形成、相続、老後資金の確保など、住まいとの関わり方は多様化している。And Doホールディングスは、その変化に対応し、不動産会社という枠を超えて「住まいのライフパートナー」へ進化しようとしている。人口減少や高齢化という日本社会の大きな課題に向き合いながら、住宅資産の価値を最大限に引き出すサービスを提供する同社の挑戦は、不動産業界の未来を考える上でも興味深い存在といえるだろう。
まとめ 利回りだけでは見えない「企業の稼ぐ力」に注目する
高配当と株主優待を兼ね備えた銘柄は、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的な存在である。しかし、本当に長く保有できる企業かどうかは、配当利回りの高さだけでは判断できない。安定した利益を生み出せる事業基盤や成長力があってこそ、配当や優待は継続しやすくなる。
今回取り上げた企業は、越境EC、食品素材、通信サービス、不動産ソリューションと事業内容は大きく異なるものの、それぞれが独自の競争優位性を持ち、市場環境の変化に対応しながら成長を続けてきた点が共通している。配当と優待はあくまで投資判断の入り口であり、その裏側にあるビジネスモデルや収益力、将来性を理解することが、長期的な資産形成につながる。
株主還元と企業成長の両立を目指す「二刀流銘柄」は、相場環境が変化する局面でも注目されやすいテーマである。利回りの数字だけではなく、「なぜこの会社は株主へ還元できるのか」という視点を持つことで、投資先選びはより深みのあるものになるだろう。
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