
転売問題はなぜなくならないのか――企業に求められる新たな対策
2026年夏、『週刊少年ジャンプ』33号に『ONE PIECE』連載29周年記念の特別カードが付録として付いたことで、全国の書店やコンビニでは発売直後から売り切れが続出した。SNSには「買えなかった」という声が相次ぎ、フリマアプリでは定価を大きく上回る価格で多数出品される状況となった。これを受け、集英社は「付録なし版」の受注販売を実施し、通常の読者が購入しづらくなったことを謝罪する異例の対応を取った。この出来事は、転売問題が一部の限定商品だけではなく、出版業界を含めた幅広い分野に広がっていることを改めて浮き彫りにした。
一方で、フリマアプリは不要になったモノを必要とする人へ届けるリユース市場を支える重要なインフラでもある。転売を助長しているとの批判を受ける一方で、各社は不正出品の監視や本人確認の強化、AIを活用した不正検知など、健全な取引環境の整備にも力を入れている。日本の主要なフリマサービスを展開する企業が、転売問題とどのように向き合い、どのような対策を進めているのかを見ていく。
| 企業 | 証券コード | サービス |
|---|---|---|
| メルカリ | 4385 | メルカリ |
| 楽天グループ | 4755 | 楽天ラクマ |
| LY Corporation | 4689 | Yahoo!フリマ |
転売ヤーとの終わらない攻防――『ONE PIECE』付録騒動が問いかける転売対策の現在
2026年夏、『週刊少年ジャンプ』33号が発売されると、全国の書店やコンビニで瞬く間に売り切れが相次いだ。理由は漫画『ONE PIECE』の連載29周年を記念した特別カードが付録として付いていたためである。本誌よりも付録に注目が集まり、多くの店舗では発売日当日に在庫がなくなった。SNSには「普通に読みたかっただけなのに買えない」「何軒回っても売っていない」という投稿があふれ、一方でフリマアプリには定価を大きく上回る価格で多数出品されるという、近年では見慣れた光景が広がった。
この事態を受け、集英社は「付録なし版」の受注販売を実施するとともに、通常の読者が購入しづらい状況になったことについて謝罪した。出版社が付録を外した特別版を受注販売するという対応は異例であり、それだけ転売問題が深刻化していることを象徴する出来事となった。
転売そのものは違法ではない。不要になった物を中古市場で売買することは、リユースという観点からも社会的な意義がある。しかし、近年問題視されている「転売ヤー」は、自ら使用する意思がないにもかかわらず、発売直後の商品を大量購入し、供給不足を利用して高値で販売することを目的としている点が従来の中古売買とは大きく異なる。
こうした行動が批判される理由は、本来商品を楽しみたい一般消費者が購入できなくなるからである。人気漫画の付録、ゲーム機、限定スニーカー、ライブグッズ、トレーディングカード、コンサートチケットなど、供給が限られる商品ほど転売の対象になりやすい。メーカーや出版社が商品を販売しても、その利益は最初の販売時点で確定し、その後に何倍もの価格で転売されても利益を得るのは転売者だけである。本来であれば企業とファンとの間に築かれるべき信頼関係が損なわれ、ブランド価値にも悪影響を及ぼしかねない。
転売市場がここまで拡大した背景には、フリマアプリの普及がある。スマートフォン一台あれば誰でも簡単に出品でき、匿名配送や決済システムも整備されたことで、個人間取引のハードルは大きく下がった。リユース市場の拡大という点では社会に大きく貢献している一方で、人気商品の大量転売という新たな課題も生み出した。
企業側も様々な転売対策を講じている。最も一般的なのは抽選販売である。数量限定商品を先着順ではなく抽選にすることで、発売日に店舗へ殺到する事態を防ぎ、購入機会を平等にする狙いがある。近年ではゲーム機や限定フィギュア、アパレルブランドなどで広く採用されている。
購入数量を一人一点に制限する方法も定着してきた。しかし、複数のアカウントや家族名義を利用されるケースもあり、完全な対策とは言えない。そこで会員登録や本人確認を必須にしたり、過去の購入履歴を活用したりする企業も増えている。
近年特に注目されているのがデジタル技術を活用した対策である。転売目的で大量のアクセスを行う自動購入プログラム、いわゆる「ボット」を検知して排除するシステムや、AIを活用した不正注文の分析なども導入が進んでいる。オンライン販売が中心になるほど、こうした技術的な防御は重要性を増している。
チケット業界では法律も整備された。2019年にはチケット不正転売禁止法が施行され、興行主の同意なく利益目的でチケットを高額転売する行為は禁止された。これによりコンサートやスポーツ観戦では一定の抑止効果が見られる。一方で、雑誌や玩具、カードなど一般商品の転売については、この法律の対象外であり、依然として市場原理に委ねられている部分が大きい。
プラットフォーム側も対応を強化している。フリマアプリ各社は、発売前商品の出品禁止や偽ブランド品の排除、規約違反商品の削除などを行っているほか、社会問題となった商品については個別に出品を制限するケースもある。しかし、利用者数が膨大であることから、すべての出品を事前にチェックすることは現実的ではなく、いたちごっこが続いている。
今回の『ONE PIECE』付録騒動で注目された集英社の「付録なし版受注販売」は、転売対策として興味深い事例と言える。付録そのものは限定品として残しながら、「漫画を読みたい」という読者の需要には受注生産で応えるという発想である。これによって「読めない」という不満を減らし、転売需要の一部を抑える効果も期待できる。今後は限定商品でも受注生産を組み合わせる販売方法が広がる可能性がある。
企業にとって重要なのは、転売ヤーと戦うことそのものではなく、本来の顧客へ商品を届けることである。そのためには抽選販売、本人確認、購入履歴の活用、受注生産、AIによる不正検知などを組み合わせ、多層的な対策を講じる必要がある。一方、消費者側にも「高額転売品を買わない」という姿勢が求められる。転売品が売れなければ利益は生まれず、市場も縮小していくからだ。
リユース市場は循環型社会に欠かせない存在であり、フリマアプリも多くの人々の生活を便利にしている。しかし、本当に必要としている人へ商品が届かず、投機の対象になってしまうのであれば、その利便性は社会的な課題にもなり得る。『ONE PIECE』付録騒動は、一冊の漫画雑誌をめぐる出来事にとどまらず、デジタル時代の流通や消費のあり方、そして企業・消費者・プラットフォームが果たすべき役割を改めて問いかけた出来事だったのである。
メルカリは転売を助長しているのか――リユース市場の成長と転売対策の最前線
「メルカリを見れば、発売されたばかりの商品が並んでいる」。そんな光景は今や珍しいものではない。人気ゲーム機、限定スニーカー、トレーディングカード、アーティストのグッズ、漫画雑誌の付録まで、話題の商品ほど発売直後から数多く出品される。最近では、『週刊少年ジャンプ』33号に『ONE PIECE』連載29周年記念の特別カードが付録として付いたことで全国の書店やコンビニが品切れとなり、フリマアプリには定価を大きく上回る価格で多数出品された。こうした状況を見ると、「メルカリが転売を助長している」と感じる人も少なくない。しかし、本当に問題なのはプラットフォームなのだろうか。
メルカリは2013年にサービスを開始し、「不要になったモノを売り、必要な人が買う」というCtoC(個人間取引)の仕組みを日本に定着させた。スマートフォン一台で簡単に出品でき、匿名配送や決済機能を備えたことで、リユース市場は飛躍的に拡大した。これまで捨てられていた洋服や家電、本や趣味用品が再び流通するようになり、循環型社会の実現という面では大きな役割を果たしている。
一方で、その利便性の高さは転売目的の利用者にも歓迎された。人気商品を発売日に大量購入し、すぐに出品することで利益を得る「転売ヤー」は、メルカリをはじめとするフリマアプリを主要な販売チャネルとして利用している。スマートフォンさえあれば誰でも出品でき、購入者も全国から集まるため、従来のネットオークションよりも短時間で取引が成立しやすい。つまり、メルカリはリユース市場を成長させる一方で、転売市場の拡大という副作用も抱えることになったのである。
ただし、メルカリ自身は転売を積極的に推奨しているわけではない。むしろ近年は転売対策を強化する姿勢を鮮明にしている。例えば、社会問題となった商品の出品を一時的に制限したり、発売前商品の出品を禁止したりする措置を取っている。また、偽ブランド品や盗品、法令に違反する商品の監視体制も年々強化されており、AIを活用した不正検知システムや24時間体制のモニタリングによって、不適切な出品の削除を進めている。
しかし、プラットフォームだけで転売を根絶することは極めて難しい。商品が正規に購入されたものである以上、「一度買った商品を売る」という行為自体は原則として合法だからだ。もし人気商品だけを一律に出品禁止とすれば、不要になった商品を売りたい一般利用者まで影響を受けてしまう。自由な中古市場と転売対策のバランスをどう取るかは、運営会社にとって非常に難しい課題である。
そこで重要になるのが、メーカーや出版社、小売店による対策だ。最近では抽選販売が一般的になり、人気ゲーム機や限定グッズは先着順ではなく抽選で販売されるケースが増えている。また、一人一点までの購入制限や会員登録の義務化、本人確認、過去の購入履歴を利用した販売など、転売目的の大量購入を防ぐ仕組みも広がっている。AIを使ってボットによる自動購入を検知するシステムを導入する企業も増えており、販売現場のデジタル化は転売対策の重要な柱となっている。
『ONE PIECE』付録騒動で集英社が打ち出した「付録なし版」の受注販売も、その一例である。本来の目的である「漫画を読みたい」という読者に対し、確実に本誌を届けることで、転売市場の過熱を抑えようとする試みだった。限定品の希少性を維持しながら、読者の不満を軽減する工夫として注目された。
一方、消費者側にもできることがある。転売商品を高額でも購入する人がいる限り、転売ビジネスは成立する。発売日に買えなかったからといって、何倍もの価格で購入する行動が続けば、転売ヤーは利益を得続けることになる。企業がどれだけ対策を講じても、市場に需要がある限り供給は生まれる。つまり、転売問題は「売る側」だけではなく「買う側」の意識にも左右されるのである。
投資家の視点から見ると、メルカリは転売問題だけで評価すべき企業ではない。同社の収益の柱は、個人間取引全体から得られる販売手数料であり、メルペイやメルカード、メルコインといった金融サービスの拡充にも力を入れている。さらに米国事業への投資も続けており、単なるフリマアプリ企業から総合マーケットプレイス企業へと進化を目指している。リユース市場そのものは世界的に拡大が続いており、環境負荷の軽減やサステナビリティの観点からも、中古品流通への需要は今後も高まる可能性が高い。
その一方で、転売問題への対応力は企業価値を左右する重要なテーマになりつつある。利用者が安心して取引できる環境を維持できるか、不正出品への対応を迅速に行えるか、行政やメーカーと連携した仕組みを構築できるか。これらは今後のメルカリの信頼性を左右する要素となるだろう。
メルカリは転売問題の「原因」ではなく、「市場の縮図」である。需要があり、利益が生まれる限り、転売は形を変えながら続くだろう。しかし、プラットフォーム、メーカー、小売店、そして消費者がそれぞれの立場で対策を積み重ねることで、その弊害を小さくすることは可能である。リユースという社会的価値を守りながら、不当な転売をどう抑制していくのか。メルカリの取り組みは、日本のデジタルマーケットの成熟度を測る試金石となっている。
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楽天ラクマは転売問題とどう向き合うのか――楽天経済圏が挑む健全なCtoC市場
ゲーム機、トレーディングカード、人気アーティストのライブグッズ、限定スニーカー、漫画雑誌の付録。近年、「発売日に買えなかった商品がすぐにフリマアプリへ並ぶ」という光景は珍しくなくなった。2026年には『週刊少年ジャンプ』33号の『ONE PIECE』連載29周年記念特別カード付録を巡り、全国の書店やコンビニで売り切れが続出し、フリマアプリ上では高額出品が相次いだことが大きな話題となった。こうした状況を見るたびに、「フリマアプリが転売を助長している」という声が上がる。その議論の中心にいるサービスの一つが、楽天グループの運営する「楽天ラクマ」である。
楽天ラクマは、日本のCtoC(個人間取引)市場を代表するフリマアプリの一つだ。もともとは2012年に「フリル(Fril)」として誕生し、後に楽天グループ傘下に入り、現在の楽天ラクマへと名称を変更した。楽天ポイントとの連携や楽天IDによる利用のしやすさを武器に、楽天市場、楽天カード、楽天銀行、楽天モバイルなどと並ぶ「楽天経済圏」の一角を担っている。
楽天ラクマの本来の役割は、不要になったモノを必要とする人へ届けることである。着なくなった洋服、読み終えた本、使わなくなった家電、子ども用品などを簡単に売買できる仕組みは、リユース市場の拡大や循環型社会の実現に大きく貢献してきた。物価上昇が続く現在、中古品を活用して家計負担を抑えたい消費者にとっても、フリマアプリは重要な存在になっている。
しかし、その利便性の高さは転売目的の利用者にとっても魅力的だった。人気商品を大量購入し、発売直後に高額で販売する「転売ヤー」にとって、全国の購入希望者へ簡単に販売できるフリマアプリは非常に効率的な販売チャネルである。店舗で買い占めた商品をその日のうちに出品し、需要が高いうちに利益を確定させる。スマートフォン一台で完結する仕組みは、中古品流通の活性化と同時に転売市場の拡大も後押しした。
ただし、楽天ラクマは転売を推奨しているわけではない。むしろ近年は、安心・安全な取引環境の整備に力を入れている。ラクマでは利用規約によって出品禁止物を定めており、偽ブランド品や盗品、法令に違反する商品の排除を進めている。また、社会問題となった商品については個別に出品制限が行われる場合もあり、監視体制の強化も継続している。
特に楽天グループならではの強みとなるのが、ID基盤と本人確認の仕組みである。楽天会員としてさまざまなサービスを利用する中で蓄積される情報は、取引の信頼性向上につながる可能性がある。もちろんプライバシーへの配慮は大前提だが、匿名性が高い市場ほど不正利用が起きやすいことを考えれば、本人確認やアカウント管理の強化は転売対策の重要な要素になり得る。
また、楽天グループはECの世界で長年培ってきた不正検知のノウハウも持っている。楽天市場では不正注文対策や不審な取引の検知システムが運用されており、こうした技術や知見はラクマにも活用できる。AIによる異常検知や大量出品アカウントの監視、過去の取引履歴の分析など、デジタル技術を活用した転売対策は今後さらに重要になるだろう。
もっとも、プラットフォームだけで転売問題を解決することは難しい。なぜなら、一度正規に購入した商品を再販売すること自体は原則として違法ではないからである。人気商品を高値で売る行為が道徳的に批判されることはあっても、法律上ただちに規制できるケースは限られている。実際、2019年に施行されたチケット不正転売禁止法も対象は興行チケットであり、一般的な商品には適用されない。
そのため、転売対策はメーカーや小売店との連携が欠かせない。抽選販売、一人一点までの購入制限、会員限定販売、本人確認、受注生産など、企業側の販売方法も大きく変化している。『ONE PIECE』付録騒動で集英社が実施した「付録なし版」の受注販売も、本当に読みたい読者へ確実に商品を届けるための新しいアプローチだった。供給を増やし、希少性だけを狙った転売需要を減らすことも有効な対策の一つである。
そして忘れてはならないのが、消費者自身の行動である。高額転売品が売れるからこそ転売ビジネスは成立する。どうしても欲しいという気持ちは理解できるが、プレミア価格でも買う人がいる限り、転売目的の買い占めはなくならない。市場は需要と供給で成り立っており、転売問題も例外ではない。
投資家の視点で見ると、楽天ラクマは単独で上場しているわけではなく、楽天グループの巨大なエコシステムの一部である点が特徴だ。楽天市場、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天モバイルなど、多数のサービスが連携することで利用者を囲い込み、ポイント経済圏を形成している。ラクマもその一員として、単なるフリマアプリ以上の役割を担っている。中古品市場の拡大は長期的な追い風であり、サステナビリティや節約志向の高まりも成長要因となり得る。
だからこそ、安心して利用できる市場を維持できるかどうかは重要である。転売問題への対応力、不正出品への監視体制、利用者保護の仕組みは、単なる運営方針ではなく企業価値そのものにつながる。楽天ラクマに求められているのは「転売をゼロにすること」ではない。本当に必要としている人へ商品が届き、不要になったモノが次の利用者へ循環するという、本来のリユース市場の価値を守ることである。
転売との戦いは、おそらく今後も終わらない。しかし、楽天ラクマをはじめとするプラットフォーム、メーカー、小売店、そして消費者がそれぞれの立場で対策を積み重ねていけば、より健全な市場へ近づくことはできる。楽天ラクマが目指しているのは、単なる「売買の場」ではなく、信頼によって支えられる持続可能なリユース市場なのである。
Yahoo!フリマは転売問題をどう変えるのか――LY Corporationが挑む健全な個人間取引
ゲーム機、限定スニーカー、トレーディングカード、人気アーティストのグッズ、そして漫画雑誌の付録まで。人気商品が発売された直後にフリマアプリへ高額で出品される光景は、いまや日本の日常となった。2026年には『週刊少年ジャンプ』33号の『ONE PIECE』連載29周年記念特別カード付録が大きな話題となり、全国の書店やコンビニで売り切れが続出した。その一方で、フリマアプリには定価を大きく上回る価格で多数の商品が出品され、「本当に読みたい人が買えない」という不満がSNS上にあふれた。こうした転売問題を語る上で欠かせない存在が、LY Corporationが運営する「Yahoo!フリマ」である。
Yahoo!フリマは、もともと「PayPayフリマ」としてサービスを展開していたが、2023年に現在の名称へ変更された。LINEとヤフーの経営統合によって誕生したLY CorporationのCtoC(個人間取引)サービスとして、Yahoo!オークションと並ぶ個人売買の柱となっている。PayPayとの連携による決済の利便性や、匿名配送、シンプルな価格設定などを特徴とし、国内有数のフリマサービスへと成長している。
本来、Yahoo!フリマが果たしている役割は非常に大きい。家庭で使わなくなった衣類や家具、家電、本、おもちゃなどを必要とする人へ届けることで、リユース市場を活性化し、廃棄物削減にも貢献している。物価高が続く現在、中古品を上手に活用したい消費者にとって、フリマアプリは節約の手段としても欠かせない存在となっている。
しかし、その便利さは転売目的の利用者にとっても魅力的だった。人気商品を発売日に大量購入し、供給不足を利用して高値で販売する「転売ヤー」は、Yahoo!フリマを含むフリマサービスを販売チャネルとして利用している。購入希望者は全国に存在し、スマートフォンだけで簡単に出品から発送まで完結できるため、短期間で利益を得ることが可能になった。プラットフォームが便利になればなるほど、健全なリユースと利益目的の転売が同じ市場で混在するという課題が生まれるのである。
もっとも、「Yahoo!フリマが転売を助長している」と単純に結論付けるのは適切ではない。Yahoo!フリマは個人間取引の場を提供しているのであり、転売そのものを推奨しているわけではない。むしろ、安心・安全なマーケットプレイスを維持するための取り組みを継続している。
例えば、発売日前の商品や規約で禁止された商品の出品は禁止されており、偽ブランド品や盗品、法令違反商品などについては監視体制が整えられている。不正な出品をAIなどで検知し、人による確認も組み合わせながら削除対応を進める仕組みも導入されている。社会問題化した商品については、一時的に出品を制限するなど、状況に応じた柔軟な対応も行われてきた。
Yahoo!フリマの大きな特徴は、LY Corporationが持つ巨大なインターネット基盤を活用できる点にある。同社はYahoo!検索、Yahoo!ショッピング、Yahoo!オークション、LINE、PayPayとの連携など、日本最大級のデジタルサービス群を展開している。こうした膨大な利用データやセキュリティ技術は、不正利用の検知やアカウント管理にも応用できる可能性がある。近年ではAIによる異常取引の分析や、不自然な大量出品、複数アカウントの利用パターンなどを検知する技術も進歩しており、今後はこうしたデータ活用が転売対策の重要な武器になるだろう。
一方で、プラットフォームだけで転売問題を解決することはできない。最大の理由は、転売の多くが法律上違法ではないからだ。一度正規に購入した商品を売却する行為自体は原則として自由であり、一般的な中古品売買まで規制すれば、リユース市場そのものが成り立たなくなる。実際、2019年に施行されたチケット不正転売禁止法はコンサートやスポーツ観戦チケットを対象としており、ゲーム機や雑誌、カードなど一般商品の転売までは規制していない。
そのため、メーカーや小売店も販売方法を大きく見直している。抽選販売、一人一点までの購入制限、本人確認、会員限定販売、受注生産などは、現在では珍しいものではなくなった。『ONE PIECE』付録騒動で集英社が実施した「付録なし版」の受注販売も、本来の読者へ確実に商品を届けるための新しい試みだった。供給不足を解消することで転売市場の魅力を下げるという発想は、今後さらに広がるかもしれない。
そして、忘れてはならないのが消費者の行動である。転売商品が高値でも売れる限り、転売ビジネスは成立し続ける。発売日に手に入らなかったとしても、高額商品を購入する人がいれば、その利益を期待して次の買い占めが起こる。需要があるから供給が生まれるという市場原理は、フリマアプリでも変わらない。
投資家の視点で見ると、Yahoo!フリマはLY Corporation全体の収益の一部を担うサービスである。同社の収益基盤は広告事業、検索サービス、EC、決済関連など多岐にわたっており、Yahoo!フリマ単体の業績だけで企業価値が決まるわけではない。しかし、個人間取引市場は今後も拡大が見込まれる分野であり、安心して利用できるプラットフォームを提供できるかどうかは、中長期的な競争力に直結する。利用者が「安心して売れる」「安心して買える」と感じる環境を維持することは、企業ブランドそのものの価値を高めることにつながる。
Yahoo!フリマが目指しているのは、転売市場を支えることではなく、モノが必要な人へ適正な形で循環する社会を支えることである。そのためには、AIを活用した不正監視、本人確認の強化、メーカーとの連携、利用者への啓発など、多面的な取り組みを続ける必要がある。転売問題は一つの企業だけでは解決できない。しかし、プラットフォーム、メーカー、小売店、そして消費者がそれぞれの役割を果たすことで、市場はより健全な方向へ進むことができる。Yahoo!フリマの挑戦は、日本のリユース市場がさらなる成長と信頼を両立できるかどうかを占う、重要な試金石となっているのである。
まとめ 問われるのは「転売をなくすこと」ではなく「正しく循環する市場づくり」
転売問題は、フリマアプリだけで解決できるものではない。メーカーや出版社、小売店は抽選販売や受注生産、購入制限など販売方法を工夫し、プラットフォームはAIや本人確認を活用して不正取引の抑制に取り組み、消費者も高額転売品を安易に購入しないという意識を持つことが求められる。それぞれが役割を果たして初めて、市場全体の健全性は保たれる。
メルカリ、楽天ラクマ、Yahoo!フリマはいずれも、日本のリユース市場を支える重要な存在である。中古品を循環させるという社会的価値を守りながら、転売目的の利用をどう抑制するのか。その取り組みは企業の信頼性だけでなく、持続可能な消費社会の実現にもつながる重要なテーマだ。『ONE PIECE』付録騒動は、人気コンテンツの一時的な品薄という出来事にとどまらず、企業、プラットフォーム、そして私たち消費者が「本当に必要な人へ商品を届ける仕組み」をどう築いていくかを考える契機となったのである。
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