次の成長株はここ?独自の強みを持つ注目企業4社を紹介

いま気になる4社を深掘りする

上場企業の中には、誰もが知る大企業だけでなく、独自の技術やサービスを武器に、これからの成長が期待される企業も数多く存在する。今回取り上げるのは、そんな「気になる会社」として注目したい4社である。ライブ配信サービス「ふわっち」を展開するjig.jp、自動運転技術の社会実装を目指すティアフォー、自動車をはじめとする組込みソフトウェアに強みを持つヴィッツ、そして「ドン・キホーテ」を国内外で展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスだ。事業内容や企業規模は大きく異なるものの、いずれも時代の変化や新しい消費者ニーズを捉えながら成長を目指している点が共通している。本特集では、それぞれのビジネスモデルや強み、成長余地に注目し、企業の現在地と今後の可能性を探っていく。

銘柄コード企業名市場主な事業・サービス注目ポイント
5244jig.jp東証グロースライブ配信「ふわっち」、VTuber、デジタルサービスなど「ふわっち」を収益基盤に、新規事業やM&Aで事業領域を拡大
7532パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス東証プライム「ドン・キホーテ」、総合スーパー、海外小売など「驚安の殿堂」を武器に、インバウンドと海外展開を成長に取り込む
593Aティアフォー東証グロース自動運転システム、Autoware、モビリティサービスなど自動運転の「民主化」を掲げ、公共交通・物流などへの社会実装を推進
4440ヴィッツ東証スタンダード組込みソフトウェア、自動車・IoT・スマートシティ関連自動車のSDV化や自動運転、IoTの進展を追い風に技術領域を拡大
企業成長テーマ強み今後の注目点
jig.jpライブ配信・デジタル「ふわっち」のブランド・ユーザー基盤新規事業の収益化、ライブ配信事業の成長
PPIH小売・インバウンド・海外ドン・キホーテのブランド力と店舗網海外店舗拡大、訪日客需要、国内店舗の収益力
ティアフォー自動運転・AI・モビリティAutowareを核とした技術・エコシステム自動運転の商用化、社会実装、収益化
ヴィッツ自動車・ソフトウェア・IoT組込みソフトウェアの開発力SDV、自動運転、IoT関連案件の拡大

ライブ配信「ふわっち」を成長エンジンに、新領域へ挑戦するjig.jpの現在地

東証グロース市場に上場するjig.jpは、モバイルを中心としたソフトウェアの企画・開発・提供を手掛けるIT企業である。銘柄コードは5244。2003年の設立以来、携帯電話向けサービスやアプリ開発を手掛け、現在はライブ配信サービス「ふわっち」を事業の中核に据えている。企業理念には「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」を掲げ、時代やデバイス、インターネット環境の変化に合わせてサービスを変化させてきた点が特徴だ。

jig.jpを語るうえで欠かせないのが「ふわっち」である。2015年にサービスを開始したライブ配信プラットフォームで、スマートフォンのアプリやウェブブラウザを通じて、誰でも手軽にライブ配信や視聴ができる。特に、プロの芸能人やインフルエンサーだけではなく、一般のユーザーが配信者として参加できる点が特徴となっている。視聴者は配信者に対して有料アイテムなどを送ることができ、これがサービスの重要な収益源となる。

このビジネスモデルの魅力は、動画コンテンツそのものを販売するのではなく、配信者と視聴者のコミュニケーションを軸に収益を生み出せることである。ライブ配信では、視聴者が「応援したい」「リアルタイムで交流したい」と感じることで課金が発生する。人気配信者が増えれば視聴者が集まり、視聴者が増えれば配信者にとっても活動するメリットが高まるという、プラットフォーム型ビジネス特有の循環が期待できる。

実際、2026年3月期の連結売上高は146億3,100万円となり、前期比6.1%増となった。一方、営業利益は19億7,600万円で1.8%減となっており、売上成長と利益成長が必ずしも同じペースではない点には注意が必要だ。それでも親会社株主に帰属する当期純利益は11億5,500万円と前期比7.3%増となっている。

2026年3月期の事業構成を見ると、一般消費者向け関連事業への依存度が非常に高い。ライブ配信を中心とする一般消費者向け関連が連結売上高の大部分を占めており、jig.jpの企業価値を考える際には、まず「ふわっち」の利用動向や収益性を見る必要がある。

その一方で、jig.jpはライブ配信一本足打法からの脱却も意識している。VTuber関連事業では、2023年に事業を開始し、2024年にはVTuberを応援する協力型プラットフォーム「SPOTLIGHTS」をリリースした。また、バーチャル音楽ライブ配信サービス「topia」など、デジタル上でのコミュニケーションを広げる取り組みも進めている。

さらに、こども向けプログラミング専用パソコン「IchigoJam」や自治体向けの「オープンデータプラットフォーム」も展開している。特にIchigoJamは、子どもがプログラミングを学ぶための教育用途を意識した製品であり、単なるスマートフォンアプリ企業とは異なるjig.jpの技術力や開発思想を象徴する存在ともいえる。

同社の歴史を振り返ると、現在の「ふわっち」だけが突然登場したわけではない。2003年の設立後、携帯電話向けの「jigアプリ」や「jigブラウザ」、動画配信・視聴ソリューションなどを開発してきた。時代の中心がフィーチャーフォンからスマートフォンへ、さらにアプリから動画、ライブ配信へと移る中で、jig.jpも事業の軸を変化させてきたのである。

この「変化への対応力」は、同社を見るうえで重要なポイントだろう。会社側も強みとして「時代の変化に合わせたスピーディなサービス開発力」を掲げている。福井県鯖江市に開発センターを置き、エンジニアを中心にサービス開発を進めている点も特徴的だ。東京の本社機能と福井の開発拠点を組み合わせながら、ソフトウェア企業としての競争力を維持しようとしている。

そして、今後のjig.jpを考えるうえで注目されるのがM&Aを活用した事業領域の拡大である。2024年にはブライトテーブルを子会社化し、2025年にはアンビリアルを子会社化。さらに2026年4月にはバチェラーデートを運営する会社を子会社化し、社名を「Miris」へ変更している。バチェラーデートはマッチングサービスを展開しており、ライブ配信とは異なる消費者向けデジタルサービスを取り込むことで、事業ポートフォリオの拡大を進めている。

また、2025年12月にはスマート眼鏡ブランド「SABERA」を立ち上げ、スマート眼鏡事業にも進出した。AI、XR、IoTなどの新しい技術領域にも取り組んでおり、jig.jpは「ふわっち」を収益基盤としながら、次の成長事業を育てる段階に入っているといえる。

もっとも、投資対象として見る場合にはリスクもある。最大のポイントは、売上高の大部分を「ふわっち」に依存していることである。ライブ配信市場は成長余地がある一方、競争も激しく、ユーザーの嗜好変化や他サービスへの移行、広告・プロモーション費用、決済手数料などが収益性を左右する。さらに、配信プラットフォームでは利用者間のトラブルやコンテンツ管理など、サービス規模が大きくなるほど対応すべき課題も増えていく。

2027年3月期についても、売上高は増加基調が期待される一方、2026年3月期の第1四半期は売上高41億円で前年同期比10.8%増となったものの、営業利益は4億8,400万円で15.6%減となっている。売上成長をどこまで利益成長につなげられるかは、今後の株価評価を左右する重要なポイントになる。

それでも、jig.jpには「既存サービスを守るだけではなく、新しい技術やサービスを取り込む」という姿勢がある。ライブ配信、VTuber、バーチャル音楽、マッチング、スマート眼鏡、AI・XR・IoTなど、現在から将来に向けたデジタルコミュニケーションの周辺領域へ事業を広げている点は興味深い。

jig.jpは、携帯電話向けソフトウェアからスタートし、ライブ配信という大きな成長市場をつかんだ企業である。現在は「ふわっち」が業績を支える一方、その収益基盤を使って新規事業やM&Aへ投資し、次なる柱を育てようとしている。2026年3月期には売上高146億円規模、営業利益約20億円という収益基盤を築いており、今後は「ふわっち」の成長継続と新規事業の収益化を両立できるかが焦点となる。

東証グロース市場には成長企業が多いが、jig.jpは単なる新興IT企業ではなく、20年以上にわたってインターネットとモバイルの変化を追い続けてきた企業である。ライブ配信市場の拡大を取り込むだけでなく、AIやXR、VTuber、マッチングなど新たなデジタル領域へ挑戦する姿勢は、同社の今後を考えるうえで重要な材料だ。「ふわっち」を次の成長ステージへ引き上げながら、第二、第三の収益の柱をどこまで育てられるか。jig.jpの企業価値を見極めるうえでは、この二つの成長軸に注目したいところである。

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「驚安の殿堂」を世界へ――パン・パシフィック・インターナショナルHDが描く小売りの成長戦略

東証プライム市場に上場するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、銘柄コード7532)は、「ドン・キホーテ」を中心に総合ディスカウントストアや総合スーパー、海外小売事業などを展開する企業である。日常生活に必要な食品や日用品から、家電、衣料品、化粧品、ブランド品まで幅広い商品を扱い、独特の売場づくりと価格戦略によって国内外で存在感を高めてきた。現在では日本を代表する小売企業の一つであり、国内市場だけでなく、アジアを中心とした海外市場を成長の舞台としている点が大きな特徴だ。

PPIHの原点は、1980年に創業した小売事業にある。その後、「ドン・キホーテ」の店舗網を拡大し、1998年に株式を店頭公開。2000年代にはM&Aを活用して事業領域を広げ、ユニーのグループ化などによって総合スーパー事業にも進出した。2019年には持株会社体制へ移行し、現在のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスへ商号変更している。ディスカウントストアを核としながら、さまざまな業態を組み合わせることで企業規模を拡大してきたのである。

「ドン・キホーテ」の最大の特徴は、一般的な小売店とは一線を画す独特の売場である。商品を高密度に陳列し、手書きのPOPなどを多用することで、店内を歩きながら商品を探す楽しさを演出している。単に安い商品を並べるのではなく、「何があるのか分からない」「思いがけない商品に出会える」という買い物体験そのものを価値にしている点が強みである。

この店舗運営を支えているのが、現場の裁量を重視するPPIH独自の経営思想である。店舗ごとに地域の顧客特性を捉え、品ぞろえや売場づくりを柔軟に変えることで、画一的なチェーンストアとは異なる個性的な店舗を作り上げてきた。繁華街、住宅地、観光地など立地によって売れる商品は異なるため、地域ごとの需要を取り込む仕組みは競争力につながる。

さらに、訪日外国人観光客の増加もPPIHにとって追い風となっている。ドン・キホーテは日本の観光地や都市部で外国人にも知名度が高く、食品、化粧品、医薬品、日用品、土産物などを一つの店舗で購入できる利便性が支持されている。インバウンド需要は為替や国際情勢によって変動するものの、訪日客の買い物需要を取り込める店舗網は大きな資産である。

そしてPPIHを語るうえで欠かせないのが海外展開である。同社は「DON DON DONKI」などの店舗ブランドを通じ、シンガポール、香港、タイ、台湾、マレーシア、米国などへ進出している。海外店舗でも日本の商品を豊富に取り扱い、日本食や日本の食品、化粧品などへの需要を取り込んできた。日本国内で培った店舗運営のノウハウを海外市場へ展開することで、人口減少が進む国内だけに依存しない成長を目指している。

海外事業では、日本の商品を海外へ輸出するだけでなく、現地のニーズに合わせた品ぞろえを構築することが重要になる。例えば日本では日常的な商品であっても、海外では「日本らしさ」を感じられる魅力的な商品になる場合がある。一方で、現地の食文化や価格水準に合わせる必要もある。PPIHは日本の小売りノウハウと各地域の消費者ニーズを組み合わせることで、海外でも店舗の存在感を高めている。

国内では、ドン・キホーテだけでなく、ユニーなどを通じた総合スーパー事業も展開する。ディスカウントストアと総合スーパーでは顧客層や購買目的が異なるため、両者をグループ内に持つことで幅広い消費需要に対応できる。食品を中心とした日常の買い物から、非日常的な買い物までカバーできることは、PPIHの店舗ネットワーク全体の強みとなる。

また、PPIHはデジタル化にも取り組んでいる。スマートフォン向けの「majica」など、顧客との接点をデジタルで強化することで、店舗での購買データを活用したマーケティングや販促につなげることができる。リアル店舗を中心とした小売企業にとって、顧客データをいかに蓄積し、品ぞろえや価格、販促へ反映するかは重要な競争力となる。

小売業界を取り巻く環境は決して容易ではない。原材料価格や物流費、人件費などのコスト上昇は店舗運営の負担となる。また、食品や日用品を中心に消費者の節約志向が強まれば、低価格を武器とするディスカウントストアへの需要が高まる一方、仕入れ価格の上昇を販売価格へどこまで転嫁できるかが課題になる。人手不足も店舗運営における重要なテーマである。

その中でPPIHが持つ「安さ」だけではない強さは注目に値する。ドン・キホーテは低価格を訴求しながら、店内で商品を探す楽しさや豊富な品ぞろえ、深夜まで営業する店舗の利便性など、複数の価値を組み合わせている。価格競争だけに陥らず、店舗そのものをエンターテインメント性のある空間にしていることが、長期的な顧客支持につながっている。

今後の成長を考えるうえでは、国内店舗の収益力向上と海外事業の拡大が二つの柱になるだろう。国内では、既存店舗の改装や品ぞろえの最適化、デジタル活用などによって客単価や来店頻度を高める余地がある。海外では、日本文化や日本食への関心を背景に、日本発の商品を取り扱う小売業態として店舗網をさらに広げられる可能性がある。

特に海外の「DON DON DONKI」は、単なるディスカウントストアではなく、日本の商品や食文化を体験できる場所としての役割も担っている。日本国内で当たり前に販売されている菓子や調味料、飲料、化粧品などが、海外では日本を象徴する商品として受け入れられるケースも多い。日本のコンテンツや食文化への関心が続けば、PPIHの海外店舗にはさらなる成長余地がある。

一方、投資対象として見る場合には、海外展開の成否やインバウンド需要、為替、消費環境、コスト上昇などを継続的に確認する必要がある。海外店舗が増えれば売上規模を拡大できる一方、国ごとの規制や商習慣、競合環境への対応も必要となる。国内外の店舗を効率的に運営しながら、PPIH独自の企業文化を維持できるかが重要になる。

PPIHは、「安さ」を起点にしながら、単なるディスカウントストアの枠を超えて成長してきた企業である。ドン・キホーテという強力なブランド、現場主導の店舗運営、幅広い品ぞろえ、そして海外展開という複数の強みを持つことが特徴だ。人口減少によって国内小売市場の大幅な成長が見込みにくい中、海外市場を取り込む戦略は今後さらに重要性を増す。

「驚安の殿堂」という独自のブランドイメージを、日本だけでなく世界の消費者にどこまで浸透させられるか。国内で培った店舗運営力と商品調達力を海外で再現しつつ、現地のニーズを取り込めれば、PPIHは日本の小売企業という枠を超えたグローバル企業へと成長する可能性がある。国内のドン・キホーテ、総合スーパー、そして海外のDON DON DONKI。これらを一体として成長させられるかが、今後のPPIHを占う重要なポイントとなりそうだ。

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自動運転の「民主化」に挑むティアフォー、実用化を次の成長ステージへ

東証グロース市場に上場するティアフォーは、自動運転技術を中心に事業を展開する企業である。銘柄コードは593A。自動運転という将来性の大きなテーマを事業の中心に据え、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を軸として、ソフトウェア、車両、センサー、運行管理などを組み合わせた自動運転システムの構築を目指している点が大きな特徴だ。

自動運転という言葉からは、自動車メーカーが開発する高性能な乗用車をイメージしやすい。しかし、ティアフォーが重点を置く領域は、それだけではない。公共交通、物流、タクシー、建設、鉱業など、さまざまな産業に自動運転を導入することを目指している。実際、同社は自動運転バスやシャトル、タクシーなどのサービス提供を進めており、運転手不足や交通弱者への対応といった社会課題の解決にもつながる事業モデルを構築している。

ティアフォーの最大の特徴は、「自動運転の民主化」という考え方である。その象徴がAutowareだ。Autowareは自動運転システムを構築するためのオープンソースソフトウェアで、ティアフォーはその開発を主導してきた。2015年に公開されて以来、自動運転の研究・開発に利用され、現在では自動運転エコシステムを形成する重要なソフトウェア基盤となっている。

オープンソースという仕組みには大きな意味がある。自動運転は、車両制御、画像認識、センサー、位置推定、経路計画、AIなど非常に多くの技術を必要とする。そのすべてを一企業だけで開発するには膨大な時間とコストがかかる。ソフトウェアをオープンにし、多くの企業や研究機関、エンジニアが技術開発に参加できる環境を作ることで、技術革新を加速させることができる。

ティアフォーは、Autowareそのものだけで収益を得るのではなく、Autowareを中心とした自動運転エコシステムを構築し、その周辺でビジネスを展開することを目指している。具体的には、自動運転システムの開発支援、車両の自動運転化、運行管理システム、クラウドサービス、センサーなどを組み合わせる。つまり、ソフトウェアを入口として、自動運転を実際の社会インフラとして稼働させるところまで関与するビジネスモデルである。

この点は、ティアフォーを単なる「自動運転ソフト会社」として捉えると見えにくい強みである。自動運転の実用化では、ソフトウェアが動くだけでは十分ではない。車両そのものを自動運転に対応させ、安全性を確保し、運行を管理し、実際の道路環境で走行させる必要がある。ティアフォーはこうした複数の工程を横断して技術を提供しようとしている。

同社のソリューションには、電気自動車(EV)を自動運転車両へ転換する取り組みもある。例えば同社の「fanfare」では、完成車メーカーと連携してステアリングやブレーキなどの電動化モジュールや電気電子アーキテクチャを開発し、レベル4水準の自動運転機能に対応する車両づくりを進めている。単純に自動運転ソフトを搭載するだけではなく、車両側のシステムまで含めて設計する点が特徴だ。

自動運転の市場拡大を考えるうえで、重要なキーワードとなるのが「レベル4」である。レベル4は、限定された地域や条件の中で、システムが運転操作を担い、人間による運転への介入を前提としない高度な自動運転である。ティアフォーは特にこうした限定領域での自動運転を実社会へ導入することに力を入れている。

日本では少子高齢化や人口減少によって、バスやタクシーなどの運転手不足が深刻な課題となっている。地方では公共交通の維持そのものが難しくなるケースもあり、自動運転は単なる技術革新ではなく、地域交通を維持するための手段としても期待される。ティアフォーが自動運転バスやシャトルなどに注力する背景には、こうした社会的な需要がある。

さらに物流分野でも自動運転には大きな可能性がある。物流需要が拡大する一方で、ドライバー不足や人件費上昇が課題となっており、幹線輸送や物流拠点などで自動運転を導入できれば、輸送効率の改善につながる可能性がある。ティアフォーも公共交通だけでなく、物流や建設、鉱業など幅広い産業を対象に自動運転ソリューションを提供している。

もちろん、自動運転は期待だけで簡単に普及する市場ではない。最大の課題は安全性である。一般的なソフトウェアと異なり、自動運転システムの不具合は人命に直結する可能性がある。そのため、認識精度を高めるだけでなく、システムがどこまで安全に対応できるのか、その限界を把握することが極めて重要になる。ティアフォーも自動運転システムの性能限界検知や環境センシング、安全性向上に関する技術開発を進めている。

また、自動運転の普及には技術だけでなく、法規制や道路環境、自治体、交通事業者、自動車メーカーなどとの連携も欠かせない。自動運転車を開発して終わりではなく、実際の地域交通の中で継続的に運用できる仕組みを構築する必要がある。ここでティアフォーの「エコシステム型」の戦略が重要になる。

同社はこれまでにもさまざまな実証実験を積み重ねてきた。東京都の西新宿など交通量の多い地域でも自動運転タクシーの実証を行い、複数車両の同時走行や目的地に応じたルート判別など、実用化を意識した技術検証を進めてきた。実証実験は単なる技術デモではなく、実際の道路環境で発生する課題を見つけ、ソフトウェアや運行システムを改善するための重要なデータ源となる。

AI技術の進歩もティアフォーにとって追い風となる。自動運転では、カメラやLiDAR、レーダーなどのセンサーから得られた情報をAIなどで解析し、周囲の車両や歩行者を認識しながら、進行方向や速度を判断する必要がある。ティアフォーは松尾研究所とも共同研究を行い、Autowareの認識・予測性能の改善や、世界モデルの自動運転への応用などにも取り組んでいる。

今後の焦点は、研究開発から「事業としての普及」へどこまで移行できるかである。自動運転は市場規模が大きくなる可能性を秘めている一方、研究開発や実証実験の段階から、実際に顧客が対価を払う商用サービスへ移行するまでには時間がかかる。自動運転車両の販売やシステム導入、運行管理、保守などを通じて、継続的な収益を生み出せるビジネスモデルを構築できるかが重要になる。

投資対象として見る場合も、この点は大きなポイントとなる。自動運転というテーマ性だけでなく、Autowareがどれだけ広く利用されるのか、ティアフォーの技術が実際の車両や交通サービスへどこまで採用されるのか、そして商用化によって売上・利益をどの程度伸ばせるのかを見極める必要がある。また、競合する自動運転企業や自動車メーカー、海外のテクノロジー企業との競争も激しくなる可能性がある。

それでもティアフォーの存在感は、自動運転市場の拡大とともに高まる可能性がある。自動運転は自動車メーカーだけのテーマではなく、交通、物流、AI、半導体、センサー、クラウド、通信などを巻き込む巨大な産業テーマだからである。その中でオープンソースを基盤に、多様な企業や研究機関と連携しながら市場を形成しようとしている点は、同社ならではの特徴といえる。

ティアフォーが目指すのは、単に「自動で走る車」を作ることではない。自動運転を社会に普及させ、公共交通や物流などの課題を解決するためのプラットフォームを構築することである。Autowareというソフトウェアを中心に、車両、センサー、クラウド、運行管理、サービスまでをつなぐことができれば、自動運転市場が拡大するほど同社の事業機会も広がる。

東証グロース市場に上場したティアフォーは、自動運転という成長テーマの最前線に位置する企業の一つである。今後は「技術的に可能か」という段階から、「どこで、誰が、どのように使い、いくらで提供するのか」という事業化の段階へと焦点が移っていく。人手不足や地域交通の維持といった社会課題が深刻になるなか、自動運転の必要性は今後さらに高まる可能性がある。Autowareを核としたエコシステムをどこまで世界へ広げ、実証実験を継続的な収益へ結び付けられるか。ティアフォーの成長を占ううえでは、技術力だけでなく、社会実装と収益化の進展に注目したいところである。

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自動車・組み込みソフトを支えるヴィッツ、組込み技術から広がるDXの可能性

東証スタンダード市場に上場するヴィッツは、組込みソフトウェアを中心としたシステム開発を手掛けるIT企業である。銘柄コードは4440。自動車をはじめとするモビリティ分野、産業機器、デジタル化関連などを主要な事業領域とし、私たちの目に直接触れる製品そのものではなく、その内部で動作するソフトウェアを支える企業として存在感を高めてきた。

組込みソフトウェアとは、自動車や家電、産業機械などの機器に組み込まれ、機器を制御するためのソフトウェアである。スマートフォンのアプリのようにユーザーが直接操作するものとは異なり、製品の内部でセンサーから情報を受け取り、モーターやブレーキ、各種機器を動かすなど、製品そのものの機能を支える役割を担う。製品の高機能化が進むほど、組込みソフトウェアの重要性も高まっていく。

特にヴィッツを考えるうえで重要なのが自動車分野である。自動車業界は現在、100年に一度ともいわれる大きな変革期を迎えている。電動化、自動運転、コネクテッド化などが進み、従来の機械中心の自動車から、ソフトウェアが車両の価値を左右する「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」へと進化しつつある。こうした流れは、組込みソフトウェアを得意とするヴィッツにとって大きな事業機会となる。

自動車1台に搭載される電子制御ユニット(ECU)の数は多く、エンジンやモーター、ブレーキ、ステアリング、車載通信、運転支援など、さまざまな機能をソフトウェアが制御している。電気自動車や自動運転車では、さらに大量のデータを処理する必要があり、ソフトウェアの規模や複雑性は増している。ヴィッツはこうした自動車向け組込みソフトウェアの開発に加え、安全性や品質を意識した開発支援にも取り組んでいる。

自動車向けソフトウェアでは、一般的なアプリ開発以上に品質と安全性が重視される。万が一、ソフトウェアの不具合によって車両の制御に問題が生じれば、人命に関わる可能性があるからだ。そのため、開発工程を標準化し、ソフトウェアの品質を確保しながら効率的に開発する仕組みが欠かせない。ヴィッツが長年培ってきた組込みシステム開発の経験は、こうした市場で強みとなる。

また、同社は組込みソフトウェアだけに事業を限定しているわけではない。スマートシティやIoTなど、さまざまな産業のデジタル化にも取り組んでいる。モノとインターネットがつながるIoT社会では、センサーで取得したデータを収集し、それを分析して機器やサービスを制御する必要がある。組込み技術とクラウド、AIなどを組み合わせることで、新しいサービスを生み出せる余地が広がっている。

スマートシティもその一例である。都市の交通、エネルギー、防災、公共施設などにデジタル技術を組み合わせることで、都市機能を効率化する取り組みが進められている。ここでは単一の製品を開発するだけではなく、さまざまな機器やシステムを連携させることが重要になる。組込みシステムの知見を持つ企業にとって、IoTやスマートシティは技術を横展開できる市場といえる。

ヴィッツの特徴としてもう一つ挙げられるのが、研究開発への取り組みである。組込みソフトウェアの技術は、完成した製品に組み込むだけではなく、次世代の自動運転やAI、デジタルツインなど新たな技術領域とも結び付いている。技術革新が速いIT業界では、現在の技術だけに依存せず、将来の市場を見据えて研究開発を続けることが競争力の維持につながる。

一方で、ヴィッツのようなシステム開発企業には、人材確保という課題がある。高度な組込みソフトウェアを開発するには、プログラミングだけでなく、電子制御、通信、リアルタイム処理、自動車などの専門知識が求められる。IT人材そのものが不足するなか、優秀なエンジニアを確保し、育成することは事業拡大の重要な条件となる。

特に自動車業界では、SDVへの移行によって必要となるソフトウェア人材が増えることが予想される。従来の自動車メーカーや部品メーカーだけでなく、IT企業や半導体企業なども自動車産業へ参入しており、人材獲得競争は激しくなっている。ヴィッツが今後成長するためには、技術力だけでなく、エンジニアが継続的に能力を発揮できる組織づくりも重要になる。

また、受託開発型のビジネスでは、案件数や開発規模だけでなく、いかに高付加価値のサービスを提供できるかが収益性を左右する。単純な人月型の開発に依存すれば、人件費の上昇が利益を圧迫する可能性がある。一方、独自の技術や開発ノウハウ、ソフトウェア部品、開発支援ツールなどを活用できれば、より効率的に収益を生み出せる可能性がある。

ヴィッツにとって、自動車のソフトウェア化はこうした意味でも大きなチャンスである。SDVでは、車両を販売した後もソフトウェアを更新し、新機能を追加するという考え方が広がっている。これまでの「車を完成させて販売する」というモデルから、「ソフトウェアを継続的に進化させる」というモデルへ変われば、自動車メーカーとソフトウェア企業の関係も変わる。ヴィッツのような技術企業が担う領域は今後さらに広がる可能性がある。

さらに、自動運転の発展も組込みソフトウェア市場を押し上げる要因となる。自動運転では、カメラやLiDAR、レーダーなどのセンサーから得られた情報をリアルタイムで処理し、周囲の状況を判断して車両を制御する必要がある。高度な認識・判断・制御を安全に実行するためには、大量のソフトウェアが必要になる。自動運転技術が実用化へ近づくほど、ソフトウェア開発企業にとっての市場機会も増えていく。

もちろん、成長市場だからといってヴィッツがその恩恵を自動的に受けられるわけではない。自動車メーカーや大手IT企業、専門のソフトウェア企業などとの競争は激しく、案件獲得には高い技術力と実績が求められる。また、自動車向けソフトウェアは品質基準が厳しく、開発期間も長くなる場合がある。技術力を維持しながら、開発効率と収益性を高めることが重要となる。

投資対象としてヴィッツを見る場合には、「自動車×ソフトウェア」というテーマ性だけではなく、売上高や営業利益の推移、受注状況、顧客構成、研究開発投資、人材採用などを確認する必要がある。特定の顧客や業界への依存度が高すぎないか、開発案件の大型化に対応できているか、新しい技術分野が実際の売上につながっているかといった点も重要なチェックポイントとなる。

ヴィッツは、派手な完成品を販売する企業ではない。しかし、自動車や産業機器の高機能化が進むほど、その内部で動くソフトウェアの重要性は増していく。特にSDV、自動運転、IoT、スマートシティといったテーマが進展すれば、組込み技術を基盤とする企業の役割は一段と大きくなる可能性がある。

自動車産業の主役が「エンジン」から「モーター」へ、そして「ハードウェア」から「ソフトウェア」へ移りつつある今、ヴィッツが培ってきた組込みソフトウェアの技術は、新しい価値を生み出すための土台となる。今後は、これまでの開発実績を次世代モビリティやIoT、AIなどの成長分野へどこまで広げられるかが焦点となるだろう。東証スタンダード市場の小型IT企業という側面だけでなく、「ソフトウェア化する自動車・産業機器を支える技術企業」という視点で見ると、ヴィッツの成長余地がより鮮明に見えてくる。

まとめ:個性豊かな4社、それぞれの成長ストーリーに注目

今回紹介した4社は、成長の方向性がそれぞれ異なる。jig.jpはライブ配信を起点に新たなデジタルサービスへ事業を広げ、ティアフォーは自動運転という次世代モビリティの社会実装に挑戦している。ヴィッツは自動車のソフトウェア化やIoTの進展を背景に、組込み技術のさらなる活用を目指す。一方、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、ドン・キホーテという強力なブランドを武器に、国内市場だけでなく海外へと成長の舞台を広げている。ライブ配信、自動運転、組込みソフト、ディスカウントストアと、一見すると接点のない4社だが、変化する市場を捉え、新しい需要を取り込もうとしている点は共通する。企業を見る際には、現在の業績だけでなく、どの市場を成長機会と捉え、どのような強みを次の成長へつなげようとしているのかを見ることも重要である。4社それぞれの成長ストーリーを比較することで、これからの企業選びにおける新たな視点が見えてくるだろう。

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