
住宅リフォーム市場が迎える「ストック時代」
日本の住宅市場では、新築住宅を中心とした従来型の住まいづくりから、既存住宅を長く活用する「ストック型」への転換が進んでいる。人口減少や少子高齢化に加え、建築資材・人件費の上昇によって新築住宅の取得コストが高まるなか、今ある戸建住宅やマンションをリフォーム・リノベーションして快適に住み続ける選択肢が注目されている。特に、老朽化した設備の更新だけでなく、断熱、省エネ、耐震、バリアフリー、間取り変更など、住宅そのものの性能や価値を高めるリフォーム需要が広がっている。こうした市場の変化を背景に、住友不動産、大和ハウス工業、積水ハウスなどの大手住宅・不動産企業から、安江工務店やニッソウなどの専門企業まで、住宅リフォームを成長領域として捉える企業が増えている。住宅を「建てて終わり」ではなく、「長く使い、価値を高める」時代が到来するなか、リフォーム市場と関連企業の動向を追うことは、これからの住宅産業を考えるうえで重要な視点となっている。
| 証券コード | 企業名 | 主な対象 | リフォーム・リノベーションの特徴 |
|---|---|---|---|
| 8830 | 住友不動産 | 戸建・マンション | 「新築そっくりさん」を展開。戸建・マンションの大規模リフォームに強い |
| 1925 | 大和ハウス工業 | 戸建・マンション | 戸建住宅・分譲マンションのリフォームに対応。設計から施工までワンストップ |
| 1928 | 積水ハウス | 戸建・マンション | 自社住宅を中心に住宅ストックのリフォーム事業を展開 |
| 1911 | 住友林業 | 戸建・マンション | 戸建住宅を中心としたリフォーム・リノベーションに強み |
| 3407 | 旭化成 | 戸建・マンション | 「旭化成リフォーム」。へーベルハウスなどの住宅改修が中心 |
| 4204 | 積水化学工業 | 戸建・マンション | セキスイハイムの住宅を中心にリフォーム・メンテナンス |
| 1439 | 安江工務店 | 戸建・マンション | 住宅リフォーム・リノベーションを主力とする専門企業 |
| 1444 | ニッソウ | 戸建・マンション | リフォーム工事を主力。住宅・賃貸物件など幅広く対応 |
| 1929 | 日特建設 | 戸建・マンション | 住宅リフォームとの関連は限定的なため、下位候補 |
| 8940 | インテリックスHD | マンション中心 | 中古マンションをリノベーションして販売。内装リノベーションも展開 |
住宅リフォーム市場の現在地――7.7兆円市場を支える「住み続ける」需要
日本の住宅市場では、新築住宅から既存住宅の活用へと重心が少しずつ移っている。その象徴ともいえるのが住宅リフォーム市場である。新設住宅着工が長期的に伸びにくい一方、すでに国内に存在する住宅ストックは膨大であり、その維持・改修・性能向上をどう進めるかが重要なテーマになっている。2026年6月に公表された矢野経済研究所の調査によると、2025年の国内住宅リフォーム市場規模は前年比2.5%増の7兆5,119億円と推計され、2026年は同1.9%増の7.7兆円まで拡大すると予測されている。市場は決して急成長産業ではないものの、一定の規模を維持しながら拡大するストック型市場として存在感を高めている。
今回の市場拡大で特徴的なのは、単純にリフォーム件数が急増しているというより、1件当たりの工事単価が上昇している点である。資材費や人件費などの工事原価が上昇していることに加え、断熱改修など比較的高額な工事を組み合わせるケースが増えている。矢野経済研究所によると、2025年の市場では「設備修繕・維持関連費用」が前年比4.7%増となった一方、「増改築に関わる費用」は22.1%減となっており、住宅を一から大きく作り替えるというより、既存住宅の設備更新や維持・性能向上に需要が向かっていることがうかがえる。
背景にあるのが、日本の住宅ストックの高齢化である。築年数が経過した戸建住宅やマンションでは、キッチン、浴室、トイレ、給湯器、窓、外壁、屋根などの更新時期が次々に訪れる。さらに、家族構成の変化によって間取りを変更したいという需要もある。子どもが独立した後に部屋数を減らしてリビングを広くする、在宅勤務に対応するためのワークスペースを設ける、高齢になった親と同居するためにバリアフリー化するなど、住宅を「現在の暮らし」に合わせて作り替える需要は根強い。
特に注目されるのが省エネ・断熱リフォームである。古い住宅では断熱性能が十分でないケースも多く、窓や玄関ドアの交換、内窓の設置、断熱材の追加などによって住宅の温熱環境を改善する余地が大きい。断熱改修は単なる快適性向上だけでなく、冷暖房費の削減やヒートショック対策などにもつながるため、今後の住宅リフォーム市場における重要なテーマとなる。政府の補助事業が窓の断熱改修などを後押ししたことも、近年の工事内容の高度化に影響したとされる。
マンションについてもリフォーム需要は大きい。マンションでは専有部分のキッチン、浴室、洗面所、トイレ、床、壁紙などを中心に改修できるほか、間取り変更や収納増設などのリノベーションも行われる。中古マンションを購入して、自分のライフスタイルに合わせて全面的に改修する動きも広がっている。新築マンション価格が高止まりする局面では、比較的価格を抑えられる中古マンションを購入し、リノベーションするという選択肢が存在感を増す可能性がある。
戸建住宅では、築20年、30年を超えた住宅の維持・再生が大きな市場になる。外壁や屋根の修繕、水回り設備の交換だけでなく、耐震性や断熱性を高める工事への関心も高まっている。特に築古住宅では、複数の修繕を一度に実施することで住宅全体の性能を引き上げる「大型リフォーム」の需要が見込まれる。住友不動産の「新築そっくりさん」に代表されるように、既存住宅を大規模に改修し、新築に近い住環境を実現するサービスは、住宅ストック活用時代の象徴的なビジネスといえる。
一方、リフォーム市場には課題もある。最大の問題の一つが人手不足である。施工職人や現場管理者などの確保が難しくなれば、受注したくても工事を実施できないという状況が生じる。矢野経済研究所も、今後の成長戦略・課題として人材確保・育成や施工体制の強化を挙げている。
さらに2026年は、資材価格やサプライチェーンの動向にも注意が必要だ。矢野経済研究所は、中東情勢の緊迫化を背景に、住宅資材や住宅設備機器の受注停止・納期遅延が発生し、工事の遅延や売上計上の遅れにつながる可能性を指摘している。一方で、さらなる価格上昇や供給停止を懸念して早期発注を行う消費者も存在し、現時点では市場全体の需要が大きく落ち込む状況にはないとしている。
このような環境では、資材調達力や施工網を持つ大手企業と、地域密着型の中小事業者との格差が広がる可能性もある。大手ハウスメーカーは過去に建築した住宅の顧客基盤を持っており、定期点検やメンテナンスを起点にリフォーム需要を取り込める。一方、地域の工務店や専門リフォーム会社は、顧客との距離の近さや柔軟な提案力を武器に市場を開拓している。今後はM&Aなどを通じた業界再編も進む可能性がある。
投資という観点から見ると、住宅リフォーム関連銘柄は大きく二つに分けて考えると分かりやすい。一つは住友不動産、大和ハウス工業、積水ハウス、住友林業、積水化学工業などの大手住宅・不動産系企業である。これらは新築住宅だけでなく、既存住宅のメンテナンスやリフォームを収益源として育てることで、住宅ストックの増加を取り込むことができる。もう一つは安江工務店やニッソウなど、リフォームそのものを主力事業とする企業である。市場全体の成長がそのまま業績に反映されるとは限らないものの、テーマ性という点では注目しやすい。
国土交通省の調査でも、2025年度の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は16兆4,104億円となり、前年度比18.7%増加した。このうち住宅に関する工事は4兆9,033億円で、こちらも18.7%増となっている。住宅だけでなく非住宅を含む統計ではあるものの、建物を長く使い続けるための改修需要が広がっていることを示すデータといえる。住宅では「改装・改修工事」が3兆8,164億円と17.4%増、「維持・修理工事」が9,215億円と35.4%増となった。
今後の住宅リフォーム市場を考えるうえでは、「新築の代替」というだけでなく、「住宅を資産として長く使う」という視点が重要になる。人口減少や世帯構造の変化が進むなか、新築住宅だけで住宅需要を取り込むことは難しくなっている。その一方で、既存住宅には改修によって価値を高められる余地が残されている。断熱、耐震、省エネ、バリアフリー、間取り変更、設備更新など、リフォームの目的は多様化している。
2026年の住宅リフォーム市場は7.7兆円規模が予測されている。資材価格、人件費、供給網などのリスクを抱えながらも、住宅ストックの老朽化や住生活の変化という構造的な需要は簡単には消えない。これからの住宅市場では「どれだけ新しい家を建てるか」だけでなく、「今ある家をどれだけ長く、快適に、安全に使えるようにするか」が重要になる。戸建住宅とマンションの双方でリフォーム・リノベーション需要が積み上がるなか、住宅関連企業にとっても、ストック市場をどう取り込むかが中長期的な成長を左右するテーマになりそうだ。
住友不動産とリフォーム――「新築そっくりさん」が切り拓いた住宅再生市場の現在地
住宅価格の上昇や建築コストの高騰、人口減少などを背景に、日本の住宅市場では「新しい家を建てる」だけでなく、「今ある住宅を長く使う」という考え方が存在感を高めている。そのなかで、住宅リフォームを代表するブランドの一つが、住友不動産の「新築そっくりさん」である。戸建住宅を一棟丸ごと再生するリフォームを中心に、マンションのスケルトンリフォーム、高断熱リフォームなどへ事業領域を広げており、住宅ストック時代を象徴するビジネスに成長している。
「新築そっくりさん」が誕生した背景には、1995年の阪神・淡路大震災がある。地震によって住宅の耐震性に対する関心が高まる一方、当時のリフォーム業界では、実際に工事を始めてみなければ費用が分かりにくいという問題があった。住友不動産は、建て替えよりも低コストで住宅を再生しながら、耐震補強も実施できる新しいリフォームの形を目指し、1996年に「新築そっくりさん」の販売を開始した。完全定価制を打ち出したことも特徴であり、リフォームに対する「工事を始めたら費用が膨らむのではないか」という消費者の不安を抑えることを狙ったのである
その後、事業は全国へ拡大した。住友不動産によれば、2025年6月末時点で「新築そっくりさん」の累計受注棟数は18万棟を超えている。戸建て一棟まるごとリフォームに加え、マンションスケルトンリフォーム、部分リフォーム、高断熱リフォームなど、住宅所有者のさまざまなニーズに対応している。長年にわたって蓄積した間取り変更、耐震補強、構造別の施工ノウハウが、提案型リフォームの基盤になっている。
業績面でもリフォーム事業は重要な存在だ。2025年3月期の完成工事事業では、「新築そっくりさん」の受注棟数が7,044棟となり、前期の6,947棟から増加した。受注高も1,108億円となり、前期の1,054億円から伸びている。販売単価の上昇に加えて、高断熱リフォームなど環境性能を重視した商品の受注が好調だったこと、マンションスケルトンリフォームが着実に成長したことなどが寄与した。完成工事事業全体では増収増益となり、最高益を更新している。
特に注目したいのがマンションリフォームである。住友不動産は1998年からマンションのスケルトンリノベーションを展開している。スケルトンリフォームとは、建物の構造躯体を残しながら、室内を大幅に解体し、間取り、設備、内装、下地、配線、配管などを刷新する方法である。単に壁紙や設備を交換するだけではなく、既存住宅の内部を新しい住まいとして再構築できるため、中古マンションを購入して自分好みの住空間をつくりたい消費者との相性が良い。住友不動産はマンションリフォームについて、2013~2023年度の売上ランキングで11年連続1位だったとしている。
このビジネスモデルが重要なのは、日本の住宅市場そのものが「新築中心」から「ストック活用」へと変化しているためだ。新築住宅の場合、土地取得費や建築費、設備費など多くのコストが発生する。一方、既存住宅を活用するリフォームでは、構造躯体などを残しながら住宅性能や居住性を高めることができる。住友不動産は「新築そっくりさん」について、建て替えと比較して約50~70%の費用での再生を特徴の一つとして掲げている。もちろん実際の費用は建物の状態や工事内容によって変わるが、建て替えと全面リフォームを比較検討できる選択肢を提示している点が特徴である。
また、近年のリフォーム需要では「見た目を新しくする」だけではなく、住宅性能を高める工事が重要になっている。断熱性能の向上、窓の改修、耐震補強、省エネ設備の導入などである。住友不動産も高断熱リフォームを商品として展開しており、2025年3月期には環境性能を訴求した商品の受注が好調だった。住宅の老朽化対策と省エネ・快適性向上を同時に実現するリフォームは、今後の住宅ストック市場における大きなテーマになりそうだ。
さらに2026年6月には、住友不動産が「新築そっくりさん」において、既存戸建住宅向けの住宅太陽光発電サービス「すみふ×エネカリ FLEXIBLE」の提供を開始した。超軽量・薄型の太陽光パネルを活用し、既存戸建住宅への太陽光発電導入を後押しする商品である。これはリフォームを単なる修繕工事にとどめず、省エネやエネルギー、環境性能まで含めた住宅価値向上のサービスへ広げようとする動きと見ることができる。
事業体制にも変化がある。2025年4月には、住友不動産の注文住宅事業と「新築そっくりさん」事業を分社化して「住友不動産ハウジング」が設立された。これによって新築とリフォームを別々に考えるのではなく、新築・中古を問わず、住宅に関するさまざまな課題に対応する体制が整えられている。不動産仲介やインテリアコーディネートなど、住友不動産グループが持つ機能との連携も強みになる。
もっとも、リフォーム市場が今後も一直線に成長するとは限らない。資材価格、人件費、職人不足、物流費などの上昇は、リフォーム会社にとってコスト負担となる。また、2025年度には建築基準法改正の影響によって大規模リフォームなどの受注が減少し、住友不動産も2026年3月期上期の「新築そっくりさん」受注棟数が前年同期比で減少したと公表している。ただし、高断熱リフォームなどの受注は好調で、集客イベントの来場者数も前年を上回るなど、回復に向けた動きも示されている。
住宅リフォームというと、キッチンや浴室を新しくしたり、壁紙を張り替えたりするイメージが強い。しかし住友不動産の「新築そっくりさん」が示しているのは、リフォームが住宅の「再生産業」へと進化している姿である。耐震、断熱、省エネ、間取り変更、設備更新、太陽光発電などを組み合わせれば、古い住宅でも現在の暮らしに合わせて価値を再構築できる。新築住宅の価格上昇が続くなかで、中古住宅を取得して大規模にリノベーションするという選択肢もさらに注目されるだろう。
住友不動産にとってリフォームは、新築住宅を補完するだけの事業ではない。長年にわたって蓄積してきた施工実績や住宅再生のノウハウを活用し、既存住宅のストックそのものを収益機会に変える重要な事業領域である。累計18万棟を超える「新築そっくりさん」の実績に加え、マンションスケルトンリフォーム、高断熱化、太陽光発電などへ領域を広げることで、「建てる会社」から「住まいを再生し、長く使う会社」へと役割を広げている。人口減少時代の住宅市場では、新築着工戸数だけでは測れないストック需要が重要になる。住友不動産のリフォーム事業は、その変化を先取りしてきた代表的なビジネスモデルの一つといえるだろう。
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大和ハウス工業とリフォーム――新築から「住宅ストック再生」へ広がる成長領域
日本の住宅市場では、新築住宅を供給するだけでなく、すでに存在する住宅をいかに長く、快適に使い続けるかが重要なテーマになっている。人口減少や世帯構造の変化に加え、建築資材や人件費の上昇によって新築住宅の取得コストが高まるなか、中古住宅をリフォーム・リノベーションして住み続ける選択肢への関心は高まりつつある。こうした住宅ストック市場の拡大を取り込む企業として注目されるのが大和ハウス工業である。
大和ハウス工業といえば、戸建住宅や賃貸住宅、分譲マンション、商業施設、物流施設など幅広い事業を展開する総合生活産業のイメージが強い。しかし、同社グループにとってリフォームも重要な事業領域の一つである。大和ハウスリフォームでは、戸建住宅や分譲マンションの個人顧客向けリフォームを中心に、建物診断から設計、施工までをワンストップで提供している。さらに法人向けには、介護施設、オフィス、倉庫など事業用建物のリフォームにも対応している
大和ハウスのリフォーム事業を考えるうえで大きな強みとなるのが、長年にわたって供給してきた住宅のストックである。同社は戸建住宅事業を1960年代から展開しており、2026年3月末時点で国内の戸建住宅の累計売上戸数は約66.8万戸に達する。これは単純な販売実績にとどまらず、将来的なメンテナンスや設備更新、リフォーム需要につながる顧客基盤でもある。
住宅は建てて終わりではない。築年数が経過すれば、外壁や屋根、水回り、給湯設備、窓、床、壁などの修繕・交換が必要になる。さらに、子どもの独立、在宅勤務、高齢化、二世帯同居など、住む人のライフスタイルが変化すれば、間取りそのものを変更したいという需要も生まれる。住宅を大量に供給してきたハウスメーカーにとって、こうした既存顧客の住まいを長期的にサポートすることは、住宅販売後の収益機会を広げる意味でも重要なのである。
特に大和ハウスが強みを発揮するのが、戸建住宅だけでなくマンションリフォームにも対応している点だ。同社グループは一戸建てから大規模マンションまで幅広い住宅で培ったノウハウや設備・機器に関する知識を活用し、マンションの間取り変更やキッチン、浴室、収納などの改修を提案している。中古マンションを購入した後、自分のライフスタイルに合わせて室内を大きく作り替えるリノベーション需要にも対応できる。
リフォーム市場では、単なる老朽化対策から住宅性能の向上へと需要が広がっていることも見逃せない。断熱性能を高めたり、省エネ設備を導入したり、バリアフリー化を進めたりすることで、古い住宅を現在の生活水準に合わせて再生することができる。大和ハウスは新築住宅でもZEHなど省エネ性能を意識した商品を展開しており、こうした住宅性能に関する技術・ノウハウをリフォーム分野にも生かすことができる。
さらに、大和ハウスは住宅単体だけでなく、街そのものの再生にも取り組んでいる。同社はストック型社会の到来を見据え、過去に開発した住宅団地などを対象として、地域活性化や空き家問題に対応する「リブネスタウンプロジェクト」を進めている。これは個々の住宅を修繕するだけではなく、住宅地全体の価値を維持・向上させる考え方であり、今後の日本の住宅市場を考えるうえで重要な取り組みといえる。
2026年3月期の大和ハウス工業は、グループ売上高が5兆5,768億円に達した。事業別では戸建住宅、賃貸住宅、マンション、商業施設、事業施設、環境エネルギーなど多様な事業を抱えている。リフォーム単体がグループ全体の中核というわけではないが、こうした幅広い事業との相乗効果を生み出せる点は、大和ハウスならではの特徴である。
例えば、戸建住宅を購入した顧客に対して、建築後のメンテナンスやリフォームを提案するだけでなく、中古住宅の売買や住み替え、リノベーションまで含めて対応することができる。同社の「Livness(リブネス)」は中古住宅・中古マンションの売買などを扱っており、住宅を「建てる」「買う」「売る」「改修する」という一連の流れをグループ内でカバーできる体制が整っている。公式サイトでも中古住宅・中古マンション、リフォーム、マンション建替えなどを住宅関連サービスとして展開している。
また、リフォームの対象は持ち家だけではない。大和ハウスグループでは賃貸住宅のリフォームも重要になっている。大和ハウス賃貸リフォームでは、賃貸住宅オーナーに対して資産価値向上につながるリフォームを提案している。賃貸住宅では、築年数が経過すると競争力が低下する可能性があるため、内装や設備の更新、リノベーションによって入居者に選ばれる物件へと再生することが重要になる。2026年4月には木造集合住宅事業も発足しており、住宅ストックを長期的に活用する事業基盤をさらに広げている。
一方で、住宅リフォーム事業には課題もある。資材価格や人件費の上昇は工事費に直結し、職人不足は施工能力そのものを制約する可能性がある。また、住宅ごとに建物の状態や顧客の要望が異なるため、新築住宅のように標準化しにくい。現地調査から設計、施工までの品質管理が重要であり、大手企業にはブランド力だけでなく、全国規模の施工体制やアフターサービスが求められる。
その点で大和ハウスは、長年の住宅供給実績とグループ企業網を持っていることが強みとなる。2026年3月31日時点でグループ会社は716社、連結従業員数は5万5,712人に達している。巨大な企業グループだからこそ、住宅、マンション、不動産、管理、リフォームなど複数の事業を連携させることが可能になる。
現在の住宅市場では、「新築か中古か」という二択ではなく、「既存住宅をどこまで高性能・高品質な住宅へ再生できるか」という視点が重要になっている。大和ハウスにとってリフォームは、新築住宅の販売後に発生する付随的な工事ではなく、住宅ストックの増加を収益機会へ転換するための重要な事業である。
大和ハウス工業は、2026年に創業100周年となる2055年を見据えた長期的な価値創造を掲げている。2026年9月には「大和ハウスグループ統合報告書2026」も発行され、住宅・建設・不動産という従来の枠を超え、「人・街・暮らし」の価値創造を目指す姿勢を示している。
日本の住宅ストックが増え、新築住宅の供給だけでは住宅市場の成長を捉えにくくなるなか、リフォームやリノベーションの重要性はさらに高まるだろう。大和ハウス工業は、戸建住宅やマンションのリフォームに加え、中古住宅流通、賃貸住宅のリノベーション、街の再生まで事業領域を広げている。住宅を「建てる」企業から、住宅を「長く使い、価値を高める」企業へ。大和ハウス工業のリフォーム事業は、日本の住宅市場がストック型へ移行する中で、その変化を取り込む重要な成長領域の一つになっている。
積水ハウスとリフォーム――住宅ストックを「資産価値」に変えるストック型ビジネス
日本の住宅市場では、新築住宅を供給するだけでなく、既存住宅を長く使い続ける「ストック型」への転換が進んでいる。住宅価格や建築コストの上昇、人口減少、少子高齢化などを背景に、今ある住宅を改修し、性能や快適性を高めながら長期間利用することの重要性が増している。そうしたなか、戸建住宅を中心に膨大な住宅ストックを持つ積水ハウスにとって、リフォームは新築住宅に続く重要な収益機会となっている。
積水ハウスは、戸建住宅や賃貸住宅を建築する「請負型ビジネス」、リフォームや賃貸住宅管理などの「ストック型ビジネス」、マンションや都市開発などの「開発型ビジネス」を組み合わせた事業構造を構築している。公式サイトでも、ストック型ビジネスの一つとして「リフォーム事業」を明確に位置付けており、積水ハウスが建築した住宅だけでなく、積水ハウス以外の住宅についてもリフォーム・リノベーションを手掛けている。
積水ハウスのリフォーム事業における最大の強みは、長年にわたって積み上げてきた住宅ストックと顧客基盤である。新築住宅を販売すると、その住宅は将来的に外壁や屋根、水回り、内装、給湯設備などの修繕・更新が必要になる。さらに、家族構成やライフスタイルが変化すれば、間取り変更や収納の増設、バリアフリー化、在宅勤務スペースの設置など、新たなリフォーム需要も生まれる。つまり、住宅を建てた時点で顧客との関係が終わるのではなく、その後何十年にもわたってリフォーム需要が発生する可能性がある。
この「住宅を建てることで将来のリフォーム需要を生み出す」という循環は、ハウスメーカーならではのビジネスモデルといえる。積水ハウスは、こうした顧客との長期的な関係を重視し、アフターサービスからメンテナンス、設備交換、大型リフォームまでサービスを広げている。2026年3月に発表した第7次中期経営計画でも、ストック型ビジネスについて、アフターサービスとリフォームを成長領域として位置付け、大型リフォームの強化を掲げている。
積水ハウスのリフォーム事業が興味深いのは、単純な修繕ではなく「住宅の価値を高めるリフォーム」を重視している点である。例えば断熱性能を高める窓改修や省エネ設備の導入、住宅の外観・内装の刷新、間取り変更などを組み合わせることで、既存住宅を現代の生活スタイルに適した住まいへと再生することができる。同社は「提案型・環境型リフォーム」によってストック価値を向上させる方針を掲げており、単なる老朽化対策から一歩進んだリフォームを目指している。
住宅の断熱性能は、今後のリフォーム市場で特に重要なテーマになる。古い住宅では断熱性能が十分でないケースもあり、冬の寒さや夏の暑さ、冷暖房費などが住環境上の課題となる。窓や玄関の改修、断熱材の追加、省エネ設備の導入などによって住宅性能を高めれば、快適性と省エネを同時に実現できる。積水ハウスが環境型リフォームを重視しているのも、住宅ストックの長寿命化と脱炭素を両立させる狙いがあるためだ。
また、積水ハウスのリフォームは戸建住宅だけが対象ではない。同社は積水ハウス以外の一般木造住宅や、RC造・鉄骨造などのマンション、さらには店舗などについてもリフォーム・リノベーションを手掛けている。つまり、自社が建築した住宅のアフターマーケットだけに依存するのではなく、外部の住宅ストックも取り込む事業モデルを構築している。
マンション市場では、築年数の経過した中古マンションを購入し、内装や設備を大幅に刷新するリノベーション需要が注目されている。新築マンション価格が高い状況では、中古住宅を購入して自分のライフスタイルに合わせて改修するという選択肢が広がる可能性がある。キッチンや浴室などの設備交換に加え、間取り変更、収納の増設、床・壁・天井の刷新などを組み合わせれば、築年数の古いマンションでも現代的な住空間へ変えることができる。積水ハウスは戸建住宅だけでなくマンションにも対応することで、住宅ストック市場全体を取り込もうとしている。
さらに注目したいのが、賃貸住宅のリフォーム・リノベーションである。積水ハウスは賃貸住宅の建築だけでなく、その管理やリフォームも行っている。賃貸住宅は築年数が経過すると、設備や内装の古さが入居者から敬遠される可能性がある。そのため、オーナーにとってリフォームは単なる修繕ではなく、家賃水準や入居率、資産価値を維持するための投資という意味を持つ。積水ハウスは、建築から管理、リフォームまでを一貫してサポートできる点を強みにしている。
リフォーム事業の成長を支えるもう一つの要素が、アフターサービスとの連携である。積水ハウスはアフターサービスを専門組織に分社化し、長期点検体制を強化している。住宅の状態を継続的に把握することで、設備交換や修繕、性能向上リフォームなどの需要を適切なタイミングで提案できる。2025年の同社資料では、アフターサービスを担う積水ハウスサポートプラスが12事業部、30カスタマーセンター、1,000人超のアフターサービス担当者を有すると説明されている。
足元の受注動向にも、リフォーム事業の強さが表れている。積水ハウスが公表した2026年7月度の受注速報では、2026年2月から7月までのリフォーム受注額は前年同期比111%となった。7月単月でも前年同月比108%となっており、戸建住宅全体の累計が100%だったことと比べても、リフォームが相対的に堅調だったことが分かる。なお、これらは速報値であり、確定値とは異なる可能性がある。
2026年に入ってからの積水ハウスの動きを見ると、リフォームを単独の事業として成長させるだけでなく、住宅ストック全体の価値を高める方向へ戦略を広げていることが分かる。2026年7月には、積水ハウス建設が外構・エクステリア施工会社202社と連携する「エクステリアパートナーシップ制度」を8月から全国規模で開始すると発表した。外構や緑化に対する需要、リフォーム需要が多様化するなか、安定的な施工体制を構築し、良質な住宅ストックの形成を目指す取り組みである。
もちろん、リフォーム市場には課題もある。資材価格や人件費の上昇、施工職人不足などは業界共通の問題である。リフォームは住宅ごとに状態が異なり、新築住宅ほど工事内容を標準化できないため、現場管理や施工品質も重要になる。大規模なリフォームになれば、住みながら工事を行うことによる負担や、既存建物の構造上の制約も発生する。こうした課題に対して、全国規模の施工ネットワークやアフターサービス体制を持つ積水ハウスは、一定の競争力を発揮できると考えられる。
積水ハウスにとってリフォームは、新築住宅を販売した後に発生する「おまけ」の事業ではない。住宅ストックが積み上がるほど、メンテナンスや設備更新、リノベーションの潜在需要も増えていく。しかも、単純な修繕だけでなく、断熱、省エネ、耐震、バリアフリー、間取り変更などを組み合わせれば、1件当たりの工事規模を大きくする余地もある。実際、同社資料では戸建リフォームの受注において500万円以上の提案型リフォームが45%を占め、そのうち34%が環境型リフォームとなっている。
今後、日本の住宅市場では「どれだけ新築住宅を建てるか」だけでなく、「既存住宅の価値をどれだけ維持・向上できるか」が重要になる。積水ハウスは、これまで建築してきた大量の戸建住宅ストックを顧客基盤として持ち、さらに自社以外の戸建住宅やマンションにも対象を広げている。そこにアフターサービス、賃貸住宅管理、中古住宅、不動産事業などを組み合わせることで、住宅のライフサイクル全体から収益を得る構造を目指している。
新築住宅の供給が伸びにくい時代だからこそ、既存住宅を「負債」ではなく「価値あるストック」として再生することが重要になる。積水ハウスのリフォーム事業は、その変化を事業機会として捉える代表例といえる。戸建住宅の大型リフォームからマンションリノベーション、断熱・省エネ改修、賃貸住宅の資産価値向上まで、住宅を長く使い続けるための需要は幅広い。住宅を「建てる」ことから「育てる」「再生する」ことへ。積水ハウスにとってリフォームは、住宅ストック社会における持続的な成長を支える重要な事業領域になっている。
まとめ――「建てる」から「再生する」へ、住宅リフォームの可能性
住宅リフォーム市場は、単なる老朽化対策の市場から、既存住宅の性能と資産価値を高める市場へと変化しつつある。戸建住宅では外壁・屋根や水回りの更新に加え、耐震・断熱改修などへの需要が広がり、マンションでは中古物件を購入して間取りや設備を一新するリノベーションが存在感を高めている。住友不動産の「新築そっくりさん」、大和ハウス工業や積水ハウスの住宅ストックを活用したリフォーム事業は、こうした市場変化を象徴する存在である。一方で、資材価格や人件費の上昇、施工職人不足など課題も少なくない。それでも、国内に大量の住宅ストックが存在する以上、修繕・改修・性能向上の需要が一気に消える可能性は低い。今後は、新築住宅の販売戸数だけでなく、既存住宅をいかに再生し、長期的な価値を生み出すかが住宅企業の競争力を左右するだろう。リフォームは「新築の代替」ではなく、住宅市場そのものを支える重要な産業へと成長している。




