
暮らしを変える通販と家具選び
家具やインテリア、生活雑貨をインターネットで購入することが当たり前になった。かつては家具店へ足を運び、実物を見て購入することが一般的だったが、現在ではスマートフォンから豊富な商品を比較し、自宅にいながら大型家具まで注文できる。ECモールの普及に加え、専門通販やメーカー直販サイトも増え、消費者にとって家具選びの選択肢は大きく広がっている。
一方で、選択肢が増えたからこそ「どの店で買えばよいのか」「どの商品を組み合わせれば部屋がおしゃれになるのか」という悩みも生まれている。価格だけでなく、デザイン、サイズ、素材、収納力、配送や組み立てサービスなど、確認すべきポイントは多い。さらに最近では、自然素材や落ち着いた色合いを取り入れたインテリアなど、居心地の良さを重視するスタイルも注目されている。
そこで今回は、家具・インテリアから生活用品まで幅広く扱う通販市場に注目し、リコメン堂を運営するジェネレーションパス、ベルーナ、千趣会などの上場企業を取り上げる。各社の通販事業や商品展開を比較することで、身近な家具選びの裏側にあるECビジネスの特徴や、企業ごとの強みが見えてくる。模様替えを楽しむ消費者にとっても、通販企業の動きを知ることは、より賢く家具やインテリアを選ぶヒントになりそうだ。
| 企業名 | 証券コード | 通販サイト・ブランド | 主な商品 |
|---|---|---|---|
| ジェネレーションパス | 3195 | リコメン堂 | 家具・インテリア・家電・生活雑貨・ファッションなど |
| ニトリホールディングス | 9843 | ニトリネット | 家具・インテリア・寝具・収納・生活雑貨・家電など |
| ベルーナ | 9997 | ベルーナ | 衣料品・家具・インテリア・生活雑貨・食品など |
| 千趣会 | 8165 | ベルメゾンネット | 家具・インテリア・収納・生活雑貨・衣料品など |
| スクロール | 8005 | スクロール各種通販 | 衣料品・生活雑貨・インテリア・食品など |
おしゃれルームの第一歩は「家具選び」から!失敗しない模様替えとコーディネートのコツ
部屋の雰囲気を変えたいと思ったとき、真っ先に考えたいのが家具選びである。ソファやベッド、テーブル、収納家具などは部屋の中でも面積が大きく、ひとつ変えるだけでも空間全体の印象が大きく変わる。一方で、「おしゃれだと思って買った家具を置いてみたら、部屋が狭く見える」「家具同士の色やテイストが合わない」といった失敗も少なくない。模様替えを成功させるためには、家具単体のデザインだけを見るのではなく、部屋全体を一つの空間として考えることが重要だ。
2026年のインテリアでは、自然素材やアースカラー、木の温かみを生かした家具などが注目されている。海外のインテリアトレンドでも、オーガニックな素材や深みのある木材、使い込んだようなヴィンテージ感のある家具が存在感を増している。さらに、生活感を完全に消すのではなく、住む人の個性や暮らしが感じられる空間も支持されている。
こうした流れを踏まえると、家具店選びでまず注目したいのは「単品でおしゃれな家具があるか」だけではない。ソファ、テーブル、収納、照明、ラグ、カーテンなどを組み合わせて提案している店かどうかが重要になる。家具を一つずつバラバラに購入すると、色や素材、サイズ感が統一されにくいからだ。
例えば、初めて模様替えをするなら、ニトリ、IKEA、無印良品などのように家具から生活雑貨まで一つの世界観で揃えやすい店は便利である。北欧と日本の要素を融合した「ジャパンディ」のようなスタイルも人気があり、木目を生かした家具、ナチュラルカラー、余白を組み合わせることで落ち着いた空間を作りやすい。IKEAもジャパンディを「天然素材」「ミニマルな配色」「余白」「曲線」などを特徴とするスタイルとして紹介している。
一方、リコメン堂のような総合通販サイトを利用する場合は、選択肢の多さを生かしたい。家具だけでなく、家電、寝具、生活雑貨などをまとめて探せるため、価格を比較しながら必要なものを揃えやすい。ただし、商品数が多いほど「安いから」「デザインが気に入ったから」という理由だけで個別に選び、部屋全体の統一感を失うリスクもある。通販では商品写真だけで判断せず、サイズ、素材、色、組み立て方法、搬入経路、レビューなどを確認することが欠かせない。
模様替えで最初に決めたいのは「部屋のテーマ」である。「北欧風」「ナチュラル」「ホテルライク」「ジャパンディ」「ヴィンテージ」など、大まかな方向性を一つ決めるだけでも家具選びは格段に楽になる。2026年のトレンドを取り入れるなら、木やファブリックなどの自然素材をベースに、ブラウン、ベージュ、グリーンなどの落ち着いた色を組み合わせる方法が取り入れやすい。2026年のインテリアでは、自然やオーガニックな素材、アースカラーが注目されている。
色については「ベースカラー」「メインカラー」「アクセントカラー」の3段階で考えると失敗しにくい。床や壁などのベースカラーを基準に、ソファやベッドなど大きな家具をメインカラーとして選び、クッションやアート、花瓶など小物でアクセントカラーを加える方法である。アクセントカラーは家具そのものではなく、比較的安価な小物で取り入れると、季節や気分に合わせて変更しやすい。
実際、2026年の夏のインテリア提案でも、グリーンやバターイエロー、テラコッタ、ブラウン、ブルーなどを小物から取り入れる方法が紹介されている。家具を丸ごと買い替えなくても、クッションや植物、食器、ディフューザーなどを変えるだけで季節感を演出できる。
次に重要なのが「家具の高さ」である。背の高い家具を部屋の入り口付近や視線の正面に集中させると、圧迫感が生まれやすい。反対に、ローソファや低めの収納などを組み合わせれば、視線が抜けて部屋を広く感じやすくなる。特にワンルームやコンパクトな住宅では、家具を詰め込みすぎないことが重要だ。
収納家具についても、収納量だけを基準にするのではなく、扉の有無や色まで考えたい。すべてをオープン収納にすると生活感が出やすい一方、すべてを隠す収納にすると使い勝手が悪くなる。見せる収納と隠す収納を適度に組み合わせると、実用性とデザイン性を両立できる。
そして、おしゃれな部屋を作るうえで意外に重要なのが「照明」である。家具を変えても、天井照明一つだけでは部屋全体が平坦に見えることがある。フロアライトやテーブルライト、間接照明などを追加し、複数の高さから光を当てるだけで、空間に奥行きが生まれる。2026年のインテリアでは、家具だけでなく光を柔らかく操ることも注目されている。
また、最新トレンドを取り入れる場合も、部屋全体を流行の商品で埋め尽くす必要はない。むしろ現在は、既存の家具を残しながら、小さな家具や雑貨で新しい要素を加える方法が実践しやすい。2026年のミラノサローネを踏まえたインテリア提案でも、大型家具を一気に変えるのではなく、小物や素材の組み合わせでトレンド感を加える考え方が紹介されている。
家具店を選ぶときには、価格だけでなく「コーディネートのしやすさ」「商品のサイズ展開」「同じシリーズの品ぞろえ」「オンラインでの在庫確認」「配送・組み立てサービス」などもチェックしたい。特に大型家具は、購入後に「部屋に入らない」という事態を避けるため、玄関、廊下、階段、エレベーターなどの寸法まで確認することが重要である。
おしゃれルームの第一歩は、実は高価な家具を買うことではない。部屋の寸法を測り、残したい家具を決め、テーマカラーを一つ設定し、そこから必要な家具を逆算することである。「好きな家具を買ってから考える」のではなく、「どんな部屋にしたいかを決めてから家具を選ぶ」。この順番を守るだけで、模様替えの失敗は大きく減る。
2026年のインテリアは、単純に無機質で生活感のない空間を目指すだけではなく、自然素材や木の温かみ、個性的な家具、小物などを組み合わせて、自分らしい居心地のよい空間を作る方向に進んでいる。家具選びも「流行っているから買う」ではなく、「今ある家具と合わせられるか」「数年後も使いたいと思えるか」という視点が大切だ。
模様替えを始めるなら、まずはソファやベッドなど大物家具を一つ決める。そして、その色や素材を基準にテーブル、収納、ラグ、照明を合わせ、最後に植物やクッション、アートなどで個性を加える。すべてを一度に変える必要はない。小さな変化を積み重ねながら、自分が心地よいと思える空間を作っていくことこそ、長く楽しめる「おしゃれルーム」の第一歩なのである。
リコメン堂を軸にECの可能性を広げるジェネレーションパス
家具やインテリア、家電、生活雑貨などをネットで購入することが当たり前になった現在、EC市場では「何を売るか」だけでなく、「どの商品を、どの価格で、どの売り方なら消費者に選んでもらえるか」を分析する力が重要になっている。こうしたEC時代の変化を事業機会として取り込んでいる企業の一つが、ジェネレーションパスである。同社は証券コード3195で東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、2026年5月25日にグロース市場からスタンダード市場へ市場区分を変更した。主力となるのが、通販サイト「リコメン堂」を中心とするECマーケティング事業である。
リコメン堂という名前から家具・インテリア通販をイメージする人も多いが、実際の取扱分野はかなり幅広い。家具や家庭用品、アパレル、スポーツ用品、家電、食品、酒類などを取り扱い、同社によれば70万点を超える商品を展開している。楽天市場やYahoo!ショッピングなどにも店舗を展開しており、「必要なものをネットで幅広く探せる」という総合通販としての性格が強い。
ジェネレーションパスの面白さは、単純に商品を仕入れて販売する小売企業とは少し違う点にある。同社はECサイトの運営を通じて蓄積したマーケティングデータを分析し、どのような商品が売れやすいのか、どのような販売方法が適しているのかを判断する仕組みを構築している。公式サイトでは、複数の推定エンジンの結果をデータサイエンティストチームが分析し、調達商品の選定や販売方法の最適化につなげていると説明している。
EC市場では、店舗を作れば商品が売れるわけではない。検索結果で上位に表示されるか、商品画像が消費者の目を引くか、価格が競合と比べて魅力的か、レビューが充実しているか、配送条件が分かりやすいかなど、多くの要素が購入判断に影響する。しかも楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなど、それぞれ異なる特徴を持つ販売チャネルが存在する。同社はこうしたECモールごとのユーザー特性を活用し、販売チャネルを広げながら顧客への接点を増やしている。
2025年10月末時点では、「リコメン堂」を中心にインテリア、ファッション、美容コスメ、スポーツなどのジャンル別店舗を複数のモールに展開し、連結合計で87店舗を運営していた。さらに、取扱商品数は249万点に達している。同社は在庫を大量に抱えないドロップシッピング方式を主に採用しており、商品数を増やしながら在庫リスクを抑える仕組みも特徴となっている。
ここから見えてくるのが、ジェネレーションパスの「品ぞろえ」と「データ活用」を組み合わせたビジネスモデルである。実店舗では売り場面積に限界があるが、ECでは商品ページを増やすことで膨大な品ぞろえを実現できる。一方、商品数が増えるほど、どの商品をどう見せるかというマーケティングの重要性は高まる。そこでデータ分析を活用し、需要のありそうな商品を選び、販売方法を最適化するという循環を作ることが、同社の競争力につながっている。
さらに注目したいのが、EC販売だけにとどまらない事業展開である。現在の同社はECマーケティング事業に加え、DX・AI導入支援、WEB開発、ものづくりなどにも事業領域を広げている。公式サイトでは、EC運営で培ったノウハウを企業向けに提供し、新規販売チャネルの拡大やマーケティング情報分析、ECサイトのDX・AI活用などを支援するとしている。
つまり、ジェネレーションパスは「自分たちが商品を売る会社」から、「ECで商品を売るための仕組みやノウハウを提供する会社」へと事業領域を広げようとしているともいえる。EC市場が成熟するほど、単にネットショップを開設するだけでは競争が難しくなるため、こうした支援サービスには一定の需要が見込まれる。
2026年に入ってからも、新しい販売チャネルや商品開発への動きが見られる。2026年3月には「au PAY マーケット BEST SHOP AWARD 2025」のインテリア・寝具カテゴリ賞を受賞。2025年にはYahoo!ショッピングに「リコメン堂ペット館」を出店したほか、TikTok Shopにも公式出店している。EC市場では従来型の検索・モール販売だけでなく、SNSや動画をきっかけに商品を購入する「ソーシャルコマース」の存在感も高まっており、新たな販売チャネルを開拓する動きは今後の成長を考えるうえで注目される。
もう一つのポイントが「ものづくり」である。2026年7月には、テーブルに掛けて床掃除をしやすく、天板下にも収納できるダイニングチェア「REX」や、撥水・ペット対応のコーナーソファをリコメン堂で発売した。また、エアコン工事が不要なスポットクーラーなどの商品も展開している。販売データを持つ企業が、自ら商品企画まで踏み込めば、「売れる商品を見つける」だけでなく「売れそうな商品を作る」という方向へビジネスを発展させることができる。
家具・インテリア市場との関係でも、この戦略には可能性がある。消費者がネット通販で家具を購入する際には、デザインだけでなく、価格、サイズ、素材、組み立てやすさ、配送条件、レビューなどを総合的に比較する。特に模様替えや新生活需要では、ベッド、ソファ、収納、テーブル、照明などをまとめて探すケースも多い。リコメン堂のように幅広いカテゴリーを一つのECプラットフォームで扱えることは、消費者にとって利便性が高い。
一方で、EC事業には競争の激しさという課題もある。楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなど巨大なECプラットフォームが存在し、家具・インテリアではニトリ、家電では大手家電量販店など強力な競合がいる。価格競争に巻き込まれれば利益率が低下する可能性もある。そのため、今後は単純な品ぞろえの拡大だけでなく、自社企画商品の強化、ブランド化、データ分析、独自ECなどによって他社との差別化を図れるかが重要になる。
実際、同社は2024年4月から、既存のECモールでは実現しにくい独自コンセプトのECサイトを複数構築し、それらを結び付ける「Unique Stores Platform事業」の構築を開始している。特定の商品ジャンルやサイズ、色、シチュエーションなどに焦点を当てたECサイトを展開することで、総合通販とは異なる顧客体験を目指す取り組みである。
2025年10月期の連結売上高は165億5,229万円で、従業員数は120人だった。比較的小規模な組織で大量の商品を扱うには、システム化や業務効率化が不可欠である。同社がECマーケティングに加えて、DX・AIやシステム開発にも取り組んでいる背景には、こうしたEC運営の効率を高める狙いもあると考えられる。
ジェネレーションパスを見る際には、「リコメン堂という通販サイトが伸びるか」だけを見るのではなく、ECデータを活用して商品選定、販売、企画、システム開発までどこまで一体化できるかを見ることが重要である。2026年5月にはスタンダード市場へ市場区分を変更し、企業として次の成長段階を目指す局面に入っている。
ネット通販は、スマートフォンやSNS、AIなどの普及によって販売方法そのものが変化し続けている。商品を並べて待つだけのECから、データを分析して商品を選び、企画し、最適なチャネルで消費者に届けるECへ。ジェネレーションパスは、その変化の中で「ECマーケティング」を軸に事業領域を広げている企業である。リコメン堂という身近な通販サイトの裏側に、データ、システム、商品企画を組み合わせたビジネスモデルがあることは、同社を理解するうえで押さえておきたいポイントだ。
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ベルーナ――衣料品通販から「衣食住」を支える総合通販企業へ
ネット通販が生活に定着した現在、通販企業の競争力は「どれだけ商品を売れるか」だけでは決まらない。顧客のニーズを把握し、衣料品から食品、インテリア、化粧品、健康食品まで、生活のさまざまな場面で接点を持てるかどうかが重要になっている。そんな総合通販企業の代表格が、東証プライム市場に上場するベルーナである。証券コードは9997。カタログ通販を起点に成長してきた企業だが、現在ではネット通販、店舗、ホテル、金融などにも事業領域を広げている。
ベルーナと聞くと、まず婦人服を中心とした衣料品通販を思い浮かべる人が多いだろう。実際、同社の通販事業は長年にわたりベルーナブランドを支えてきた。しかし、現在のベルーナグループはそれだけではない。公式サイトを見ると、ファッション・インテリア総合通販「ベルーナ Online Store」のほか、食品通販の「ベルーナグルメ」、ワイン通販の「My Wine Club」、健康食品の「リフレ」、化粧品通販の「オージオ」、看護師向け通販の「ナースリー」など、さまざまな専門通販を展開している。
この「衣食住を幅広く扱う」という点は、家具やインテリア、生活雑貨などを扱う総合通販サイトとの比較でも興味深い。例えば、リコメン堂を運営するジェネレーションパスがECを中心に商品カテゴリーを広げているのに対し、ベルーナは長年蓄積してきた顧客基盤を活用し、衣料品を入口として食品、化粧品、健康関連などへ接点を広げている。単一カテゴリーの通販サイトではなく、複数の専門通販を組み合わせた「通販グループ」として見ると、同社の特徴が分かりやすい。
ベルーナの強みの一つは、カタログ通販時代から蓄積してきた顧客データである。通販では、顧客が何を購入したのか、どのような商品に反応したのか、どのタイミングで購入したのかといった情報を蓄積できる。ベルーナはこうしたデータベースを活用し、通販だけでなく、封入・同送サービスやフルフィルメント受託などの「データベース活用事業」にも展開している。2026年3月期第3四半期では、この事業の売上高が134億2,600万円、セグメント利益が34億9,500万円となっている。
一方で、通販事業を取り巻く環境は決して簡単ではない。原材料価格や物流費、広告費などの上昇は、通信販売企業の収益を圧迫する。ベルーナも2026年3月期第3四半期において、アパレル・雑貨通販で原材料・資材価格の高止まりやDM配送費の値上げを受け、広告宣伝費を抑制した。その結果、ファッションECモールやインポートブランド品ECサイトなど不採算事業を終了し、売上高は前年同期比7.9%減となった一方、セグメント損失は前年の9億4,200万円から5,800万円へ大幅に縮小している。
ここには、現在のベルーナが「売上高を追うだけの通販企業」から、収益性を重視する企業へ変化していることが表れている。EC市場では、商品数を増やし、広告を大量投入すれば売上を伸ばせるとは限らない。販売手数料、物流費、広告費、返品コストなどを差し引いて、最終的にどれだけ利益を残せるかが重要になる。不採算サービスを終了して収益性を改善する判断は、成熟したEC市場で戦ううえで重要な経営戦略といえる。
そして現在のベルーナを語るうえで欠かせないのが、通販以外の事業である。同社はホテル事業をはじめ、不動産、呉服、金融などにも事業を展開している。2026年3月期の会社計画では、通販を含む複数の事業を組み合わせることで、事業ポートフォリオの安定化を目指している。2026年3月期の計画では連結売上高2,146億円、営業利益135億円を掲げていた。
特に近年存在感を高めているのがホテル事業だ。2026年には「屈斜路プリンスホテル」を取得するなど、宿泊施設のポートフォリオを拡大している。また、2026年4月には「虎ノ門ホリックホテル」の開業も予定されるなど、通販企業というイメージからは想像しにくいほど事業領域を広げている。
これは一見すると通販との関連性が薄いようにも見える。しかし、ベルーナの経営を長期的な視点で見ると、顧客基盤を活用しながら複数の事業で収益を生み出すという考え方につながっている。衣料品を購入する顧客、食品を購入する顧客、旅行やホテルを利用する顧客など、生活のさまざまな場面で接点を作ることで、企業グループとしての顧客価値を高める狙いがある。
2026年に入ってからも商品開発やブランド展開は続いている。例えば2026年7月には、SNSで話題となり総再生数1,000万回を超えたという「ゆったり・まったりクッション一体型ラグ」の新タイプを発売した。家具専門企業ではないベルーナが、インテリア商品を通販のラインアップに加え、SNSなどデジタルメディアを通じて商品を訴求している点は、現在の通販市場を象徴する動きといえる。
また、キャラクターや映画とのコラボレーションなど、従来型の通販カタログとは異なる商品展開も見られる。2026年6月には映画「トイ・ストーリー5」の公開に合わせた商品をベルーナオンラインストアで販売すると発表した。通販企業にとって、価格や品ぞろえだけでなく、「欲しいと思わせる企画」を作れるかどうかが重要になっている。
一方、ベルーナには課題もある。通販事業では、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなど巨大ECプラットフォームとの競争が続くほか、衣料品では実店舗、ファッションEC、専門ブランドなど競合が多い。さらに、人口構造の変化や消費者の購買行動の変化にも対応しなければならない。そのため、カタログ、ネット、店舗を組み合わせた販売体制をどのように進化させるかが重要になる。
同社の2026年3月期第1四半期決算は2026年7月31日に発表されており、2027年3月期も事業ポートフォリオを意識した経営が続いている。会社のIRページでは決算資料や月次報告も継続的に公開されており、通販事業だけでなく、ホテル、呉服、金融など各事業の動きを追える点も特徴である。
ベルーナは、単純な「通販会社」という言葉だけでは捉えきれない企業へと変化している。カタログ通販で築いた顧客基盤をネット通販へ広げ、さらに食品、化粧品、健康食品、看護用品などの専門通販へ展開し、その一方でホテルや不動産などにも事業を広げている。通販市場の成熟という逆風に対して、事業領域を分散させながら収益力を高めようとしている点が、現在のベルーナの大きな特徴である。
今後の注目点は、EC市場の成長を取り込むだけでなく、通販で蓄積した顧客データやマーケティングノウハウをどこまでグループ全体の成長につなげられるかだろう。衣料品からインテリア、食品、ワイン、化粧品、健康食品、そしてホテルまで。生活者との接点を幅広く持つベルーナが、通販企業から総合的な生活関連企業へどこまで進化できるのか。2026年以降の同社を見るうえで、この事業ポートフォリオの変化は重要なポイントになりそうだ。
千趣会――ベルメゾンを軸に通販事業の再生と新たな成長を目指す
家具やインテリア、生活雑貨などをネットで購入する機会が増えるなか、長年にわたって通販市場で存在感を示してきた企業が千趣会である。証券コード8165、東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、「ベルメゾン」を中心とした通信販売事業を主力としている。カタログ通販をルーツとしながら、現在ではベルメゾンネットをはじめとするEC、花・ギフト通販、法人向けサービス、子育て支援などへ事業領域を広げている。もっとも、近年は通販事業の立て直しが重要な経営課題となっており、2025年から2027年を対象とした再生計画に基づき、大胆な事業改革を進めている点が現在の千趣会を理解するうえで重要である。
千趣会の最大の特徴は、やはりベルメゾンである。「愛、のち、アイデア。」をブランドスローガンに掲げ、女性やファミリー層を中心に、衣料品、家具、インテリア、寝具、生活雑貨、ベビー用品など幅広い商品を提案している。特に家具・インテリアについては、単に商品を販売するだけでなく、日々の暮らしをイメージしながら商品を選べる点が特徴だ。模様替えや新生活、子育てなど、生活の変化に合わせて必要な商品をまとめて探せることは、総合通販ならではの強みといえる。
現在、千趣会の通信販売事業は同社の売上高の約9割を占める中核事業である。2025年度の通信販売事業の売上高は359億8,900万円で、全社に占める売上構成比は85.6%だった。ベルメゾンに加えて、花の通販「イイハナ・ドットコム」などもこの事業に含まれている。つまり千趣会は、現在でも「通販会社」としての性格が非常に強い企業なのである。
一方で、その通販事業は大きな転換期を迎えている。2025年度は会員数の減少などにより通信販売事業の売上高が前年の399億3,300万円から359億8,900万円へ減少した。一方、販売促進費の効率化や固定費削減などによって営業損失は前年の39億3,300万円から30億8,200万円へ縮小した。さらに、ECモールの売上は前年比103%、リアル店舗は114%と伸びており、販売チャネルを見直すことで収益改善を進めている。
この改革の背景には、消費者の購買行動の変化がある。かつてのベルメゾンはカタログを見て商品を注文するスタイルが中心だったが、現在はスマートフォンからECサイトを訪問し、SNSや検索、口コミなどを通じて商品を比較する時代である。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大型ECモールに加え、家具・インテリアではニトリ、無印良品など強力な競合も存在する。千趣会にとって、従来型の通販モデルをそのまま維持するだけでは成長が難しくなっている。
そこで同社が進めているのが、顧客ターゲットを明確化した「世代別」の事業ドメインへの再編である。誰にでも幅広く商品を売るのではなく、コアとなる顧客層を明確にし、それぞれに適した商品や売り場、マーケティングを組み合わせる戦略だ。2025年度には不採算商品の改廃や在庫適正化も実施し、注文獲得費などの効率化を進めた。
この戦略は、家具・インテリア通販を考えるうえでも興味深い。家具は衣料品に比べて購入頻度が低い一方、一度購入すると単価が高く、部屋全体のコーディネートにも影響する。例えばソファ、ベッド、収納、ラグ、カーテンなどを個別に販売するだけでなく、「新生活」「子育て」「在宅ワーク」「模様替え」といった生活シーンごとに提案できれば、複数商品の購入につなげやすい。千趣会が持つ生活者目線の商品企画力は、こうした提案型ECとの相性が良い。
さらに注目したいのが、通販で培った資産を外部企業向けにも活用していることである。千趣会は法人向けに、ベルメゾンの購買データを商品ジャンル、年代、併売、地域などの切り口で分析し、商品開発やOEM、ノベルティ、商品調達などを支援している。つまり、長年の通販事業で蓄積した顧客データや仕入れネットワークそのものを、新たな収益源として活用しようとしている。
法人向け事業では、広告や商品同梱、DM、フルフィルメント、株主優待事務局などのサービスも展開している。2026年8月にはベルメゾンネット広告のオンライン媒体資料などを更新しており、1,560万人規模の会員データを活用した商品同梱サービスなど、通販で培った顧客接点を企業向けビジネスに転換する動きも進んでいる。
さらに千趣会は、通販以外の新しい収益源にも取り組んでいる。子育て支援事業では認可保育所、企業主導型保育所、民間学童保育所を運営し、通販事業とのシナジーを模索している。また、不要品の宅配買取サービス「kimawari fashion」を中心とするエシカル領域にも取り組む。加えて、日本のアニメやゲーム、キャラクターなどのIPを活用した商品開発・販売も成長テーマとして掲げている。
実際、2026年にはベルメゾンと人気IPとのコラボレーションも続いている。8月には「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボアイテムについて、9月2日から大阪のルクア サウスで先行販売を開始すると発表した。こうしたIPコラボは、従来のベルメゾンの顧客層とは異なるファンを取り込むきっかけになる可能性がある。単純な価格競争ではなく、「ここでしか買えない商品」を増やすことは、EC市場で差別化を図るうえでも重要である。
ただし、千趣会を取り巻く状況には注意も必要だ。2026年8月7日に発表された第2四半期決算では、通期業績予想の修正も行われている。また、同社は継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在すると認識しており、再生計画に基づく業績改善が重要な局面にある。したがって、単に「老舗通販企業」として見るのではなく、収益構造をどこまで改善できるかという視点が欠かせない。
2026年のベルメゾンの受注額を見ても、回復への道のりはまだ続いている。1月から6月までの累計は前年同期比93.8%だった一方、4月は104.5%、7月は107.5%と前年を上回る月も出ている。単月ベースでは改善の兆しが見られるだけに、ターゲットの絞り込みや商品改革、ECモール・リアル店舗の強化が今後どこまで成果につながるかが注目される。
千趣会は、単純な「カタログ通販会社」ではなく、ベルメゾンを中心に築き上げてきた顧客基盤、商品企画力、物流、購買データ、マーケティングノウハウを複数の事業に転用しようとしている企業である。通販事業そのものを立て直しながら、法人向けサービス、子育て、エシカル、IPなど新しい収益源を育てるという二段構えの改革が現在進められている。
家具やインテリアをネットで購入する消費者にとって、ベルメゾンは「生活に必要なものをまとめて探せる通販サイト」という存在だが、企業として見れば、そこには長年にわたって蓄積された顧客データと商品開発のノウハウがある。今後の千趣会にとって重要なのは、こうした資産を現代のEC市場に合わせて再構築し、再び成長軌道へ乗せられるかどうかである。2026年は再生計画の途中にあたり、通販事業の収益改善と新規事業の育成が同時に進む転換点。老舗通販企業がどのように「次のベルメゾン」を作るのか、その取り組みから目が離せない。
まとめ|家具通販の進化と自分らしい部屋づくり
家具やインテリアの購入方法は大きく変化している。ジェネレーションパスのリコメン堂のように、家具だけでなく家電や生活雑貨まで膨大な商品を扱うEC型の企業がある一方、ベルーナや千趣会のように、長年培ってきた顧客基盤や商品企画力を生かして通販事業を展開する企業もある。さらにニトリや良品計画のように、実店舗とオンラインを組み合わせ、家具や生活用品を一つの世界観で提案する企業も存在する。
こうした通販・小売企業の競争は、単純な価格競争から「どのような暮らしを提案できるか」という競争へと広がっている。家具そのものの機能や価格だけでなく、部屋全体をどのようにコーディネートするか、どのような生活シーンを実現できるかまで含めて商品を提案することが重要になっている。
消費者側も、人気商品をただ購入するのではなく、部屋の広さや動線、既存家具との相性、色や素材の統一感などを考えて選ぶことが大切である。ソファやベッドなど大きな家具を基準に、テーブルや収納、ラグ、照明を組み合わせ、最後にクッションや植物などの小物で個性を加えると、まとまりのある空間を作りやすい。
おしゃれな部屋づくりの第一歩は、高価な家具を揃えることではない。自分がどのような空間で暮らしたいのかを考え、そのイメージに合う店や商品を選ぶことである。通販サイトの品ぞろえが豊富になった今だからこそ、価格だけでなく、商品の背景や素材、サイズ、使い勝手まで比較しながら、自分らしい家具選びを楽しみたい。家具通販の進化は、私たちの暮らしをより自由にデザインできる環境を広げているのである。




