全世界株式はおすすめしないといわれているのはなぜか?リターンを出すための3つのポイントを解説

「全世界株式」は、いろんな国や地域の株式に分散投資できることでリスクを抑えつつ安定したリターンが期待できるので、多くの投資家に支持されています。しかし、最近では「全世界株式はおすすめしない」とする意見も見受けられます。

その理由として、リターンの低さ特定地域のパフォーマンスに依存しがちな点が指摘されています。では、リターンを最大化するためにはどのようなポイントに注意すべきでしょうか?

この記事では、全世界株式投資をより効果的に運用するための3つの重要なポイントを解説します。これらを押さえることで、リスクを抑えつつ、より高いリターンを狙うことが可能となるでしょう。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

全世界株式はおすすめしないといわれる5つの理由

全世界株式は、多くの国や地域に分散投資できる便利な投資商品として人気を集めています。しかし、投資家の中には「全世界株式はおすすめしない」と主張する意見も少なくありません。

この章では、全世界株式が必ずしも最適な選択とはいえない理由について、下記5つのポイントを中心に解説します。それぞれの理由を理解することで、より慎重かつ効果的な投資判断ができるようになるでしょう。

  • 全世界株式といいながら半分以上が米国だから
  • 米国の暴落に影響されるから
  • 実績はS&P500に劣るから
  • 全世界ではあるがリスクヘッジできるとは限らないから
  • 為替変動の影響が大きいから

全世界株式といいながら半分以上が米国だから

全世界株式と謳っているものの、実際のポートフォリオの中身を見ると、約60%以上が米国株式で占められています。これにより、実際には米国市場に大きく依存することになり、真の意味での「全世界」投資にはならないともいえます。

米国の暴落に影響されるから

先程も申し上げたように全世界株式の約60%が米国株式で占めているため、米国市場が暴落した場合その影響を大きく受ける可能性が高いです。これにより、ポートフォリオ全体の安定性が損なわれるリスクがあります。

実績はS&P500に劣るから

過去の実績を比較すると、全世界株式はS&P500指数に比べてパフォーマンスが劣ることが多いです。S&P500がニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場する上位500銘柄から構成されていて、米国市場がこれまで圧倒的な成長を遂げてきたというのも理由にあります。

そのため、全世界株式よりS&P500の方が高いリターンを得られる可能性があります。

全世界ではあるがリスクヘッジできるとは限らないから

全世界に分散投資しているように見えても、米国が約60%を占めていたりするので、特定の国や地域がリスクを引き起こすと、全体に悪影響を与えることがあります。リスクヘッジが十分に行われているわけではなく、リスクを完全に回避できるとは限りません。

為替変動の影響が大きいから

全世界株式は複数の通貨で取引されるため、為替変動の影響を受けやすくなります。特に、円安や円高が大きく進行した場合、為替リスクがリターンに大きな影響を与える可能性があります。特に円高の局面では円換算の利益が目減りしてしまうことも考えられます。

 

全世界株式の3つメリット

全世界株式はおすすめしないといわれる理由についてお伝えしましたが、全世界株にもメリットはあります。

この章では下記3つのメリットについて解説していきます。

  • 手数料が安い
  • 右肩上がりに伸びているのでリターンが期待できる
  • 難しい投資の勉強が必要ない

手数料が安い

全世界株式は多くの国や地域に分散投資を行うため、個別に株式を購入することを考えると手数料が安く抑えられます。また、パッシブ運用のため、運用コストも低く、長期的に見てコスト効率の良い投資が可能です。

購入時手数料と売却時に発生する信託財産留保額は無料の証券会社がほとんどなので、全体的にコストを抑えて投資が可能です。

右肩上がりに伸びているのでリターンが期待できる

全世界の経済成長に連動して株式市場が右肩上がりで成長していく傾向があり、長期的なリターンが期待できます。特に、グローバルな経済拡大が続く限り、安定したリターンを享受できる可能性があります。下記は過去の運用実績になりますが右肩上がりになっているのがわかります。

出典:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)目論見書

 

難しい投資の勉強が必要ない

全世界株式は広範囲に分散投資を行うため、個別の銘柄選びやタイミングを見計らう必要がありません。これにより、投資初心者でも比較的簡単に始められ、長期的に安定したリターンを目指すことができます。積立設定をしていまえば基本的にほったらかし運用で良いです。

全世界株式でリターンを出すための3つのポイント

この前の章では全世界株式のメリットをお話しました。最後に全世界株式に今投資している方も、これから全世界株式に投資される方にも大切な全世界株式でリターンを出すためのポイントを下記3つ解説します。

  • 長期運用をする
  • 積立投資をする
  • 暴落しても急いで売却しない

長期運用をする

全世界株式などの投資信託は長期運用をするから複利の力が発揮され、利益が雪だるま式に増えていきます。複利とは投資で得た利益を投資元本にプラスして再投資をすることです。

この複利の力を発揮するには、長期の運用が必要です。1年や2年では複利の力が働かずほとんど利益が増えることはないでしょう。最低でも10年は運用してみてほしいです。

投資の中でも特に積立投資は短期で結果は出ません。そもそも長期で行う投資だからです。数年で利益が出ないからとやめずに、10年単位で見据えて継続してほしいです。

長期で積立投資をする


全世界株式は基本的には積立投資になるので、なるべく長期で積立をしましょう。なぜなら積立設定をすればドルコスト平均法で買い付けていくので、毎月決まった金額を分散投資できるからです。買うタイミングを分散することで、株価の上下があったとしても平均購入単価が均等にされます。そのため価格の上昇時、下落時のリスクをおさえることが可能です。

そして積立投資は長期運用することで、元本割れをするリスクを抑えられます。下記は、1985年から2020年までの35年間、毎月同額ずつ投資信託の買付を行ない、保有期間5年と、20年の運用リターンの実績です。

(1)保有期間5年間

積立保有期間5年グラフ

出典:金融庁HPつみたてNISA早わかりガイドブック

(2)保有期間:20年

保有期間20年グラフ出典:金融庁HPつみたてNISA早わかりガイドブック

保有期間5年間の場合、元本割れの可能性が高いという結果が出ています。一方保有期間20年の場合、元本割れの確率が0になっています。過去の実績では20年積立投資をすると元本割れが起こりにくい結果が証明されています。

こういった理由からなるべく長期で積み立てるのがポイントなのです。

暴落しても急いで売却しない

投資をやっていれば必ず一度は暴落というものを経験するでしょう。これまでにもコロナショックウクライナショック米国の金融の引き締めなどで暴落する機会がありました。一番最近ですと2024年8月5日に「令和のブラックマンデー」と呼ばれる暴落がありました。

こういう時に暴落したからといってすぐに売却をしないことです。今回の暴落もすこしあとには落ち着きました。そして全世界株式などの投資信託は価格が下がったときは、購入価格の平均価が行われます。今まで高かった単価が下がることもありますので、長期運用であればトータルでみるとリターンがプラスになる場合が多いです。

これからも暴落の機会に直面するタイミングはありますから、そのたびに一喜一憂することなく、静観できる精神を作っておきましょう。

 

まとめ

全世界株式をこれから投資したいという方は、この記事を読んでいただくだけでもメリット・デメリットがあるのをわかっていただけたかと思います。ただ単におすすめしないという情報だけを鵜呑みにするのはよくありません。自分で調べたり勉強して情報の精査ができるようになると損だと思っていたことが実は得だということもあります。投資は元本保証がないので勉強が特に大切です。

記事一覧はこちら

コメント