ある程度の投資経験者ならその名を知らぬ者はいないでしょう。
世界一の投資家にしてオマハの賢人、ウォーレン・バフェット。
2024年8月に御年94歳となったバフェット氏は、いまなお意気軒高。投資で築いたその個人資産は実に20兆円を超えます。
言動や投資活動の一挙手一投足が注目され続けるバフェット氏。
彼がどうしてそれだけの資産を投資で築くことができたのか、その秘密を知ろうと、バフェット氏の投資術を研究・分析した書籍の刊行は後を絶ちません。
でもあまりにも多すぎて、いったいどの本を読めばいいのか迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、日本一のお金の学校GFS(グローバルファイナンシャルスクール)監修のもと、個人投資家としてバフェット流を深く学んできた筆者が、これだけははずせない「バフェット本」を厳選して8冊ご紹介いたします。
歴史的名著かつ、ロング&ベストセラーとして今なお読み継がれている書籍ばかりを選んでいますので、ぜひバフェット流成功投資哲学を身につけるための参考になさってください。
監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
目次
第1章 バフェットとは何者か
1-1 個人資産20兆円超えの世界一の投資家
ウォーレン・バフェットは、世界で最も成功した投資家として知られています。
彼が率いる投資・事業会社バークシャー・ハサウェイの時価総額は6173億ドル、日本円で90兆円超。会長兼CEOのバフェット氏はその筆頭株主で、個人資産は1386億ドル。日本円にして実に20兆円を超える資産です。
これは2024年4月現在、世界の大富豪ランキング第6位(Forbs「世界の富豪トップ10(2024年版)」より)という、個人の資産としては途方もない金額です。
でも、バフェット氏はここ数年多額の寄付をしており、寄付していなければ個人資産は2920億ドル(43兆8000億円)で今も世界一だと試算されます。
他の大富豪は経営する事業会社の報酬などが資産になっているのに対し、バフェット氏はその資産のほとんどをバークシャーを通した投資活動だけで作っており、これが「投資の神様」と呼ばれるゆえんです。
バフェット氏は会社と住居のある米国ネブラスカ州の地名から「オマハの賢人」とも呼ばれ、その投資哲学と成功は世界中の投資家の尊敬を集め、一挙手一投足が注目を集めるほど(写真はバークシャーの本社が入るオマハのキューイット・プラザ)。
彼の成功の秘訣をひとことで言い表すとしたら、「長期的な視点でバリュー投資を行うこと」と言えるでしょう。
彼は「素晴らしいビジネスを割安な価格で買う」という原則を貫き、短期的な市場の変動に惑わされることなく、企業の本質的な価値に基づいて投資を行い、その成長を糧に大きく資産を伸ばしてきました。
バフェット氏が購入した株式ーーバフェット銘柄ーーとしては、アップル、コカ・コーラ、アメリカンエクスプレス、バンク オブ アメリカなどが有名です。
とりわけアップル株はまだ株価が低迷していた2016年に購入。当時は投資家の間で冷ややかに受け止められていましたが、結局これが現在までに10倍以上に上昇したのです。その結果、一時はバークシャーの投資ポートフォリオの40%を占めていました。
単なる携帯電話メーカーではない、アップルの事業の本質と将来性を見抜いたバフェット氏の見事な投資判断が光りました。
1-2 日本株購入で日本市場に大きく影響
2020年8月、バフェット氏は日本の5大総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の株式をそれぞれ5%超取得したと発表し、日本市場に大きな衝撃を与えました。
バフェット氏は日本の商社について「バークシャーと非常に似ている」「世界の事情に精通している」と評価。この投資により5大商社の株価は現在までに2~4倍も上昇。その投資判断は世界中の投資家の注目を集めました(下は5大商社の2020年以降の株価の推移)。
バークシャーはこの商社株を購入するために日本で1兆円を超える円建て社債を発行して資金を調達し、その後も商社株を買い増しています。
そして2024年10月、バフェット氏はバークシャーが再び円建て社債を発行することを明らかにしました。
調達した資金で今度は何を買うか投資家の間で話題となり、憶測が飛び交い、思惑から商社株や金融・保険株などの株価が一時急騰しました。
バフェット氏が動けば世界中の投資家が動くことになり、何を買ったのか明らかになれば再び世界の日本株への注目度が増すでしょう。
1-3 いまバフェット本を読む意味とは
こうした世界の誰もが尊敬するすごい投資家であるバフェット氏ですが、興味深いことに、氏自身が執筆した著書は存在しません。
しかし、彼の投資哲学や考え方を学ぶための書籍は世界中で数多く出版されています。
これらの本は、バークシャー・ハサウェイの株主総会での発言、株主への手紙(年次報告書)、インタビューなどを基に、彼の肉声や考え方、投資手法や投資哲学を整理・分析して書かれたものが多く見受けられます。
では、今わたしたち個人投資家がバフェット本を読む意義は何なのでしょうか。
それは、バフェット氏の考え方には、時代に流されず、性急な欲望にも流されず、長期的な視点で投資の本質を見極める普遍的な力があるからです。
変化が激しく先の見えない相場環境の中で、投資家は成功を急ぐあまりとかく玉石混交の情報に踊らされて投資の本質を見失いがちです。
でも、バフェット氏の冷静な分析力と長期の視点を身につけることで、市場の短期的なノイズに惑わされることなく、投資先の真の価値を見出す力を養うことができます。結果的に短期でトレードするよりはるかに大きな資産を長期で築くことができるようになるのです。
また、バフェット氏の倫理的な投資姿勢や社会的責任を重視する態度は、持続可能な投資の在り方を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。起業をめざす人にとっては、価値ある事業を築く視点を与えてくれることでしょう。
このように、バフェット投資本を読むことは、単なる投資戦略の学びとなるばかりでなく、ビジネスと経済の本質的な理解を深めるまたとない機会ともなるのです。
次の章から、ここに書いた内容にふさわしいおすすめのバフェット本を具体的に詳解してくことにしましょう。
第2章 バフェットの投資哲学がわかる名著5選
ここでは、バフェット氏の投資哲学や戦略を最もわかりやすく学べる名著中の名著を厳選して5冊取り上げました。
出版社および出版年は日本での翻訳書のものです。
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2-1 億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術
著者/出版社 | メアリー・バフェット、デビッド・クラーク著/日本経済新聞出版社(2002年) |
本の概要 |
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一口メモ | バフェット氏の投資哲学の基礎がすべて詰め込まれた本。バフェット氏がどのような視点・条件で投資銘柄を選び、購入しているのかーー重視している点は何か、なぜ安値で買うのか、避けるべき企業は何か、業績のどの部分に注目するのか、経営陣をどう評価するかーーなどについて解説し、実際にバフェット氏が購入した銘柄を例にケーススタディをしています。出版から20年以上たつ現在も売れ続けるベストセラーであり、”バフェット流”を身につけたいすべての人にまずは読んでほしい歴史的名著です。 |
2-2 バフェットからの手紙(第8版)
著者/出版社 | ローレンス・A・カニングハム著/パンローリング社(2023年) |
本の概要 |
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一口メモ | バフェット氏自身が株主に宛てた手紙(年次報告書)で語ってきた投資哲学や経営理念、投資の指針などをテーマ別にまとめた一冊。株主利益を第一に考え、企業価値を高める姿勢がバフェット氏本人の言葉で株主である「あなた」にじっくり語られています。会計や税務、米国の歴史などにも話題を広げながら、バフェット氏がどのように企業統治を考え、事業を評価し、長期的に株主の利益につなげていくかがわかります。自身の著書がないバフェット氏の思考法や判断基準を直接その言葉で学べる貴重な本です。 |
2-3 ウォーレン・バフェット伝 スノーボール(上・中・下)
著者/出版社 | アリス・シュローダー著/日経ビジネス人文庫(2014年) |
本の概要 |
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一口メモ | バフェットの人生や彼の投資哲学に深く踏み込んだ本人公認の評伝。彼の若いころから現在に至るまでの成長過程が描かれており、単なる投資家としてだけでなく、一人の人間としての彼の側面も紹介されています。「スノーボール」とは、小さな投資資金を「複利」で転がすことでどんどん固く大きくなる雪玉を指す、バフェット氏の投資の成功の核心を示すメタファー。彼の人生やそのときどきの決断に読み物として楽しみながら触れるうちに、等身大のバフェット像と彼の投資哲学が自然と頭に入ってきます。 |
2-4 株で富を築く バフェットの法則
著者/出版社 | ロバート・G・ハグストローム著/ダイヤモンド社(2014年) |
本の概要 |
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一口メモ | 世界最高の投資家はどのように生まれてきたか、その原点とは何か、事業を買う12の原則と9つのケーススタディ、投資に必要な忍耐力などを、バフェット研究20年の著者がかみくだいて語った本。バフェット氏が事業、経営、財務、市場にどのように向き合っているか筆者が割り出した「法則」に従って解説しています。バフェット投資哲学のエッセンスを余すことなく伝えるいわば”いいとこ取り”で、日米ともにベストセラー&ロングセラーとなっています。 |
2-5 ウォーレン・バフェットの生声
著者/出版社 | ディヴィッド・アドリューズ編/文響社(2023年) |
本の概要 |
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一口メモ | バフェット氏がインタビューや記者会見、株主への手紙(年次報告書)で実際に書いたり口にしたりした「生の声」を原則1ページに1つ、あるいは見開きで1つ収録。彼がどのように投資を行い、どのような原則に基づいてビジネスをしているのかという成功哲学のほか、人生哲学や倫理観にも触れることができます。解説もなく言葉だけが並んでいるため、他の本より早く気軽に読み通すことができる一方、それらの言葉について自分で考え、味わうことで、大きな気づきを得ることもできます。 |
第3章 バフェット氏自身が影響を受けた名著3選
この章では、バフェット氏が深く影響を受け、繰り返し言及し、株主にもすすめている名著を3冊ご紹介します。
このうち1冊はバリュー投資の父と言われるベンジャミン・グレアム、もう1冊は成長株投資の父フィリップ・フィッシャーの著書です。
バフェット氏は「私の85%はグレアムからできていて、残り15%はフィッシャーからできている」と語っています。
そしてもう1冊はバフェット氏が愛読し、バークシャーハサウェイの株主にも配ったというハワード・マークスの本。
これらの本を2章で紹介した本と合わせて読むことで、バフェット氏の投資哲学がより立体的に浮かび上がってくるでしょう。
出版社および出版年は日本での翻訳書のものです。
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3-1 賢明なる投資家
著者/出版社 | ベンジャミン・グレアム/パンローリング(2000年) |
本の概要 |
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一口メモ | 著者のB・グレアム(1894~1976)はバフェット氏が若いころに学んだ投資の師匠。「安全域」という概念を提唱し、投資の際にはリスクを最小限に抑えることが重要であると説いています。グレアム氏のもとで学んだバフェット氏は、企業の本質的な価値を評価する手法を身につけ、今につながるバリュー投資の礎を築きました。本書はバフェット氏が19歳で初めて読んで以来、「株式投資の本では過去最高の傑作だ」と語る、全てのバリュー投資家にとって必読の一冊でしょう。 |
3-2 株式投資で普通でない利益を得る
著者/出版社 | フィリップ・A・フィッシャー/パンローリング(2016年) |
本の概要 |
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一口メモ | 本書は、成長株投資のパイオニアである著者が、投資家がどのようにして成長企業を見極めるかに焦点を当てた本です。約60年前に書かれたにもかかわらず、金融業界の最前線でいまだに読み継がれており、バフェット氏もグレアムのバリュー投資の知識にこのフィッシャーの成長株投資の知識を加えたことで巨大な資産を築くことができたと認めています。とりわけどんな株(企業)を買えばいいのか、調べるべきことを15のポイントにまとめたくだりは、すべての株式投資家に読んでほしい内容です。 |
3-3 投資で一番大切な20の教え
著者/出版社 | ハワード・マークス/日本経済新聞出版社(2012年) |
本の概要 | – 投資の基本原則を20項目に整理 – 長期的な視点でのアプローチ – 成功するための具体的な戦略 – リスクとリターンのバランス |
一口メモ | この本は、投資成功のための具体的な教訓を20項目にまとめており、実践的なアドバイスが豊富です。バフェットの投資スタイルと通じる部分が多く、特に長期的な視点での投資の重要性が強調されています。投資初心者から経験者まで、誰でも役立つ内容が詰まっており、読み進めるうちに投資家としての視野が広がるでしょう。バフェット自身が「私の投資のバイブル」として愛読している一冊です。 |
まとめ
「世界一の投資家バフェットの投資戦略と哲学を知るおすすめの名著8選」いかがだったでしょうか。
投資の世界でバフェット氏がどういう人か、いかに投資して勝ち上がってきたのか、記事を読むだけでもその一端が見えてきたかもしれませんね。
世の中には天才的なトレーダーが数多く存在しますが、バフェット氏の投資行動は彼らと比べるととても地味で、えらく時間がかかるものです。
でもその知恵は半世紀たってもまったく変わらない光を放ち続けており、その投資手法を実践することが個人投資家が最終的に高みに到達できる唯一の方法ではないかと筆者は思っています(もちろん短期トレードで高みを目指せる人もいるでしょうけど)。
わたしたちGFSでも、折に触れてバフェット流の大切さを訴え、実践的な講義を通して生徒が長期にわたって資産を増やしていく道を模索し続けています。
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