投資ポートフォリオの作り方|データ収集方法や便利アプリもご紹介

投資ポートフォリオの作り方|データ収集方法や便利アプリも紹介

投資の世界で「ポートフォリオ(Portfolio)」とは、複数の異なる運用資産の組み合わせ、あるいはその構成比率を意味します。

会社員

あなたの資産ポートフォリオで一番比率が高いものはなんですか?

年配の男性

全体の40%を占める株式です

などのように使います。

ポートフォリオは、投資家がリスク分散しながら全体のリターンを最大化するために常に把握しておくべきものですが、投資初心者にはあまりなじみがないかもしれません。

そこで本記事では、お金と投資の学校GFS(グローバルファイナンシャルスクール)監修のもと、個人投資家として長年ポートフォリオ作りに試行錯誤してきた筆者が、その重要性や役割のほか、エクセルを使ったポートフォリオの作成方法を解説します。

さらにポートフォリオを一覧できる便利なサイトやアプリなども紹介していきます。

自身の資産をきちんと把握し、効率的に増やしていく上で強力な武器になるものですので、ぜひご自身のポートフォリオ作りの参考になさってください。

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監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

①ポートフォリオ作りの重要性と役割とは

1-1 ポートフォリオとは

前文でも書いた通り、「ポートフォリオ」とは自身の(金融)資産の組み合わせや構成比を意味します。

金融資産とは金銭的価値に置き換えられる資産のことで、通常は株式、債券、不動産、保険証券、現金など。

これに暗号資産(仮想通貨)、絵画や骨董、版権などを入れて考えることもあります。

これらの金融資産はさらに種類ごとに細分化することができます。

株式なら日本株、米国株、投資信託。債券なら国債、外債、社債。現金なら円貨のほか、米ドル、ユーロ、スイスフラン、中国元というふうに。

ポートフォリオはこれらの組み合わせや比率を意味する一方、この構成内容や比率がわかる表やグラフを指すこともあります。

1-2 ポートフォリオの重要性と役割

ポートフォリオが投資家にとって重要なのは、自身がどのような資産をどのような比率で保有しているか、それらが購入時の予想通りに価値(価格)が上がっているか否かを把握することができるからです。

これらを把握することで、資産をバランスよく保有できているか(=リスク分散)、バランスが悪いなら何を切って何を新たに加えるべきか(=リバランス)など、資産を効率的に増やすための投資戦略を練ることができるのです。

また、表や図で自分の資産を可視化することで、資産を目標通りに大きくするモチベーションを高めることもできます。

現代ポートフォリオ理論とノーベル経済学賞
無限にある組み合わせの中からどの資産をどのように選択すれば個人に最適化されたポートフォリオを組めるか。ポートフォリオの組み方は金融経済学でも重要な研究テーマとなっています。元になったのがハリー・マーコウィッツが1952年に発表した「ポートフォリオ選択」という博士論文で、これが「現代ポートフォリオ理論(MPT)」の出発点となりました。
この研究を完成させたのがウィリアム・シャープの「資本資産価格モデル(CAPM)」。2人はリスクを最小化し期待リターンを最大化させる効率的な資産選択を理論化し、安定的な資産形成に貢献したことで1990年のノーベル経済学賞を受賞しました。

 

②Excel/スプレッドシートを使ったポートフォリオの作り方

ここからはExcel(エクセル)あるいはGoogleスプレッドシートを使った簡単なポートフォリオの一覧表やグラフ作りの方法を説明します。

いろいろな方法があると思いますが、あまり手間をかけずに作れて続けやすい基本形を紹介しています。

筆者はGoogleスプレッドシートを使用していますので、図解はすべてスプレッドシートですが、Excelでも作業方法はほとんど変わりません。

2-1 横の「列」に必要な項目を考える

ここではオーソドックスに「株式」のポートフォリオを作成することとします。

まずはじめに、どのような表にするかを考えましょう。

横軸の「列」に置く項目名として、「証券コード」「銘柄」「業種」は必須です。続いて作成時点での「現在価格」「保有株数」「時価評価額」。

最低限これだけの項目があれば、ポートフォリオの一覧表になり、あとで銘柄別や業種別の円グラフがつくれます。

購入時のデーターー「購入日」「購入株価」「株数」「評価額」がわかるなら、それも項目にしておくと、作成時点と比較した騰落率などを計算できます。

ただ、新しく作る場合、まずは現時点のデータのみのポートフォリオをつくっておくだけでもかまいません。

定期的に「〇月〇日現在」の項目を追加して数字を更新すれば、作成時との比較(年間の資産増減率、含み損益など)は後からでもできます。

 

さて、ここまでの項目のポートフォリオであれば、わざわざ作らずともお持ちの証券アプリなどでだいたい確認できるでしょう。

大事なのはここから。いかに自分が見たい項目データを一覧できるようにするかです。

たとえば、インカムゲイン(配当収入)重視のポートフォリオであれば「1株あたり配当金」「配当利回り」「配当収入」を加えたり、キャピタルゲイン(株価成長)重視なら、各銘柄の業績(「売上」「営業利益」「EPS(1株益)」)を過去数年分加えたり、「年初来騰落率」を入れてもいいでしょう。

購入理由などの所感を書き込む「メモ」の項目も最後に入れておくと備忘録になります。

以下は配当重視で購入した「日本株ポートフォリオ」の項目例です。購入時と現時点で年間配当額と配当利回りがどうなったか、気になる項目を入れています。

 

「購入利回り」とあるのは現在株価に対しての配当利回りではなく、「購入時の株価に対しての現在の配当利回り」を意味します(「取得利回り」という人もいます)。

あまり凝りすぎて項目を増やしすぎると続けるのが大変になりますので必要最低限にしておきうましょう。

エクセル/スプレッドシートなら後から列を増やして項目を増やせるので、最初は必要最低限の項目で作ってみることをおすすめします。

2-2 縦の「行」に保有銘柄や資産クラスを書き込む

次に縦の各行に保有銘柄を書き込んでいきます。

株式なら証券コードの若い数字の順に並べていくと業種がだいたいそろうので便利です。

米国株ならティッカーシンボルをアルファベット順に並べるのが楽ですが、筆者の場合、最初から11のセクター別に分け、各セクターをアルファベット順に並べています。

また、同じ銘柄を追加購入、あるいは売却した場合、元の数字を直すのではなく、すぐ下に別の行を設けて記録しています。

 

ちなみに、ここまでは株式のポートフォリオ作成ですが、市場があり時価評価額がわかる資産クラスなら、一緒の表に入れてしまってもいいかもしれません。

国内株式、海外株式のほか、国内債券、海外債券、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などでしょうか。

これに現金・預貯金(円や外貨)や暗号資産なども加えて、ご自身の全資産ポートフォリオを一覧にしてもいいですね。

2-3 必要なデータをそろえて埋める

項目が決まったら、保有銘柄の基礎データをそろえます。

このとき役に立つのが、「YAHOO!ファイナンス」と「株探」です。

いずれも銘柄に関するさまざまなデータが無料で閲覧できるすぐれたサイトで、

  • 会社のプロフィール・業種
  • 業績
  • 割安度をはかる投資指標(PER、PBRなど)
  • 配当利回り
  • 過去の値動きの時系列バックデータ

など表を埋めるのに必要十分なデータがここでそろいます。

筆者がよく見るのは、YAHOOの方にある配当額の推移グラフ。下図は三菱UFJFGの一株配当推移です。

累進配当(配当が増配によって増えていくこと)になっているかどうか一目でわかるので便利です。

こうした特定ページのリンクを表に貼り付けておいてもいいですね。

データのありかがわかったら、あとは必要項目をエクセルに淡々と記入していくだけです。

よほど多くの銘柄を持っていない限り、慣れてくれば1〜2時間もあれば埋められるでしょう。

下は全項目を埋めた表です。

最後に評価額の合計、年間配当額の合計、利回りの平均などを入力します。

2-4 関数設定すると便利

表を埋めていく際、関数を設定すると計算せずに埋められる項目もあります。

例えば「株数×株価」の関数を設定すれば「時価評価額」に、「1株配当÷購入株価×100」で購入価格に対する「配当利回り」、「現在評価額÷購入時評価額×100」で「資産成長率」が出せますね。

関数の設定に関してはここでは割愛します。エクセルの参考書などでご確認ください。

2-5 できた表から円グラフ作成

作成した表をもとに資産の円グラフを作ってみましょう。

銘柄名の列と時価評価額の列を選択してグラフ作成のボタンを押し、円グラフを選択することで、時価評価額をもとに計算した比率の円グラフが作られます。

グラフ制作の方法もここではくわしく解説できませんので、参考書などでご確認ください。

 

また業種(セクター)と時価評価額の列を選択して作れば、業種ごとの比率がわかる円グラフが作れます。

これを見て業種・セクターの偏りがあれば、銘柄をリバランスしたり、足りない業種を次に買い足していくなど、調整する目安にすることができます。

さらに、完成した表を見て、

  • 株価がなかなか成長しない
  • 配当が思ったより増配にならない
  • 決算で減収減益が続いている
  • 減配・無配になった

などの事実があれば、「年間配当金+資産増」の観点から、資産増にあまり貢献していない銘柄をほかと交換するという判断もできますね。

③ポートフォリオが簡単につくれる便利サイト・アプリ

エクセルで自分好みのポートフォリオを作成していくのは投資家にとってとても有意義な作業です。

でも、時間のない現代人にとってはけっこう面倒な作業でもあり、作っても定期的に数字を更新することなく、いつの間にか忘れ去られる、なんてことになりそうです。

そこでこの章では、自分で作らなくても、ポートフォリオが簡単に把握できてしまうすぐれものの便利サイトや便利アプリをいくつかピックアップしてご紹介します。

3-1 無料でポートフォリオがつくれる「YAHOO!ファイナンス」

前章でデータ集めに活用したい便利サイトとしてご紹介した「YAHOO!ファイナンス」には、yahoo会員登録すれば無料でポートフォリオをつくれるページがあります。

検索窓の下にある「ポートフォリオ」の「新規作成」をクリック。

すると以下のような画面が出てきます。

ここでポートフォリオに名前をつけます。ここでは仮に「日本株ポートフォリオ」としておきます。

次に保有株式の銘柄名または証券コードをその下の窓に入力し、「銘柄追加」をクリック。

ここではトヨタと入力。出てきた検索候補から「トヨタ自動車」を選んでクリックし、追加できたら、保有株数と購入価格を入力します。

この画面のまま別の銘柄を追加登録し、同じように数字を入力します。ここでは三菱UFJフィナンシャルグループと日立製作所を追加しました。

メモには購入日や購入理由など好きなことを書いてもいいし、そのまま空白でもかまいません(後から追加できます)。

このように入力できたら、一番下の「保存して完了」をクリック。すると、下のようなポートフォリオが完成します。

これがもっともシンプルな形のポートフォリオです。

ここからさらに表示させたい項目を増やしていくことができます。左上の「表示設定」をクリックしましょう。すると以下のような画面が出てきます。

ここで自分が表示させておきたい項目を選んでチェックを入れます。

選んだ項目は左側にリストアップされますので、右クリックで上下に動かすことで並べ替えが可能です。

さらに右上の「ボード表示」を「リスト表示」に変更すると、横型リストの表示に変えることもできます。

項目選択と表示順が決まったら「保存して閉じる」をクリック。以下の表示画面に変わります。

これは一度設定してしまえば、日々の値動きに合わせてすべて自動で数値が更新されますので、定期的に数字を入力しないで済むので非常に楽ちんです。

また、フォルダーを別に作り、投資信託や米国株のポートフォリオを作ることもできますし、まだ買っていないけど気になる銘柄をリストアップするのにも使えます。

YAHOO!ファイナンスで検索して見た銘柄の各ページからもポートフォリオに直接保存が可能です。

このサイトで不満点があるとすれば、自らのポートフォリオのグラフ化ができないこと。

それと日米のETF(上場投資信託)が対象外となっていることです(ふつうの投資信託はあります)。

でも、無料であることを考えるとものすごくすぐれたツールですので、ぜひ使ってみることをおすすめします。

3-2 トレード記録や資産推移がわかる「カビュウ」

続いてご紹介するのは、「カビュウ」という投資管理・分析のアプリです。

トレードを頻繁に行う個人投資家にとってはもはやマストアイテムといっていいかもしれません。それぐらいすぐれた投資ツールです。

利用には月々数百円の課金と証券口座との連携が必要ですが、証券会社のサイトでは蓄積されない過去の細かい取引データを集計・整理・記録し、さらにグラフ化もしてくれます。

筆者も愛用していますが、もっとも役に立つと思うのは、各銘柄ごとのすべての取引記録やその損益、トレードの勝率が見れること。

自分がいついくらで売買(利確・損切り)したかがわかり、取引のパフォーマンスを“見える化“してくれます。

日本株だけでなく、米国株6,000銘柄以上に対応。さらに、現在の保有銘柄の大きさをヒートマップ形式で見られたり、期間別の資産増減率もグラフで一目で把握できます。

 

多彩なビジュアルと豊富な分析機能はおそらく業界随一でしょう。

3-3 配当株投資に適した「配当管理」 

最後に、配当狙いで株式投資している人に便利な「配当管理」というアプリをご紹介します。

このアプリは、保有している銘柄の購入価格と購入株数を入力すると、自動的に配当金を計算してくれるのが特徴です。

証券会社との連携はしておらず、手入力が必要です。

日本株・米国株・投資信託に対応しており、評価額別、配当金別、業種別に資産比率を円グラフで見ることできます。

また年間や月別にどれくらいの配当が入るのか、税引き前と税引き後の数字を自動で割り出してこれもグラフ化してくれます。

筆者が地味にすごいと思うのは、購入価格に対する配当利回り(購入利回り、取得利回り)を自動計算して出してくれるところ。

配当利回りは株価上昇とともに相対的に数値が低下しますが、何度も増配を続ける「累進配当」銘柄なら、購入価格に対する利回りは当然上がっていきます。

これを出してくれるサービスはほかではなかなか見当たらず、前章で紹介したExcel版のポートフォリオに記入して配当株の追加投資を考える指標にしています。

配当株を長期保有するモチベーションが上がるのでとてもありがたいです。

銘柄数を無制限に増やせる「プレミアム」会員は月額280円と安価なので、配当投資メインの人はぜひ一度使ってみてください。

まとめ

投資ポートフォリオの作り方、いかがだったでしょうか。

重要性や役割について説明しましたが、まずは「ポートフォリオ」という概念を身につけ、常に頭に思い浮かべられるようにすることが大事です。

多くの個人投資家はあまり細かく考えずに投資をしていますが、ポートフォリオがしっかり頭にあるかないかで投資戦略ががらりと変わり、資産形成の速度もかなり違ってくるはず。

お持ちの証券アプリである程度まとまったポートフォリオは見れますが、なかなか自分の見たいデータが一覧にまとまっていないのが実情です。

そこで、Excelやスプレッドシートで自作してしまうか、便利なサイトやアプリを有効活用するのも有効であることを説明してきました。

この記事で解説してきたのは、たくさんあるポートフォリオ作成のごく一例にすぎません。

ご自身で好きなだけカスタマイズして最適化し、資産形成に役立つポートフォリオを手に入れてください。

 

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