
日経平均株価が上がるとどうなる?私たちの生活・企業・日本経済への影響を徹底解説
日経平均株価が上昇することは、単なる「数字の増加」にとどまらず、私たちの生活、企業の経営、そして国全体の経済構造に複雑な連鎖反応を引き起こします。
この記事では、日経平均株価が上がると具体的に何が起きるのかを、「家計・個人」「企業」「国家・経済」の3つの視点から、多角的に解説します。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
日経平均株価の上昇が、私たち一人ひとりの生活にどのような変化をもたらすのか。特に「家計・個人」というミクロな視点に絞り、資産効果、年金、格差、そして心理的変容という4つの観点から、具体的な数字を交えて深掘りします。
1. 家計・個人への影響:富の再分配と生活の質
日経平均が上昇した際、家計に与える影響は「直接的な資産増」と「間接的な社会還流」の二階建て構造になっています。しかし、その恩恵は決して均一ではなく、現代社会における新たな課題も浮き彫りにします。
① 資産効果(ピグー効果)の具体像:いくら増えて、どう動くのか
日経平均が例えば 30,000円から40,000円へと33%上昇 したケースを想定してみましょう。
NISA・iDeCoのインパクト: 現在、日本の個人金融資産は約2,100兆円を超えていますが、そのうち半分以上は現預金です。しかし、近年の新NISA導入により、投資信託や株式へのシフトが進んでいます。仮に成長投資枠とつみたて投資枠で計500万円を日本株インデックスに投じていた世帯では、単純計算で 約165万円の含み益 が発生します。
富裕層の消費行動: 資産が数億円規模の富裕層にとって、株価の3割上昇は数千万から数億円単位の資産増を意味します。これが百貨店の外商売上や高級外車の販売台数に直結します。例えば、日経平均が好調な時期には、1,000万円を超える高級時計や、都心の数億円規模のタワーマンションの成約率が目に見えて上昇します。これが「富の再分配」の第一歩となる消費の呼び水です。
② 年金制度の安定化:目に見えない「最大の恩恵」
多くの現役世代が「自分は株を持っていないから関係ない」と考えがちですが、実は日本で最大の投資家は、私たちの年金を管理・運用する GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) です。
運用資産の構成: GPIFは約250兆円(2024年度時点)を運用しており、その基本ポートフォリオの 25%(約60兆円以上) を国内株式に割り当てています。
数字で見る安定: 日経平均が10%上昇するだけで、年金原資には単純計算で 6兆円規模の利益 が上積みされます。これは、少子高齢化で現役世代の負担が増す中、将来の年金支給額の減額を食い止め、あるいはマクロ経済スライドによる調整幅を抑制する強力な後ろ盾となります。株高は、すべての国民の「老後の安心」という公共財を強化しているのです。
③ 賃金への波及メカニズム:期待と現実のタイムラグ
株価の上昇は、企業の「将来の利益に対する期待値」です。これが実際の家計所得(給与)に反映されるまでには、通常 半年から1年半程度のタイムラグ が生じます。
業績連動賞与の増加: 日経平均構成銘柄の多くを占める大企業(トヨタ、ソニー、三菱UFJなど)は、純利益に連動した賞与体系を持っています。株価が史上最高値を更新するような局面では、過去最高のボーナス支給額がニュースを賑わせます。
ベースアップ(ベア)への圧力: 株価高騰により時価総額が増大した企業は、労働組合からの賃上げ要求を拒む正当な理由を失います。「株主還元(配当)を増やしているなら、従業員にも還元すべきだ」という社会的圧力が強まるためです。実際、2024年の春闘で見られたような5%を超える高い賃上げ率は、歴史的な株価上昇と表裏一体の関係にあります。
④ 「持てる者」と「持たざる者」の格差拡大
ここで無視できないのが、生活の質の「二極化」です。
キャピタルゲインの有無: 日本の家計の現預金比率は約52%と、米国の約13%に比べて圧倒的に高いのが現状です。日経平均が上昇する局面で、資産を「円(現金)」だけで持っている家計は、相対的に購買力が低下します。
インフレの副作用: 株価が上がる背景に「インフレ(物価上昇)」がある場合、投資をしていない世帯にとっては、給与が上がらない限り、スーパーの食料品や電気代の負担だけが増える 「実質賃金のマイナス」 状態に陥ります。
例: 日経平均が20%上がっても、食品価格が10%上がり、給料が2%しか上がらなければ、投資をしていない世帯の生活の質(QOL)は実質的に低下します。
⑤ 心理的影響:アニマルスピリッツと「心の余裕」
最後に、数字には表れにくい「心理的QOL」の変化です。
将来不安の軽減: 連日のように「日経平均最高値」という明るいニュースが流れることで、社会全体に「日本経済はまだ終わっていない」というポジティブなムードが漂います。これは行動経済学でいう「アニマルスピリッツ(動物的衝動)」を刺激し、起業や転職、出産、住宅購入といった大きなライフイベントへの決断を後押しします。
セカンドライフの質の向上: 退職金を日本株で運用している高齢者層にとって、株高は「趣味や孫へのプレゼント」に使える余裕資金を生みます。これが地域のサービス業を支え、地域経済の活性化に寄与します。
結論:家計にとっての「日経平均」とは
日経平均が上がることは、家計にとって単なる「博打の勝ち」ではありません。それは、「自分が社会に提供している労働の価値」や「預けている年金」が、世界から高く評価されていることの証明です。
しかし、その恩恵を最大限に享受するためには、現預金一辺倒からの脱却、つまり「経済の成長に乗るためのツール(投資)」を賢く活用する姿勢が、かつてないほど重要になっています。株価上昇は、個人の生活を豊かにする「エンジン」ですが、そのエンジンに自分を繋いでいるかどうかで、見える景色は180度変わってしまうのです。
日経平均株価の上昇は、企業の経営者にとって単なる「時価総額の増加」という記号的な意味を超え、経営戦略そのものを根本から変える強力なレバレッジとなります。
特に、日本企業が長年陥っていた「守りの経営(コストカットと内部留保)」から、リスクを取って未来を買う「攻めの経営」へと舵を切る際、株価の推移は決定的な役割を果たします。ここでは、資金調達、M&A、人材獲得、そしてガバナンスという4つの側面から、そのメカニズムを深掘りします。
2. 企業への影響:攻めの経営への転換
株価は、市場がその企業に対して下した「未来の通信簿」です。日経平均が上昇し、自社の株価が高水準を維持することは、企業に「最強の通貨」と「最良の盾」を与えることに他なりません。
① エクイティ・ファイナンスの魔法:低コストでの巨額投資
株価が高い時期、企業は銀行からの借り入れ(デット・ファイナンス)に頼らず、新株を発行して市場から直接資金を調達する「エクイティ・ファイナンス」を有利に進めることができます。
希薄化の抑制: 例えば、1,000億円の資金が必要な場合、株価が1,000円なら1億株発行しなければなりませんが、株価が5,000円まで上昇していれば、わずか2,000万株の発行で済みます。既存株主の持ち分を大きく減らす(希薄化)ことなく、巨額のキャッシュを手にできるのです。
半導体・AIへの巨額投資例: 近年、次世代半導体やデータセンターへの投資には数千億から数兆円単位の資金が必要です。日経平均の上昇に伴い時価総額を伸ばしたハイテク企業は、この高株価を背景に、次世代の覇権を握るための設備投資を断行しています。これは「キャッシュが潤沢にあるから投資する」のではなく、「株価が高いから(市場の期待があるから)投資を加速できる」という逆転の発想です。
② 自社株という「最強の通貨」によるM&A
「攻めの経営」の筆頭はM&A(合併・買収)です。株価が高い企業は、現金の代わりに自社株を使って他社を買収する「株式交換」という手法を駆使できるようになります。
グローバル競争力の獲得: 日本の時価総額上位企業(トヨタ、ソニー、キーエンスなど)が、海外の成長企業を買収する際、自社の株価が高ければ高いほど、より「少ない株数」で「大きな価値」を手に入れられます。これは通貨における「円高」のような状態であり、海外資産を割安に買い叩く武器となります。
事業ポートフォリオの刷新: 旧来のビジネスモデルに固執せず、高株価を背景に新興のIT企業やバイオ企業を傘下に収めることで、企業は「時間を買う」ことができます。自社で10年かけて開発する技術を、高株価を利用した買収によって1年で手に入れる。このスピード感こそが、株価上昇がもたらす最大の経営的メリットです。
③ 人材獲得競争(War for Talent)の勝利
現代の経営において、最も希少な資源は「優秀な人材」です。株価の上昇は、採用市場における企業のブランド力を劇的に向上させます。
ストックオプションの魅力: 優秀なエンジニアや経営幹部を招聘する際、高い株価は「ストックオプション(自社株をあらかじめ決められた価格で購入できる権利)」の価値を爆発させます。株価が右肩上がりであれば、数年後のキャピタルゲインを報酬として提示できるため、GAFAのようなメガテック企業とも互角に渡り合えるようになります。
リテンション(引き止め)効果: 社員が持株会などを通じて自社株を保有している場合、株価の上昇はそのまま個人の資産増につながります。これにより、「この会社をさらに成長させて株価を上げよう」というインセンティブが働き、士気の向上と離職率の低下に寄与します。
④ ROE(自己資本利益率)への意識とガバナンス
日経平均が上昇する局面では、投資家の目はより厳しくなります。「株価が上がっているのだから、もっと効率的に稼げ」という圧力が強まるのです。
資本効率の最適化: かつての日本企業は、現金を溜め込む「キャッシュリッチ」が美徳とされてきました。しかし、株高局面ではPBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正や、ROE 8%〜10%の達成が強く求められます。
「攻め」の還元と投資: 余剰資金をただ寝かせるのではなく、自社株買いを行って株価をさらに押し上げるか、あるいは成長分野へ再投資するか。この二択を迫られることで、経営のスピードが加速します。東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営」の要請は、日経平均の上昇と相まって、経営者の背中を「現状維持」から「攻め」へと強力に押し出しています。
⑤ ブランド価値と「勝ち馬」の心理
取引先、銀行、顧客、そして官公庁。あらゆるステークホルダーは「株価が上がっている企業」を「成功している企業」と見なします。
好循環の創出: 株価が上がると、銀行は融資枠を広げ、取引先は安定した供給先として信頼を寄せます。また、BtoC企業であれば「勢いのある会社の製品を使いたい」という消費者の心理にも働きかけます。この「勝ち馬に乗る」心理が、さらなる受注や提携を生み出し、実体経済の業績を後押しするという、期待が現実を先行して引っ張り上げる現象(自己充足的予言)が発生します。
結論:株価上昇は「経営の自由度」を拡張する
企業にとって、日経平均の上昇は単に時価総額が増えて経営者が悦に浸るためのものではありません。それは、「失敗を恐れずに挑戦できるチケット」を手に入れるプロセスです。
株価が低い企業は、失敗すれば即座に買収の脅威(アクティビストからの攻撃)にさらされるため、保守的にならざるを得ません。しかし、株価が高い企業は、一時的な投資赤字を市場が「将来のための必要なコスト」として許容してくれるため、大胆なイノベーションに挑むことが可能になります。
このように、株価の上昇は日本企業から「縮み志向」を払拭し、世界と戦うための「攻めの姿勢」を取り戻させる、最強のカンフル剤となっているのです。
・投資で収入を得たい、資産を増やしたい YES or NO
・リスクはできるだけ抑えたい YES or NO
・投資先の見極め方を知りたい YES or NO
・成功している投資家と接点が欲しい YES or NO
・物価上昇への対策には投資が必要と考えている YES or NO
日経平均株価の上昇は、一企業の業績を超え、国家という巨大なシステムの歯車を大きく動かします。それは、政府の財政を潤し、国際的なプレゼンスを高める「福音」となる一方で、マクロ経済の構造的な「歪み」を露呈させる諸刃の剣でもあります。
「国家・経済全体への影響」というマクロの視点から、税収、海外資本の動向、そして格差という光と影の側面を、具体的な数字を交えて詳説します。
3. 国家・経済全体への影響:好循環か、それとも歪みか
国家にとって、日経平均株価は「経済の体温計」であると同時に、政策の成否を測る「国民の期待値」そのものです。株高が持続することで、日本の経済構造にはどのような不可逆的な変化が起きるのでしょうか。
① 国家財政への直撃:税収増という「打ち出の小槌」
株価の上昇は、財務省にとってこの上ない追い風となります。政府の歳入は、主に「所得税」「法人税」「消費税」の3本柱で成り立っていますが、株高はそのすべてを押し上げる力を持っています。
法人税収の拡大: 日経平均を構成する225銘柄の多くは、日本を代表するグローバル企業です。株価が史上最高値を更新するような局面では、企業の純利益も過去最高水準であることが多く、法人税収は劇的に増加します。例えば、日本の法人税収は近年、好調な企業業績を背景に 15兆円規模 を維持しており、これは景気低迷期の数倍に相当します。
譲渡所得税と配当課税: 投資家が利益を確定(利確)した際に発生する約20%の譲渡所得税や、配当金にかかる税金も無視できません。株価が3万円から4万円に上がれば、その1万円の差益に対して2,000円が国庫に入ります。NISAの普及で一部は非課税となりますが、特定口座での取引や海外投資家による納税を含めると、数兆円規模の税収インパクトを生み出します。
財政再建と社会保障: これらの増収分は、防衛費の増額や少子化対策、あるいは膨張する社会保障費の補填に使われます。株高は、増税という痛みを伴わずに国家予算を確保するための、唯一と言っていい「ポジティブな解決策」なのです。
② 国際金融センターとしての復権:海外資本の流入
日経平均が上昇し続けることは、世界の投資家に対して「日本市場は稼げる場所だ」という強烈なメッセージを送ることになります。
「日本買い」の加速: 海外投資家は東京証券取引所の売買代金の約6割から7割を占めています。日経平均が上昇トレンドに入ると、世界中の年金基金やヘッジファンドがポートフォリオにおける日本株の配分(ウェイト)を引き上げます。
円の価値と投資の連動: かつては「円安=株高」という単純な構図でしたが、近年は「日本企業の収益力向上」を評価した質の高い買いが見られます。海外から巨額の投資資金が流れ込むことで、国内のスタートアップへのリスクマネー供給や、地方への外資系工場誘致(例:TSMCの熊本進出に関連した投資など)が促進され、経済の血流が改善します。
③ 通貨価値と物価:円安株高の功罪
日経経済全体を語る上で避けて通れないのが、為替(円相場)との関係性です。
輸出企業の利益ブースト: 日経平均は輸出企業の比重が高いため、1円の円安が数百億円の利益押し上げ要因となります。これが株価を押し上げる「円安メリット」です。
輸入物価高による「悪いインフレ」: 一方で、株価上昇の原動力が「過度な円安」である場合、エネルギーや食料を輸入に頼る日本にとって、国民生活は圧迫されます。経済全体としては「株高で景気が良さそうに見えるが、実質賃金はマイナス」という歪な状態(スタグフレーションに近い状況)を招くリスクがあります。国家としては、株価という「名目上の数字」の成長と、国民の「実質的な購買力」のバランスをどう取るかという、極めて難しい舵取りを迫られます。
④ 経済の歪み:資産格差と「K字型」の成長
国家全体が潤っているように見えても、その内実には深刻な「歪み」が生じている可能性があります。
K字型経済の鮮明化: 株高の恩恵を受けるセクター(半導体、商社、金融など)と、コスト高に苦しむセクター(飲食、建設、中小の小売など)で、経済の二極化が進みます。これを「K字型成長」と呼びます。
持たざる層の不満と政治不安: 資産運用をしている層が豊かになる一方で、貯蓄を持たない層や低所得層は、株高に伴う物価高の悪影響だけをダイレクトに受けます。この「富の偏在」が放置されると、社会的な分断や政治的なポピュリズムを招く恐れがあります。国家経済の健全性は、日経平均の数字だけではなく、その利益がどれだけ「中間層」以下に滴り落ちているか(トリクルダウンの成否)にかかっています。
⑤ 構造改革への「猶予期間」か「免罪符」か
最も重要な影響は、株価上昇が政府や企業に与える「心理的余裕」の使い道です。
改革のチャンス: 株価が高い時期は、痛みを伴う構造改革(労働市場の流動化や非効率な産業の整理)を進めやすい時期です。経済に余力があるうちに、次の30年を見据えた成長戦略を打てるかどうかが、国家の命運を分けます。
現状維持の罠: 逆に、株価が上がっていることに満足し、「今のままで大丈夫だ」という錯覚に陥ると、日本経済の根本的な弱点(少子高齢化、生産性の低さ)の解決が先送りされてしまいます。この場合、現在の株高は未来からの前借りに過ぎず、バブル崩壊のような手痛いしっぺ返しを食らうことになります。
結論:日経平均は「国家の意思」を試している
日経平均が上がることは、国家にとって 「経済の再起動(リブート)」のための莫大なエネルギー を得ることと同義です。増える税収、戻ってくる海外資本、そして高まる国民の自信。これらは日本が再び世界の経済大国として存在感を示すための最強のツールです。
しかし、その影には「物価高への苦しみ」や「拡大する格差」という、無視できない歪みが確実に存在します。国家経済全体の視点に立てば、株価上昇はゴールではなく、あくまで「手段」です。得られた富とエネルギーを、いかにして次世代の技術、教育、そして格差の是正に投資できるか。
日経平均の数字が踊る時、私たちはその裏側にある「経済の質」を問い直す必要があるのです。
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日経平均株価が史上最高値を更新し、華やかなニュースがメディアを席巻する裏側で、確実に進行しているのが「社会の歪み」です。株価という数字が上昇することは、必ずしもすべての国民の幸福に直結するわけではありません。
むしろ、現代の株高は「資産格差の固定化」と「インフレによる生活の浸食」という、極めて深刻な副作用を伴っています。この「影」の部分を徹底的に深掘りします。
4. 知っておくべき「影」の側面:格差と物価
株価上昇がもたらす「光」が強いほど、その背後に落ちる「影」もまた濃くなります。私たちは、日経平均の好調を「日本経済の復活」と手放しで喜ぶ前に、そこで置き去りにされている人々と、家計を圧迫するコストの正体を直視しなければなりません。
① 資産格差の拡大:二極化する「K字型社会」の正体
株価上昇の恩恵を最も受けるのは、当然ながら「株式を保有している層」です。しかし、日本の家計構造を見ると、その恩恵は極めて限定的な層に集中しています。
「持てる者」の加速度的な資産増: 金融資産を数千万円単位で保有し、新NISAや特定口座で運用している世帯にとって、日経平均の30%の上昇は、年収に匹敵する、あるいはそれを上回る資産増をもたらします。これにより、教育、居住環境、医療といった「将来の選択肢」がさらに広がります。
「持たざる者」の相対的困窮: 一方で、金融広報中央委員会の調査によれば、単身世帯の約3割、二人以上世帯でも約2割が「金融資産非保有(貯蓄ゼロ)」の状態にあります。株価がどれほど上がっても、彼らの資産は1円も増えません。それどころか、後述する物価高によって、実質的な購買力は低下し続けます。
「r > g」の現実: 経済学者トマ・ピケティが提唱した「資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回る」という公式が、今の日本で鮮明に現れています。労働によって得られる賃金の伸び(g)よりも、株などの資産運用から得られる利益(r)の方が圧倒的に速いため、働くだけの人と投資する人の格差は、埋めようのないほどに拡大しているのです。
② 「悪い物価高」との相関:株高が生活を苦しめる皮肉
日経平均の上昇要因が「円安」や「企業の価格転嫁」にある場合、それは消費者にとっての「痛み」と表裏一体です。
輸入インフレの直撃: 日経平均を牽引する輸出大企業は、円安によって円建ての利益が膨らみ、株価が上がります。しかし、円安は同時にガソリン、電気代、小麦、大豆といった輸入依存度の高い生活必需品の価格を押し上げます。
具体例: 1ドル=110円から150円への進行は、企業利益を数千億円押し上げる一方で、一般家庭の年間支出を数万円〜十数万円単位で増加させます。株を持っていない家計にとって、この「円安株高」は、自分の財布から企業の利益へと富が移転しているようなものです。
実質賃金のマイナス行進: 株価が景気の先行指標として上がる一方で、賃金の伸びが物価上昇に追いつかない期間が長期化しています。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」でも、名目賃金が上がっても物価を差し引いた「実質賃金」が前年割れを続ける現象が常態化しました。この「数字上の景気良さ」と「生活の実感」の乖離が、国民の閉塞感を生む原因となっています。
③ 世代間格差の固定化:若年層と高齢層の断絶
株価上昇は、世代間の不平等をさらに固定化させる側面を持っています。
先行者利益を得る高齢層: 日本の個人金融資産の約6割〜7割は、60歳以上の高齢層が保有しています。バブル期を経験し、長年資産を蓄積してきた層は、近年の株高でさらに「逃げ切り」を確かなものにします。
投資原資のない若年層: 一方で、これから資産を築かなければならない若年層は、手取り給与の少なさから投資に回す余裕がありません。ようやく投資を始めようとした時には既に株価が高値圏にあり、「割高な局面で買わされる」というリスクを背負うことになります。住居費の高騰も相まって、若者が資産形成の波に乗るハードルは年々高くなっています。
④ 地方と都心のデバイド(分断)
日経平均株価を構成する企業のほとんどは、東京に本社を置く大企業です。そのため、株高の恩恵は極めて「地理的」にも偏っています。
都心の不動産バブル: 株高で潤った富裕層や法人マネーは、都心の超一等地の不動産へと流れ込みます。これがマンション価格の異常な高騰を招き、平均的な会社員が職住接近の生活を送ることを不可能にしています。
取り残される地方経済: 地方の中小企業や商店街にとって、日経平均の数字は遠い世界の出来事です。原材料費の高騰(コストプッシュ・インフレ)に苦しみ、賃上げの原資もない地方経済にとって、中央の「株高フィーバー」は、むしろ人手不足やコスト増を加速させる要因としてネガティブに作用することすらあります。
⑤ 心理的「相対的剥奪感」の増幅
最後に挙げるべきは、社会の精神的な健康への影響です。
SNSによる可視化: 以前と違い、現在はSNSを通じて他人の「投資成功体験」が嫌でも目に入ります。「NISAで数百万円儲けた」「株のおかげでFIRE(早期リタイア)した」という情報が溢れる中で、日々の労働に追われ資産を持てない人々は、強い「相対的剥奪感(周りが自分を追い越していく感覚)」を抱きます。
連帯感の喪失: 「国民一丸となって経済成長を」というスローガンは、恩恵がこれほどまでに偏っていては機能しません。株高が社会の分断を加速させ、持てる者への嫉妬や、持たざる者への無関心を生む土壌となっているのです。
結論:影を照らすための「分配」と「教育」
日経平均の上昇という「光」は、確かに日本経済に必要なエネルギーです。しかし、その影で進行している格差と物価高を放置すれば、社会の土台そのものが揺らぎかねません。
今、求められているのは以下の2点です。
実質賃金を押し上げる構造的賃上げ: 株高の恩恵を、配当だけでなく「給与」として全労働者に還元する仕組みの強化。
金融リテラシーの格差是正: 投資を「一部の人の特権」から「国民のインフラ」へと変えるための、より踏み込んだ教育と支援。
株価が上がって「どうなるか」。その答えは、「資産を持つ者はさらに富み、持たざる者はインフレの波に飲まれる」という冷徹な現実にあります。この影の部分を理解し、いかにして自分と家族を守るか。そして、国家としていかにしてこの歪みを補正していくか。日経平均の数字は、私たちにそんな重い問いを突きつけているのです。
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