仮想空間に投資!? 最新の不動産投資「メタバース投資」って何?

「メタバース」とは『仮想世界』のこと。つまり『メタバース不動産投資』とは、仮想世界(メタバース)内での土地や建物などのデジタル資産を購入・運用して収益を得る投資のことです。しかし、仮想空間である以上、現実味がないと思われるのも当然と言えます。

何より、どうやって個人保有であることを証明するのか? はたまた、誰が何の用途で仮想空間の土地・建物を購入するのか? など、よくわからない点が多いでしょう。そこで今回は、未来の投資として昨今噂になっている「メタバース不動産投資」の詳細はもちろん、投資としての可能性などについて解説していきます。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、「会社四季報」編集長との共同セミナーに講師として登壇(東京証券取引所主催)するなど、著書に講演依頼、メディア出演も多数。「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

「メタバース不動産投資」について知ろう

冒頭で紹介したように「メタバース不動産投資」とは、仮想世界内の土地や建物を運用する画期的な投資手法のことです。投資と名が付く以上、利益をもたらす可能性がある訳ですが、複雑な仕組みゆえ、さほど浸透していないあたりは否めません。

そこでまず1章では「メタバースとは何か?」を主眼に解説していきます。

そもそも「メタバース」とは何か?

冒頭でも少し説明しましたが、メタバースとは、インターネット上に存在する仮想空間のことを指し、ユーザーがその中で交流したり、コンテンツを作成したり、さまざまな活動を行うことができるデジタル環境です。

さらに、現実世界と同じようにユーザー同士がリアルタイムで関わり合い、仮想空間での社会活動や経済活動を行うことが可能な空間でもあります。具体的な特徴をいくつか挙げると・・・

⚫︎仮想空間である

3DグラフィックスやVRなどの技術を活用して、物理的な制約がないデジタル空間を提供。ユーザーはその中で自由に移動したり、物を作ったりなど、様々な形でコミュニケーションを取ることができます。

⚫︎アバターを通じて活動する

メタバース内での活動は、ユーザーが操作する「アバター」と呼ばれるデジタルキャラクターを介して行われます。アバターは、ユーザーの分身として、仮想空間内での生活や仕事、娯楽などに参加します。

⚫︎リアルタイムで交流できる

メタバースは、リアルタイムで他のユーザーと交流することが可能。ユーザー同士が同時に仮想空間内に存在し、互いにチャットでやり取りをしたり、はたまた共同作業をしたり、遊んだりすることができます。

⚫︎経済活動の実現

メタバース内では、仮想通貨やNFT(非代替性トークン)を用いた経済活動が盛んです。ユーザーは、デジタルアートやアイテム、土地・建物などを購入・売却することができ、仮想世界で収益を上げることも可能です。今回フォーカスしている不動産投資もその一つと言えるでしょう。

メタバースの不動産投資と仮想通貨の関係とは?

メタバースと仮想通貨は、デジタル世界での活動を支える重要な技術とコンセプトであり、互いに密接に関連しています。具体的な役割は、メタバースが仮想空間でのコミュニケーション、経済活動、エンターテインメントの場を提供する一方、仮想通貨はその中での取引や資産の管理を支える基盤として機能しているというわけです。関係性についてもう少し掘り下げていくと・・・

⚫︎仮想通貨による取引の標準化

メタバース内での取引や経済活動は、ほとんどの場合、仮想通貨を通じて行われます。メタバース内で使用される仮想通貨はブロックチェーン技術を基盤としており、信頼性や透明性を確保しつつ、グローバルに取引することが可能です。

⚫︎NFT(非代替性トークン)とデジタル資産の所有

メタバースでは、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)がデジタル資産の所有権を証明する手段として広く利用されています。NFTは唯一無二のデジタルアイテムを表し、ユーザーは土地やアバター、アート、ゲーム内のアイテムなどをNFTとして所有、売買、交換することが可能。これにより、仮想通貨はNFTの購入や取引をサポートする経済的インフラを提供しているという役割を持っています。

⚫︎経済圏の形成

仮想通貨は、メタバース内での経済活動を支える重要な役割を担います。ユーザーは、仮想不動産の購入、デジタルアイテムの取引、サービスの提供、イベントの参加など、あらゆる経済活動を仮想通貨を使って行います。つまり仮想通貨は、メタバース全体にわたる経済圏を形成し、ユーザー同士や企業との間で新たなビジネスモデルを生み出す重要な役割を担っているということです。

メタバース不動産投資が持つ3つのメリット

仮想空間で行うことができる経済活動の一つである「メタバース不動産投資」ですが、意外と知られていないのが持つ「メリット」についてです。そもそも現物に投資する訳ではないので、メリットはもちろん、デメリットすら中々認知されていないのではないか? と思います。そこで同章では、メタバース不動産投資が持つ3つのメリットについて紹介していきます。

①費用が少額で済む

メタバース不動産の価格は、現実世界の不動産に比べて比較的安価で始めることができると言われています。特に、新しいメタバースプラットフォームや未開発の土地は価格が低いことが多く、低リスクで参入できるチャンスと言えます。

とは言え、価格の程はどうなのか? 具体例を挙げると、The Sandboxというメタバース・プラットフォームの場合、2023年2月時点での最低価格が0.8049ETH、イーサリアムの当時のレートに換算すると、約18万円となります。果たしてこの価格が安いのか、はたまた高いのかは個々の感覚によるところが大きいでしょう。ただし、現物の不動産を購入する際にかかる手数料や税金などがかからないため、その点においては優れていると言えるのではないかと思います。

②管理費用ゼロ

くどい様ですが、メタバース不動産投資で運用するのはデジタル内のものなので、管理費や維持費はかかりません。広い意味で言えば「サーバー利用費」や「ネット使用料」などが維持費に該当するのかもしれませんが、不動産投資の範疇で言うなら、諸経費は一切かからないと言えます。

③劣化・災害リスクがない

言うまでもありませんが、現物の建物は経年劣化や災害によるリスクを伴います。しかしメタバース不動産は「デジタルデータ」なので、現物で起こりうる劣化や災害によるリスクはありません。買ったら買いっぱなしでOK。簡単に言うとそういう性質のものです。

運用時に注意すべき3つのポイント

前章で紹介したメリットを見るに、メタバース不動産投資にデメリットなどないのでは? と錯覚してしまう方もいるかもしれません。しかし、投資である以上、必ず何かしらのリスクはありますし、デメリットもまた然りです。そこで同章では、運用時の注意点にフォーカスしていきます。

①仮想通貨の価格変動が大きく影響する

前記の様に、メタバース不動産は仮想通貨を使って購入します。そのため、仮想通貨の価格が上昇するとメタバース不動産の価格も上昇し、仮想通貨の価格が下落するとメタバース不動産の価格も下落するといった様に、価格変動が大きく影響するのです。つまり、不動産を購入する前に仮想通貨を始める必要があるため、種類にもよるものの、個々の特徴や性質についてある程度把握しておく必要があると言えます。

②価格の変動が激しい

メタバース不動産市場は、現実世界の不動産市場に比べて極めて新しいため、価値の変動が激しいことで知られています。土地や資産の価格は、投機的な動きや市場の熱狂、メタバースプラットフォームの人気に大きく依存します。そのため、短期間で価値が急上昇することもあれば、反対に急落するリスクもあるのです。

③法定整備が完全ではない

物理的な資産ではなくデジタルなものであるため、法律の枠組みが不十分です。現時点では、仮想資産に関する規制が各国で異なり、適用される法律が不透明であることは否めません。今後、法改正や規制強化が行われる可能性があり、それによって投資環境や資産の価値に影響を及ぼすリスクがあることは明白です。よって、ある程度法定整備が施された後、参加人数は増えていくのではないか? と考えられています。

メタバース不動産投資で利益を出す具体的な方法について

新しい投資手段である以上、メタバース不動産投資における収益モデルについては、あまり広く認知されていないと思います。まず、どんな方法で利益を出すのか? について解説すると、例えばバーチャル看板やディスプレイ広告を設置し、そこに企業広告を募り、広告収入を獲得する方法

はたまた、自身が購入した建物を他のユーザーや企業に貸し、賃料を得ると言った方法などがメインと言えるでしょう。不動産投資という範疇でできることは、以下の3つです。

  • メタバースの土地の売買
  • メタバースの土地の貸し出し
  • 建物をメタバースの土地ごと売却

以上になります。運用スタイルは現物の不動産とほぼ変わらず、安い時に購入して、価格が上がったタイミングで売却する形です。

もしビジネスとしてメタバース不動産を利用するとしたら、以下の手段で利益を獲得することが見込めます。

  • 店舗運営
  • イベント開催
  • ゲーム
  • 広告収入

そこで疑問を覚えるのは、本当に仮想空間でビジネスを行っている企業があるのか? という点です。いくつか例を挙げると、誰もが知っているファストフードチェーンであるマクドナルドや、adidasなどの有名ブランドは既にメタバースに参入しており、新しいビジネスを展開すべく思案中だったりしますし、メタバースのプラットフォームであるDecentralandでは、2022年、2023年と「メタバース ファッションウィーク」と称したファッションイベントを開催しています。

仮想空間でそんなことをして、本当に需要があるのか? と思われるかもしれません。しかし昨今では、マインクラフトやフォートナイトといった、いわゆる「メタバース・ゲーム」内でも多くの企業が広告を出すなど、ビジネスを展開している様子が伺えます。世界的に人気のゲームである以上、広告を出す効果が高いのは言わずもがなでしょう。

3D空間に土地・建物を購入し、そこでビジネスを展開するという全く新しい分野の投資ですが、今後益々伸びていくジャンルであることは間違いありません。スタートして間もない今こそ、参加するチャンスと言えるでしょう。

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