
「金×金融×暗号資産」で見る、新時代の金融企業
金融業界では、従来型の銀行や証券会社だけでなく、実物資産やデジタル技術を組み合わせた新しいビジネスモデルが広がっている。今回取り上げるunbanked、FPG、トレイダーズホールディングスは、それぞれ事業領域こそ異なるものの、「資産」と「金融」を結び付け、新たな投資機会や金融サービスを生み出している点で共通している。unbankedは金地金を起点に融資やクラウドファンディング、ゴールドトークンなどへ展開し、「金×金融×暗号資産」という独自のポジションを目指す。FPGは航空機・船舶・不動産などの実物資産を金融商品へ組み込み、個人では直接投資しにくい資産への投資機会を提供する。一方、トレイダーズホールディングスはFXを基盤に、IT技術を活用した金融サービスや暗号資産へ事業領域を広げている。金、航空機、船舶、為替、暗号資産――一見すると全く異なる市場だが、そこには「従来の金融の枠を超えて、資産と投資家をつなぐ」という共通した発想がある。金融市場のデジタル化やオルタナティブ投資への関心が高まるなか、こうした企業がどのように独自の強みを築き、収益成長につなげていくのかが注目される。
| 企業名 | 証券コード | 市場 | 金・実物資産 | 金融サービス | 暗号資産・Web3 | unbankedとの主な共通点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| unbanked | 8746 | 東証スタンダード | ◎ | ◎ | ◎ | 金地金+融資+クラウドファンディング+ゴールドトークン |
| FPG | 7148 | 東証プライム | ◎ | ◎ | △ | 実物資産を活用した金融商品・資産運用 |
| SBIホールディングス | 8473 | 東証プライム | △ | ◎ | ◎ | 金融を軸に証券・銀行・暗号資産・Web3を展開 |
| マネックスグループ | 8698 | 東証プライム | △ | ◎ | ◎ | 証券・資産運用+暗号資産 |
| トレイダーズホールディングス | 8704 | 東証スタンダード | △ | ◎ | ◎ | FX・金融サービス+暗号資産 |
金を起点に金融と暗号資産へ――unbankedが描く「新しい金融」のかたち
「銀行に頼らない金融」を意味する社名を掲げるunbankedは、金地金を中心とした事業から、融資、クラウドファンディング、暗号資産・Web3へと事業領域を広げている企業だ。東京証券取引所スタンダード市場に上場する証券コード8746の企業で、かつての社名からブランドを一新し、新たな金融サービス企業への転換を進めている。
同社を理解するうえで重要なのが、「金×金融×暗号資産」という3つのキーワードだ。金は古くから価値保存手段として認識されてきた一方、暗号資産はブロックチェーンを基盤とする新しいデジタル資産である。一見すると対照的な存在だが、unbankedはその両者を金融サービスでつなごうとしている。
同社の従来からの中核事業の一つが金地金だ。金地金の販売・買取を通じて、投資家が現物の金を保有する機会を提供してきた。金は株式や債券とは異なり、企業の利益や国の信用そのものを裏付けとしない実物資産である。そのため、インフレや地政学リスク、金融市場の不安定化などを背景に、資産防衛の選択肢として注目されることがある。
しかし、現物の金には保管や売買の手間がある。そこで次のテーマとなるのが、金とデジタル技術の融合だ。unbankedは金価格との連動を目指すゴールドトークン「Kinka」など、Web3領域にも事業を広げている。金という伝統的な資産をブロックチェーン上のデジタル資産として扱うことで、従来の現物取引とは異なる金融サービスを目指している点が特徴だ。
さらに同社は、金地金だけの会社ではない。法人向け融資や融資型クラウドファンディングなど、資金を必要とする企業と投資家を結びつける金融事業にも取り組んでいる。ここに「金融」の要素が加わる。つまり、unbankedは単に金を販売する企業から、資産を持つ人、資金を必要とする企業、そしてデジタル資産を利用するユーザーを結びつける金融プラットフォーム型企業へと変化しようとしている。
このビジネスモデルを考える際、比較対象として参考になるのがFPG、SBIホールディングス、マネックスグループ、トレイダーズホールディングスなどだ。FPGは航空機や不動産などの実物資産を金融商品に組み込むビジネスに強みを持ち、SBIホールディングスは証券、銀行、資産運用、暗号資産など幅広い金融事業を展開している。マネックスグループやトレイダーズホールディングスも、既存金融とデジタル資産を組み合わせる方向へ事業を広げている。
ただし、unbankedの特徴は、巨大な総合金融グループを目指すというより、「金」という具体的な実物資産を起点に、新しい金融サービスを構築しようとしている点にある。ここが他社との大きな違いだ。
特に金と暗号資産を組み合わせる発想には、時代背景がある。世界ではインフレや地政学的緊張、金融政策の変化などを背景に、金への関心が高まっている。一方、暗号資産市場では、単純な価格上昇を狙う投機対象から、現実世界の資産や金融サービスとブロックチェーンを結びつける「RWA(Real World Assets)」への関心が高まっている。
RWAとは、金や不動産、債券など現実世界に存在する資産をデジタル化し、ブロックチェーン上で扱う考え方だ。もしこの市場が拡大すれば、金は「現物を保有する資産」だけではなく、「デジタル上で移転・管理できる資産」として新しい可能性を持つことになる。unbankedが取り組むゴールドトークンは、こうした大きな流れとも重なる。
もっとも、投資家が注意すべき点も多い。まず、暗号資産やWeb3事業は市場環境によって利用者や取引量が大きく変化する可能性がある。さらに、トークンを利用する場合には、ブロックチェーン技術そのものだけでなく、発行体、カストディ、取引所、規制など複数のリスクを考える必要がある。
また、金価格が上昇しているからといって、金関連事業を展開する企業の株価が必ず上昇するわけではない。企業の場合は、金価格に加えて、販売数量、売買スプレッド、在庫、為替、手数料収入、金融事業の収益性、Web3事業への投資負担など、さまざまな要因が業績に影響するからだ。
unbankedを見る際には、「金価格が上がるから有望」という単純な見方ではなく、金を入り口としてどこまで金融サービスの収益源を広げられるかを見る必要がある。金地金、融資、クラウドファンディング、Web3という複数の事業が相互に顧客や資金を呼び込むことができれば、従来型の金販売会社とは異なる企業価値を生み出す可能性がある。
一方で、事業領域を広げるほど、経営の難易度も高くなる。金、融資、クラウドファンディング、暗号資産では、それぞれ顧客層も規制環境もリスク特性も異なるためだ。今後は、各事業を単純に増やすのではなく、どの事業を成長の柱とし、どのように収益性を高めていくのかが重要になる。
unbankedの面白さは、古くから存在する「金」と、比較的新しい「暗号資産」を金融サービスという共通項で結びつけようとしているところにある。金は数千年にわたって価値を認められてきた一方、ブロックチェーンは金融の仕組みそのものを変える可能性を秘めている。この二つをつなぐことができれば、「現物資産をデジタル化する金融」という新しい市場の成長を取り込める可能性がある。
今後の投資判断では、金価格だけでなく、金融事業の収益、クラウドファンディングの拡大状況、Web3事業の利用実績、Kinkaなどデジタル資産関連事業の進展、そして各事業を統合することでどれだけ企業価値を高められるかに注目したい。
「銀行を介さない金融」という社名を持つunbankedは、既存金融への対抗軸というだけではなく、実物資産とデジタル資産を融合させることで、新しい金融の形を模索している企業といえる。金価格の上昇、RWA市場の拡大、暗号資産の制度整備という3つの潮流が重なれば、同社にとって大きな追い風となる可能性がある。一方、Web3市場の変動性や事業再構築のリスクも無視できない。伝統的な「金」と未来の「ブロックチェーン」の間に立つunbankedが、独自のポジションを確立できるのか。その成長力を見極めるには、今後の業績と事業展開を継続的に追うことが重要だ。
実物資産を金融商品に変えるFPG――高収益を生む独自の金融ビジネスに注目
FPGは、航空機や船舶、不動産などの実物資産を活用した金融商品を組成し、投資家に提供する独自のビジネスモデルを展開する企業だ。東京証券取引所プライム市場に上場し、証券コードは7148。一般的な銀行や証券会社とは異なり、企業や投資家が持つ資金と、航空機・船舶・不動産などの実物資産を結び付けることで収益を生み出している。
FPGを理解するうえで重要なのが「オルタナティブ投資」という考え方だ。株式や債券といった伝統的な金融商品だけではなく、航空機、船舶、不動産などを投資対象とすることで、投資家に新たな資産運用の選択肢を提供する。FPGはこうした実物資産を単純に売買するのではなく、金融商品として組成する点に強みがある。
代表的な事業の一つが航空機リースだ。航空会社が航空機を保有するのではなく、リース会社から航空機を借りて運航する仕組みは世界的に広く利用されている。FPGは航空機を投資対象とした商品を組成し、投資家から集めた資金を航空機などの資産に投資することで、投資家と航空会社、資産保有者をつなぐ役割を果たす。
航空機というと、個人投資家には非常に遠い存在に感じられる。しかし、金融商品として小口化・組成することで、投資家は巨大な航空機そのものを購入することなく、航空機リース市場への投資機会を得られる。この「実物資産を金融商品に変換する力」がFPGのビジネスモデルの核心だ。
船舶も重要な投資対象となっている。世界の物流を支えるコンテナ船やタンカーなどは、国際貿易に欠かせないインフラだ。船舶リースを金融商品化することで、世界の物流需要と投資家の資金を結び付けることができる。航空機と同様に、船舶も個人が直接保有することは難しいが、金融商品を通じて投資対象にできる点が特徴である。
不動産関連事業もFPGの成長を支える分野だ。不動産は株式や債券と異なり、土地や建物という実物資産そのものに価値が存在する。賃料収入や資産価値の上昇など、複数の収益源を持つことから、資産運用の世界では代表的なオルタナティブ資産として位置付けられている。
FPGの特徴は、こうした資産を単純に保有するのではなく、投資家のニーズに合わせた金融商品へと組み替えることにある。ここには金融知識だけでなく、税務、会計、法務、資産管理など幅広い専門性が必要になる。参入障壁が比較的高いことは、同社の競争力につながる可能性がある。
この点で、FPGは今回取り上げているunbankedとも共通点がある。unbankedは金地金という実物資産を金融サービスやゴールドトークンなどと組み合わせている。一方のFPGは、航空機、船舶、不動産などを金融商品に組み込む。両社の規模や事業内容は大きく異なるが、「実物資産と金融を組み合わせて新たな投資機会を生み出す」という点では比較しやすい企業だ。
ただし、FPGは暗号資産やWeb3を主軸としているわけではない。ここはunbankedとの大きな違いである。FPGの強みは、むしろ既存の金融制度や税務・会計の仕組みを活用しながら、実物資産を投資商品として提供することにある。
また、FPGを見る際には、金利や為替、景気、資産価格などのマクロ環境も重要になる。航空機や船舶の価値は、それぞれの市場環境に左右される。航空需要が拡大すれば航空機関連ビジネスに追い風となる一方、世界的な景気減速や地政学リスクが物流や航空需要を押し下げれば、関連事業に影響する可能性もある。
さらに、金融商品の組成を拡大するためには、投資家から継続的に資金を集めることが必要だ。そのため、商品そのものの魅力だけでなく、投資家からの信頼や販売ネットワークも重要な競争力になる。FPGが長期的に成長できるかを見るうえでは、組成商品の販売状況や資産残高、手数料収入などにも注目したい。
一方で、実物資産を扱うことにはリスクもある。航空機や船舶、不動産はいずれも市場環境によって価値が変動する。また、金利上昇によって資金調達コストが増加すれば、金融商品の収益性に影響を与える可能性がある。したがって、「実物資産だから安全」と考えるのは適切ではない。
FPGの魅力は、こうしたリスクを抱えながらも、個人ではアクセスしにくい巨大な資産市場と投資家をつなぐ金融インフラとして機能していることだ。航空機や船舶を購入するだけではなく、そこに金融、税務、会計、資産管理といった付加価値を加えることで、単なる資産販売会社とは異なる収益モデルを構築している。
今後、株式や債券だけに依存しない分散投資への関心が高まれば、オルタナティブ投資市場はさらに注目される可能性がある。特に世界の航空需要、海上輸送、不動産市場などが成長すれば、FPGのビジネスチャンスも広がる。
FPGは、「金融会社」という言葉だけでは事業内容を理解しにくい企業の一つだ。しかし、その本質を「実物資産を金融商品へ変換する会社」と捉えると、ビジネスモデルが見えやすくなる。航空機、船舶、不動産という巨大な実物資産市場と投資家を結び付けることで、資産運用の選択肢を広げているからだ。
金という実物資産を起点に金融と暗号資産へ進むunbankedに対し、FPGは航空機・船舶・不動産などを起点に金融商品を組成する。両社を比較すると、実物資産と金融を組み合わせるビジネスにはさまざまな形があることが分かる。FPGが今後も専門性を武器に新たな資産を金融商品へ取り込み、投資家に魅力的な選択肢を提供できるかは、同社の成長を占う重要なポイントとなりそうだ。
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FXの老舗が暗号資産へ――トレイダーズホールディングスが描く「金融×IT」の成長戦略
トレイダーズホールディングスは、外国為替証拠金取引、いわゆるFXを主力としながら、暗号資産やITシステム開発へ事業領域を広げている金融系FinTech企業だ。東京証券取引所スタンダード市場に上場し、証券コードは8704。1999年の創業以来、個人投資家向けの金融デリバティブ取引を中心に事業を展開し、現在は金融サービスとITテクノロジーサービスをグループの中核に据えている。
同社の最大の特徴は、FXを単なる金融商品として提供するだけではなく、取引システムそのものをグループ内に蓄積してきた技術力にある。グループのトレイダーズ証券では「みんなのFX」「LIGHT FX」「みんなのシストレ」「みんなのオプション」などを展開しており、個人投資家がオンラインで外国為替やデリバティブを取引できる環境を提供している。さらに2022年には暗号資産CFDサービス「みんなのコイン」を開始し、FXで培った顧客基盤や取引ノウハウを暗号資産領域へ広げている。
FXは、為替レートの変動を利用して利益を狙う金融商品だ。ドル、ユーロといった主要通貨だけでなく、高金利通貨なども取引対象となる。特に日本では、低金利環境が長く続いたこともあり、個人投資家によるFX取引が広く普及してきた。トレイダーズホールディングスはこうした個人投資家市場を事業基盤としてきた企業であり、長年にわたってオンライン金融サービスを提供してきたことが大きな強みとなっている。
一方で、FX市場は競争が激しい。各社がスプレッドやスワップポイント、取引ツール、キャンペーンなどで顧客獲得を競っており、単にFXサービスを提供するだけでは差別化が難しい。そのため、トレイダーズホールディングスにとって重要になるのが、金融とITを組み合わせたサービス開発だ。
グループ会社のFleGrowthは、金融システム開発で培った技術を生かし、取引システムの開発・保守・運用に加え、企業のDX支援なども手掛けている。つまり、トレイダーズホールディングスは「金融商品を売る会社」であると同時に、「金融サービスを動かす技術を持つ会社」でもある。金融事業とIT事業を組み合わせることで、サービスの改善や新商品の投入をスピーディーに進められる体制を目指している。
そして、今後の成長を考えるうえで注目したいのが暗号資産だ。トレイダーズ証券が提供する「みんなのコイン」は、ビットコインやイーサリアム、XRPなどを含む暗号資産CFDを取り扱っている。現物の暗号資産を直接保有するのではなく、価格変動を対象とした証拠金取引という形で提供している点が特徴だ。FXと暗号資産を近い取引環境で提供することで、既存のFXユーザーが新たな資産クラスにアクセスしやすくなる。
ここにトレイダーズホールディングスの「金融×暗号資産」という側面が見えてくる。今回取り上げているunbankedが「金×金融×暗号資産」を掲げる企業だとすれば、トレイダーズホールディングスは「FX×金融×IT」を起点に暗号資産へ展開している企業といえる。両社は事業内容こそ異なるが、従来型の金融サービスと新しいデジタル資産を結びつけようとしている点では共通している。
また、SBIホールディングスやマネックスグループなども、証券や銀行などの伝統的金融サービスに加えて暗号資産事業を展開している。トレイダーズホールディングスの場合は、巨大な総合金融グループを形成するというより、FXを中心とした専門性とIT技術を組み合わせて金融サービスを高度化する方向に特徴がある。
同社の業績を見る際に重要なのは、FX事業が市場環境の影響を受けやすい点だ。為替相場の変動が小さくなれば、投資家の取引機会が減少する可能性がある。一方、円安や円高が急速に進む局面では取引が活発化しやすく、金融市場の変動が収益機会につながることもある。したがって、同社の業績を確認するときには、単純な景気動向だけでなく、ドル円相場や金利差、金融政策などにも目を向ける必要がある。
特に日本銀行や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策は、為替市場を大きく動かす要因になる。政策金利や日米金利差への見方が変わればドル円相場が動き、FX取引にも影響する。つまりトレイダーズホールディングスは、世界の金融政策や為替市場の変化を比較的ダイレクトに受ける企業ともいえる。
暗号資産事業についても同様だ。ビットコインなどの価格が大きく動けば取引機会が増える一方、暗号資産市場そのものが低迷すれば取引需要が落ち込む可能性がある。また、暗号資産に関する規制や税制、取引環境の変化も事業に影響する。今後の成長を見るうえでは、暗号資産取引の利用者をどの程度取り込めるか、FXとのクロスセルを進められるかがポイントになりそうだ。
一方で、トレイダーズホールディングスは単純に市場環境に依存するだけではない。システム開発能力をグループ内に持っているため、取引ツールやサービスの改善を継続できる点は競争力につながる。金融サービスでは、注文の速さや安定性、スマートフォンでの操作性、投資情報の質などが利用者の選択に影響する。IT技術を金融事業と一体化させることで、顧客満足度を高める余地がある。
2026年に入ってからも同社は、金融教育やサービスの拡充などに取り組んでいる。2026年7月には、トレイダーズ証券における顧客の運用成果が2026年3月期以降で累計442億円を突破したと発表している。また、8月には金融経済に関する講座などを実施し、9月には高校生を対象とした外国為替ディーリング業務のジョブシャドウイングを開催した。こうした取り組みからも、金融サービスだけでなく金融リテラシーの向上を意識していることが分かる。
投資家にとっては、FX市場の変動、暗号資産市場の拡大、そしてFinTechの進化という3つのテーマを一度に追える点がトレイダーズホールディングスの面白さだろう。特に、既存の金融サービスを基盤にしながら新しい金融商品へ進出する企業は、急激な事業転換に比べて顧客基盤やノウハウを活用しやすい。
もちろん、FXや暗号資産はいずれも価格変動が大きく、規制変更などの影響も受ける。競合他社とのサービス競争も激しく、取引コストやツールの利便性を維持するための継続的な投資も必要になる。そのため、株価や利益だけを見るのではなく、口座数、取引高、収益構造、暗号資産事業の成長、IT事業の収益性などを総合的に確認することが重要だ。
トレイダーズホールディングスは、1999年にFXを中心とする金融デリバティブ企業としてスタートし、現在では金融サービスとITテクノロジーを融合するFinTechグループへと進化している。FXという成熟した金融市場を土台に、暗号資産という新しい資産クラスを取り込み、さらに自社グループのIT技術を組み合わせる。その姿は、金融業界が「店舗型」から「オンライン型」へ、そして「デジタル金融」へと変化してきた流れそのものでもある。
「金融を、もっと面白くする」という同社の理念が今後どこまで事業成長につながるのか。FX市場の変化だけでなく、暗号資産、FinTech、金融DXという複数の成長テーマを持つ企業として、今後のサービス利用状況と収益力の変化に注目したい。
実物資産から暗号資産まで――広がる金融ビジネスの可能性
今回取り上げた3社を比較すると、金融ビジネスの形が大きく変わりつつあることが見えてくる。unbankedは「金」という古くから価値を認められてきた実物資産と、ブロックチェーンを活用したデジタル資産を結び付けようとしている。FPGは航空機、船舶、不動産などの実物資産を金融商品として組成し、オルタナティブ投資の市場を開拓している。トレイダーズホールディングスはFXという既存の金融サービスを基盤に、IT技術と暗号資産を組み合わせ、デジタル金融の領域へ進出している。それぞれのビジネスモデルは異なるものの、共通するのは「資産そのもの」だけでなく、そこに金融サービスやテクノロジーを組み合わせることで付加価値を生み出している点だ。今後は、金価格、世界の航空・海運需要、為替相場、暗号資産市場といった個別市場の動向に加え、金利や規制、金融DX、RWAなどの大きな潮流にも注目する必要があるだろう。ただし、新しい金融サービスには市場変動や規制変更、システム、信用など固有のリスクも存在する。3社を投資対象として見る際には、テーマ性だけで判断せず、売上高や利益、顧客基盤、各事業の成長性、収益構造を確認することが重要だ。伝統的な「金」、実物資産を活用する「金融商品」、そして「暗号資産」。これらをつなぐ企業の成長は、金融業界そのものの変化を映す鏡ともいえる。




