身近な企業に投資チャンス? スタンダード市場の注目4銘柄を徹底紹介

身近な暮らしを支えるスタンダード市場の4銘柄

東京証券取引所スタンダード市場には、誰もが知る大企業とは異なるユニークなビジネスモデルを持つ企業が数多く上場しています。今回取り上げるのは、北海道の食品スーパー「北雄ラッキー」、雑誌の定期購読を手掛ける「富士山マガジンサービス」、タオルの企画・開発を行う「伊澤タオル」、そして外食を中心に多業態展開する「かんなん丸」の4社です。

4社の共通点は、いずれも私たちの生活に身近な商品やサービスを提供していることです。一方で、地域密着型スーパー、出版・EC、日用品、外食・サービスと事業領域は大きく異なります。市場規模や競争環境もそれぞれ異なるため、各社がどのような強みを築き、環境変化に対応しているのかを比較すると、スタンダード市場ならではの企業の多様性が見えてきます。

人口動態、物価上昇、デジタル化、人手不足、消費者ニーズの変化など、企業を取り巻く環境が変化するなか、4社がそれぞれの事業基盤をどう生かしていくのか。その現在地と今後の事業展開を見ていきます。

企業名証券コード主な事業本社・主な地域主な特徴今後のポイント
北雄ラッキー2747食品スーパー、衣料品、日用品北海道北海道を中心に店舗展開する地域密着型スーパー既存店の収益力向上、物価・人件費・物流費への対応
富士山マガジンサービス3138雑誌の定期購読、電子雑誌、ECなど東京都「Fujisan.co.jp」を運営し、1万誌以上を取り扱う雑誌プラットフォーム紙媒体からデジタルへの対応、EC・教育・イベントなどへの事業展開
伊澤タオル365Aタオルの企画・開発・販売東京都ファブレス型で商品開発・マーケティングに注力。「タオル研究所」を展開米国など海外市場の開拓、自社ブランドの成長、原材料・物流コストへの対応
かんなん丸7585飲食店運営埼玉県「庄や」「日本海庄や」を軸に、寿司・イタリアン・カラオケ・フィットネスなどへ多角化既存店の収益改善、新業態の育成、客数回復、コスト管理

北海道密着型スーパー「北雄ラッキー」――地域に根差した食品スーパーの現在地

北海道を中心に食品スーパーを展開する北雄ラッキーは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する小売企業です。証券コードは2747。札幌証券取引所の本則市場にも上場しています。主な営業品目は食料品、衣料品、日用雑貨で、北海道の地域住民にとって身近な生活インフラとしての役割を担っています。

北雄ラッキーの特徴は、全国規模で店舗を急拡大する大手スーパーとは異なり、北海道という地域に経営資源を集中している点です。2026年2月末時点の店舗数は33店舗。本社は札幌市手稲区に置かれています。従業員は社員383人、パートナー社員917人(8時間換算)となっています。

食品スーパーを取り巻く環境は、決して簡単ではありません。食品価格や人件費、物流費、光熱費など店舗運営にかかるコストが上昇する一方、消費者の節約志向も強まっています。さらに北海道では人口減少や高齢化といった地域特有の課題もあります。こうした環境のなかで、北雄ラッキーがどのように地域密着型の事業モデルを維持・発展させるかが注目されます。

2026年2月期の売上高は371億9900万円で、前期比0.8%増となりました。一方、営業利益は2億2900万円で5.6%減少しました。経常利益は2億2200万円と8.4%増加しており、売上高が大きく伸びないなかでも利益面で一定の成果を確保しています。

ただし、小売業では売上高だけでなく、売上総利益率や販売費及び一般管理費の動向が重要になります。2026年2月期の売上総利益率は27.4%で、前年から0.1ポイント低下しました。また、人件費関連では雑給が増加したほか、減価償却費や配送費なども増加しています。物価高だけでなく、店舗を維持するためのコスト上昇が収益を圧迫する構図が見て取れます。

その一方で、北雄ラッキーは既存店舗の価値を高める取り組みも進めています。2025年9月には「ラッキー千歳錦町店」の店舗改装を実施し、同時に「ラッキー低温センター」の耐震改修工事も行いました。新店舗を次々に出店するだけではなく、既存の店舗や物流インフラを長期的に活用していく姿勢がうかがえます。

地域密着型スーパーにとって、店舗網そのものが重要な資産です。大都市圏の大型スーパーやディスカウントストア、ドラッグストア、ネット通販などとの競争が激しくなるなかでも、日常的に利用される店舗として地域住民との接点を維持できれば、一定の安定した需要を期待できます。

特に食品スーパーでは、食品、日用品、衣料品などを一度に購入できる利便性が重要です。北雄ラッキーも食料品だけでなく衣料品や日用雑貨を取り扱っており、生活に必要な商品を幅広く提供することで地域の買い物需要を取り込んでいます。

北海道という市場特性も見逃せません。広大な地域に都市と地方が分散する北海道では、物流や店舗運営に独自の難しさがあります。冬季の天候や交通事情なども店舗運営に影響し得ます。そのため、全国展開企業と単純に店舗数や売上高を比較するだけでは、北雄ラッキーの事業特性を十分に理解できません。

むしろ注目したいのは、限られた店舗網でどのように顧客との関係を維持し、収益性を確保していくかという点です。地域のニーズを把握し、商品構成や店舗サービスを調整することは、全国一律の店舗運営とは異なる地域密着型企業ならではの強みになり得ます。

一方、足元の業績には注意すべき点もあります。2027年2月期第1四半期は、売上高90億3900万円で前年同期とほぼ横ばいだった一方、経常損益は5400万円の赤字となり、前年同期の4300万円の赤字から赤字幅が拡大しました。

食品スーパーは売上規模が大きくても利益率が低いビジネスになりやすく、わずかな粗利益率の変化や人件費、物流費などの増減が利益に大きく影響します。そのため、今後は売上高の増加だけではなく、粗利益率の改善や店舗運営コストの抑制が重要なテーマになるでしょう。

会社側は2027年2月期について増収増益を見込んでおり、2026年2月期の経常利益2億2200万円から、3億2000万円へ44.1%増加する予想となっています。年間配当については50円を維持する方針とされています。

北雄ラッキーを見るうえでは、「北海道のスーパー」という分かりやすい事業内容だけでなく、地域人口、食品価格、人件費、物流費、店舗改装、競合環境など複数の要素を組み合わせて考えることが重要です。

また、同社は大型企業とは異なる規模感を持つ上場企業であることも特徴です。スタンダード市場には、全国的には知名度が高くなくても、特定の地域やニッチな市場で事業基盤を築いている企業が存在します。北雄ラッキーは、そうした「地域に根差した上場企業」を考えるうえで興味深い存在といえるでしょう。

今後のポイントは、既存33店舗の競争力をどこまで高められるかです。店舗改装による集客力向上、商品政策の改善、効率的な物流、人材確保、そして地域住民の生活スタイルに合わせたサービスの充実などが、収益力を左右する可能性があります。

北海道の人口動態や消費環境を考えると、急激な店舗拡大だけを目指す戦略には限界もあります。その意味では、既存の店舗網を生かしながら、一店舗当たりの収益力を高めることが重要な経営テーマになりそうです。

北雄ラッキーは、派手な成長ストーリーを持つ企業というより、北海道という地域市場で長期的に事業を続けることに重点を置く企業です。2026年2月期は売上高が微増にとどまり、営業利益が減少する一方、経常利益は増加しました。さらに2027年2月期は経常利益の増益を見込んでいます。

地域密着型スーパーを取り巻く環境は、人口動態や物価、人件費などによって大きく変化しています。そのなかで北雄ラッキーが北海道で築いてきた店舗網と顧客基盤をどのように活用し、収益力につなげていくのか。スタンダード市場に上場する北海道企業の一社として、今後の業績推移を追う価値がある企業といえそうです。

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雑誌を「売る」から「興味をつなぐ」へ――富士山マガジンサービスの成長戦略

「雑誌のオンライン書店」と聞けば、紙の雑誌をインターネットで購入できるサービスを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、東京証券取引所スタンダード市場に上場する富士山マガジンサービス(3138)の事業は、それだけではありません。同社が運営する「Fujisan.co.jp」は、国内外1万誌以上を取り扱う日本最大級の雑誌オンライン書店で、定期購読を軸に出版社と読者をつなぐマーケットプレイスとして機能しています。

同社は2002年7月に設立され、2015年に東証マザーズへ上場。その後、2026年3月4日には東京証券取引所スタンダード市場への市場区分変更を発表しました。現在は名古屋証券取引所メイン市場にも上場しています。

富士山マガジンサービスの大きな特徴は、自社で大量の雑誌を仕入れて販売する一般的な小売業とは異なるビジネスモデルにあります。同社は「Fujisan.co.jp」というマーケットプレイスを運営し、原則として自社在庫を持たず、販売実績に応じて出版社などから業務報酬を受け取ります。そのため、サイト上で動く雑誌の販売額である「取扱高」と、会社の売上高には大きな違いがあります。

このモデルの面白さは、雑誌の種類が増えるほどサイトの魅力を高められる点です。一般的な大型書店では、限られた店舗スペースのため、売れ筋商品を中心に品ぞろえを構成する必要があります。一方、オンラインならニッチな専門誌や趣味性の高い雑誌まで幅広く取り扱えます。富士山マガジンサービス自身も、多様な趣味嗜好を富士山の「裾野」にたとえ、ロングテール型の事業モデルを社名の由来として説明しています。

ここで重要になるのが「定期購読」です。雑誌は毎月、あるいは一定の周期で発行されるため、定期購読契約を獲得できれば、単発購入だけに依存しない継続的な取引につながります。同社は定期購読契約の継続率が70%を超えるストック型ビジネスモデルを掲げており、購読データを蓄積できることも強みの一つとしています。

つまり、富士山マガジンサービスにとって雑誌は単なる「商品」ではありません。どの人がどのような雑誌に興味を持っているのかという情報そのものが、事業上の価値を持ちます。例えば、アウトドア、クルマ、時計、ファッション、音楽、料理、スポーツなど、雑誌のジャンルは細分化されています。こうした趣味嗜好を軸とした購買データを蓄積できれば、雑誌以外の商品やサービスへ展開する余地も生まれます。

実際、同社は雑誌販売だけにとどまらず、電子雑誌の取次やEC、イベントなどへ事業領域を広げています。電子雑誌については、国内外の大手電子書店18社へ雑誌データを提供しているとしています。紙からデジタルへ読書スタイルが変化するなかで、出版社と電子書店の間をつなぐ役割を担っているわけです。

さらに注目されるのが、2024年から開始したEdTech事業です。同社はオンライン予備校や医系予備校などの展開にも取り組んでいます。雑誌と教育は一見すると距離のある事業に見えますが、「興味」や「学び」を軸にコンテンツを提供するという観点では、一定の接点があります。

2025年8月には、時計専門メディアや出版、自社時計ブランドなどを手掛けるシーズ・ファクトリーを連結子会社化しました。これは同社が掲げる「興味」に関連したコミュニティ、イベント、商品販売などを強化する取り組みの一つです。雑誌を入口として、読者の興味を商品やサービス、コミュニティへ広げるという方向性が見えてきます。

この戦略を理解するうえでキーワードになるのが「コンテンツとコマースの融合」です。例えば時計に興味を持つ人が時計専門誌を読み、Web記事を閲覧し、イベントに参加し、最終的に時計関連商品を購入する――という一連の行動を一つの経済圏として捉えることができます。富士山マガジンサービスが蓄積してきた購読データは、こうした興味関心型ビジネスとの相性が良いと考えられます。

一方で、同社を取り巻く市場環境には課題もあります。国内の雑誌市場は長期的に縮小しており、紙媒体を中心とする雑誌販売だけでは大幅な成長を実現することが難しくなっています。富士山マガジンサービス自身も、書店数の減少などによって従来型の雑誌販売が縮小する一方、出版社から読者への直接販売への転換には事業機会があると説明しています。

だからこそ、同社にとって重要なのは「雑誌市場そのものが拡大するか」だけではありません。紙の雑誌が減少する中でも、専門性の高いコンテンツにお金を払う読者をどのようにつなぎ止めるのか。そして、その読者との関係を雑誌以外のサービスへ発展させられるかがポイントになります。

同社は2025年12月末時点で資本金約2億6520万円、従業員87人。比較的小規模な組織でありながら、1万誌以上を扱うオンラインプラットフォームを運営しています。

また、同社のシステム開発は内製化が進んでおり、ECサイトだけでなく、注文、配送、カスタマーサポート、電子雑誌など幅広い領域をシステム面から支えています。価格競争だけではなく、検索や注文のしやすさ、定期購読の利便性、顧客管理など、サービス全体のユーザー体験を高めることが競争力につながる構造です。

企業として見ると、富士山マガジンサービスは「雑誌を扱う会社」から「趣味・嗜好を軸としたプラットフォーム企業」へ変化しようとしている段階にあります。紙雑誌、電子雑誌、定期購読、EC、教育、イベント、メディア、コミュニティなど、一見すると異なる事業を「興味」という共通項で結び付けようとしている点が特徴です。

スタンダード市場への市場区分変更も、同社の現在地を考えるうえで一つの材料になります。上場市場が変わったこと自体が事業成長を意味するわけではありませんが、今後は既存の雑誌定期購読事業からどれだけ新しい収益源を育てられるかが、企業価値を見るうえで重要なポイントになりそうです。

「紙の雑誌は衰退するから、雑誌関連企業も厳しい」と単純に考えるだけでは、富士山マガジンサービスの事業の全体像は見えてきません。同社が持つのは、1万誌以上を扱う品ぞろえ、定期購読という継続課金型の顧客接点、そして読者の趣味嗜好に関するデータです。

今後の焦点は、それらを電子雑誌やEC、イベント、教育、メディアなどにどう展開していくかです。雑誌市場の構造変化を逆手に取り、「雑誌を販売する会社」から「人々の興味を起点にビジネスを広げる会社」へ進化できるのか。富士山マガジンサービスは、出版業界のデジタル化を考えるうえでも興味深いスタンダード市場上場企業といえるでしょう。

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「タオル」を科学する伊澤タオル――老舗企業が挑むグローバル・スタンダード

毎日の生活で当たり前のように使われているタオル。その身近な日用品を、素材や製造工程、消費者の使用感などから徹底的に研究し、商品として磨き上げているのが伊澤タオルです。東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社の証券コードは365A。1970年創業の歴史を持ち、2025年6月20日に新規上場を果たしました。

伊澤タオルの大きな特徴は、一般的なタオルメーカーとは異なる「ファブレス型」のビジネスモデルです。自社で大規模な工場を保有するのではなく、企画や商品開発、品質管理、マーケティングなどに経営資源を集中し、生産については国内外の協力工場などを活用しています。これによって、固定費を抑えながら市場ニーズに応じた商品を柔軟に開発できる体制を構築しています。

同社が掲げるビジョンは「タオルのグローバル・スタンダードを創出し、世界市場で存在感を示す」ことです。タオルは100年以上にわたって使われてきた成熟した商品である一方、「柔らかさ」「吸水性」「心地よさ」といった品質について、消費者が共通して理解できる明確な基準は存在しないと同社は説明しています。そこで、これまで蓄積してきた商品開発のノウハウを生かし、タオルの品質そのものを数値などで評価する商品開発を進めています。

こうした「タオルを科学する」姿勢は、伊澤タオルの事業を理解するうえで重要なポイントです。創業以来、消費者が日常的に使う実需品としてのタオルにこだわってきた同社は、単にデザイン性の高い商品を作るだけではなく、肌触り、吸水性、速乾性、耐久性、重量、毛羽落ちなど、実際の使用感に関係する要素を重視しています。

さらに、同社の強みとして挙げられるのが、流通大手などのプライベートブランド(PB)商品を企画・開発する力です。タオルはスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントストア、ECサイトなど幅広い販路で販売されます。小売企業にとっては、自社だけの商品を開発することで価格だけではない差別化を図ることができます。伊澤タオルはこうした小売企業のニーズに対応し、企画から生産管理、納品までを担うことで事業を拡大してきました。

同社の2026年2月期の売上高は102億8300万円。前期の98億2500万円から4.7%増加しました。一方、営業利益は5億8100万円で8.9%減少したものの、経常利益は11億4600万円と17.0%増加、当期純利益も7億2600万円と25.5%増加しています。売上高の拡大に加え、営業外収益なども含めた利益構造を確認する必要があります。

国内市場では、タオルは成熟商品というイメージがあります。しかし同社によれば、国内のタオル・タオル製品の小売市場規模は約1600億~1900億円とされ、今後もおおむね微増傾向が見込まれています。また、大手小売企業によるPB商品の拡大も市場の特徴となっています。

ここで存在感を高めているのが、消費者向け自社ブランド「タオル研究所」です。2019年にAmazon.co.jpで販売を開始し、ECを通じて消費者に直接商品を届けるモデルを展開してきました。2026年1月にはオフライン販売も開始しており、ECだけに依存しない販路の拡大にも取り組んでいます。

「タオル研究所」というブランド名も、同社の企業姿勢を象徴しています。タオルを単なる生活雑貨として扱うのではなく、素材や機能、使い心地を研究して商品開発につなげる。こうした姿勢をブランドそのものに反映させることで、価格競争だけではない価値を消費者に伝えようとしています。

そして今後の成長を考えるうえで、特に注目されるのが海外展開です。伊澤タオルは2025年1月に米国子会社を設立し、同年8月には米国Amazon.comで「Towel Laboratory」の販売を開始しました。日本で培った商品開発のノウハウを海外市場へ持ち込む戦略です。

2026年には、米国Amazonの小売部門から直接発注を受ける取り組みも発表されました。米国向けには、日本とは異なる使用シーンを想定した大型のビーチタオルを開発。日本国内の商品をそのまま海外へ輸出するのではなく、現地の生活習慣やニーズに合わせて商品仕様を変える点が特徴です。

これは同社が掲げる「グローバル・スタンダード」という目標ともつながっています。タオルは世界共通の日用品である一方、好まれるサイズ、厚さ、素材、用途などには地域差があります。日本で評価された商品をそのまま世界に展開するのではなく、各国の消費者が求める機能を研究し、現地市場に適応した商品を開発することが海外展開の鍵になりそうです。

一方で、海外展開には為替、物流費、原材料価格、関税、現地競合などのリスクがあります。国内市場と異なる消費者ニーズに対応するための商品開発費も必要になります。したがって、米国市場への進出がどの程度売上・利益の拡大につながるかは、今後の業績を見るうえで重要なポイントです。

また、タオルは綿などの原材料価格の影響を受ける商品です。原材料費に加えて、人件費、物流費、為替などの変動も利益率を左右します。ファブレス型の事業モデルによって生産設備を軽量化しているとはいえ、仕入れ価格や販売価格のバランスを維持することは重要な経営課題です。

それでも、伊澤タオルには「日常品だからこそ市場が大きい」という特徴があります。タオルは一度購入すれば終わりの商品ではなく、使い続ければ買い替え需要が発生します。さらに、家庭用だけでなく、ホテル、スポーツ、レジャー、エンターテインメントなど用途も幅広く、キャラクターやブランドとのコラボレーションなどによって新たな需要を取り込む余地もあります。

1970年創業という長い歴史を持ちながら、2025年に上場し、米国市場へ進出する伊澤タオル。その歩みを見ると、「老舗企業=昔ながらの製造業」というイメージだけでは捉えきれません。企画・研究開発・マーケティングに強みを持つファブレス型企業として、小売企業のPB需要を取り込みながら、自社ブランドを育て、さらに海外市場へ進出するという複数の成長軸を持っています。

今後の注目点は、国内で築いた商品開発力とブランド力をどこまで海外市場で再現できるかです。2026年2月期は売上高が100億円を突破し、経常利益も増加しました。今後、米国市場での販売拡大が業績にどのように反映されるのか、そして「タオル研究所」が国内外でどこまでブランドとして定着するのかが焦点になります。

身近すぎるため、普段はあまり企業の存在を意識しない「タオル」。しかし、その商品を「研究開発」「データ」「マーケティング」という視点から捉え直すことで、新たな市場を切り開くことができます。スタンダード市場に2025年に上場した伊澤タオルは、成熟市場の中で新しい価値を生み出し、国内から世界へ挑戦する企業として、今後の事業展開を追うことができる銘柄の一つといえるでしょう。

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「庄や」から多業態へ――かんなん丸が挑む外食事業の再構築

居酒屋やレストランといった外食産業は、コロナ禍を経て大きく姿を変えました。人々の外食需要が戻る一方、人件費や食材費、光熱費など店舗運営コストの上昇が続き、従来型の飲食店にとっては収益力の確保が重要なテーマになっています。こうしたなか、東京証券取引所スタンダード市場に上場するかんなん丸(7585)は、長年培ってきた飲食店運営のノウハウを生かしながら、複数の業態を組み合わせた事業構造への転換を進めています。

かんなん丸は1982年創立の飲食企業です。1982年に「庄や 浦和店」を開店したことから事業が始まり、現在は埼玉県を中心に栃木、群馬、千葉などへ店舗を展開しています。2025年6月末時点では32店舗、従業員数は108人となっています。

同社を語るうえで欠かせないのが「庄や」「日本海庄や」です。かんなん丸は大庄グループのメガフランチャイジーとして、これらのブランドを運営しています。長年にわたって培ってきた店舗運営の経験や地域とのつながりは、同社の事業基盤の一つといえるでしょう。

一方で、かんなん丸はフランチャイズ店舗だけに依存するのではなく、自社ブランドや異なる業態への展開も進めています。その代表例が「大衆すし酒場 じんべえ太郎」です。2018年に1号店を開店し、寿司と酒場を組み合わせた業態として展開してきました。

さらに2021年には「Italian kitchen VANSAN」のフランチャイジーに加入しました。居酒屋とは異なるイタリアン業態を取り入れることで、顧客層や利用シーンを広げる狙いがあります。現在の運営ブランドを見ると、居酒屋、寿司、イタリアン、カラオケなど、複数の業態を組み合わせていることが分かります。

2023年には飲食以外の分野にも進出しました。女性専用AIパーソナルトレーニングジム「FURDI(ファディー)」のフランチャイジーとなり、武蔵浦和に1号店を開店しています。飲食店の経営ノウハウを生かしながら、生活サービス分野へ事業領域を広げようとしている点が特徴です。

こうした多業態化には意味があります。外食市場は景気、消費者心理、天候、季節、感染症などさまざまな要因の影響を受けます。また、同じ飲食業でも、居酒屋とファミリー向けレストランでは利用目的が異なります。複数のブランドを持つことで、特定の業態に需要が集中するリスクを抑えながら、異なる顧客層を取り込む余地が生まれます。

ただし、現在の業績を見ると、事業再構築が容易ではないことも分かります。2026年6月期の売上高は18億8200万円で、前期の18億7200万円から0.6%増にとどまりました。一方、営業損失は1億800万円、経常損失は1億800万円、当期純損失は1億8900万円となっています。営業赤字は継続しており、収益力の改善が大きな課題です。

特に注目されるのが、店舗ビジネス特有のコスト構造です。飲食店では売上が伸びても、食材費や人件費、賃料、水道光熱費などが増えれば利益が残りにくくなります。近年は最低賃金の上昇や人手不足もあり、店舗運営の効率化はこれまで以上に重要になっています。

かんなん丸の場合、2026年6月期には特別損失として減損損失などを計上したことも最終赤字の要因となりました。2026年6月期の純損失は前期の2億1900万円から1億8900万円へ縮小したものの、依然として厳しい収益環境にあります。

一方、2027年6月期については、会社側が売上高20億円、営業利益1100万円、経常利益700万円、当期純利益300万円を予想しています。つまり、売上規模を拡大しながら、営業段階から最終段階まで黒字化を目指す計画です。

この黒字化計画を実現できるかどうかは、かんなん丸を考えるうえで重要なポイントになります。単純に店舗数を増やすだけでは、人件費や賃料などの固定費が膨らむ可能性があります。既存店の収益性を改善し、一店舗当たりの売上や利益を高められるかが重要になるでしょう。

また、月次売上を見ると、2026年6月期上期の全店売上高は前年同期比101.9%でした。一方、客数は96.4%にとどまっています。つまり、売上高が前年を上回る一方で、客数は減少しており、客単価の上昇が売上を支えている構図がうかがえます。

この点は外食企業を見るうえで重要です。客単価上昇によって売上を維持できても、客数の減少が続けば、長期的には店舗の集客力に影響する可能性があります。値上げによる客単価上昇と、来店頻度・客数のバランスをどのように取るかが経営上のテーマとなります。

一方で、かんなん丸には地域密着型企業ならではの強みもあります。本社をさいたま市浦和区に置き、埼玉県を中心に店舗を展開してきた歴史があります。地域の顧客にとって身近な店舗を運営してきた経験は、新しい業態を展開する際にも一定の基盤となります。

今後の成長を考えるうえでは、「既存店の立て直し」と「新業態の育成」の両輪がポイントになりそうです。庄やや日本海庄やといった既存ブランドを安定運営しながら、じんべえ太郎、VANSAN、kobanちゃん、FURDIなどをどこまで育てられるか。複数のブランドを持つこと自体ではなく、それぞれが収益事業として定着することが重要です。

特に自社ブランドの「じんべえ太郎」は、フランチャイズブランドとは異なり、自社独自の店舗づくりを進められる点が特徴です。ブランドの認知度を高め、店舗運営のノウハウを蓄積できれば、将来的な店舗展開の選択肢にもつながります。

また、「カラオケkobanちゃん」のように飲食以外の利用目的を持つ業態を組み合わせることで、夜間需要だけに依存しない店舗ポートフォリオを構築することも考えられます。現在のブランド構成は、外食企業という枠だけでは捉えきれない方向へ広がっています。

もっとも、事業を多角化すれば自動的に収益が安定するわけではありません。ブランドごとに運営ノウハウや人材が必要になり、管理コストも増加します。そのため、今後は店舗数だけでなく、ブランド別の収益性や既存店売上、客数、客単価などを確認することが重要になります。

かんなん丸は、1982年の「庄や 浦和店」から始まり、現在では複数の飲食ブランドとフィットネス事業を手掛ける企業へと変化しています。2026年6月期は依然として赤字でしたが、2027年6月期には黒字転換を計画しています。

外食産業を取り巻く環境が変化するなか、同社にとって最大のテーマは、これまで培ってきた店舗運営力をどのように収益力へ結び付けるかです。既存ブランドの再構築、新業態の育成、客数の回復、人件費・食材費などのコスト管理――こうした取り組みが今後の業績を左右することになりそうです。

「庄や」で築いた歴史を土台に、寿司、イタリアン、カラオケ、フィットネスへと事業領域を広げるかんなん丸。スタンダード市場に上場する地域密着型の外食企業として、今後は単なる店舗数の拡大ではなく、各業態の収益性をどこまで高められるかが注目される企業といえるでしょう。

まとめ――4社それぞれの強みを生かした成長戦略に注目

今回紹介した北雄ラッキー、富士山マガジンサービス、伊澤タオル、かんなん丸は、いずれもスタンダード市場に上場する一方、それぞれ異なる市場で独自の事業基盤を築いています。北雄ラッキーは北海道での店舗網、富士山マガジンサービスは雑誌の定期購読とデジタルを組み合わせたプラットフォーム、伊澤タオルは商品開発力と自社ブランド、かんなん丸は長年培った店舗運営力と多業態展開が特徴です。

ただし、各社が抱える課題も異なります。小売業では人口減少やコスト上昇、出版では紙媒体市場の縮小、日用品では原材料費や海外展開、外食では人件費や食材費、客数の確保などが重要なテーマとなります。

だからこそ、4社を見る際には単純な企業規模だけでなく、それぞれが持つ強みをどのように収益へ結び付けているのか、そして変化する市場環境にどう対応しているのかを確認することが重要です。身近な商品やサービスの裏側には、地域密着、デジタル化、ブランド構築、事業多角化といったさまざまな企業戦略があります。4社の今後の業績や新たな取り組みを追うことで、スタンダード市場に上場する企業の多様な成長戦略を知ることができるでしょう。

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