紙チケットから電子チケットへ――ダフ屋問題から見る「チケット」の進化

紙のチケットから電子チケットへ――変わりゆく「入場券」のかたち

コンサートやプロ野球、演劇、アイドルイベントなど、人々が楽しみにするエンターテインメントに欠かせないのがチケットである。かつては紙のチケットを手に会場へ向かうのが一般的だったが、人気公演ではダフ屋による買い占めや高額転売が社会問題となり、チケットの公平な流通が課題となってきた。インターネットの普及を経て、現在はスマートフォンで購入から入場まで完結する電子チケットが急速に普及している。さらに、本人確認や顔認証、公式リセール、チケット分配など、電子化によってチケットを取り巻く仕組みそのものが変化している。本稿では、チケットの歴史を振り返りながら、電子チケット市場を支えるぴあ、エムアップホールディングス、LivePocketなどに注目し、チケットビジネスの現在とこれからを考える。

企業名証券コード市場電子チケット関連事業
エムアップホールディングス3661東証プライム「チケプラ」を展開。電子チケット、公式リセール、顔認証、チケット分配など
ぴあ4337東証プライム「チケットぴあ」を展開。音楽・スポーツ・演劇など幅広いチケットを販売
KDDI9433東証プライム電子チケット販売プラットフォーム「LivePocket」を展開
ウェルネット2428東証スタンダード電子決済や携帯認証を活用したチケット関連サービスを展開
ジョルダン3710東証スタンダード乗換案内と連携したモバイルチケット・電子チケットサービスを展開

チケットは「紙」から「データ」へ――野球・公演チケットの歴史と電子化が変えるエンタメ市場

野球の試合やコンサート、演劇、映画、スポーツイベントなど、私たちが「会場に入る権利」を手にするためのチケットは、長い間、紙が中心だった。チケットを購入し、財布やポケットに入れて当日会場へ向かう。座席番号が印刷された紙を係員に渡し、半券が切り取られる――。かつては当たり前だった光景である。しかし現在、その姿は大きく変わった。スマートフォンに表示されたQRコードや電子チケットをかざして入場し、チケットそのものがデジタルデータとして管理される時代になっている。

チケットの歴史を語るうえで避けて通れないのが「ダフ屋」の存在である。人気のプロ野球、日本シリーズ、コンサート、演劇などでは、発売直後にチケットが売り切れ、会場周辺でチケットを求める人が発生した。そこに目を付け、チケットを買い占めて定価より高く販売するダフ屋が登場した。駅前や繁華街、球場周辺などで「チケットあるよ」と声を掛ける光景は、かつての大都市や興行会場では決して珍しいものではなかった。

ダフ屋の問題は、単に高い価格でチケットが売買されるというだけではない。人気チケットを大量に確保することで、本当に観たいファンが正規価格で購入できなくなるという問題があった。また、偽造チケットや盗難チケットなどのトラブルにつながるケースもあった。インターネットが普及すると、ダフ屋行為は路上からネットオークションやチケット転売サイトへと姿を変えていく。さらにSNSの普及によって個人間取引も容易になり、「チケットを持っている人」と「欲しい人」を瞬時につなぐ市場が形成された。

特に社会問題となったのが、人気アーティストのライブやスポーツイベントなどで、チケットが定価を大幅に上回る価格で取引されるケースである。こうした背景から、2019年にはチケット不正転売禁止法が施行された。音楽ライブ、舞台、スポーツなどの特定興行入場券について、主催者の同意なく、販売価格を超える価格で反復継続して転売する行為などが規制対象となった。

ただし、転売を完全になくすだけでは、別の問題も生じる。例えば、チケットを購入したものの、急な仕事や病気、予定変更によって当日行けなくなることは珍しくない。そこで現在重要になっているのが「公式リセール」である。チケットを持っている人が、主催者や正規販売会社が用意した仕組みを通じて、別のファンにチケットを再販売する。購入者と出品者がSNSなどで直接取引するのではなく、運営会社が間に入ることで、詐欺や偽造チケットなどのリスクを抑えられる。

例えばチケットぴあでは、対象となる公演について定価でのリセールサービスを提供している。出品者と購入者が直接金銭をやり取りする必要がなく、正規ルートでチケットを再流通させられる仕組みだ。(チケットぴあ)

そして、この「正規流通」を支える技術として存在感を高めているのが電子チケットである。紙のチケットでは、購入者の名前や座席番号、券面そのものを管理する必要がある。一方、電子チケットならスマートフォンと購入者情報をひも付けることができる。QRコード、電話番号、購入履歴、スマートフォンの個体情報などを組み合わせれば、「誰が購入したチケットなのか」を確認しやすくなる。

電子チケットは単純に「紙をスマホに置き換えたもの」ではない。入場管理そのものをデジタル化する仕組みである。チケットぴあでも、QRコード認証、クレジットカード認証、スマートフォン個体識別番号認証などを活用した本人確認が行われている。

野球もこの変化と無縁ではない。プロ野球では球場の入場券をスマートフォンで管理する仕組みが普及し、購入から座席指定、入場、場合によっては同行者へのチケット分配までデジタルで完結するようになっている。ファンにとっては紙を持ち歩く必要がなくなり、球団側にとっても入場者データを管理しやすくなる。誰がどの試合を購入したのか、どの座席が人気なのかといったデータを蓄積できれば、マーケティングや販売戦略にも活用できる。

コンサートや舞台では、さらに高度な仕組みが求められている。人気公演では「転売目的の大量購入」を防ぐため、一人当たりの申込枚数を制限したり、座席番号を公演直前まで表示しなかったり、本人確認を強化したりする施策が取られている。電子チケットを活用すれば、購入から入場までを一貫して管理できるため、不正転売対策との相性が良い。

2026年現在では、さらに「顔認証」などを組み合わせた入場管理も注目されている。電子チケット事業者は、QRコードを読み取るだけではなく、購入者本人であるかどうかを確認し、不正入場やなりすましを防ぐ方向へ進んでいる。2026年にも、電子チケットの普及とともに不正転売や不正入場への対策が重要なテーマとなっている。

一方で、電子化には課題もある。スマートフォンの電池切れや通信障害、端末の故障、高齢者などデジタル機器の利用に不慣れな人への対応など、紙にはなかった問題が生じる。また、チケットがデジタル化されるほど、個人情報や購入履歴などのデータをどう安全に管理するかも重要になる。

それでも、チケット産業が向かう方向は明確だ。かつてチケットは「会場に入るための紙」だった。それが「転売を防ぐための本人確認情報」となり、さらに「ファンと興行主をつなぐデジタルデータ」へと変化している。購入履歴をファンクラブやグッズ販売、動画配信、飲食、物販などと連携させれば、チケットは単なる入場券ではなく、エンターテインメント消費全体の入口になる。

野球なら試合観戦だけでなく、球場グルメやグッズ、ファンクラブ、次回観戦への誘導につながる。コンサートならチケット購入を起点として、公式グッズ、配信、ファンクラブ、アーティスト関連サービスへ広げられる。つまり電子チケットは、興行ビジネスの「入口」をデジタル化する技術ともいえる。

ダフ屋が会場周辺でチケットを握り、紙の券面を高値で売っていた時代から、現在はスマートフォンの中でチケットが発行され、本人確認され、必要なら公式リセールによって別のファンへ移転される時代になった。チケットの歴史は、そのまま社会のデジタル化の歴史でもある。今後は顔認証やAI、データ分析などとの融合が進み、「チケットを買う」「会場に入る」という行為そのものが、よりシームレスになっていくだろう。

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エムアップホールディングス、電子チケットで変える「チケットの未来」――販売から本人確認、公式リセールまで広がる成長領域

コンサートやスポーツ、演劇、イベントなどのチケットは、長らく紙が当たり前だった。購入者はプレイガイドやコンビニなどでチケットを発券し、公演当日に会場へ持参する。ところがスマートフォンの普及によって、この常識は大きく変わった。現在では、購入からチケットの受け取り、入場、さらには行けなくなった場合のリセールまで、スマートフォン上で完結するケースが増えている。こうした電子チケット市場で存在感を高めている上場企業の一つが、東証プライム上場のエムアップホールディングス(3661)である。

エムアップホールディングスは、アーティストやタレントなどのファンサイト運営を起点に、ファンとエンターテインメントを結び付けるデジタルサービスを展開してきた。その中でも電子チケット領域を担うのがチケットプラスである。同社の「チケプラ」は、電子チケットの発券・管理だけではなく、公式リセールサービス「チケプラTrade」なども展開している。つまり、単純に「紙のチケットをスマートフォンに置き換える」だけではなく、チケットを購入してから実際に会場へ入場するまでの一連の流れをデジタル化している点が特徴である。

電子チケットの普及には、社会的な背景もある。人気アーティストのライブやスポーツイベントでは、発売直後にチケットが売り切れ、その後に高額転売される問題が長く存在してきた。紙チケットの時代には、購入者と実際の入場者を厳密に結び付けることが難しいケースもあった。しかし電子チケットなら、購入者情報とチケットをシステム上で管理できる。さらに本人確認機能を組み合わせれば、購入した本人かどうかを確認したうえで入場させることも可能になる。

エムアップHDのチケプラが力を入れているのが、この「不正転売対策」と「本人確認」である。2025年12月には、電子チケットにAIを利用した顔認証入場機能を実装。事前に登録した顔写真と、イベント当日にスマートフォンのカメラで認証した人物を照合し、一致した場合にチケットの入場画面を表示する仕組みを導入した。しかも、従来の顔認証システムのように専用端末を会場に設置する必要をなくし、スマートフォンだけで顔認証から入場まで完結できる仕組みとしている。

この技術が実際の大型公演にも採用されている点は重要だ。2026年には、アイドルグループ「=LOVE」のスタジアム公演で、チケプラの顔写真付き電子チケット、顔認証入場システム、公式リセール「チケプラTrade」が採用された。申し込みからチケット受け取り、当日の入場までスマートフォンで完結する仕組みであり、電子チケットが単なるデジタル化ではなく、公演運営そのものを変える存在になっていることが分かる。

さらに2026年には、指原莉乃プロデュースの「≠ME」のアリーナツアーでもスマートフォン完結型の顔認証システムが採用された。来場者が事前に顔を登録し、公演当日にAIが本人確認を行うことで、第三者によるチケットの不正利用を防ぐ仕組みである。同公演では、公式リセールの「チケプラTrade」も組み合わせられており、「転売を防ぐ」と「行けなくなった人を救済する」という一見相反する課題を、デジタル技術によって両立させようとしている。

ここで注目したいのが公式リセールである。チケットを購入したものの、急な仕事や体調不良などで公演に行けなくなることは珍しくない。従来であれば、知人に譲る、SNSで買い手を探すなどの方法が考えられたが、個人間取引には代金の持ち逃げや偽造チケットなどのリスクがある。公式リセールなら、主催者や運営会社が認めたプラットフォーム上でチケットを再流通させられるため、ファンにとっても安心感が大きい。

チケプラTradeは、この公式リセールを電子チケットと組み合わせて展開してきた。さらに同社は電子チケットだけに対応するのではなく、紙チケットの公式リセールにも対応している。2023年には、紙チケットをスマートフォンのカメラで撮影し、AIで席番などを読み取って出品できる機能を提供開始した。同社によれば、チケプラTradeでは年間30万件以上の公式リセール取引成立実績があるとしており、電子チケットと紙チケットの双方を対象に、チケットの二次流通をデジタル化している。

そして、エムアップHDの面白さは電子チケット単体ではない。同社はファンサイトやファンクラブなど、アーティストとファンをつなぐサービスも展開している。チケット購入者がファンクラブ会員となり、ライブに参加し、グッズを購入し、さらに次の公演へ参加する――。こうしたファンの行動をデジタル上でつなげられることは、エンターテインメント企業にとって大きな意味を持つ。

チケットは、これまで「会場に入るための紙」に過ぎない部分があった。しかし電子化によって、「誰が、いつ、どの公演のチケットを購入したか」という情報を扱えるようになる。そこからファンクラブ、グッズ、動画、EC、公式リセールなどへサービスを広げることができる。エムアップHDにとって電子チケットは、ファンビジネス全体を支える重要な接点の一つと考えられる。

さらに、電子チケット市場はコンサートだけのものではない。2026年には「2026 ワールド・ベースボール・クラシック」の東京プールなどでも、チケプラTradeによる主催者公認リセールが実施された。野球、音楽ライブ、舞台、アイドルイベントなど、さまざまなジャンルに電子チケットと公式リセールの仕組みが広がっている。

今後のポイントは、電子チケットが「入場券」から「エンターテインメントのID」へ進化するかどうかだろう。顔認証、AI、公式リセール、ファンクラブ、ECなどがつながれば、チケットを起点にファンとの接点を長期的に維持できる。エムアップHDが目指す市場は、チケットを売って終わるビジネスではなく、チケットを入口としてファンとの関係をデジタル上で継続するビジネスともいえる。

紙のチケットを握りしめて球場やコンサート会場へ向かった時代から、スマートフォンをかざして入場する時代へ。そして今や、顔認証によって本人確認が行われ、行けなくなれば公式リセールで別のファンへチケットを渡せる時代になった。エムアップホールディングスは、こうしたチケットの進化を支える企業の一社である。今後、ライブやスポーツ観戦のデジタル化が進むほど、電子チケットは「紙の代替品」ではなく、興行ビジネス全体を動かすデジタルインフラとしての重要性を増していきそうだ。

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ぴあ、電子チケット時代の新たなチケットインフラへ――「売る」から「つなぐ」へ進化するチケットビジネス

コンサート、プロ野球、サッカー、演劇、ミュージカル、映画、レジャー施設など、日本のエンターテインメント市場を語るうえで欠かせない存在がチケットである。そのチケット販売を長年にわたって支えてきた企業の一つが、ぴあ(4337)だ。1972年創業のぴあは、情報誌「ぴあ」からスタートし、やがて「チケットぴあ」を中心とするチケット販売事業へと成長した。かつては紙のチケットを購入して会場へ持参するのが一般的だったが、現在はスマートフォンを使った電子チケットが急速に普及している。ぴあにとって電子チケットは、単なる発券方法の一つではなく、チケットビジネスそのものをデジタル化する重要な領域となっている。

チケットぴあの特徴は、音楽だけに限定されない幅広い取り扱いジャンルにある。アーティストのコンサート、アイドル、演劇、ミュージカル、スポーツ、映画、イベントなど、多様な興行のチケットを扱っている。チケットを「販売する」だけでなく、興行主催者とファンを結び付けるプラットフォームとして機能している点が大きい。

電子チケットの普及は、こうしたチケット販売ビジネスの構造そのものを変えた。以前は、チケットを購入するとコンビニなどで紙の券面を発券し、それを財布やバッグに入れて保管する必要があった。現在のチケットぴあでは、購入後のチケットを「Myチケット」で管理し、紙チケットだけでなく電子チケットを選択できる。電子チケットについては、MOALA、tixeebox、チケプラ電子チケットアプリなど複数の受け取り方法にも対応している。

この変化は、利用者にとって単に「紙を持たなくていい」というメリットだけではない。チケットの分配やリセールまでデジタル上で管理できることが重要だ。例えば友人とコンサートに行く場合、購入したチケットを1枚単位で別のぴあ会員へ分配することができる。スマートフォンでチケットを渡せるため、紙チケットを郵送したり、直接手渡したりする必要がなくなる。

さらに電子チケット時代において重要性を増しているのが「公式リセール」である。人気アーティストのライブやスポーツイベントでは、チケットが入手困難になる一方、購入後に急用などで行けなくなる人もいる。そこで、チケットを必要とする人へ正規ルートで再販売する仕組みが求められている。ぴあでは「Myチケット」から対象チケットをリセールに出品でき、購入希望者はチケットぴあを通じて購入できる。ぴあは、取引相手と直接やり取りする必要がなく、定価で購入できる点をリセールサービスのメリットとして打ち出している。

これは、かつて社会問題となったチケットの不正転売への対応という意味でも大きい。人気公演のチケットを買い占め、定価を大きく上回る価格で販売する行為は、ファンにとって大きな負担となる。2019年にはチケット不正転売禁止法が施行され、特定興行入場券の不正転売などが規制されるようになった。こうした環境の中で、正規のチケット販売会社が公式リセールという「安全な二次流通」の場を提供する意味は大きい。

ぴあのリセールでは、対象となる公演であれば、購入したチケットを1枚単位で出品できる。リセールが成立すると、所定の手数料を差し引いた金額が出品者へ返金される仕組みだ。一方、購入者はチケットぴあを通じて購入するため、SNSなどで見知らぬ相手と直接金銭をやり取りする必要がない。

ここには、電子チケットならではの強みがある。紙のチケットでは、券面そのものを別の人に渡すことができる。しかし電子チケットでは、会員情報や電話番号認証などと組み合わせることで、チケットの保有者をシステム上で管理できる。実際、ぴあのMyチケットで分配された電子チケットを受け取るには電話番号認証が必要とされている。

また、電子チケットは興行主催者側にとってもメリットがある。紙のチケットでは、発券、配送、紛失、回収などさまざまな業務が発生する。一方、電子化すれば販売から発券、入場までのプロセスをデジタルで管理しやすくなる。さらに購入者の属性や購入履歴などを分析することで、今後の公演販売やマーケティングに活用できる可能性もある。チケットは「入場券」であると同時に、ファンとの接点を生み出すデータになりつつある。

ぴあにとっても、この変化はビジネスモデルの高度化につながる。単に「チケットを何枚売ったか」だけではなく、どのアーティストのファンがどの公演を購入し、どのようなイベントに関心を持っているのかを把握できれば、興行主催者へのマーケティング支援にもつながる。チケット販売を入口として、イベントの企画・運営、プロモーション、データ活用などへ事業領域を広げられる点が、デジタル化の大きな意味である。

さらに、電子チケットはスポーツビジネスとの相性も良い。プロ野球やサッカーなどでは、一度観戦したファンを次回の試合へ呼び戻すことが重要になる。スマートフォンを中心としたチケット管理が進めば、購入履歴を基にした情報提供やキャンペーンなども行いやすくなる。音楽ライブでも同様で、チケット購入をきっかけに関連イベントやアーティスト情報へファンを誘導できる。

一方で、電子チケットにも課題はある。スマートフォンの電池切れ、端末故障、通信環境、アプリ操作への不慣れなど、紙チケットにはなかった問題が発生する。また、電子化が進むほど、個人情報や購入履歴などのデータを安全に管理することも重要になる。さらに、すべての公演が同じ仕組みを採用しているわけではなく、電子チケットの種類によって分配やリセールの手続きが異なる場合もある。ぴあでも、電子チケットを一度外部アプリで受け取った後、分配やリセールを利用する場合にはMyチケットへ戻す必要があるケースがある。

それでも、チケット市場の大きな方向性がデジタルへ向かっていることは間違いない。紙のチケットを持って会場へ行くという従来型の体験から、スマートフォンで購入し、電子チケットを受け取り、必要なら同行者へ分配し、行けなくなれば公式リセールに出す。そして会場ではスマートフォンを使って入場する。チケットを購入してから公演を終えるまでの一連の体験が、ひとつのデジタルサービスとしてつながり始めている。

ぴあは長年、日本のチケット文化を支えてきた企業である。その歴史を振り返れば、紙のチケットからコンビニ発券、インターネット販売、そして電子チケットへと、時代の変化に合わせてチケットの形を変えてきたともいえる。現在の「Myチケット」は、発券だけでなく、分配やリセールまでをまとめて扱うデジタル基盤になっている。

これからのチケットは、単なる「会場に入るための券」ではなくなる可能性が高い。電子チケット、公式リセール、本人確認、ファンデータ、キャッシュレス決済などが組み合わさることで、チケットを起点にしたエンターテインメントのデジタル化がさらに進むだろう。長年チケット販売の最前線に立ってきたぴあにとって、電子チケットは既存事業のデジタル化にとどまらず、チケットを中心とした新たなファンビジネスを構築するための重要な成長領域になりそうだ。

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LivePocketと電子チケット――「チケットを売る場所」からイベントDXを支えるプラットフォームへ

コンサートやアイドルライブ、演劇、スポーツ、展示会など、イベントの楽しみ方が大きく変化している。その変化を支えているのが電子チケットである。紙のチケットを購入し、当日会場へ持参するという従来型のスタイルから、スマートフォンでチケットを購入し、そのまま画面上でチケットを管理して入場するスタイルへと移行が進んだ。そんな電子チケット市場で存在感を持つサービスの一つが「LivePocket」である。

LivePocketは、エイベックス・グループが開発した電子チケット販売プラットフォームとしてスタートした。その後、2024年にKDDIが事業を承継した。KDDIによると、承継時点でLivePocketは約4万人のイベント主催者、1,000万人超の顧客に利用されていたという。大手アーティストのコンサートだけでなく、比較的小規模なライブ、アイドルイベント、トークイベント、舞台など、幅広いイベントを扱えることが特徴である。

LivePocketの面白さは、単に「電子チケットを販売するサイト」ではないところにある。イベント主催者が自らイベントページを作成し、チケットを販売できる仕組みを提供している。従来のチケット販売では、主催者が大手プレイガイドなどに販売を委託するケースが一般的だった。一方、LivePocketでは主催者自身が販売ページを作り、購入者との接点を直接持つことができる。イベントの企画から集客、チケット販売、入場管理までをデジタルでつなげることができるのである。

これは特にライブハウスやアイドルイベント、クラブイベントなどとの相性が良い。大規模なドーム公演だけがイベント市場ではない。数十人、数百人規模のライブやトークイベントが日々開催されており、こうした「中小規模のイベント」のデジタル化も重要な市場になっている。LivePocketは、こうした幅広いイベント主催者が電子チケットを導入するための基盤となっている。

購入者側から見ると、LivePocketの基本的な仕組みは分かりやすい。スマートフォンなどからイベントを探してチケットを購入し、購入したチケットを「マイチケット」で管理する。QRコードを利用した電子認証による入場にも対応しており、紙のチケットを発券して持ち歩く必要がない。

さらに、同行者への「チケット分配」にも対応している。例えば友人と2人でライブへ行く場合、代表者が2枚購入した後、同行者へ1枚を電子的に渡すことができる。メールやLINEなどを通じて受け取り手続きができるため、紙のチケットを直接手渡す必要がない。

一方、イベント主催者にとって重要なのが、分配機能を柔軟に設定できることだ。本人確認を重視するイベントでは、チケットの分配を禁止する設定も可能となっている。LivePocketでは、イベント全体で分配を制限することも、販売受付ごとに設定することもできる。QRコードチケットにはLivePocketに登録された氏名も表示されるため、身分証明書による本人確認と組み合わせる運用も可能だ。

この仕組みは、電子チケットが単なる「紙の代用品」ではないことを示している。紙チケットの場合、券面を持っている人が入場するという考え方が基本だった。しかし電子チケットなら、購入者、同行者、チケットの状態などをシステム上で管理できる。イベントによっては本人確認や分配制限などを組み合わせることで、不正利用への対応を強化できる。

チケットの不正転売問題を考えても、電子化の意味は大きい。人気のコンサートやスポーツイベントでは、発売直後にチケットが売り切れ、その後に高額転売されるケースが社会問題となってきた。2019年にはチケット不正転売禁止法も施行され、正規の販売ルートを守ることが一段と重要になった。電子チケットは購入者情報とチケットを結び付けやすく、イベント主催者が入場条件を細かく設定できるため、不正転売や不正入場対策の一つとして活用されている。

ただし、LivePocketの場合、現在公式リセールサービスは提供していない。購入者都合によるキャンセルや払い戻しにも原則として対応していないため、公式リセールを強みとするチケットサービスとは、この点で違いがある。

むしろLivePocketの強みは、主催者がイベントを運営するための「販売・管理基盤」にあると考えられる。イベントページの作成、チケット販売、決済、購入者への連絡、チケット分配、QRコードによる入場認証、払い戻しなど、イベント運営に必要な機能をデジタルでまとめている。イベントが中止・延期された場合には、主催者からの依頼を受けてLivePocketが購入者への払い戻しを行う仕組みも用意されている。

さらに、電子チケットはオンラインイベントとの相性も良い。LivePocketでは、購入したチケットを「マイチケット」からオンラインイベントの視聴ページへつなげることもできる。つまり、会場に足を運ぶリアルイベントだけでなく、オンライン配信を含めたイベントビジネスにも対応できる。

そして2024年のKDDIによる事業承継は、LivePocketの今後を考えるうえで大きなポイントになる。KDDIは通信会社として、スマートフォン、決済、動画、ポイント、金融など、デジタル生活のさまざまな接点を持つ。そこへ電子チケットを組み合わせれば、「通信×決済×エンターテインメント」という新たな顧客接点を構築できる可能性がある。KDDI自身もLivePocketの承継について、デジタルとリアルの顧客接点を活用し、エンターテインメント事業を強化する狙いを示している。

電子チケット市場の成長を考える際には、コンサートやプロ野球のような大規模イベントだけを見る必要はない。むしろ今後は、個人や中小規模のイベント主催者がスマートフォンを使って簡単にチケットを販売できる環境が重要になる。SNSでイベントを告知し、LivePocketでチケットを販売し、当日はQRコードで入場してもらう。この一連の流れが低コストで実現すれば、イベント開催のハードルそのものが下がる。

かつてチケットは「紙」という物理的な商品だった。しかし現在は、スマートフォンの中に存在するデータへと変わった。そしてそのデータを販売し、分配し、認証し、イベント運営につなげるプラットフォームが必要になっている。LivePocketは、その変化を象徴するサービスの一つといえる。

KDDI傘下となったことで、今後は電子チケット単体の利便性だけでなく、決済や通信、コンテンツ、ファンビジネスなどとの連携がどこまで進むかが注目される。電子チケットは「入場するためのQRコード」から、イベントとファンを結び付けるデジタルインフラへと進化しつつある。LivePocketは、その最前線でイベント主催者と参加者の双方を支える存在として、今後のエンターテインメント市場を考えるうえで見逃せないサービスになりそうだ。

まとめ:電子チケットは「入場券」からエンタメ市場のデジタル基盤へ

チケットは、紙からオンライン販売、そして電子チケットへと進化してきた。その背景には、スマートフォンの普及だけでなく、不正転売対策、本人確認、公式リセール、イベント運営の効率化といったさまざまな課題がある。ぴあは幅広い興行のチケット販売基盤を、エムアップホールディングスは「チケプラ」を通じて電子チケットや公式リセール、顔認証などを、LivePocketはイベント主催者向けの電子チケット販売・入場管理基盤を展開している。今後はAIや顔認証、キャッシュレス決済、ファンデータなどとの連携が進み、チケットは単なる「会場に入るための券」ではなく、ファンと興行主をつなぐデジタルインフラへ変わっていくだろう。

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