
岐阜から生まれる「オンリーワン企業」――地方だからこそ育まれた独自の挑戦
岐阜県と聞くと、多くの人は世界遺産・白川郷や飛騨高山、下呂温泉、あるいは関ヶ原の戦いなど、豊かな自然や歴史・文化を思い浮かべるだろう。県土の約8割を森林が占める岐阜県は、美濃焼や美濃和紙、関の刃物といった伝統産業を育み、「ものづくり県」としても全国に知られている。
一方で、岐阜県には全国的な知名度こそ高くないものの、独自の発想と高い専門性で存在感を放つ上場企業が数多く本社を構えている。東京や大阪の大企業と同じ土俵で競争するのではなく、自ら新しい市場を切り開き、「ここにしかない価値」を提供する企業が育っていることは、岐阜県産業の大きな特徴である。
今回は、そんな岐阜県を代表する個性派企業として、世界中のゲームファンを魅了するゲームメーカー「日本一ソフトウェア」、24時間フィットネスに新しい価値を加え急成長を遂げる「フィットイージー」、そして造園という専門分野だけで上場を果たした希少な企業「岐阜造園」の3社を取り上げる。業種はまったく異なるが、いずれも「他社と同じことをしない」という共通の哲学を持ち、地方から全国、そして世界へ挑戦を続けている企業である。
| 企業名 | 証券コード | 本社 | 面白いポイント |
|---|---|---|---|
| 日本一ソフトウェア | 3851 | 各務原市 | 「魔界戦記ディスガイア」シリーズで知られるゲーム会社。地方都市から世界中のコアゲーマーに向けて作品を発信している。 |
| フィットイージー | 212A | 岐阜市 | 岐阜発の24時間フィットネスジム。ゴルフ・サウナ・セルフエステなどを備えた複合型店舗で急成長している。 |
| 岐阜造園 | 1438 | 岐阜市 | 皇居やテーマパーク、商業施設などのランドスケープを手掛ける。造園会社として上場している珍しい企業。 |
| ハビックス | 3895 | 岐阜市 | おむつやマスク、産業用ワイパーなどに使われる不織布を製造。「見えないところで社会を支える」メーカー。 |
| 和井田製作所 | 6158 | 高山市 | 超硬工具や刃物を研削する精密研削盤メーカー。日本のものづくりを支えるニッチトップ企業。 |
| 美濃窯業 | 5356 | 瑞浪市 | 美濃焼の産地をルーツに持ち、製鉄所や焼却炉向けの耐火物を製造。近年は環境・脱炭素分野にも展開。 |
| ムトー精工 | 7927 | 各務原市 | 自動車や医療機器向けの精密プラスチック部品を製造。金型から成形まで一貫生産を行う。 |
| サンメッセ | 7883 | 大垣市 | 印刷会社からDX・BPO企業へ進化。選挙関連印刷や販促支援など幅広い事業を展開している。 |
| 大光 | 3160 | 大垣市 | 業務用食品卸と「アミカ」ブランドの店舗を展開。プロ向けと一般消費者向けを両立した独自のビジネスモデルが特徴。 |
| 中広 | 2139 | 岐阜市 | 無料情報誌「地域みっちゃく生活情報誌®」を全国展開。地域密着型メディアを強みに成長した企業。 |
天下分け目の舞台から絶景の山々まで――歴史・文化・自然が息づく岐阜県の魅力
日本列島のほぼ中央に位置する岐阜県は、海に面していない内陸県でありながら、日本有数の豊かな自然と長い歴史を誇る地域である。北部には標高3,000メートル級の北アルプスがそびえ、南部には濃尾平野が広がるなど、一つの県とは思えないほど多彩な地形を持つ。また、戦国時代には天下統一を目指した武将たちが激突した舞台となり、日本の歴史を大きく動かした場所でもある。さらに、世界遺産や伝統工芸、美食、温泉など、観光資源にも恵まれ、「歴史」「自然」「ものづくり」が絶妙に融合した県として全国から注目を集めている。
岐阜県の歴史を語るうえで欠かせないのが戦国時代である。かつて「井ノ口」と呼ばれていた土地を、織田信長が「岐阜」と改名したことはよく知られている。「岐阜」という地名は、中国の故事に由来し、「天下統一への出発点」という意味が込められているとされる。信長は金華山の山頂にそびえる岐阜城を居城とし、ここを拠点に天下布武を掲げて全国へ進軍した。岐阜城から見渡す濃尾平野はまさに絶景であり、戦国武将がこの地を重要拠点と考えた理由を肌で感じることができる。
さらに岐阜県は、「天下分け目の戦い」として知られる関ヶ原の戦いの舞台でもある。1600年、徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍が激突し、日本の歴史を決定づけたこの戦いは、現在でも国内外の歴史ファンを魅了している。関ヶ原町には古戦場跡や資料館が整備され、戦国時代を体感できる観光地として人気を集めている。歴史好きにとって、岐阜県はまさに「日本史の教科書を歩ける場所」といえるだろう。
岐阜県は自然の宝庫でもある。県の面積の約8割を森林が占め、飛騨山脈(北アルプス)をはじめとする雄大な山々が広がる。飛騨地方では四季折々の絶景を楽しめ、春の新緑、夏の高原、秋の紅葉、冬の雪景色と、一年を通して異なる表情を見せる。特に新穂高ロープウェイから望む北アルプスの大パノラマは圧巻で、多くの登山客や観光客が訪れる。
また、日本三名泉の一つである下呂温泉も岐阜県を代表する観光地だ。奈良時代から名湯として知られ、「美人の湯」と呼ばれる泉質は国内外の旅行者に人気がある。温泉街には足湯や食べ歩きスポットも充実しており、歴史と癒やしを同時に楽しめる場所となっている。
世界遺産として知られる白川郷も、岐阜県を代表する存在である。急勾配の茅葺き屋根を持つ合掌造り集落は、豪雪地帯ならではの知恵から生まれた建築様式であり、日本の原風景を今に伝えている。冬のライトアップでは雪景色と幻想的な灯りが織りなす美しい光景が広がり、多くの外国人観光客も訪れる人気スポットとなっている。
岐阜県は「ものづくり県」としての顔も持つ。美濃焼は約1,300年の歴史を持つ日本最大級の陶磁器産地であり、日本国内で流通する陶磁器の約半数を占めるともいわれる。志野、織部、黄瀬戸など多彩な焼き物が生まれ、現在も全国の食卓を支えている。また、美濃和紙はユネスコ無形文化遺産にも登録され、その丈夫さと美しさから文化財の修復や芸術作品にも利用されている。
刃物の町として有名な関市も岐阜県の誇りである。鎌倉時代から続く刀鍛冶の技術が受け継がれ、現在では世界的な包丁やナイフメーカーが集積する一大産地となっている。「関の刃物」は海外でも高い評価を受け、日本の職人技を象徴するブランドとなっている。
食文化も岐阜県ならではの魅力にあふれている。飛騨牛は全国トップクラスのブランド牛として知られ、きめ細かな霜降りと柔らかな肉質が特徴だ。郷土料理では朴葉味噌や鶏ちゃん、高山ラーメンなど地域色豊かな料理が並び、清らかな水に育まれた日本酒も人気を集めている。長良川で行われる伝統漁法「鵜飼」は約1,300年の歴史を持ち、夏の風物詩として今も受け継がれている。
近年の岐阜県は観光だけでなく、先端産業や特色ある企業の集積地としても存在感を高めている。ゲームソフトメーカーの日本一ソフトウェア、複合型フィットネスクラブを展開するフィットイージー、造園業界では珍しい上場企業である岐阜造園など、全国的にはあまり知られていないものの、高い専門性や独自のビジネスモデルを持つ企業が数多く本社を構えている。伝統産業だけでなく、新しい産業が育ち続けていることも岐阜県の大きな魅力である。
岐阜県は「歴史の舞台」「世界遺産」「豊かな自然」「伝統工芸」「食文化」、そして「特色ある企業」が一体となった、日本でも屈指の個性を持つ地域である。戦国武将が夢を描いた城下町、何百年も受け継がれる職人の技、美しい山々が育む暮らし、そして未来へ挑戦する企業群。そのすべてが調和しているからこそ、岐阜県には何度訪れても新しい発見がある。歴史好きも、自然愛好家も、グルメファンも、ビジネスに興味のある人も、それぞれの視点から岐阜県の奥深い魅力を楽しめるだろう。
岐阜から世界へ。コアゲーマーに愛されるゲーム会社――日本一ソフトウェアが貫く「尖ったものづくり」
ゲーム業界と聞くと、任天堂やソニーグループ、バンダイナムコホールディングス、スクウェア・エニックス・ホールディングスなど、東京を拠点とする大手企業を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、日本には地方から世界中のゲームファンを魅了し続けているメーカーが存在する。その代表格が、岐阜県各務原市に本社を置く日本一ソフトウェアである。
同社は1993年に設立されたゲームソフト開発会社で、「大手と同じことをしない」という独自路線を貫いてきた。家庭用ゲーム機向けタイトルを中心に、シミュレーションRPGやアドベンチャーゲームなど個性的な作品を数多く送り出し、日本国内だけでなく北米や欧州、アジアにも熱心なファンを持つ。決して販売本数だけを競う会社ではない。しかし、コアゲーマーからの圧倒的な支持によって確固たるブランドを築き上げてきた企業なのである。
日本一ソフトウェアを語る上で欠かせない作品が、「魔界戦記ディスガイア」シリーズだ。2003年に第1作が発売されると、従来のシミュレーションRPGの常識を覆す自由度と遊び込み要素が大きな話題となった。
レベルは9999まで育成可能。与えるダメージは数百万、数千万、さらには億単位へと膨れ上がる。アイテムの中に入り込んで能力を強化する「アイテム界」、キャラクターを自由に育成できる転生システム、議会でルールそのものを変更する発想など、ユニークなゲームシステムは発売当時、多くのゲームファンに衝撃を与えた。
一般的なRPGが数十時間でクリアできるのに対し、ディスガイアシリーズは「クリアしてからが本番」といわれるほど膨大なやり込み要素を備えている。数百時間、あるいは1,000時間以上遊び続けるプレイヤーも珍しくなく、「時間泥棒ゲーム」とまで呼ばれるほどだ。この圧倒的なボリュームこそ、日本一ソフトウェア最大の武器である。
もっとも、同社の魅力はディスガイアだけではない。「流行を追いかける」のではなく、「面白いと思ったものを形にする」という開発姿勢が、多彩なタイトルを生み出してきた。
ホラーアドベンチャー『夜廻』シリーズでは、子どもの視点から描かれる夜の街の恐怖を繊細な世界観で表現し、多くのプレイヤーを魅了した。『嘘つき姫と盲目王子』では絵本のような温かなグラフィックと切ない物語が話題となり、『MAD RAT DEAD』ではリズムゲームとアクションを融合させるなど、他社にはない発想のゲームを数多く送り出している。
近年のゲーム業界では、大規模なオープンワールド作品やオンラインゲームの開発費が数百億円規模になることも珍しくない。その一方で、日本一ソフトウェアは比較的小規模な開発体制を維持しながら、「アイデア」「個性」「遊び心」で勝負する戦略を選択してきた。
これは岐阜県という地方都市に本社を置く企業ならではの経営ともいえる。首都圏に比べて開発者の確保は容易ではないが、その分、少人数で密度の高い開発を行い、自分たちの色を前面に押し出した作品づくりを続けている。大量販売を前提とするのではなく、「好きな人にはとことん刺さるゲーム」を目指す姿勢が、長年にわたりブランド価値を支えてきた。
海外市場での評価も高い。同社は早くから欧米市場を意識した展開を進め、北米・欧州向けの販売網を整備してきた。アニメ調のキャラクターデザインや、日本らしいゲーム性は海外でも根強い人気があり、発売から何年も経った作品がダウンロード販売で売れ続けるケースも少なくない。
特にディスガイアシリーズは世界累計販売本数を着実に伸ばし、日本製シミュレーションRPGを代表するブランドの一つとして認知されている。近年では家庭用ゲーム機だけでなくPC向けプラットフォームへの展開も積極的に進め、販売チャネルを広げていることも特徴だ。
ゲーム業界はヒット作への依存度が高く、市場環境の変化も激しい。スマートフォンゲームの台頭、ダウンロード販売の拡大、サブスクリプションサービスの普及など、ビジネスモデルは大きく変化してきた。その中で日本一ソフトウェアも、家庭用ゲーム機向けソフトを軸にしながら、ダウンロードコンテンツや海外販売、ライセンスビジネスなど収益源の多様化を進めている。
また、自社IP(知的財産)を大切に育て続けることも同社の強みである。新作を発売して終わりではなく、シリーズ化やリマスター版の展開、関連グッズやイベントなどを通じて作品の価値を長期間維持している。知名度では大手に及ばなくとも、熱心なファンとの長い関係を築くことが、企業としての安定につながっている。
岐阜県は、美濃焼や関の刃物など伝統産業が盛んな「ものづくり県」として知られる。その土地で育った日本一ソフトウェアもまた、大量生産ではなく、「職人がこだわり抜いて作る作品」を世に送り出してきた企業といえるだろう。一つひとつのゲームに独創的なアイデアを詰め込み、他社にはない個性を磨き続ける姿勢は、まさに岐阜のものづくり精神と重なる。
派手な広告を打つわけでもなく、毎年何千万本ものゲームを販売する企業でもない。しかし、「日本一ソフトウェアだから買う」というファンを世界中に持つブランド力は、決して数字だけでは測れない価値である。ゲーム業界では「万人受け」を目指す作品が増える一方で、日本一ソフトウェアは今も「好きな人にはたまらないゲーム」を作り続けている。
地方都市・岐阜から世界へ。コアゲーマーの心をつかみ続けるその姿は、日本のコンテンツ産業において「小さくても強い」企業の理想像の一つと言えるのではないだろうか。
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岐阜発・24時間ジム革命――フィットイージーが変えた「運動する場所」の新しい価値
健康志向の高まりとともに、日本のフィットネス市場は大きく変化している。かつてスポーツジムといえば、高額な会費を支払い、プールやスタジオレッスンを利用する総合型クラブが主流だった。しかし近年は、24時間営業のジムが全国へ急速に広がり、「好きな時間に、好きなだけ運動する」という新しいスタイルが定着している。その中で、岐阜県岐阜市から全国へ勢力を拡大し、独自路線で急成長を遂げている企業がフィットイージーである。
同社は「24時間営業」という仕組みだけではなく、「ジムは筋トレをする場所」という従来の常識そのものを変えようとしている。ゴルフシミュレーター、セルフエステ、サウナ、ラウンジ、さらにはバーチャルスタジオなど、多彩なサービスを一つの施設に集約し、「運動」と「健康」、そして「娯楽」を融合した新しいフィットネスクラブを提案しているのである。
フィットイージーの創業は2018年。比較的新しい企業でありながら、わずか数年で全国へ店舗網を広げ、2024年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たした。急成長の背景には、日本のフィットネス市場に存在していた「隙間」を見抜いた経営戦略がある。
従来型の総合スポーツクラブは、プールやスタジオプログラム、浴場など充実した設備を備える一方、会費は比較的高く、営業時間も限られていた。一方、24時間ジムは料金を抑えられるものの、設備がシンプルで「筋トレをする人だけの場所」というイメージが強かった。
フィットイージーは、その両者の長所を組み合わせることを目指した。基本となる24時間ジムに加え、ゴルフ練習、セルフエステ、高性能マッサージチェア、水素ルーム、サウナ、コワーキングスペースなどを導入し、「今日は筋トレ」「明日はゴルフ」「仕事帰りはサウナ」というように、一つの会員権で多様な過ごし方ができる施設へ進化させたのである。
特に注目されているのが、シミュレーションゴルフの導入だ。近年、ゴルフ人口は若年層にも広がりつつあるが、打ちっぱなし練習場は郊外にあることが多く、時間や天候にも左右される。フィットイージーでは最新シミュレーターを設置し、24時間いつでもゴルフ練習ができる店舗も展開している。ジム利用者だけでなく、ゴルファーにとっても魅力的な施設となっている点は他社との差別化につながっている。
さらに、美容分野への進出も特徴的である。セルフエステやセルフホワイトニングなどを導入することで、女性会員の獲得にも成功している。従来の24時間ジムは男性利用者が多い傾向にあったが、「健康」と「美容」を組み合わせることで、幅広い年齢層へと利用者を広げてきた。
また、デジタル技術を積極的に活用していることも同社の強みだ。スマートフォンアプリを使った入退館管理や予約システム、顔認証による入館など、省人化を進めながら利便性を高めている。スタッフが常駐しない時間帯でも安全性を確保しつつ、24時間営業を効率よく運営できる仕組みを整えているのである。
このようなDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用は、近年の人手不足にも対応する重要な経営戦略となっている。サービスの質を維持しながら運営コストを抑えることで、新規出店を加速させる好循環を生み出している。
フィットイージーの店舗づくりには、もう一つ特徴がある。それは「地域密着型」であることだ。都市部だけでなく地方都市や郊外への出店も積極的に進めており、これまで本格的なフィットネスクラブが少なかった地域にも店舗を展開している。地方では車社会であることから、広い駐車場を備えたロードサイド型店舗も多く、日常生活の中で気軽に立ち寄れる環境を整えている。
岐阜県発祥という点も興味深い。地方企業だからこそ、大都市だけではなく地方市場のニーズを理解し、「地域住民が本当に使いやすいジム」を考え続けてきた。その発想が全国展開でも強みとなっているのである。
近年は健康経営への関心も高まり、企業が従業員の健康維持を重視する時代になった。また、高齢化社会の進展によって、「病気になってから治療する」のではなく、「健康を維持するために運動する」という予防医療の考え方も広がっている。フィットネスジムは単なる運動施設ではなく、社会インフラとしての役割も期待されるようになってきた。
フィットイージーが提供しているのは、単なる筋力トレーニングの場ではない。運動、美容、リラクゼーション、趣味、仕事まで、一つの施設で完結できる「ライフスタイル空間」である。こうした発想は、フィットネス業界に新しい競争軸を生み出したと言えるだろう。
もちろん競争は激しい。国内には24時間ジムが数多く存在し、価格競争だけでは差別化が難しくなっている。その中でフィットイージーは、「安いジム」ではなく、「付加価値の高いジム」というポジションを築こうとしている。設備投資は必要になるものの、その分だけ利用者の満足度や継続率を高め、長期的な会員基盤を構築する戦略である。
岐阜県には、美濃焼や関の刃物といった伝統産業だけでなく、独自のアイデアで全国へ挑戦する企業が数多く存在する。フィットイージーもまた、その一社である。「24時間営業」というビジネスモデルに留まらず、「運動する場所」の概念そのものを広げ、新しいライフスタイルを提案する企業へと進化している。
岐阜から始まったこの挑戦は、いまや全国へ広がりつつある。筋トレだけではない、健康だけでもない。「毎日立ち寄りたくなる場所」を目指すフィットイージーの発想は、日本のフィットネス業界に新たなスタンダードを生み出しつつある。地方発の企業だからこそ実現できた柔軟な発想と挑戦が、これからの健康産業をさらに変えていくのかもしれない。
造園だけで上場した珍しい企業――岐阜造園が育てる「緑の価値」と日本のランドスケープ
企業の事業内容を聞いて「造園です」と答える上場企業は、日本でも極めて珍しい。製造業やIT企業、金融機関が数多く上場する一方で、庭園や公園、緑地を手掛ける造園会社が株式市場に名を連ねる例は多くない。その希少な存在が、岐阜県岐阜市に本社を置く岐阜造園である。
「庭づくりの会社」というイメージを持つ人も多いかもしれない。しかし実際の岐阜造園が手掛ける仕事は、その枠をはるかに超えている。大型商業施設やホテル、オフィスビル、都市公園、工場、教育施設、テーマパークなど、人々が集うさまざまな空間に緑を創り出し、「景観」という目に見えない価値を提供している企業なのである。
岐阜造園の歴史は1927年にまでさかのぼる。創業以来、およそ1世紀にわたり造園事業を続け、日本庭園の施工から都市緑化、ランドスケープデザインまで事業領域を広げてきた。2018年には東京証券取引所へ上場し、「造園を主力事業とする数少ない上場企業」として大きな注目を集めた。
そもそも造園業とは何をする仕事なのだろうか。庭木を植える仕事という印象が強いが、実際には土地全体を設計し、樹木や芝生、水辺、石材、遊歩道、照明などを組み合わせ、人が快適に過ごせる空間をデザインする総合的な仕事である。建築物そのものを造る建設会社に対し、「建物の価値を最大限に引き出す屋外空間」を創造するのが造園会社の役割と言える。
例えば、高級ホテルのエントランスを思い浮かべてほしい。建物が美しくても、植栽が手入れされておらず、緑が乏しければ高級感は半減してしまう。一方、四季折々の樹木や花々が調和し、水景や照明まで計算された空間であれば、建築物の印象は格段に向上する。人は無意識のうちに「居心地の良さ」や「美しさ」を感じているが、その演出を担うのがランドスケープデザインなのである。
岐阜造園は、このランドスケープ分野で高い評価を受けている。商業施設やマンション、オフィスビルだけでなく、大規模な公共施設や都市開発プロジェクトにも数多く携わり、全国各地で施工実績を積み重ねてきた。設計から施工、さらに完成後の維持管理まで一貫して対応できる体制を持つことも大きな強みである。
造園という仕事は、一度完成すれば終わりではない。植物は生き物であり、季節によって姿を変え、年月とともに成長する。植えた瞬間が完成ではなく、5年後、10年後、さらには数十年後を見据えながら空間を設計する必要がある。そのため、樹木の成長速度や根の広がり、日照条件、水はけ、地域の気候まで考慮しなければならない。建築とは異なる時間軸で仕事を進める点が、造園業ならではの奥深さと言えるだろう。
近年、岐阜造園の存在感が高まっている背景には、「緑」の価値が見直されていることがある。都市部ではヒートアイランド現象への対策として街路樹や公園の整備が進み、企業ではESG経営やSDGsへの取り組みの一環として緑化を重視する動きが広がっている。植物は景観を美しくするだけではない。夏場の気温上昇を抑え、CO₂を吸収し、生物多様性を守り、人々に癒やしを与える存在でもある。
また、新型コロナウイルス禍を経験したことで、人々の価値観にも変化が生まれた。テレワークの普及や健康志向の高まりにより、公園や広場、屋外空間の重要性が再認識され、「緑のある空間」が都市の魅力を左右する時代となっている。企業や自治体も、単なる植栽ではなく、滞在したくなるランドスケープづくりを求めるようになり、専門性を持つ造園会社への期待は一段と高まっている。
岐阜造園はこうした社会の変化を追い風に、造園を「コスト」ではなく「価値を生み出す投資」として提案している。例えば商業施設では、居心地の良い緑地を整備することで滞在時間が延び、集客力の向上につながる可能性がある。オフィスでは植栽や庭園が従業員のストレス軽減や創造性向上に寄与するとされ、企業価値の向上にも結び付く。景観設計は、美観だけでなく経済的価値を生み出す重要な要素となっているのである。
一方で、造園業界には課題もある。職人の高齢化や後継者不足、気候変動による樹木管理の難しさ、人手不足などである。こうした中、岐阜造園は設計力や提案力を強化するとともに、ICTやドローンを活用した測量・施工管理など、新しい技術も積極的に取り入れている。伝統的な職人技を守りながら、最新技術を融合させることで競争力を高めようとしているのである。
岐阜県は美濃焼や関の刃物、美濃和紙など、長い歴史を持つものづくり文化で知られる。その土地で育った岐阜造園もまた、「良いものを長く残す」という精神を受け継いできた企業と言える。庭や公園は完成した瞬間ではなく、年月を重ねることで価値が高まる。だからこそ、目先の流行ではなく、数十年先まで愛される景観を目指して設計する姿勢が求められるのである。
華やかなIT企業や最先端メーカーと比べると、造園会社は地味な存在に映るかもしれない。しかし、人々が快適に暮らし、街に潤いを感じる背景には、必ずと言っていいほど緑の存在がある。そして、その緑を計画し、育て、未来へつないでいく企業が岐阜造園である。
「造園だけで上場した珍しい企業」という肩書きは、単なる希少性を示すものではない。都市環境や人々の暮らしに欠かせない「緑の価値」を事業として磨き続けてきた証しでもある。人口減少や気候変動が進むこれからの時代、建物だけではなく、人と自然が共生する空間づくりの重要性はますます高まるだろう。その未来を支える存在として、岐阜造園の役割は今後さらに大きくなっていくに違いない。
まとめ
日本一ソフトウェアは「ゲームの面白さ」を徹底的に追求し、フィットイージーは「フィットネス施設の在り方」を変え、岐阜造園は「緑が生み出す価値」を社会へ提案してきた。共通しているのは、既存の常識にとらわれず、自分たちならではの強みを磨き続けてきたことである。
岐阜県は、決して企業数が多い地域ではない。しかし、だからこそ独自の技術やアイデアを武器に、全国市場で存在感を発揮する企業が数多く生まれてきた。伝統産業で培われたものづくりの精神と、新しい価値を創造する挑戦心が融合していることこそ、岐阜県企業の最大の魅力と言えるだろう。
大企業ばかりが日本経済を支えているわけではない。それぞれの地域に根差し、独自の分野で全国や世界と勝負する企業があるからこそ、日本の産業は多様性と競争力を維持している。今回紹介した3社は、そのことを象徴する存在であり、岐阜県から生まれる「オンリーワン企業」の底力を改めて感じさせてくれる。
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