
IPOで注目したい成長企業4社!AI・DX・不動産テック・未上場株式投資の可能性
株式投資では、すでに確立されたビジネスモデルを持つ大企業だけでなく、新しい市場を切り開こうとする成長企業にも注目したい。特にIPO(新規株式公開)を目指す企業には、独自の技術やサービスを武器に、既存の業界構造を変えようとしている企業が少なくない。今回取り上げるのは、経理業務のDXを推進するTOKIUM、オフィスの受付や会議室管理を効率化するRECEPTIONIST、不動産データとAIを活用するestie、そして未上場企業への投資機会を提供するHiJoJo Partnersの4社だ。それぞれ事業領域は異なるものの、企業の業務効率化やデータ活用、新たな投資市場の開拓といった成長テーマを背景に事業を展開している。売上高の拡大や顧客基盤の構築、独自のサービスによる競争優位性など、投資家が注目したいポイントは多い。一方で、先行投資の負担や競争激化、収益の変動性など、成長企業ならではのリスクも存在する。各社のビジネスモデルや業績、今後の成長戦略を比較しながら、将来の企業価値を左右する要素を探っていこう。
| 企業名 | 証券コード | 上場予定日 | 市場 | 主な事業内容 | 成長の注目ポイント | 主なリスク・課題 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| TOKIUM | 664A | 2026年11月25日 | 東証グロース | 経理AIエージェント、経費精算・請求書処理などのクラウドサービス | 経理業務のDX、AI活用、顧客基盤の拡大、利益率の改善 | 競争激化、AI開発投資、収益性の維持 |
| RECEPTIONIST(レセプショニスト) | 660A | 2026年11月10日 | 東証グロース | クラウド受付システム、会議室管理、日程調整サービス | オフィスDXの普及、複数サービスの展開、顧客単価の向上 | 競合サービスとの差別化、顧客獲得コスト |
| estie(エスティ) | 658A | 2026年11月6日 | 東証グロース | 商業用不動産データプラットフォーム、データ分析・AI活用支援 | 不動産データの蓄積、AIによる分析高度化、企業不動産領域への展開 | 営業赤字、先行投資、不動産市場の変動 |
| HiJoJo Partners(ヒジョージョーパートナーズ) | 657A | 2026年11月20日 | 東証グロース | 未上場スタートアップへの投資機会の提供、ファンドの募集・販売・運用管理 | 未上場株式市場の拡大、米国事業、新たな投資商品の展開 | ファンド販売の変動、成功報酬への依存、未上場株式の流動性リスク |
TOKIUM(664A)とは?経理AIエージェントで企業のバックオフィスを変える成長企業の実力
企業活動に欠かせない経理業務は、請求書の受領や支払い、経費精算、契約書の管理など、多岐にわたる。デジタル化が進む一方で、紙の書類や手作業による入力、承認手続きなどが残り、担当者の負担が大きい企業も少なくない。こうした課題の解決を目指すのが、経理業務の効率化を支援する株式会社TOKIUMだ。AI(人工知能)とシステム、オペレーターによる業務処理を組み合わせた独自のサービスを展開し、企業のバックオフィス改革を支えている。2026年10月には東京証券取引所グロース市場への新規上場が承認され、11月25日の上場が予定されている。経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)とAI活用が進むなか、同社の成長性や収益構造にはどのような特徴があるのだろうか。
TOKIUMは2012年6月に設立された企業で、「未来へつながる時を生む」という理念を掲げている。同社の特徴は、単に経理業務を効率化するソフトウェアを提供するだけでなく、AIやシステムに加えて人によるオペレーションも組み合わせ、業務プロセスそのものを支援している点にある。経費精算や請求書の支払いといった日常的な業務から、契約管理、請求書発行、文書管理まで幅広い領域をカバーする。顧客企業は複数の業務を同社のサービスに集約することで、社内の事務負担を軽減し、従業員がより付加価値の高い仕事に時間を使えるようになる。
企業の経理業務には、正確性と継続性が求められる。請求書の金額や支払期日を誤れば、取引先との関係や資金繰りに影響する可能性がある。領収書や契約書などの書類を適切に管理することも重要だ。一方、こうした業務には定型的な作業が多く、人手不足や人件費の上昇が課題となっている企業にとって、効率化のメリットは大きい。TOKIUMは、AIによる情報処理とシステム化、必要に応じた人手による確認・処理を組み合わせることで、業務品質と効率性の両立を目指している。
同社の事業で注目したいのは、顧客数の拡大だけでなく、既存顧客が利用するサービスの範囲を広げることで成長を目指せる点だ。例えば、最初は経費精算だけを導入した企業が、請求書の支払いや契約管理にも利用範囲を広げれば、1社当たりの売上拡大につながる。企業にとっては複数の業務を一元的に管理できる利点があり、TOKIUMにとっては顧客との継続的な取引を通じて収益基盤を強化できる利点がある。こうした仕組みは、顧客数の増加と顧客単価の上昇を両立させるうえで重要だ。
実際、同社は顧客基盤を拡大している。2026年5月期の連結売上高は約59億6,600万円となり、前期の約46億100万円から29.7%増加した。累計導入企業数は2026年5月末時点で3,000社を超えている。さらに、上場申請に関連する開示資料では、2026年5月期の平均月次解約率は0.21%とされている。こうした低い解約率は、導入した顧客がサービスを継続して利用する傾向を示す指標として注目できる。経理業務は企業活動に不可欠であり、一度システムや業務フローに組み込まれれば、別のサービスへの切り替えには相応の手間がかかる。そのため、顧客基盤を維持しながら追加サービスを提案できることは、同社の成長にとって重要な要素となる。
一方、業績を見る際には、売上高の成長だけでなく、利益の変化にも注目したい。TOKIUMの2025年5月期は、連結売上高が約46億円だったものの、経常損失約7億7,200万円、純損失約7億8,500万円を計上した。これに対し、2026年5月期は売上高が約59億6,600万円に拡大し、経常利益約4,500万円、純利益約3,000万円を確保した。売上高の拡大とともに赤字から黒字へ転換したことは、収益性の改善を示す変化といえる。
同社は成長に向けて、広告宣伝や人材採用などに積極的に投資してきた。こうした先行投資は短期的には費用の増加要因となる一方、顧客獲得やサービス提供体制の拡充につながる可能性がある。投資家としては、今後も売上高の成長を維持できるかに加え、売上高の増加がどの程度利益の拡大につながるかを確認したい。特に、AIによる業務処理の効率化が進めば、顧客数や処理件数が増えた場合でも、1件当たりの処理コストを抑えられる可能性がある。AI活用による生産性向上が実際の利益率改善につながるかどうかは、中長期的な評価のポイントになる。
2027年5月期の会社予想では、連結売上高は約72億2,200万円、経常利益は約3億1,600万円となっている。2026年5月期の実績と比較すると、売上高の拡大に加えて、利益のさらなる増加を見込む計画だ。2027年5月期第1四半期の連結売上高は約17億4,300万円、営業利益は約2億5,100万円だった。四半期実績だけで通期予想の達成を判断することはできないが、今後の決算では売上高の進捗に加え、利益率の推移や先行投資の効果を確認することが重要となる。
もちろん、成長期待だけで同社を評価するのは禁物だ。経理業務の効率化を目指す市場では、既存の会計ソフトや経費精算システムを提供する企業に加え、AIを活用した新たなサービスも競争相手となり得る。AI技術が急速に進化するなか、機能の優位性を維持するには継続的な開発投資が必要だ。また、AIによる自動処理の精度を高めながら、人による確認やサポートにかかるコストを抑えられるかも課題となる。顧客の経理情報や契約情報などを扱う以上、情報セキュリティーやシステムの安定稼働も欠かせない。
株式投資の観点では、TOKIUMが今後どの程度の成長を実現できるかに加え、その成長が株価にどこまで織り込まれているかを見極める必要がある。新規上場銘柄は、事業への期待や需給の影響によって株価が大きく変動する場合がある。売上高の成長率だけでなく、営業利益率、顧客数、平均月次解約率、1社当たりの売上高などを継続的に確認し、企業価値を多角的に評価したい。
TOKIUMは、経理業務という企業活動に欠かせない領域で、AIとシステム、人による業務処理を組み合わせたサービスを展開する企業だ。売上高の成長と黒字転換は前向きな材料であり、顧客基盤の拡大やサービス利用範囲の広がりにも期待がかかる。一方、競争激化やAI開発への投資、収益性の維持など、注視すべき課題も残されている。2026年11月25日に予定される上場を経て、同社が成長と利益拡大を両立できるか。経理DX市場の拡大を背景に、今後の決算や事業展開を追っていきたい銘柄の一つといえるだろう。
RECEPTIONIST(660A)とは?クラウド受付からオフィスDXへ、成長市場を切り開く注目のIPO銘柄
企業の受付業務や会議室の予約、来訪者への対応は、オフィス運営に欠かせない仕事だ。しかし、来訪者の取り次ぎや電話対応、会議室の調整などには多くの時間がかかり、従業員の生産性を低下させる要因にもなっている。こうした課題をクラウドサービスで解決しようとしているのが、株式会社RECEPTIONIST(レセプショニスト)だ。クラウド受付システムを主力に、日程調整や会議室管理、電話自動応答などへサービスを広げている。2026年11月10日には東京証券取引所グロース市場への新規上場が予定されており、オフィスDX関連のIPO銘柄として注目される。受付業務のデジタル化を出発点に、企業の働き方をどこまで変えられるのか。同社の事業モデルと成長性を探っていこう。
RECEPTIONISTは2016年1月に設立された企業で、「ビジネスの不条理をなくす。」というミッションを掲げている。2017年にクラウド受付システム「RECEPTIONIST」をリリースし、その後、日程調整ツールや会議室管理システムなどへ事業領域を拡大してきた。
主力の「RECEPTIONIST」は、来訪者が受付端末を操作すると、訪問先の担当者へ来訪情報が通知される仕組みだ。従来のように受付担当者が来訪者の名前や訪問先を確認し、内線電話などで担当者を呼び出す作業を減らせる。担当者は受付に常駐する必要がなくなり、来訪者もスムーズに入館手続きを進められる。受付業務の効率化だけでなく、受付スペースの省人化や、来訪履歴の管理といった面でも導入効果が期待できる。
同社の強みは、受付システムだけにとどまらず、オフィス内のさまざまな業務をカバーするサービス群を持つことだ。会議室管理システム「予約ルームズ」は、会議室の予約や利用状況の管理を効率化する。日程調整ツール「調整アポ」は、社内外の打ち合わせの日程調整にかかる手間を減らすサービスだ。さらに、2025年12月には電話自動応答サービス「代表電話コネクト」、2026年2月にはイベント受付システム「招待レセプション」をリリースした。受付、電話、会議室、日程調整という一連の業務をデジタル化することで、顧客企業の利便性を高めようとしている。
投資家が注目したいのは、こうしたサービスを組み合わせることで、顧客1社当たりの売上高を拡大できる可能性がある点だ。例えば、受付システムを導入した企業に対して、会議室管理や日程調整のサービスを追加で提供できれば、既存顧客との取引を深められる。新規顧客を獲得するための営業コストを抑えながら、契約当たりの収益を増やせる可能性もある。複数のサービスを利用する顧客が増えれば、企業の業務フローに同社のシステムが組み込まれ、継続利用にもつながりやすい。
市場環境も追い風となりそうだ。同社の会社情報によると、第三者調査機関の調査では、国内の来訪者管理システム市場は2025年度に33億5,000万円となり、前年度比22.7%増と推計されている。2025年度から2030年度までの年平均成長率は17.2%と予測されている。また、同社は同市場のベンダー別売上金額シェアで2024年度に13.9%、2025年度に14.3%を獲得し、2年連続で首位となったとしている。さらに、無人受付システムの潜在的な導入対象は国内36.7万社と推計される一方、2025年度時点の普及率は2.9%にとどまる。こうした数字からは、既存市場での競争力に加え、今後の普及拡大による成長余地もうかがえる。
財務面では、売上高の拡大と黒字化の進展がポイントとなる。2023年10月期の売上高は約4億9,600万円、2024年10月期は約6億9,600万円、2025年10月期は約8億9,400万円だった。2025年10月期の売上高は前期比約28.5%増となり、成長を続けている。経常利益も2024年10月期の約2,400万円から2025年10月期には約4,500万円へ増加した。さらに、2026年4月までの中間期では売上高約5億1,900万円、経常利益約1億3,400万円を計上している。中間期の利益は前年同期との比較や一時的な要因も確認する必要があるものの、収益性の改善が進んでいるかを見極めるうえで重要な数字だ。
一方、成長企業としての課題もある。クラウド受付や会議室管理の分野では、オフィス向けソフトウェアや入退館管理システムなどを提供する企業との競争が想定される。顧客企業が既存のシステムを利用している場合、乗り換えを促すには、導入費用や使いやすさ、他サービスとの連携などで明確な利点を示さなければならない。新サービスの開発や販売体制の強化には、人材採用や広告宣伝などの費用も必要となる。売上高が拡大しても、先行投資が増えれば利益の伸びが抑えられる可能性があるため、売上高と利益の両方を継続的に確認したい。
また、今後はAIの活用にも注目したい。同社は、既存サービスに関連する業務フローのカスタマイズや外部サービスとの連携をノーコードで可能にする「RECEPTIONIST Agent」の開発を進めている。AIを組み込んだ機能によって、企業ごとに異なる業務フローへの対応が容易になれば、サービスの利用範囲を広げられる可能性がある。単なる受付システムから、オフィス全体の業務を効率化するプラットフォームへ発展できるかが、中長期的な成長を左右するだろう。
株式投資の観点では、2026年11月10日に予定される新規上場に向けた需給面も確認したい。2026年10月28日時点では、公開価格はまだ決定しておらず、仮条件は820~850円となっている。上場時の発行済株式総数は約404万6,000株の予定で、公募株式数は5万株、売出株式数は141万6,200株とされている。今回のIPOは新たな資金調達となる公募よりも、既存株主による売出しが中心となる構成だ。公開価格や上場時の時価総額に加え、株主構成や上場後の売買需給にも目を向けたい。
RECEPTIONISTは、受付業務の効率化を出発点に、日程調整や会議室管理、電話対応などへサービスを広げるオフィスDX企業だ。主力市場でのシェア首位、売上高の継続的な拡大、複数サービスによる顧客単価向上の可能性は、成長を考えるうえでの注目材料となる。一方で、競争環境や先行投資の負担、上場時の株価評価には注意が必要だ。今後は顧客数の増加だけでなく、既存顧客への追加販売、利益率の改善、AIを活用した新サービスの成長を確認したい。オフィスの省人化や働き方改革が進むなか、同社が受付システムの枠を超えた業務効率化プラットフォームへ成長できるか。上場後の決算と事業展開を追う価値のある銘柄といえるだろう。
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estie(658A)とは?不動産データとAIで業界を変える成長企業の実力
不動産投資の世界では、物件の立地や賃料、空室率、取引価格など、さまざまな情報を分析することが投資判断の鍵を握る。しかし、商業用不動産に関する情報は複数の事業者や媒体に分散しており、必要なデータを集めて比較するには多くの時間と労力がかかる。こうした課題の解決を目指すのが、株式会社estie(エスティ)だ。独自に構築した商業用不動産データベースを活用し、不動産会社や金融機関などの意思決定を支援するサービスを展開している。2026年11月6日には東京証券取引所グロース市場への新規上場が予定されており、不動産テックとAIを組み合わせた企業として注目される。データを集めるだけでなく、業界の意思決定そのものを変えようとする同社には、どのような成長の可能性があるのだろうか。
estieは2018年12月に設立された企業だ。主力事業は、オフィスビルや物流施設、賃貸住宅などの商業用不動産に関する情報を収集・整理し、顧客企業が活用できる形で提供する不動産プラットフォーム事業である。不動産業界では、物件の所有者や賃貸条件、入居企業、賃料相場、取引履歴など、多くの情報が事業判断に影響する。こうしたデータを一元的に扱えるようになれば、物件の取得や売却、賃貸募集、投資分析などの業務を効率化できる。estieは、独自のデータ基盤を通じて、不動産ビジネスにおける情報格差の解消を目指している。
同社の特徴は、データを収集するだけでなく、情報を構造化し、実際の業務に利用できる状態に整備している点だ。商業用不動産の情報は、物件ごとに形式が異なったり、複数の情報源に分散していたりする。単純に情報を集めるだけでは、比較や分析に十分活用できない場合もある。estieは独自のデータ構造化技術を活用し、こうした情報を統合することで、不動産事業者の分析や意思決定を支援する。専門性の高い不動産情報を扱うには、データ処理技術だけでなく、業界の商慣習や物件特性に関する知識も必要になる。こうした技術と業界知識の組み合わせは、同社の競争力を考えるうえで重要なポイントだ。
事業は大きく三つの領域に分かれる。一つ目は、商業用不動産データと、その活用を支援するアプリケーションを提供する「Vertical Dataソリューション」だ。二つ目は、顧客企業が保有するデータと同社のデータを統合し、個別の業務に合わせたデータ基盤やアプリケーションを構築する「エンタープライズ実装」。三つ目は、不動産業界のニュースや制度改正に関する情報、専門的な教育サービスなどを提供する「専門情報サービス」である。データ提供を中心に、システム構築や専門情報へ事業を広げることで、顧客の多様なニーズに対応している。
投資家が注目したいのは、同社が大手不動産会社や金融機関などを顧客に持つことだ。上場関連資料によると、総合デベロッパー上位10社の9割以上、J-REIT全58銘柄の5割以上、大手信託銀行5行にサービスが導入されているという。商業用不動産の取引や運用では、物件の価値を正確に評価することが重要であり、データの質や分析の精度が事業成果に直結する。大手企業との取引実績は、サービスの信頼性や専門性を示す材料となる。また、顧客企業の業務に深く組み込まれれば、継続的な利用や追加サービスの導入につながる可能性もある。
さらに、データ事業には、蓄積した情報を活用することでサービスの価値を高められるという特徴がある。顧客が増え、扱うデータの範囲や品質が向上すれば、より高度な分析サービスを提供できる可能性がある。もちろん、データの蓄積が自動的に競争優位につながるわけではないが、不動産市場への理解やデータの整備技術を継続的に磨くことができれば、新規参入企業との差別化につながるだろう。
一方、業績面では成長投資と収益性のバランスが課題となる。2024年12月期の連結売上高は約10億9,400万円、営業損失は約6億5,000万円だった。2025年12月期には売上高が約20億8,200万円へ拡大したものの、営業損失は約5億3,000万円となっている。売上高は大きく伸びている一方、依然として営業赤字が続いている点には注意が必要だ。データ基盤の構築や技術開発、人材採用、営業体制の強化などに先行投資を行っていると考えられるが、今後は売上高の拡大が利益改善につながるかを見極めたい。
成長戦略として注目されるのが、AIの活用とサービス領域の拡大だ。estieは不動産業務に特化したAIの開発を進めており、企業が保有する不動産情報の活用や分析業務の効率化を目指している。また、2026年8月には、独自の不動産データ構造化技術を生かし、企業不動産(CRE)領域の強化を発表した。企業が保有する不動産は、オフィスや店舗、物流拠点など多岐にわたる。これらの資産を適切に把握し、利用状況や収益性を分析することは、経営効率の改善にもつながる。商業用不動産市場で培ったデータ技術を周辺領域へ展開できれば、成長機会の拡大が期待できる。
ただし、リスクも存在する。第一に、不動産市場の景気変動だ。金利上昇や不動産価格の調整、取引の減少などが起きれば、顧客企業の投資活動やIT関連支出に影響する可能性がある。第二に、データの収集・更新にかかるコストや、情報の正確性を維持する難しさだ。第三に、AIやデータ分析を活用する競合サービスとの競争も考えられる。今後は売上高の伸びだけでなく、顧客基盤の拡大、継続利用の状況、利益率の改善などを確認する必要がある。
株式投資の観点では、2026年11月6日に予定される上場に向けて、公開価格と企業価値の評価が重要となる。2026年10月28日時点の仮条件は1,070~1,100円で、公開価格はまだ確定していない。上場時の発行済株式総数は約1,549万株の予定であり、仮条件の上限を用いて単純計算すると、時価総額は約170億円となる。ただし、これは公開価格が上限で決まった場合の概算であり、実際の公開価格や上場後の株価によって変動する。赤字が続く成長企業であることを踏まえ、売上高の成長率だけでなく、将来の利益創出力や市場環境を含めて評価したい。
estieは、商業用不動産という専門性の高い市場で、独自のデータ基盤とAIを活用して業務の効率化や意思決定の高度化を目指す企業だ。大手不動産会社や金融機関への導入実績、売上高の拡大、企業不動産領域への展開は成長を考えるうえでの注目材料となる。一方、営業赤字の継続や不動産市場の変動、競争激化には注意が必要だ。今後は、データとAIを活用したサービスが顧客の業務にどこまで定着するか、そして売上高の成長を持続的な利益へ転換できるかが焦点となる。不動産テック市場の発展とともに、同社がどのような企業価値を築いていくのか、上場後の決算や事業展開を追っていきたい。
HiJoJo Partners(657A)とは?未上場ユニコーン企業への投資機会を提供する金融ベンチャーの成長性
株式投資といえば、東京証券取引所や米国のNASDAQなどに上場している企業への投資を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、世界には上場前から急速に成長し、大きな企業価値を生み出すスタートアップ企業が数多く存在する。こうした未上場企業への投資機会を提供しているのが、HiJoJo Partners(ヒジョージョーパートナーズ)だ。同社は、将来のユニコーン企業を含む国内外のスタートアップ企業への投資を支援し、ファンドの組成や販売、運用管理などを手掛けている。2026年11月20日には東京証券取引所グロース市場への新規上場が予定されており、金融サービスとスタートアップ投資を組み合わせたビジネスモデルが注目される。上場企業への投資とは異なる市場を開拓する同社には、どのような成長の可能性があるのだろうか。
HiJoJo Partnersは2017年11月に設立された企業で、「投資を変える、市場を変える、日本を変える」というパーパスを掲げている。主な事業は、スタートアップ企業への投資機会を提供するファンドの募集・販売や運用管理などだ。未上場企業は、株式市場で自由に売買できる上場企業とは異なり、一般の投資家が株式を取得する機会が限られている。特に、世界的な成長が期待される有望企業への投資には、情報収集や投資機会へのアクセス、ファンドの組成など、専門的な知識と仕組みが必要になる。同社はこうした課題に対応し、国内の投資家と成長企業をつなぐ役割を担っている。
投資対象として注目されるのが、企業価値が10億米ドル以上に達した未上場のスタートアップ企業、いわゆる「ユニコーン企業」だ。代表例としては、生成AI分野で急成長するOpenAIや、決済インフラを提供するStripeなどが挙げられる。こうした企業は、上場前の段階から世界規模で事業を拡大することがあり、未上場の時期に投資できれば、その後の企業価値の上昇を享受できる可能性がある。ただし、未上場企業への投資は必ずしも高いリターンを保証するものではなく、事業の失敗や企業価値の下落によって損失が生じるリスクもある。HiJoJo Partnersのビジネスは、こうした投資機会を専門的なファンドなどを通じて提供する点に特徴がある。
同社の強みは、未上場企業への投資機会を提供する仕組みを構築してきたことだ。会社公表の沿革によると、累計販売金額は2021年3月に100億円、2022年2月に200億円、2023年7月に300億円、2024年10月に400億円を突破し、2026年6月には600億円に達した。累計会員数も2026年2月に1万人を超えている。投資家の裾野を広げながら販売実績を積み上げてきたことは、同社の事業基盤を評価するうえで重要な材料となる。もっとも、累計販売金額は売上高や運用資産残高と同じものではない。実際の収益力を判断する際には、ファンドの販売額だけでなく、手数料収入や運用報酬、成功報酬の推移も確認する必要がある。
HiJoJo Partnersの収益構造は、ファンドの募集時に受け取る申込手数料、運用期間中に発生する運用報酬など、そして投資対象の売却によって利益が生じた場合の成功報酬を中心としている。上場関連資料によると、申込手数料はファンドへの出資額に対して一定割合を受け取る仕組みで、運用報酬などは運用期間に応じて収益として計上される。また、投資対象の売却によって出資額を上回る収益が生じた場合には、成功報酬を受け取る仕組みもある。つまり、ファンドの販売が拡大すれば手数料収入の増加が期待できるほか、投資先企業の成長や株式売却が実現すれば、成功報酬による収益拡大も見込める。一方、成功報酬は投資先の売却時期や運用成績によって変動するため、毎期安定して発生するとは限らない。
業績面では、売上高と利益の変動に注目したい。2023年10月期の売上高は約3億9,000万円で、経常損失約2億5,300万円を計上した。2024年10月期には売上高が約6億7,200万円へ増加し、経常利益は約620万円と黒字に転換。2025年10月期には売上高が約17億5,800万円に拡大し、経常利益は約6億8,700万円、当期純利益は約5億1,300万円となった。売上高の拡大とともに利益も大きく伸びている。ただし、同社のようにファンド販売や成功報酬を収益源とする金融サービス企業では、投資環境やファンドの募集状況、投資先の売却実績によって業績が大きく変動する可能性がある。継続的な成長を評価するには、単年度の利益だけでなく、その内訳や再現性を確認することが欠かせない。
今後の成長戦略として注目されるのが、米国事業の拡大と新たな投資商品の開発だ。同社は2026年2月に米国拠点となる子会社などを設立し、米国の未上場企業への投資機会を獲得するための体制を整えた。また、2026年10月には、国内外のユニコーン企業を含む未上場株式などを主な投資対象とする「HiJoJoグローバルユニコーン投資法人」が運用を開始した。同投資法人は、適格機関投資家向けの私募を通じて約100億円の払込みを受け、運用を開始している。さらに、同社は非上場株式の売買を支援するプライベートマーケットソリューション事業にも取り組んでいる。投資商品の提供にとどまらず、未上場株式の流通や取引を支える仕組みへ事業を広げられれば、新たな収益源の確立につながる可能性がある。
もちろん、リスクも存在する。第一に、未上場企業の株式は上場株式と比べて換金性が低く、投資家が希望する時期に売却できない可能性がある。第二に、投資先企業の企業価値を適切に評価することが難しく、評価額が実際の売却価格と異なる場合もある。第三に、米国の金利動向や株式市場の変化によって、スタートアップ企業への資金供給やファンド販売が減少する可能性もある。実際、同社の2023年10月期には、米国の金利上昇による投資環境の悪化などを背景にファンド販売が大幅に減少したことが、減収減益の主な要因として説明されている。こうした過去の実績は、同社の業績が外部環境の影響を受けることを示している。
株式投資の観点では、2026年11月20日に予定される新規上場に向けて、公開価格と企業価値の評価が重要となる。2026年10月28日時点では、公開価格はまだ決定しておらず、仮条件も11月4日に発表される予定だ。今回のIPOでは公募による新株発行が540万5,400株、既存株主による売出しが360万3,600株予定されている。公募による調達資金は、米国事業や未上場株式を対象とする新規事業の立ち上げ・展開などに充当する計画だ。成長投資によって事業基盤を拡大できるかに加え、ファンド販売の拡大が利益の安定化につながるかを見極めたい。
HiJoJo Partnersは、未上場企業への投資機会を提供することで、従来はアクセスが限られていたプライベートマーケットの拡大を目指す企業だ。累計販売金額の拡大や会員基盤の成長、米国事業の立ち上げ、新たな投資法人の運用開始は、今後の成長を考えるうえで注目すべき材料となる。一方、ファンド販売や成功報酬に依存する収益構造には変動性があり、投資環境の悪化や未上場株式の流動性リスクにも注意が必要だ。今後は、販売実績の拡大だけでなく、継続的な運用報酬の積み上がりや新規事業の収益化、利益の安定性を確認していきたい。未上場株式市場の成長を追い風に、同社が投資機会の提供者から市場インフラを担う存在へと進化できるか。上場後の業績と事業展開に注目したい。
まとめ:成長期待だけで判断しない!4社の競争優位性と収益化の進展に注目
今回取り上げた4社は、それぞれ異なる市場で新しいビジネスの可能性を追求している。TOKIUMはAIやシステム、人による業務処理を組み合わせ、経理業務の効率化を支援する。RECEPTIONISTはクラウド受付を起点に、日程調整や会議室管理などへサービスを広げ、オフィスDXの推進を目指している。estieは商業用不動産に関する独自のデータ基盤を構築し、データ分析やAIを通じて不動産業界の意思決定を支援する。そしてHiJoJo Partnersは、未上場企業への投資機会を提供し、プライベートマーケットの拡大を目指している。
4社に共通するのは、専門性の高い領域で顧客の課題を解決し、継続的なサービス提供を通じて事業を拡大しようとしている点だ。顧客企業の業務に深く組み込まれるサービスや、独自に蓄積したデータを活用するビジネスは、競争優位性を築ける可能性がある。また、既存顧客への追加サービスの提供や新たな市場への進出が、将来の売上高を押し上げる要因になることも期待できる。
ただし、成長企業への投資では、売上高の拡大だけでなく、利益を安定的に生み出せる事業構造を確立できるかが重要となる。TOKIUMではAI活用による業務効率化と利益率の改善、RECEPTIONISTでは複数サービスの展開による顧客単価の向上、estieではデータ事業の拡大と営業赤字からの収益改善、HiJoJo Partnersではファンド販売の拡大と収益の安定化が、それぞれ注目点となる。各社の成長段階や収益構造は異なるため、同じ基準だけで評価するのではなく、事業の特性に応じた分析が欠かせない。
さらに、IPO銘柄では公開価格や上場時の需給、将来の成長期待が株価に大きく影響することがある。優れたビジネスモデルを持つ企業であっても、株価に過度な成長期待が織り込まれていれば、投資リターンを得ることが難しくなる可能性がある。反対に、短期的な業績だけでは見えにくい競争優位性や市場の成長余地が、長期的な企業価値の向上につながる場合もある。
投資家として大切なのは、話題性や成長ストーリーだけで判断せず、売上高の推移、利益率、顧客基盤、継続利用の状況、資金の使途などを継続的に確認することだ。市場の拡大が実際の業績につながっているか、先行投資が将来の利益を生み出しているか、競合企業との差別化を維持できているかを見極めたい。新しい市場を切り開く企業には大きな成長の可能性がある一方、その実現には時間と投資が必要となる。4社それぞれの強みと課題を把握し、将来性と株価評価の両面から企業価値を考えることが、IPO銘柄を分析するうえで重要となるだろう。


