
東京の街を変える、巨大再開発が始まる
東京では今、駅周辺や都心の一等地を中心に、これまでの街並みを大きく変える大型再開発が相次いで進んでいます。東京駅周辺では「TOKYO TORCH」の中核となるTorch Towerが建設され、浜松町では世界貿易センタービルディングの建て替えが進行。六本木や品川でも、高層オフィスや商業施設、ホテル、MICEなどを組み合わせた大規模な複合開発が計画されています。
こうした巨大プロジェクトで重要な役割を担うのが、清水建設、鹿島建設、大成建設といった大手ゼネコンです。超高層ビルの建設だけでなく、既存建物の解体、駅や道路との接続、免震・環境技術、都市機能の再編など、プロジェクトの規模が大きくなるほどゼネコンの技術力が問われます。
なかでも品川駅西口地区A地区は、京急とトヨタ自動車が事業主体となり、大成建設が設計・施工を担う大型開発です。2029年の完成を目指し、オフィスや商業、ホテル、MICEなどが集積する新たな国際交流拠点が誕生する予定です。トヨタは新東京本社を置く計画で、自動車メーカーからモビリティ企業への変革を象徴する拠点としても注目されます。
東京の再開発は単なる「ビルの建て替え」ではありません。鉄道、商業、オフィス、ホテル、観光、エンターテインメントなどを一体化し、人の流れそのものを変える都市づくりです。2028~2029年にかけて大型案件が相次いで完成を迎えることで、東京の都市景観やビジネス拠点は大きく変わっていくことになりそうです。
| プロジェクト・施設予定名 | エリア | 完成予定 | 主な建設会社・施工 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Torch Tower(トーチタワー) | 東京駅・大手町 | 2028年 | 清水建設 | 高さ約385m、日本一の超高層ビル予定 |
| 八重洲二丁目中地区 | 東京駅・八重洲 | 2028年度 | 鹿島建設・大林組・清水建設・竹中工務店など | 延床約39万㎡級 |
| 八重洲二丁目南地区 | 東京駅・八重洲 | 2028年 | 鹿島建設 | 高さ約230m級 |
| 内幸町一丁目街区開発 | 内幸町・日比谷 | 2027~2030年 | 鹿島建設・大林組など | 3棟の超高層を含む大規模開発 |
| 世界貿易センタービルディング本館 | 浜松町 | 2027年 | 鹿島建設など | 旧WTC建替え |
| 品川駅西口地区A地区 | 品川 | 2029年度 | 大成建設など | トヨタ・京急などによる大型開発 |
| 新宿駅西口地区開発 | 新宿 | 2029年頃 | 大成建設など | 駅と超高層ビルを一体整備 |
| 新宿駅西南口地区 | 新宿 | 2029年 | 大成建設など | 京王・JR東日本などによる大規模開発 |
| 渋谷二丁目西地区 | 渋谷 | 2029年頃 | 大成建設など | 渋谷駅周辺の大型再開発 |
| 宮益坂地区再開発 | 渋谷 | 2031年度 | 清水建設など | 商業・オフィス・文化施設など |
| 渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期 | 渋谷 | 2031年度 | 鹿島建設など | 渋谷駅直結の大規模開発 |
| 西新宿三丁目西地区 | 西新宿 | 2032年頃 | 大林組など | 約2,000戸規模の住宅を含む超大型再開発 |
| 日本橋一丁目東地区 | 日本橋 | 2030~2035年 | 清水建設など | 超高層オフィス・商業など |
| 六本木一丁目北地区 | 六本木 | 2028年頃 | 大成建設など | 高さ約225m級 |
| 赤坂二・六丁目地区 | 赤坂 | 2028年頃 | 鹿島建設など | 高さ約220m級 |
世界貿易センタービルディング本館と鹿島建設――浜松町の新たなランドマークを担う、超高層建築の歴史
東京・浜松町で進む大規模な再開発の中核施設として注目されているのが、「世界貿易センタービルディング本館」だ。2027年3月の竣工を予定する地上46階・地下3階の超高層ビルで、JR浜松町駅、東京モノレール浜松町駅、都営地下鉄大門駅に直結する計画となっている。新本館は、日本と世界をつなぐ新たなビジネス拠点として、浜松町の街そのものを変える存在になりそうだ。
この大型プロジェクトで重要な役割を担うのが鹿島建設である。しかも鹿島と世界貿易センタービルディングの関係は、新しい本館を建てるところから始まったものではない。実は1970年に完成した初代の世界貿易センタービルも鹿島が施工を担った。つまり、鹿島は半世紀以上前に浜松町に超高層ビルを建設し、そして現在、その建物を解体して新しい街をつくるという、非常に珍しいプロジェクトに携わっているのである。
初代の世界貿易センタービルが計画された1960年代は、日本が高度経済成長を続けていた時代だった。貿易量が急増し、国際交流やビジネス活動が活発になる中で、東京には国際貿易の拠点となる施設が求められていた。そこで浜松町駅前の都電車庫跡に建設されたのが世界貿易センタービルである。鉄道、首都高速、竹芝ふ頭、羽田空港、東京モノレールなどに近い浜松町は、まさに陸・海・空を結ぶ交通拠点だった。
1967年に着工し、1970年に完成した初代ビルは、高さ約152~162mの超高層建築だった。当時としては東洋一の高さを誇り、霞が関ビルに続く日本の超高層建築の歴史を切り開く存在となった。鹿島建設によれば、完成までに要した期間は2年8カ月。最新の建築技術を結集して建設されたビルは、浜松町のシンボルとして半世紀以上にわたり存在感を示した。
そして、この「超高層の街づくり」という歴史は鹿島建設そのものの歩みとも重なる。鹿島は1840年創業の歴史を持ち、近代日本の都市建設とともに事業を拡大してきた。特に鉄道や大型建築、超高層建築など、時代の最先端となる工事に積極的に取り組んできたことが特徴だ。
鹿島が手掛けた代表的な建築の一つが東京駅丸の内駅舎である。1914年に完成した東京駅丸の内駅舎は、辰野金吾の設計による日本建築史を代表する建物だ。鹿島は2012年に完成した保存・復原工事を担当し、約5年半をかけて創建時の姿をよみがえらせた。単純に古い建物を修復するだけではなく、駅舎を支えながら地下を大規模に免震化するという高度な工事も実施している。
この東京駅の工事は、鹿島が持つ「新しいものを建てる技術」だけでなく、「歴史的建造物を未来へ残す技術」を象徴するプロジェクトだった。赤レンガやドームの復原には伝統的な職人技も取り入れられ、約43万枚の天然スレートのうち約8万枚を再利用するなど、歴史と現代技術を組み合わせた建築が実現した。
一方、鹿島の建築史には超高層建築も数多く登場する。日本の高度経済成長期に超高層建築の施工技術を蓄積し、その後もオフィスビル、ホテル、商業施設、文化施設など幅広い建物を手掛けてきた。東京駅丸の内駅舎のような歴史的建築と、世界貿易センタービルのような超高層建築を同じ企業が手掛けていることは、鹿島の事業領域の広さを象徴している。
そして現在、鹿島は再び浜松町で超高層建築に挑戦している。
初代世界貿易センタービルは2021年から段階的に閉館し、2022年から解体が始まった。ここでも鹿島が重要な役割を担った。高さ162mの建物を解体することは、建設とは別の意味で非常に高度な技術を必要とする。特に浜松町は駅を利用する人が多く、周辺には道路や鉄道などの重要インフラが集中している。
そこで鹿島は「鹿島スラッシュカット工法」を開発した。これは超高層建築を安全かつ効率的に解体するための新工法で、初代世界貿易センタービルの解体に採用された。鹿島によれば、解体対象としては当時国内最高となる高さ162mの建物を、周辺環境に配慮しながら解体するという挑戦だった。
つまり世界貿易センタービルディング本館は、鹿島にとって「建てる」だけではなく、「解体する」「新しく建て直す」までを一貫して経験するプロジェクトなのである。1970年に東洋一の超高層ビルを建設し、半世紀後にはその建物を解体し、2027年には新たな超高層ビルを完成させる。この時間軸だけを見ても、非常に象徴的な建築プロジェクトといえる。
新しい世界貿易センタービルディング本館は、地上46階建て。2027年3月の竣工予定で、浜松町駅と一体となった新たなビジネス拠点となる。さらに周辺では、世界貿易センタービルディング南館や芝浦・竹芝方面の開発なども進み、浜松町は東京の新しい国際交流拠点へと変貌しつつある。
さらに今回の再開発では、オフィスだけではなくホテルや商業、交通機能などを組み合わせ、浜松町を「日本と世界をつなぐ一歩目」とする街づくりが目指されている。2028年にはフランスのアコーホテルズの最高級ブランド「ラッフルズ」の日本初進出となる「ラッフルズ東京」も開業予定とされている。
鹿島建設がこれまで手掛けてきた建築を振り返ると、日本の都市が経験してきた時代の変化が見えてくる。東京駅のように歴史を保存する建築がある一方、世界貿易センタービルのように高度経済成長を象徴した超高層建築もある。そして現在は、それらを解体し、より高度で機能的な都市へと更新する仕事が求められている。
世界貿易センタービルディング本館は、単なる新しいオフィスビルではない。1970年の初代ビルから続く浜松町の歴史を受け継ぎ、鹿島建設の「超高層建築」「解体技術」「都市再開発」という三つの技術が交差するプロジェクトでもある。
1840年の創業以来、日本の建設業界を支えてきた鹿島建設。東京駅の復原から超高層ビルの建設、そして世界貿易センタービルの解体まで、その仕事は時代とともに変化してきた。2027年に新本館が完成すれば、浜松町には再び新しいランドマークが誕生することになる。かつて「東洋一の高さ」を目指した建物から、未来の国際都市を支える超高層ビルへ――世界貿易センタービルディング本館は、鹿島建設と東京の建築史の次の一ページを象徴する存在になりそうだ。
六本木一丁目北地区と大成建設――都心の超高層開発に挑む「建設業界のパイオニア」
東京・六本木では、ホテルオークラ東京別館の跡地を中心とした「(仮称)六本木一丁目北地区計画」が進んでいる。計画されているのは地上50階、地下4階、最高高さ約225m、延床面積約14万㎡という大規模な複合施設だ。住宅、滞在施設、店舗などを組み合わせ、敷地内には緑豊かな広場も整備する計画となっている。2024年度に着工し、2028年度の竣工・供用開始が予定されている。
六本木一丁目から虎ノ門、赤坂にかけては、近年相次いで大規模な再開発が進められている。六本木一丁目北地区もその流れに位置付けられ、完成すれば高さ約225mの超高層建築として、このエリアの新たなランドマークの一つになるとみられる。
こうした巨大建築を支える企業の代表格が大成建設だ。1873年創業の大成建設は、明治から令和まで150年以上にわたり、日本の都市やインフラの整備に携わってきた。現在では建築、土木、開発、エンジニアリングなどを幅広く手掛ける総合建設会社であり、「建設業界のパイオニア」ともいえる存在だ。
大成建設のルーツは、1873年に大倉喜八郎が設立した「大倉組商会」にさかのぼる。当時の日本は近代化の真っただ中で、道路や鉄道、建築物など社会基盤の整備が急務となっていた。大成建設はそうした時代の変化とともに事業を拡大し、1946年に現在の「大成建設株式会社」へ社名を変更した。
同社の歴史を振り返ると、日本の近代化を象徴するようなプロジェクトが並ぶ。1873年には銀座大火後の煉瓦街復興に携わり、1890年には琵琶湖疏水という近代土木工事の先駆けとなる事業に関係した。さらに戦後にはホテルニューオータニ本館、青函トンネル、東京都第一本庁舎、横浜ランドマークタワー、東京湾アクアラインなど、各時代を代表する大型プロジェクトを手掛けている。
特に建築分野で象徴的なのが、1964年に完成したホテルニューオータニ本館だ。当時、日本ではまだ超高層建築の黎明期にあり、ホテルニューオータニ本館は日本初の超高層ビルとして建設された。東京オリンピックを控え、急増する海外からの来訪者を受け入れるための大型ホテルとして建設された同施設は、日本の建築技術が新たな段階に入ったことを示す存在だった。
その後、大成建設が手掛けた超高層建築の代表例として挙げられるのが横浜ランドマークタワーである。1993年に完成した同施設は、高さ296m、地上70階建て。完成当時、日本一の高さを誇った。オフィスだけではなく、ホテル、商業施設、展望台などを組み合わせた複合型の都市施設であり、現在もみなとみらい地区の象徴的な存在となっている。
東京都第一本庁舎も大成建設の代表的な建築物だ。1991年に完成した東京都庁舎は、新宿副都心を代表する超高層建築となった。高さ約243mのツインタワーを中心とした特徴的なデザインは、現在でも東京を代表する景観の一つである。大成建設は、こうした超高層建築を通じて、都市のランドマークをつくる技術と経験を蓄積してきた。
そして、こうした歴史の延長線上にあるのが六本木一丁目北地区である。
計画地は、長年にわたって国際的なホテルとして知られたホテルオークラ東京別館の跡地。旧別館は1973年に開業し、2020年に営業を終了した。その後、2021年から解体工事が行われ、新たな都市機能を備えた超高層複合施設へと生まれ変わることになる。
計画では、住宅や滞在施設、店舗などを組み合わせるほか、敷地南側には広場状の空地を設ける。六本木一丁目は高低差のある地形が特徴の一つであり、その地形を生かしながら緑の拠点を形成することも計画されている。単純に巨大なビルを建てるのではなく、周辺の街並みや歩行者空間まで含めて都市を更新することが今回の再開発のポイントといえる。
大成建設にとって、こうした都市再開発はこれまでの経験を生かせる分野だ。東京都心では既存建築物が密集し、地下には鉄道や道路、上下水道などのインフラが張り巡らされている。限られた敷地で巨大な建物を建設するには、単純な施工能力だけでなく、周辺環境への配慮、安全管理、地下工事、構造技術など、総合的な建設力が必要になる。
また、六本木一丁目北地区の周辺では、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、六本木三丁目地区など、大規模な都市開発が相次いでいる。大成建設自身も、六本木三丁目地区で「THE ROPPONGI TOKYO」を施工している。これは地上39階・地下1階、延床面積約6万4000㎡の複合施設で、2011年に竣工した。
つまり大成建設にとって六本木は、過去の実績とこれからの都市開発が交差する場所でもある。
ホテルニューオータニ本館で日本の超高層建築の黎明期を経験し、東京都庁舎で新宿副都心のランドマークをつくり、横浜ランドマークタワーで高さ296mの超高層建築を実現した。そして現在、東京の中心部で再び200m級の大型建築に挑んでいる。
建設会社の仕事は、建物が完成すれば終わるわけではない。近年は脱炭素、資源循環、建設現場の省人化・自動化、デジタル技術の活用など、新たな課題への対応も求められている。大成建設も、長い歴史の中で培ってきた建設技術に加えて、先端技術を取り入れながら事業領域を広げている。
六本木一丁目北地区の完成予定は2028年度。東京では同じ時期に、八重洲、虎ノ門、赤坂、渋谷、品川などでも大型再開発が進む。つまり2020年代後半は、東京の都市景観が大きく変化する時期になりそうだ。
1873年の創業以来、大成建設は銀座の復興から鉄道、トンネル、超高層ビル、行政施設、巨大インフラまで、日本の発展を支える数々の建設プロジェクトに携わってきた。六本木一丁目北地区は、そうした150年以上の歴史の先にある新たな挑戦といえる。
かつて日本初の超高層ホテルを建設した大成建設は、その後、東京都庁舎や横浜ランドマークタワーなど、東京・首都圏を象徴する建築を生み出してきた。2028年度に六本木一丁目北地区が完成すれば、また一つ、同社の建築史に新たなランドマークが加わることになるだろう。六本木の街が次の時代へ進む中で、大成建設の「建設業界のパイオニア」としての技術力が、どのような形で姿を現すのか注目される。
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品川駅西口地区A地区――トヨタと京急が描く「国際交流拠点・品川」の未来
東京の玄関口の一つである品川駅。その西口で、駅前の景色を大きく変える大型再開発が進んでいる。それが「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」だ。事業主体は京浜急行電鉄とトヨタ自動車。鉄道会社と日本を代表する自動車メーカーが共同で街づくりを進めるという異色の大型プロジェクトである。2025年5月に新築工事へ着工し、2029年の開業が予定されている。
計画地は、かつて「シナガワグース」があった場所。敷地面積は約2万3584㎡、延床面積は約31万1802㎡、地上29階・地下4階、建物高さは152mとなる。用途はオフィス、商業施設、ホテル、MICE(会議・展示・多目的ホールなど)で構成され、単なるオフィスビルではなく、人や企業、観光客、ビジネス客などが集まる複合型の都市拠点を目指す。
このプロジェクトで特に注目したいのが、トヨタと京急という異なる業種の企業が共同事業者となっている点だ。京急は鉄道を軸に品川を長年の重要拠点としてきた。一方、トヨタは自動車メーカーから「モビリティカンパニー」への変革を進めている。両社が品川駅前という場所で手を組むことで、交通、不動産、モビリティ、ビジネス、観光を組み合わせた新しい街づくりが進められる。
京急とトヨタは2020年に品川駅西口地区の開発に関する協定を結び、その後、共同事業者として計画を具体化してきた。2024年には土地持分の一部譲渡と、計画建物を共同で建設・運営する契約を締結。トヨタはこの建物に「新東京本社」を開業する予定だ。
トヨタにとって新東京本社は、単なる本社移転ではない。CASEなどによって自動車産業そのものが大きく変化するなか、同社は「モビリティカンパニー」への変革を掲げている。新東京本社についても、社内外のさまざまなパートナーが集まり、協創を加速させる拠点と位置付けている。つまり、自動車を製造する企業の本社という従来型のイメージから、移動、都市、エネルギー、デジタルなどを含めた新しい事業活動の拠点へと変わろうとしているのである。
一方、京急にとって品川は、鉄道事業だけでなく沿線価値を左右する重要な不動産拠点でもある。品川駅は羽田空港へのアクセスに優れ、新幹線も乗り入れる。さらに将来的にはリニア中央新幹線の東京側ターミナルとなることが期待されており、国内外を結ぶ交通結節点としての重要性がさらに高まる可能性がある。京急は品川駅西口地区を「国際交流拠点・品川」の中核と位置付け、周辺の開発や駅の基盤整備とも連携している。
そして、この大型施設の建設を担うのが大成建設だ。基本設計は日本設計、実施設計は大成建設一級建築士事務所、施工は大成建設東京支店となっている。
大成建設にとっても品川は重要な建設フィールドの一つだ。同社は1873年の創業以来、150年以上にわたって日本の都市づくりに携わってきた。銀座の煉瓦街復興、鉄道や土木インフラから、ホテルニューオータニ、東京都庁舎、横浜ランドマークタワーなど、時代を象徴する建築を手掛けてきた歴史を持つ。
特にホテルニューオータニや横浜ランドマークタワー、東京都庁舎などの超高層建築を通じて培ってきた技術力は、今回のような大規模複合施設にも生かされる。品川駅という巨大ターミナルに隣接する場所で、地下工事から超高層建築、商業施設、ホテル、MICEまでを一体的に整備するには、建築だけでなく交通や周辺インフラとの調整も欠かせない。大成建設にとっても、これまでの総合建設会社としての経験を発揮する大型案件といえる。
施設の中身を見ると、特に興味深いのがオフィス部分だ。京急の資料によれば、7~22階がオフィス、23~29階がホテル、5~6階がカンファレンス、地下1~4階が商業施設となる計画だ。また、1フロア当たり約6600㎡という国内最大級のオフィス面積を確保することも特徴となっている。
つまり、ここには「働く」「泊まる」「買う」「交流する」という都市機能が一つの建物に集約される。さらに品川駅とはデッキレベルでつながる歩行者ネットワークを形成する計画で、駅から建物、周辺街区へと人が移動しやすい都市構造を目指している。
また、このプロジェクトを語るうえでは、品川駅西口地区全体の再開発も見逃せない。A地区だけで街が完成するわけではなく、品川駅周辺では駅そのものの改良や、周辺街区の開発、交通基盤整備などが進められている。A地区はその中でも駅に最も近い場所に位置し、新しい品川の「顔」となる役割が期待されている。
京急にとっては、この開発によってオフィスワーカーやホテル利用者、商業施設利用者などが増えれば、鉄道利用者の増加や沿線価値の向上にもつながる。京急は本計画によって、同社線の利用者が1日当たり5000人強増加する想定も示している。
一方のトヨタにとっては、東京の国際的な交通拠点に新たな本社を置くことで、モビリティ関連の企業やスタートアップ、研究機関、行政、海外企業などとの連携を進めやすくなる。自動車メーカーが単独で成長するのではなく、さまざまな企業や都市サービスとつながることで新しい価値を生み出す――そんな考え方が、新東京本社には込められている。
品川駅西口地区A地区は、2029年の完成に向けて工事が進んでいる。かつてホテルだった場所が、オフィス、商業、ホテル、MICEを備えた巨大複合施設へと生まれ変わる。その中心には京急とトヨタという異業種の共同事業、そして大成建設の施工技術がある。
東京では八重洲、虎ノ門、渋谷、六本木などでも大型再開発が相次いでいるが、品川の特徴は「東京の都心」と「世界への玄関口」をつなぐ立地にある。羽田空港、新幹線、将来のリニア、京急線などが交差する品川は、今後さらに重要性を増す可能性がある。
品川駅西口地区A地区は、単なる新しい超高層ビルではない。京急にとっては沿線価値を高める街づくり、トヨタにとってはモビリティカンパニーへの変革を支える新たな拠点、大成建設にとっては巨大複合施設を実現する建設技術の舞台となる。そして完成後には、品川駅周辺の人の流れやビジネスのあり方そのものを変える可能性を秘めている。
2029年、品川駅西口に姿を現す新たなランドマーク。そこには、鉄道、不動産、自動車、建設という異なる産業が交わりながら、次世代の東京を形づくる姿が映し出されることになりそうだ。




