
スマホの「通話」を支えるVoLTE関連企業の実力
スマートフォンの普及によって、私たちはいつでもどこでも高速な通信を利用できるようになった。その基盤となった技術の一つがLTEであり、音声通話をLTEネットワーク上で実現するVoLTE(Voice over LTE)である。VoLTEは、従来の携帯電話網とは異なり、音声をIPデータとして処理することで、高音質な通話や通話中のデータ通信、接続時間の短縮などを可能にした。現在では4Gスマートフォンにおける音声通話の基本技術として定着している。
一方、通信技術の進化はVoLTEで終わらない。5Gの普及によって通信速度や容量がさらに向上し、将来的には5G SAやVoNR、そして6Gへとネットワークの高度化が進むと見込まれる。通信方式が複雑になるほど、端末や基地局、ネットワークが規格通りに動作するかを検証する「試験・計測」の重要性も高まる。また、企業の電話システムでは、IP電話やクラウドPBX、AIコンタクトセンターなどへの移行が進み、音声通信そのものがデジタル化している。
こうした通信の変化を支えているのが、通信計測機器やネットワーク試験、IP音声技術などを手掛ける企業である。アンリツは通信を「測る」技術、アルチザネットワークスは通信ネットワークを「試験する」技術、ネクストジェンはIP音声や通信技術を「サービスにつなげる」技術に強みを持つ。表舞台に立つスマートフォンや通信キャリアだけでなく、その裏側で通信の品質や信頼性を支える企業にも目を向けることで、VoLTEから5G、6Gへと続く通信産業の構造が見えてくる。
| 銘柄コード | 企業名 | VoLTEとの関係 |
|---|---|---|
| 6754 | アンリツ | LTE・5Gなどの通信試験・計測機器を展開。VoLTEを含む通信品質・ネットワーク試験で関連 |
| 6778 | アルチザネットワークス | 通信事業者向けのネットワーク試験・検証装置を展開。LTE・5Gの通信インフラ検証で関連 |
| 3842 | ネクストジェン | IP電話・音声通信、通信ネットワーク関連ソリューションを展開。VoLTEの音声基盤との関連が強い |
| 6701 | NEC | 基地局、コアネットワーク、IMSなど通信インフラを提供。VoLTE関連設備で実績 |
| 9433 | KDDI | auの通信ネットワークを運営する大手通信キャリア。VoLTEサービスを提供 |
VoLTEとは?仕組み・メリットから5G時代の最新動向まで徹底解説
VoLTE(Voice over LTE、ボイス・オーバー・LTE)とは、LTE、いわゆる4Gのデータ通信ネットワークを利用して音声通話を行う技術である。従来の携帯電話では、データ通信はLTE、音声通話は3Gなど別のネットワークを利用する方式が一般的だった。これに対してVoLTEでは、音声もデータと同じLTEネットワーク上でIP通信として処理する。これにより、高音質化、接続時間の短縮、通話中の高速データ通信などが可能になった。
現在ではVoLTEは特別な先端サービスというより、スマートフォンの音声通話を支える基本的な通信技術になっている。特に日本では3Gサービスの終了が進み、VoLTEの重要性はむしろ高まっている。NTTドコモは2026年3月31日にFOMAの提供を終了しており、4G端末でもVoLTE非対応の場合は音声通話が利用できなくなるケースがある。
VoLTEを理解するうえで重要なのが「音声をLTEのデータ通信として運ぶ」という考え方である。LTEはもともと高速データ通信を中心に設計されたネットワークであり、音声通話についてはIMS(IP Multimedia Subsystem)と呼ばれるIPベースの通信基盤などを組み合わせて実現する。スマートフォンから発信された音声はデジタルデータとして処理され、LTEネットワークを経由して相手側へ届けられる。つまり、電話番号を使った従来型の携帯電話サービスでありながら、ネットワークの中身はIP通信を利用している点が特徴だ。
VoLTEの大きなメリットの一つが音質である。従来の携帯電話よりも広い音声帯域を利用できるため、より自然で明瞭な会話が可能になる。さらに高度な音声コーデックを利用した「HD Voice」や、さらに高音域までカバーする「VoLTE(HD+)」といったサービスも登場している。NTTドコモはVoLTE(HD+)について、EVS-SWBという次世代音声コーデック技術に対応し、従来のVoLTEよりもさらに高い音域を再現できるとしている。
もう一つのメリットは、通話中でも高速データ通信を利用できることである。従来の方式では、音声通話中にデータ通信の方式が制限されるケースがあった。一方、VoLTEでは音声とデータをLTEネットワーク上で処理できるため、通話をしながらウェブサイトを閲覧したり、地図を確認したりすることが容易になった。NTTドコモもVoLTEの特徴として「高速マルチアクセス」を挙げており、通話中の高速データ通信を可能としている。
さらに、電話がつながるまでの時間が短くなることもVoLTEの特徴である。発信後、従来より短時間で呼び出し音が鳴るため、利用者にとっては「電話がすぐにつながる」という体感につながる。こうした音質、接続性、データ通信との同時利用という複数のメリットから、VoLTEは4G時代の携帯電話サービスを大きく変えた技術といえる。
では、5Gが普及した現在、VoLTEは古い技術になったのだろうか。必ずしもそうではない。5Gには5Gの音声通話技術としてVoNR(Voice over New Radio)が存在するが、5Gネットワークが普及したからといって、すべての音声通話が直ちにVoNRへ移行するわけではない。現在も4G LTE網は広く利用されており、音声サービスではVoLTEが重要な役割を担っている。5G端末であっても、ネットワークやサービスの構成によっては音声通話をVoLTEで提供するケースがある。
その意味で、現在のモバイル通信では「VoLTEからVoNRへ一気に移行する」というより、4GのVoLTEと5GのVoNRが共存しながらネットワークが進化していく段階と考えると分かりやすい。特に5Gの高速通信を利用しながら音声サービスを安定して提供するためには、音声を含めたネットワーク全体の設計が重要になる。
そして2026年の日本市場で注目すべきなのが、3G停波との関係である。NTTドコモでは2026年3月31日にFOMAが終了し、4月1日以降、VoLTEをOFFにしている場合は音声通話が利用できなくなるとの案内が出ている。 これはVoLTEが単なる「音質の良い電話」という位置付けから、4G時代の音声通話を成立させるための基盤へと変わったことを示す動きである。
さらに2026年6月には、ドコモが一部の旧型4G端末について、VoLTE設定がOFFの場合、2026年10月以降に3G設備の一部撤去に伴って音声通話ができなくなると案内した。対象端末では9月30日までにVoLTEをONにするよう呼びかけている。(ドコモ) つまり、3G停波によって「4G端末だから大丈夫」とは限らず、端末側がVoLTEに対応していること、さらに設定が有効になっていることが重要になっている。
スマートフォン市場でもVoLTEはすでに標準的な機能になっている。NTTドコモの2026年発売機種の対応一覧を見ると、Google Pixel 11シリーズ、Samsung Galaxy S26シリーズ、AQUOS R11、Xperia 1 VIIIなど、主要なスマートフォンがVoLTEに対応している。 また、VoLTE(HD+)についても2026年発売のiPhoneやAndroid端末などが対応機種として掲載されている。
企業・投資という視点から見ると、VoLTEは通信キャリアだけのテーマではない。LTEや5Gの基地局、コアネットワーク、IMS、通信試験・計測機器、音声通信ソフトウェアなど、さまざまな技術が組み合わさってサービスが成立するためである。通信試験・計測ではアンリツ、ネットワーク試験ではアルチザネットワークス、IP音声・通信基盤ではネクストジェンやソフトフロントホールディングスなどが関連企業として挙げられる。また、通信キャリアではNTT、KDDI、ソフトバンクなどがモバイル通信サービスを展開している。
今後のポイントは、VoLTE単体を見るのではなく、「3Gから4G、4Gから5G、そして6Gへ」という通信インフラの世代交代の中で捉えることだろう。VoLTEは4G時代の音声基盤として定着し、5GではVoNRへと技術が広がっている。一方、既存のLTEネットワークは今後も長期間にわたって重要な役割を担うと考えられる。
VoLTEは、スマートフォン利用者からすると「電話を普通にかけるための機能」に見える。しかし、その裏側ではLTE、IMS、音声コーデック、コアネットワーク、基地局、端末など多くの技術が連携している。2026年は日本で3G終了が本格的に完了し、4G・5G中心の通信環境がさらに明確になった年である。VoLTEはその変化を象徴する技術であり、今後はVoNRや5G SA、さらに次世代通信へと発展していくモバイル音声通信の基礎として理解しておく価値がある。
アンリツ
アンリツは、通信機器やネットワークの性能を測定・評価する「通信計測」を主力とする企業である。証券コードは6754、東京証券取引所プライム市場に上場している。同社の特徴は、スマートフォンや基地局そのものを大量に販売するのではなく、通信技術が正しく動作しているかを検証するための計測器やソリューションを提供している点にある。携帯電話の世代交代が進むたびに通信規格は複雑化しており、その裏側では「測る」ための技術が不可欠となる。VoLTE、4G、5G、そして将来の6Gまで、通信インフラの進化を陰から支える存在として注目できる企業だ。
アンリツのルーツは古く、130年以上にわたって計測技術を培ってきた。同社は現在、通信計測、PQA(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス)、環境計測、センシング&デバイスなどの事業を展開している。このうち中核となっているのが通信計測事業である。通信計測事業では、スマートフォンやタブレット、通信チップ、基地局、通信ネットワーク、光通信機器などの開発・製造に使われる計測器やソリューションを提供している。
アンリツをVoLTE関連銘柄として見る場合、重要なのは「電話サービスを提供する会社」ではなく、「電話を含む通信が規格通りに機能するかを測定する会社」という位置付けである。VoLTEはLTEネットワーク上で音声をIPデータとして伝送する仕組みであり、音声品質、接続、通信プロトコル、端末とネットワークの相互接続など、多くの項目を検証する必要がある。通信方式が高度化するほど、開発段階での試験や製造段階での品質確認の重要性は増す。アンリツはこうした通信機器メーカーや通信事業者などを顧客として、通信技術を「測る」ための機器を提供している。
同社の通信計測事業は、モバイル市場、ネットワーク・インフラ市場、エレクトロニクス市場の3分野で構成される。モバイル市場ではスマートフォンメーカーやモデムチップセットメーカー、EMS、通信事業者、自動車関連メーカーなどが顧客となる。ネットワーク・インフラ市場では、光デバイスメーカー、通信装置メーカー、ITサービス事業者、通信事業者などを対象としている。つまり、スマートフォンから基地局、さらにその先のネットワークまで、通信産業の幅広い工程に関わっている。
アンリツの成長を考えるうえで、現在特に重要なのが5Gから6Gへの移行である。5Gの商用化によって高速・大容量通信が普及した一方、通信計測市場では5G関連投資のタイミングが当初の想定より遅れた。同社は中期経営計画GLP2026において、2026年度を5Gから6Gへの移行期と位置付け、6Gに加えて産業計測、EV・電池、医薬品・医療という新領域を成長分野としている。2026年度には売上収益1,400億円、営業利益200億円、営業利益率14%を目標としている。
直近の事業環境を見ると、アンリツにとって通信市場は単純な「スマートフォン販売台数」の市場ではなくなっている。生成AIの普及によってデータ通信量が増加し、データセンターの新設・大容量化が進んでいる。2026年3月期の有価証券報告書によると、通信計測事業は連結売上収益の59%を占め、ネットワーク・インフラ市場では800GE向け光トランシーバーの生産増強や、次世代1.6TE向けの開発が進んでいる。モバイル通信だけでなく、AIデータセンター向けの高速通信も同社の重要な市場になっている。
さらに2026年は6Gに向けた取り組みが具体化している点にも注目したい。アンリツは2026年8月、MediaTekと5G NR SA向けRel-17のカバレッジ拡張試験項目を共同検証した。また8月には韓国KTRがアンリツの6G向けFR3評価ソリューションを採用したことも発表している。5Gの高度化だけでなく、6Gで利用が想定される新しい周波数帯の評価技術へと研究開発の領域を広げている。
6Gでは、5G以上の高速・大容量化だけでなく、AIとの融合、超低遅延、高信頼性、新しい周波数帯の活用などが想定される。特に100GHzを超える高周波領域など、これまで以上に高度な無線技術が利用される可能性がある。通信方式が複雑になればなるほど、「正しく通信できているのか」「設計通りの性能が出ているのか」を測定する技術の価値は高まる。アンリツはこうした6G時代の計測需要を取り込むことを成長戦略の柱としている。
一方で、投資対象として見る場合には注意点もある。通信計測機器は通信規格の世代交代に伴って需要が大きく動きやすい。5G関連投資が想定より減速した際には、アンリツの業績にも影響が出た。同社自身も過去の中期経営計画について、5G計測器市場のピークを想定していたものの、コロナ禍、米中貿易摩擦、部品不足、高インフレなどによって5G市場が減速し、計画を下回ったと説明している。
そこでアンリツは、通信計測だけに依存する事業構造からの転換も進めている。産業計測、EV・電池、医薬品・医療などを新たな柱として育成し、M&Aと自社の技術力を組み合わせながら事業領域を広げる戦略だ。これは通信市場の設備投資サイクルによる業績変動を抑え、中長期的な成長力を高める狙いと見ることができる。
アンリツの面白さは、普段スマートフォンを使う消費者からはほとんど見えないところで、通信社会を支えている点にある。VoLTEで音声通話をする場合も、5Gで動画を視聴する場合も、さらに生成AIによってデータセンター間の通信量が増える場合も、通信が正常に機能するためには高度な試験・計測が必要になる。アンリツはその「見えないインフラ」を支える企業なのである。
今後の注目点は、6G投資が本格化する時期と、その計測需要をどこまで取り込めるかである。加えて、AIデータセンターの高速化、光通信、EV・電池などの新領域がどの程度のスピードで収益の柱へ成長するかも重要になる。VoLTE関連銘柄としては4G通信を支える企業という側面があるが、現在のアンリツを評価するなら、VoLTEだけに焦点を当てるのではなく、5G、5G-Advanced、6G、光通信、AIデータセンターまで含めた「次世代通信を測る企業」として捉えることが重要だろう。
通信技術は新世代へ進むたびに複雑になり、その裏側では必ず試験・計測の需要が生まれる。アンリツは長年培ってきた「はかる」技術を武器に、その変化を事業機会へ変えようとしている。5Gから6Gへの転換期にある現在、同社は通信インフラそのものではなく、その品質と性能を保証する技術を提供する企業として、次世代通信市場の成長を取り込むポジションにある。
≫ 無料講座:お金のプロが教える「初心者が毎月収入を得る投資の始め方」
アルチザネットワークス
アルチザネットワークスは、通信インフラの構築に欠かせない「通信計測機」やネットワーク・マネジメント・システムを手掛ける企業である。証券コードは6778、東京証券取引所スタンダード市場に上場している。一般の消費者にはあまり知られていない企業だが、スマートフォンの通信、基地局、5Gネットワークなどが正常に動作するかを検証する技術を提供しており、通信業界の裏側を支える存在といえる。特にVoLTE、4G、5GからBeyond 5G、6Gへと通信規格が高度化する中で、「通信をつなぐ」だけでなく「通信が正しく動いているかを試験する」需要は重要性を増している。
アルチザネットワークスは1990年に設立され、現在は通信計測機の開発・販売に加え、通信インフラの保守・運用管理を行うネットワーク・マネジメント・システム、各種通信機器などを展開している。2025年7月期の連結売上高は26億8,091万円、従業員数は161人である。主要取引先にはNTTグループ、KDDIグループ、ソフトバンクグループ、NEC、富士通、エリクソン、ノキアなど、国内外の通信関連企業が名を連ねる。
同社を理解するうえで重要なのが「通信計測」という事業領域である。スマートフォンや基地局、ネットワーク機器は、単に電源を入れれば通信できるわけではない。通信規格に沿って信号を処理できるか、さまざまな機器同士が正常に接続できるか、通信速度や品質が基準を満たしているかなどを細かく検証する必要がある。そこで使われるのが通信計測機である。
例えばVoLTEでは、LTEネットワークを利用して音声をIP通信として処理する。そのため、音声通信の品質だけでなく、端末とネットワークの接続、通信プロトコル、セッション制御など多くの要素を検証する必要がある。4Gから5Gへ移行すると、通信方式はさらに複雑になる。基地局と端末だけでなく、コアネットワークやクラウド、オープン化された無線アクセスネットワークなど、多数の構成要素が連携するためである。アルチザネットワークスはこうした通信環境を試験・検証する技術を提供している。
現在、同社にとって特に重要なのが5G関連事業である。5Gの商用化が進んだことで、通信事業者や通信機器メーカーは新しい基地局やネットワーク設備を導入してきた。しかし、5Gは単純に「通信速度が速い4G」ではない。低遅延、大容量、多数端末接続などを実現するため、ネットワークの構造そのものが高度化している。通信規格の複雑化は、そのまま試験・検証需要の増加につながる。
さらに同社は、5Gの次に来るBeyond 5Gや6Gを成長機会として捉えている。2026年のトップメッセージでは、Beyond 5G技術、6G技術の初期検証、AIを活用した高度なインテリジェンス・テストソリューションを成長戦略の柱として掲げている。市場の次なる課題を発見し、それに対応する技術を開発して顧客価値へ転換することを目指している。
特に注目したいのがO-RAN(Open Radio Access Network)やAI-RANへの対応である。従来の携帯電話基地局では、通信設備を特定のメーカーから一体型で導入するケースが多かった。一方、O-RANでは無線アクセスネットワークの構成要素をオープンな仕様で接続し、複数メーカーの機器を組み合わせることが可能になる。これは通信事業者にとって柔軟性を高める一方、異なるメーカーの機器を組み合わせた際に正常に動作するかを検証する必要性を高める。
つまり、通信ネットワークがオープン化するほど「テスト」の重要性が増す可能性がある。アルチザネットワークスは2025年からO-RANやAI-RANへの対応を進める方針を示しており、滝沢テレコムテストセンター(T3C)では顧客機器の包括的なテスト受託も推進している。
海外展開も成長のポイントである。同社は5G関連製品の海外販売を進めているほか、Fronthaul Monitor(FH Monitor)の海外展開にも注力している。2025年の経営方針ではインド市場でPoC試験を成功させたことにも触れており、国内通信市場だけに依存しない事業展開を目指している。通信規格は国境を越えて共通化される部分が多いため、日本で培ったテスト技術を海外へ展開できれば、新たな収益機会につながる可能性がある。
一方で、投資対象として見る場合には通信設備投資の波に注意が必要である。通信事業者の5G投資が活発な時期には関連製品の需要が伸びやすい一方、基地局投資や通信機器メーカーの研究開発投資が一服すれば、通信計測機器の需要にも影響が及ぶ。実際、同社の業績も通信業界の設備投資や顧客企業の開発動向に左右されやすい。2026年9月10日には第36期決算発表が予定されており、今後の業績動向を確認するうえで重要なタイミングとなる。
ただし、通信規格の世代交代そのものは同社にとって中長期的な事業機会でもある。4Gから5G、そして6Gへ移行すれば、新しい規格に対応した端末や基地局、ネットワーク設備が開発される。そのたびに「その機器が規格通り動作するか」を確認するための試験環境が必要になるからだ。通信技術が複雑化するほど、テスト項目は増え、検証に必要な技術も高度化する。
ここにアルチザネットワークスの強みがある。通信インフラそのものを大規模に保有する企業ではなく、通信設備メーカーや通信事業者などが新しいネットワークを構築する際に、その品質を確認するための技術を提供する企業だからである。通信業界の設備投資が「つくる」フェーズに入れば計測需要が発生し、ネットワークの高度化が進めば新たな検証需要が生まれる。いわば通信業界の技術革新に伴って必要になる「縁の下の力持ち」といえる。
今後の最大のテーマは、5Gの高度化から6Gへと移行する中で、同社がどこまで新市場を取り込めるかである。AI-RAN、O-RAN、ローカル5G、6Gなど、新しい通信技術が実用化されれば、それぞれに新しい試験・検証の需要が生まれる。またAIを活用したテストソリューションによって、従来より効率的な通信試験を実現できれば、単なる計測機器メーカーから、より付加価値の高い「テクノロジーソリューションプロバイダー」への転換も期待できる。
アルチザネットワークスは、スマートフォンそのものを製造する会社ではない。しかし、スマートフォンが基地局につながり、基地局とネットワークが正常に連携し、安定した通信サービスを提供するためには、試験・検証という工程が欠かせない。VoLTEの時代には4G通信の品質を支え、5G時代には高度化するネットワークを検証し、さらに6G時代には未知の通信技術を「測る」役割が求められる。2026年の同社は、まさに5Gから6Gへの転換期に位置している。通信インフラの進化を直接見るだけではなく、その裏側にある「通信を試験する技術」に注目すると、アルチザネットワークスの存在感がより鮮明に見えてくるだろう。
ネクストジェン――VoLTE技術を起点に、クラウドPBX・AIへ進化する音声通信企業
ネクストジェンは、通信事業者向けの音声通信技術を起点に、企業向けのクラウドPBXやコンタクトセンター、音声認識などへ事業領域を広げている通信・IT企業である。証券コードは3842で、東京証券取引所スタンダード市場と名古屋証券取引所メイン市場に上場している。一般消費者から見ると知名度は高くないものの、携帯電話や固定電話、企業の電話システムを支える「音声通信の裏側」に強みを持つ企業だ。特にVoLTEとの関係では、同社が長年培ってきたIP電話、SIP、通信ネットワーク、音声処理などの技術が重要になる。
ネクストジェンの事業を理解するうえでポイントになるのが、電話を「音声そのもの」ではなく、IPネットワーク上で処理する技術である。VoLTEはLTEネットワークを利用して音声通話を行う仕組みだが、その実現にはIP通信やSIP、IMSなど複数の技術が関係する。ネクストジェンはこうした通信技術を長年手掛けており、通信事業者向けのネットワーク構築や音声サービスを支援してきた。過去には移動体通信事業者からVoLTE網における異常通信検出コンサルティングを受注した実績もあり、VoLTE関連企業として注目される背景にはこうした技術的な蓄積がある。
同社の特徴は、通信キャリア向けの技術会社から、企業のコミュニケーションDXを支援する会社へと事業を広げていることだ。現在は大きく「ボイスコミュニケーション事業」と「コミュニケーションDX事業」の2つを軸としている。前者では電話サービスを支えるネットワークやクラウドPBXなどを、後者では音声認識、コンタクトセンター、業務効率化などを展開する。会社自身もこの2つの事業構造を今後の成長基盤と位置付けている。
なかでも現在の成長ドライバーとして注目されるのがクラウドPBXである。PBXとは企業内の電話交換機を指し、従来はオフィス内に専用設備を設置するケースが多かった。しかしクラウドPBXでは電話機能をクラウド上に構築できるため、設備投資を抑えながら電話環境を柔軟に構築できる。テレワークやオフィスの分散化が進んだことも、こうしたクラウド型電話サービスへの需要を後押ししている。
ネクストジェンは2026年3月期に過去最高の売上高を達成し、2年連続で過去最高益となった。2026年3月期の売上高は42億5,600万円、営業利益は3億2,800万円で、会社は「第2の成長期」に入ったと説明している。2027年3月期については売上高45億円、営業利益3億5,000万円を予想している。
さらに中長期では、2029年3月期に売上高70億円、営業利益6億円を目指している。2026年3月期の実績から考えると、数年間で売上規模を大きく拡大する計画であり、単なる通信設備関連企業から、クラウド・DX企業へと収益構造を変えていけるかが焦点になる。
音声通信とAIの融合も、ネクストジェンを考えるうえで重要なテーマだ。同社は音声認識技術を活用したサービスを展開しており、コンタクトセンターの業務効率化などへの応用を進めている。2026年6月には、同社の音声キャプチャリングシステム「LA-6000」がGenesys Cloud CXのクラウドAPI「AudioHook Monitor」に対応した。これによってコンタクトセンターにおけるAI活用を支援する環境を広げている。
さらに2026年7月には、オプテージが提供するAIコンタクトセンターソリューション「Enour CallAssistant」の取り扱いを開始した。人手不足が課題となるコンタクトセンターに対し、AIを活用して業務効率化や応対品質の向上を支援する狙いである。8月にはモビルスとの業務提携も発表し、既存のオンプレミスPBX環境とクラウド生成AIソリューションを連携させる取り組みを進めている。
ここにはネクストジェンの事業戦略の変化が表れている。従来型の電話設備をすべて廃棄してクラウドへ移行するのではなく、企業がすでに保有している電話設備を活用しながら、クラウドやAIを段階的に導入する。その橋渡し役を担うことで、既存顧客との関係を維持しながら新しいDX需要を取り込める可能性がある。
一方、投資対象として見る場合には、通信事業者や企業の設備投資動向に業績が左右される点には注意が必要だ。また、クラウドPBXやコンタクトセンター市場では競争も激しく、AI技術の進歩によってサービスの陳腐化が早まる可能性もある。ネクストジェンが継続的な成長を実現するには、通信ネットワークの技術力だけでなく、クラウド、AI、業務DXを組み合わせた付加価値をどこまで高められるかが重要になる。
それでも、同社には長年の通信事業で培った技術という強みがある。電話は一見すると成熟市場に見えるが、固定電話からIP電話へ、携帯電話からVoLTEへ、さらにクラウドPBXやAIコンタクトセンターへと、その中身は大きく変化している。電話という身近なサービスの「通信方式」が変わるたびに、ネットワークや音声を処理する技術への需要が生まれてきた。
今後は5Gや5G SAの普及、将来的な6Gへの移行によって通信ネットワークがさらに高度化する一方、企業の電話環境ではクラウド化とAI化が進むと考えられる。ネクストジェンにとっては、通信キャリア向けの音声通信技術を基盤に、企業向けクラウドPBX、コンタクトセンター、生成AIへと事業を広げることが成長のカギになる。
VoLTE関連銘柄として同社を見る場合、「VoLTEだけで成長する会社」と捉えるのは適切ではない。むしろ、VoLTEなどで培ったIP音声・通信技術を土台として、電話をクラウド化し、さらにAIによって高度化する企業と考えると分かりやすい。2026年3月期に過去最高売上と2期連続最高益を達成したネクストジェンは、通信インフラ企業からコミュニケーションDX企業へと進化する過程にある。
スマートフォンの普及によって「電話」は完成されたサービスのように見える。しかし、その裏側ではネットワーク技術、クラウド、AIによる変革が続いている。ネクストジェンは、まさにその変化の中心に位置する企業の一つであり、VoLTEからクラウドPBX、そしてAIコンタクトセンターへという流れを追うことで、同社が目指す次の成長ステージが見えてくるだろう。
まとめ
VoLTEは、LTEネットワークを利用した音声通話という技術革新によって、携帯電話の音声サービスを大きく変えた。高音質化や通話中のデータ通信を実現しただけでなく、3Gから4Gへの移行を支える重要な基盤となった。日本では3Gサービスの終了が進んだことで、4G・5G時代の音声通信を支えるVoLTEの存在感はむしろ明確になっている。
そして、通信市場の主役は次第に5G、5G SA、VoNRへと移りつつある。さらに将来の6Gでは、より高速・大容量で低遅延な通信やAIとの融合などが期待されている。こうした通信規格の進化は、新しい基地局や端末を生み出すだけではない。それらが正常に接続し、安定して通信できることを確認するための試験・計測需要も生み出す。アンリツやアルチザネットワークスは、この「通信を測る・試験する」という重要な領域で存在感を発揮する企業である。
一方、音声通信の世界では、VoLTEによって進んだIP化がクラウドPBXやAIコンタクトセンターへと発展している。ネクストジェンは、長年培ったIP音声・通信技術を基盤に、クラウドやAIを組み合わせたコミュニケーションDXへ事業領域を広げている。
このように見ると、VoLTEは単独の通信技術というより、携帯電話の音声通信をIP化し、その後の5G・クラウド・AI時代へつながる転換点だったといえる。通信技術が進化するほど、それを検証する技術、ネットワークを構築する技術、音声を新しいサービスへ変換する技術の価値も高まる。VoLTE関連企業を調べることは、単に「電話関連銘柄」を探すことではなく、次世代通信を支える企業群を理解することにもつながるのである。




