単身世帯4割超の時代へ――「おひとりさま消費」を狙う企業と行政の課題

「一人で楽しむ」が新たな消費市場をつくる

日本の消費市場で「おひとりさま」の存在感が高まっている。ひとりカラオケ、一人外食、ひとり旅、複合カフェ、レンタルスペースなど、一人で利用することを前提としたサービスが身近になった。背景にあるのは、消費者の価値観の変化だけではない。少子化や高齢化、未婚化、核家族化などによって単身世帯が増え、「家族」や「グループ」ではなく「個人」が消費の単位となる場面が増えているためである。

こうした市場の変化を捉える企業も増えている。コシダカホールディングスはひとりカラオケを含むカラオケ市場で存在感を高め、AOKIホールディングスは「快活CLUB」を通じて、一人で漫画や動画、カラオケなどを楽しめる空間を提供している。Rebaseの「インスタベース」は、仕事や勉強、趣味、撮影などのために、必要な時間だけスペースを借りるという新しい消費スタイルを支えている。

一方で、おひとりさま社会の進展は、自由な消費機会の拡大だけを意味しない。特に高齢者の単身世帯が増えるなかでは、医療、介護、買い物、移動、住居、見守りなど、家族だけでは支えきれない課題も増えていく。企業には「一人でも楽しめるサービス」が、行政には「一人でも安心して暮らせる社会インフラ」が求められる。おひとりさま消費は、単なる流行ではなく、日本の人口構造と暮らしの変化を映し出す重要な社会・経済テーマなのである。

企業名証券コード主な事業・サービスおひとりさま消費との接点面白いポイント
コシダカホールディングス2157カラオケ「まねきねこ」などひとりカラオケ「ワンカラ」というひとりカラオケ専門店を展開。カラオケを「みんなで行くもの」から「一人で楽しむもの」へ広げた代表格 (越田佳ホールディングス)
AOKIホールディングス8214快活CLUB、カラオケ、衣料個室・ネットカフェ・一人レジャー「快活CLUB」で一人用の空間を提供。漫画、ネット、カラオケ、飲食などを一人で楽しめる「ソロ時間」と相性が良い
ハイデイ日高7611「日高屋」一人外食駅前のカウンター型店舗を多数展開。低価格・短時間という特徴が、仕事帰りや一人ランチなどの需要と親和性が高い
Rebase5138レンタルスペース「インスタベース」一人作業・趣味・勉強「一人で集中できる場所」を時間単位で借りるという新しいおひとりさま需要を取り込む。仕事だけでなく撮影、勉強、趣味にも使える
ティーケーピー3479貸会議室・レンタルスペース・ホテル一人仕事・一人利用会議室を「大人数で集まる場所」だけでなく、テレワークや個人の仕事・作業場所として活用できる点が面白い

「一人」が当たり前になる日本――おひとりさま消費の現在と、少子高齢化時代に求められる行政の役割

日本の消費市場で「おひとりさま」が一つの大きなテーマになっている。ひとりカラオケ、一人焼肉、一人旅、ソロキャンプ、個室型のネットカフェ、レンタルスペースなど、かつては「一人で利用するのは少し珍しい」と見られていたサービスが、今では日常的な選択肢になった。背景にあるのは単なる消費者の気分の変化ではない。少子化、高齢化、未婚化、核家族化、そして単身世帯の増加という、日本社会そのものの構造変化である。

総務省統計局によると、日本の人口は2026年8月1日時点で1億2,268万人となっている。人口そのものが減少する一方、世帯の構成も大きく変化している。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、単独世帯の割合は2020年の38.0%から上昇を続け、2050年には44.3%に達すると見込まれている。つまり、将来の日本では「家族で暮らす世帯」よりも「一人で暮らす世帯」がさらに身近な存在になる。

この変化を考える際、少子高齢化だけでなく「核家族化」の進行も重要である。かつての日本では、祖父母、親、子どもが同居する三世代世帯が珍しくなかった。しかし、高度経済成長や都市化、住宅事情、就業形態の変化などによって、夫婦と子どもを中心とする核家族が増え、その後は夫婦のみ世帯や単独世帯へと家族の小規模化が進んだ。内閣府の2025年版高齢社会白書では、65歳以上の人がいる世帯は全世帯の約半数に達し、その中で「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」がそれぞれ約3割を占めている。

こうした社会では、消費の単位も変わる。4人家族を前提とした商品やサービスだけではなく、「一人で使う」ことを前提にした商品設計が重要になる。例えば食品なら、大容量の商品よりも少量パックや一人用ミールキットが使いやすい。外食なら、カウンター席や一人客向けの注文システムが便利になる。レジャーでは、複数人で楽しむ施設だけでなく、一人で気兼ねなく過ごせる個室やサービスに価値が生まれる。

ひとりカラオケはその象徴だ。以前のカラオケは友人や職場の仲間と行くものというイメージが強かったが、現在では一人で好きな曲を好きなだけ歌うことが一つの娯楽として定着している。一人焼肉も同様である。食事を「誰かと一緒に楽しむもの」から「自分が食べたいものを、自分の好きなタイミングで楽しむもの」へと捉え直すことで、新しい市場が生まれている。

さらに注目したいのが「一人の時間」に対する価値観の変化である。おひとりさま消費は、単に家族や友人がいないから仕方なく一人で消費するというものではない。むしろ、「他人に合わせず、自分のペースで過ごしたい」という積極的な需要が含まれている。SNSの普及によって他人との比較が容易になった一方、自分の趣味や価値観を重視する人も増えた。推し活、動画視聴、ゲーム、読書、創作、旅行など、一人だからこそ集中できる消費が広がっている。

その意味では、レンタルスペースもおひとりさま消費の重要な市場である。Rebaseの「インスタベース」のようなサービスでは、仕事や勉強、撮影、趣味などのために、必要な時間だけ場所を借りられる。自宅でもカフェでもない「第三の場所」を一人で確保するという行動は、これまでの消費にはなかった新しいスタイルと言える。

一方で、ここには重要な社会的課題も存在する。「一人でいること」と「孤独であること」は同じではないからだ。自ら望んで一人の時間を楽しむ人がいる一方、家族や友人とのつながりを持ちたくても持てない人もいる。特に高齢者の単身世帯が増える中では、この違いが極めて重要になる。

内閣府の2026年版高齢社会白書でも、65歳以上の一人暮らしの動向が重要なテーマとして取り上げられている。さらに、政府の高齢社会対策では、一人暮らし高齢者の増加などの環境変化に対応し、多世代が安心して暮らせる社会の構築が課題として示されている。

つまり、これからの「おひとりさま社会」では、行政の役割も変わっていく必要がある。従来の行政サービスは、家族が一定の支援を担うことを暗黙の前提として設計されてきた部分がある。しかし、単身世帯が増えれば、家族だけに依存することは難しくなる。

例えば、高齢者が病気になったとき、買い物ができなくなったとき、介護が必要になったとき、あるいは住まいを借りる必要が生じたとき、身近に頼れる家族がいないケースは珍しくなくなる。行政には、医療や介護だけではなく、買い物支援、移動支援、見守り、住居確保、デジタル支援などを組み合わせた「単身者を前提とした生活インフラ」が求められる。

特に重要なのは、「孤独をなくす」ことと「一人の自由を尊重する」ことを両立させることである。行政が「一人暮らしだから地域活動に参加させる」といった発想だけに偏れば、本人が望む生活を制約する可能性がある。一方で、本人が困ったときに相談できる窓口や、必要なときだけ支援につながれる仕組みを整えることは重要だ。

地域の公共施設も、その役割を見直す余地がある。図書館、公民館、体育館、文化施設などを、単なる行政サービスの提供場所ではなく、一人でも安心して滞在できる場所として活用する考え方である。高齢者だけでなく、若者、単身の会社員、フリーランス、子育てを終えた世代など、さまざまな人が「一人でいても孤立しない」環境を地域につくることが重要になる。

これは民間企業にも大きなビジネスチャンスを生む。おひとりさま向けの商品・サービスは、単身世帯の増加によって一時的に伸びる市場ではなく、社会構造そのものに支えられた市場だからだ。食品、外食、旅行、ホテル、カラオケ、住宅、金融、保険、宅配、見守り、娯楽など、対象となる業界は極めて幅広い。

ただし、「おひとりさま」を一括りにしてはいけない。20代の単身者と80代の一人暮らしでは、所得も生活課題も消費目的も大きく異なる。若年層なら趣味や娯楽への支出が中心になる一方、高齢者では医療、介護、移動、住まいなど生活維持に直結する需要が大きくなる。同じ「一人」でも、必要とするサービスはまったく違うのである。

だからこそ、今後の行政や企業には「世帯」ではなく「個人」を軸にした発想が求められる。家族がいることを前提にした制度から、単身者でも安心して生活できる制度へ。複数人で利用することを前提にした商品から、一人でも選択肢を持てる商品へ。こうした転換が、日本の人口構造に合わせた社会設計につながる。

おひとりさま消費の拡大は、単なる流行ではない。少子化、高齢化、核家族化、未婚化などが重なった結果として、日本社会の「消費の単位」が変わっているのである。2050年には単独世帯が全体の44.3%に達するという推計を踏まえれば、企業にとって「一人」はもはやニッチな顧客ではない。むしろ、巨大な主要顧客層になっていく可能性が高い。

これからの日本では、「一人で楽しめる社会」と「一人でも安心して暮らせる社会」を同時につくることが重要になる。ひとりカラオケや一人外食のような自由な消費を楽しめる一方、病気や介護、災害、生活上の困難に直面したときには、家族の有無にかかわらず支援につながれる。そんな社会こそが、これからの人口減少・高齢化時代に求められる姿ではないだろうか。「おひとりさま」は、もはや特殊な存在ではない。日本の未来を映す、ごく普通の生活者像になりつつあるのである。

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「一人で歌う」が新しい消費になる――コシダカホールディングスと「ひとりカラオケ」の進化

「おひとりさま消費」が注目を集めている。かつては、外食や旅行、レジャーなどを誰かと一緒に楽しむことが当たり前と考えられていた。しかし、ライフスタイルの多様化や単身世帯の増加、価値観の変化などを背景に、「一人だからこそ気楽」「自分のペースで楽しみたい」という需要が広がっている。こうした消費行動の変化を象徴するサービスの一つが「ひとりカラオケ」である。そして、その市場を考えるうえで外せない上場企業がコシダカホールディングス(2157)だ。

コシダカホールディングスは、カラオケチェーン「カラオケまねきねこ」を国内外で展開する企業である。北海道から沖縄まで店舗網を広げ、海外では韓国、マレーシア、タイ、インドネシアなどにも進出している。リーズナブルな料金や飲食物の持ち込み可能といった利用者目線のサービスを打ち出してきたことも特徴だ。現在ではカラオケを単に「歌を歌う場所」として捉えるのではなく、さまざまなエンターテインメントを楽しむ場所へと進化させようとしている。

そのコシダカHDと「おひとりさま消費」を結び付けるうえで象徴的なのが、ひとりカラオケ専門店「ワンカラ」である。コシダカは2011年に新業態として「ひとりカラオケ専門店 ワンカラ」を立ち上げた。1人でも気軽に利用できることを前面に打ち出し、従来のカラオケ店とは異なる新しい利用スタイルを提案したのである。

カラオケという娯楽は、もともと「友人や家族と盛り上がるもの」というイメージが強かった。複数人で部屋を借り、順番に歌い、他人の歌を聴きながら楽しむ。それが従来型のカラオケの基本的なスタイルだった。しかし、このスタイルでは「歌いたい曲を何曲も歌えない」「人前で歌うのが恥ずかしい」「他人の選曲に合わせなければならない」といった不満も生じる。ひとりカラオケは、こうした不満を根本から解消する。

一人なら、歌いたい曲を好きなだけ歌える。誰かに気を遣う必要もなく、同じ曲を何度歌っても構わない。新曲の練習をすることもできるし、採点機能を使って自分の歌唱力を試すこともできる。さらに、声を出してストレスを発散するという目的でも利用できる。つまり、ひとりカラオケは「人と一緒に楽しむカラオケ」から、「自分自身のために使うカラオケ」へと価値を広げたサービスと言える。

この変化は、現在のおひとりさま消費を象徴している。重要なのは、一人で利用することが「寂しい」という意味ではなくなっている点だ。一人で食事をする、一人で旅行する、一人で映画を見る、一人で趣味を楽しむといった行動が一般化するなかで、「一人の時間を積極的に楽しむ」という考え方が広がっている。ひとりカラオケは、その延長線上にある。

コシダカHDにとっても、この需要は単なる一時的なブームではない。同社は「エンタメをインフラに」という中期経営ビジョンを掲げ、カラオケルームを歌うためだけの場所ではなく、さまざまなエンターテインメントを楽しむプライベート空間へと発展させようとしている。2025年8月期には「カラオケまねきねこ」のルーム数が期初の1万7,653室から1万9,052室へ増加し、今後は3万ルームを目標としている。

ここで興味深いのが、「個室」というカラオケ店最大の資産である。カラオケルームは、もともと歌うための個室だった。しかし、個室である以上、使い方は歌に限定されない。コシダカHD自身も、ライブビューイングやシアタールーム、ゲームルーム、リモートワークなど、カラオケ以外の用途への活用を進めている。

これは「おひとりさま消費」という視点から見ると非常に面白い。例えば、一人で推しのライブ映像を見る。一人でゲームをする。一人で動画を見る。一人で仕事をする。一人で練習する。自宅では家族や隣人を気にする必要があり、カフェでは周囲の目がある。ホテルでは料金が高くなる場合もある。その中間に位置する「気軽に借りられる個室」には、さまざまな需要が存在する。

つまり、コシダカHDが狙っているのは「一人でカラオケをする人」だけではない可能性がある。「一人の時間を快適に過ごしたい人」そのものを取り込むことが、今後の成長戦略の一つになり得るのである。

実際、同社はカラオケルームの可能性を広げる取り組みを積極化している。独自開発した「E-bo」を活用したプライベートエンターテインメントルーム(PER)戦略や、本人音源カラオケなど、新たな体験価値を提供する取り組みも進めている。

さらに2026年に入ってからも、「まねきねこ」は新店舗の出店や新業態の展開を続けている。2026年7月にはフィリピン出店を発表したほか、2026年8月には新音楽レーベル「Manekineko Music Entertainment」の本格始動を発表するなど、カラオケを軸にしたエンターテインメント事業の拡張を進めている。

投資テーマとして考える場合、「おひとりさま消費」は人口動態とも無関係ではない。単身世帯の増加や晩婚化、ライフスタイルの多様化などによって、消費の単位は「家族」や「グループ」だけではなく、「個人」へと細分化している。企業側にとっては、複数人をまとめて取り込むだけでなく、一人一人の小さな消費機会を積み重ねることが重要になる。

ひとりカラオケは、その象徴的なサービスだ。一人だから利用しやすい、一人だから楽しめる、一人だからこそ消費したくなる。こうした価値観が広がれば、カラオケ店の役割も変わっていく。コシダカHDが掲げる「エンタメをインフラに」という方向性は、まさにこうした変化を捉えたものといえる。

「おひとりさま消費」というと、牛丼やラーメンなどの一人外食を思い浮かべやすい。しかし、実際には食事だけではない。歌う、遊ぶ、見る、働く、推し活をするなど、一人の時間を充実させるあらゆる行動が市場になり得る。そのなかでコシダカHDは、カラオケという既存市場を起点に「一人で楽しむ場所」そのものを提供しようとしている。

ひとりカラオケは、単なるカラオケの利用形態の一つではない。それは「誰かと一緒でなければ楽しめない」という従来の消費スタイルから、「自分のために消費する」という時代への変化を映す存在である。今後、おひとりさま消費がさらに広がれば、コシダカHDのカラオケ事業も、歌う場所から「一人の時間を楽しむためのプライベート空間」へと進化していく可能性がある。個人消費の細分化が進むなかで、ひとりカラオケとコシダカHDは、その変化を象徴する企業として注目したい。

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「一人の時間」を楽しむ時代へ――AOKIホールディングスと快活CLUBが取り込むおひとりさま消費

「おひとりさま消費」が、さまざまな業界で存在感を高めている。かつては外食、旅行、レジャーなどを家族や友人と楽しむことが一般的だったが、現在では「一人で好きなことをしたい」「誰にも気を使わず、自分のペースで過ごしたい」というニーズが広がっている。こうした消費行動の変化を考えるうえで興味深い存在が、紳士服専門店「AOKI」などを展開するAOKIホールディングスである。同社は衣料品だけでなく、カラオケや複合カフェを展開しており、その中核的な存在の一つが「快活CLUB」だ。

AOKIホールディングスは、ファッション、エンターテインメント、アニヴェルセルの3分野を事業の柱としている。なかでもエンターテインメント事業を担うのが、複合カフェの「快活CLUB」やカラオケなどである。衣料品企業というイメージが強いAOKIホールディングスだが、実は「一人で過ごす時間」を提供するビジネスを手掛けている点が面白い。

快活CLUBは、漫画やインターネット、動画、カラオケ、飲食などを楽しめる複合型の施設である。利用者は自分の目的に合わせて好きなサービスを選ぶことができ、店舗によっては鍵付き個室など、プライベート性の高い空間も用意されている。誰かと一緒に来店することもできるが、サービスの特性上、一人で利用しても十分に楽しめる。むしろ「一人で好きなことをする場所」としての価値が高いサービスなのである。

ここに、現在のおひとりさま消費を考える重要なポイントがある。一人で消費するということは、必ずしも「一人用の商品」を買うことだけを意味しない。一人で過ごすための「時間」と「空間」そのものにお金を払うことも、おひとりさま消費の一つである。快活CLUBは、この需要に非常に適した業態と言える。

例えば、休日に漫画を読みながらゆっくり過ごしたい人がいる。自宅では家族がいて集中できないかもしれない。カフェでは長時間滞在しにくく、周囲の視線も気になる。そのようなとき、個室のある複合カフェは便利な選択肢となる。動画を見たり、インターネットを利用したり、食事をしたり、仮眠を取ったりと、一つの場所で複数のことを楽しめるからだ。

さらに、ひとりカラオケとの相性も良い。カラオケはかつて「複数人で盛り上がる娯楽」というイメージが強かったが、現在では一人で歌うことも珍しくない。好きな曲を好きなだけ歌えるうえ、人前で歌うことを気にする必要もない。歌の練習やストレス発散など、利用目的も多様化している。快活CLUBが提供するカラオケも、こうした一人利用の受け皿になり得る。

おひとりさま消費の面白さは、年齢や性別によって目的が大きく異なることにもある。若い世代なら動画やゲーム、漫画などを楽しむために利用するかもしれない。働く世代なら仕事や勉強のために個室を利用するケースも考えられる。シニア層なら漫画やインターネット、飲食などを組み合わせて余暇を過ごすこともできる。同じ「一人」という利用形態でも、その中身は非常に幅広い。

また、テレワークや副業など働き方の変化も、「一人で過ごせる場所」の需要を押し上げる要因になり得る。自宅では仕事と生活の切り替えが難しい一方、オフィスへ出社する必要もない。そこで、一定時間だけ利用できる個室や作業空間に価値が生まれる。快活CLUBのような業態は、従来の「漫画を読む場所」「インターネットをする場所」という枠を超え、個人が自由に時間を使うための空間へと役割を広げる可能性を持っている。

こうした動きは、AOKIホールディングスの事業ポートフォリオを見るうえでも興味深い。同社は「AOKI」「ORIHICA」などのファッション事業に加え、「快活CLUB」「コート・ダジュール」などのエンターテインメント事業を展開している。つまり、衣料品を販売するだけではなく、人々の生活のさまざまな場面に接点を持っている企業なのである。

特に快活CLUBは、利用者の滞在時間そのものが価値になるビジネスモデルである点が特徴だ。商品を一つ購入して終わるのではなく、利用者が一定時間その空間を使うことで売上が生まれる。そのため、店舗の快適性や個室環境、飲食サービス、コンテンツの充実などが重要になる。おひとりさま消費が拡大すれば、「一人でも居心地の良い場所」を提供できることが競争力につながる。

さらに「一人で楽しむ」という文化は、趣味の細分化とも相性が良い。好きな漫画を読む、好きな動画を見る、好きな音楽を聴く、ゲームをする、資格試験の勉強をするなど、個人が自分の価値観に合わせて時間を使う機会が増えている。SNSの普及によって他人のライフスタイルを目にする機会が増えた一方、「他人と同じように行動する」ことより「自分が好きなことを楽しむ」ことを重視する価値観も広がっている。

このような社会では、「大人数を集める施設」だけが強いとは限らない。むしろ、一人でも気軽に利用でき、利用者が自分の時間を自由に設計できる施設にチャンスが生まれる。快活CLUBは、漫画、インターネット、動画、カラオケ、飲食、個室などを組み合わせることで、まさにその需要に対応している。

もちろん、少子化や人口減少、物価上昇など、外食・レジャー関連企業を取り巻く環境にはさまざまな課題がある。また、複合カフェ市場でも競争は激しく、単に「一人で使える」というだけでは利用者を引き付け続けることは難しい。そのため、料金、店舗立地、設備、コンテンツ、快適性などを継続的に改善し、利用目的を広げていくことが重要になる。

それでも、「一人で過ごす時間」が消費市場として拡大していることは見逃せない。おひとりさま消費は、一人焼肉や一人ラーメンだけではない。一人カラオケ、一人映画、一人旅、一人作業、一人ゲームなど、さまざまな分野へ広がっている。その中で快活CLUBの強みは、一つのサービスに限定せず、複数の「一人時間」を一つの空間に集約できる点にある。

AOKIホールディングスを「スーツや衣料品の会社」として見るだけでは、同社が持つもう一つの側面を見落としてしまう。快活CLUBを通じて、一人で漫画を読み、動画を見て、カラオケを楽しみ、食事をし、時には仕事や勉強をする。そんな「自分だけの時間」を提供する企業でもあるのだ。

これからのおひとりさま消費では、「一人でも利用できる」から「一人だからこそ利用したい」への進化が重要になるだろう。快活CLUBが提供する個室や多彩なコンテンツは、その変化を取り込む余地を持っている。家族や友人との消費だけでは捉えきれない「個人の時間」が新たな市場を生み出すなか、AOKIホールディングスと快活CLUBは、おひとりさま時代の消費行動を考えるうえで、注目しておきたい存在である。

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「一人の時間」にも場所が必要――Rebaseと「インスタベース」が切り拓く、おひとりさま消費の新市場

「おひとりさま消費」という言葉から、まず思い浮かぶのは一人焼肉や一人カラオケ、一人旅などかもしれない。しかし、個人のライフスタイルが多様化するなかで、一人で過ごすために必要となる「場所」そのものも消費の対象になっている。仕事、勉強、趣味、撮影、創作、休息など、誰にも邪魔されず自分のペースで過ごしたいという需要は広がっている。こうした変化を象徴する上場企業がRebase(5138)であり、同社が運営するレンタルスペースのマッチングプラットフォーム「インスタベース」は、おひとりさま消費を考えるうえで非常に興味深い存在である。

Rebaseは2014年5月に「インスタベース」をスタートした。当時は現在ほど「レンタルスペース」という言葉が一般的ではなかったが、12年を経た2026年には、会議やセミナーだけでなく、撮影、料理教室、ヨガ、ダンス、パーティー、イベントなど幅広い用途で利用されるサービスへと成長している。2025年2月には掲載スペース数が4万件を突破し、2026年7月時点では全国4万7,000件以上のスペースをそろえる規模にまで広がっている。

インスタベースの基本的な仕組みはシンプルだ。空いている部屋や施設を持つスペース掲載者と、場所を借りたい利用者をオンラインでつなぐ。利用者は日時や場所、用途などから希望するスペースを探し、必要な時間だけ予約することができる。会議室、テレワークスペース、撮影スタジオ、ダンススタジオ、古民家など、選択肢は非常に幅広い。Rebaseはスペースそのものを大量に保有するのではなく、「人」と「空間」をつなぐプラットフォームを構築している点が特徴である。

ここに「おひとりさま消費」との大きな接点がある。これまで一人で仕事や勉強をする場合、自宅やカフェ、図書館などが主な選択肢だった。しかし、自宅では集中できないことがあり、カフェでは長時間の作業が難しい場合もある。図書館では会話やオンライン会議が制限される。そこで登場するのが、「必要な時間だけ自分のための空間を借りる」という発想だ。

例えば資格試験の勉強をしたい人なら、静かな個室を数時間だけ借りることができる。オンライン会議をしたいフリーランスなら、周囲を気にせず話せるスペースを利用できる。楽器やダンスの練習をしたい人なら、それに適したスタジオを探せる。動画を撮影したい個人クリエイターなら、撮影に適した空間を時間単位で確保できる。このように、インスタベースは「一人で何かをしたい」という個人のニーズと、「空いている場所」を結び付けている。

特に面白いのは、おひとりさま消費が「モノ」から「時間・空間」へと広がっていることだ。従来の消費では、商品を購入することが中心だった。しかし、現在では「どこで、どのように時間を過ごすか」そのものに価値を感じる人が増えている。お気に入りのカフェで仕事をする、ホテルで一人時間を過ごす、コワーキングスペースで集中する、といった行動もその一例だ。インスタベースは、その「場所を所有するのではなく、必要なときだけ利用する」という消費スタイルをさらに細分化している。

しかも、一人で利用することには大きなメリットがある。複数人で利用する場合は、参加者全員のスケジュールを合わせなければならない。しかし、一人なら自分の都合だけで予約できる。「今日の午後2時間だけ」「仕事の前に1時間だけ」「週末の午前中だけ」といった細かな利用が可能になる。必要なときに必要な分だけ場所を借りるという考え方は、現代の個人消費と非常に相性が良い。

Rebaseにとっても、この個人利用は事業の原点に近い。2026年4月に公開された同社の2025年度の事業振り返りでは、従来は個人利用が中心だったインスタベースが、企業の会議、研修、イベントなど法人利用にも広がり、使われ方そのものが変化していると説明している。つまり、個人利用を起点に成長してきたサービスが、現在では法人需要まで取り込む段階に入っているのである。

一方で、ここから再び「おひとりさま」に目を向けると、個人利用にはまだ多くの可能性が残されている。例えば「推し活」である。好きなアーティストやアイドルの映像を見る、グッズを並べて撮影する、動画を編集するなど、推し活には意外と場所が必要になる。また、SNSや動画投稿が一般化したことで、個人が「発信する側」になる機会も増えている。自宅では撮影しにくい動画や写真を、レンタルスペースで撮影するという需要も考えられる。

さらに、趣味の個人化も追い風となる。読書、創作、ゲーム、イラスト、楽器、ダンス、動画制作など、趣味の種類は細分化している。以前なら仲間を集めなければ利用しにくかった施設でも、時間単位のレンタルという仕組みがあれば、一人でも挑戦しやすい。インスタベースは、こうした「一人で始める趣味」の受け皿にもなり得る。

Rebaseのビジネスモデルにも特徴がある。インスタベースでは、スペース掲載者から初期登録料や月額掲載料を取るのではなく、成立した予約に対する手数料を得る完全成果報酬型の仕組みを採用している。スペース利用料の大半は掲載者に支払われ、Rebaseは予約成立に応じた手数料を収益とする。スペースを自社で大量保有するモデルとは異なり、利用者と掲載スペースの双方が増えることでプラットフォームの価値を高めていく構造である。

最近のサービス展開を見ると、「場所を探して予約する」という体験そのものを便利にする取り組みも進んでいる。2026年5月には「Reserve with Google」への対応を開始し、Google検索やGoogleマップからインスタベースのスペースを探して、そのまま予約できるようにした。場所を検索するところから予約までの手間を減らすことで、「ちょっと場所を借りたい」という需要を取り込みやすくしている。

さらに2026年7月には、イベント企画・運営会社のONDOと提携し、「instabase×Co-Creation」を開始した。会場探しだけでなく、企画や当日の運営まで一括して支援するサービスである。これは一見すると法人向けの展開だが、「場所を貸す」だけにとどまらず、利用者がその場所で何をするのかまで支援する方向へ、インスタベースの事業領域が広がっていることを示している。

おひとりさま消費の拡大は、必ずしも「一人専用サービス」が増えることだけを意味しない。むしろ重要なのは、従来は複数人で利用することを前提としていたサービスや施設が、「一人でも利用できる」ものへ変化していくことである。レンタルスペースは、その代表的な存在だ。1人で借りることもできれば、必要に応じて2人、5人、10人と人数を増やすこともできる。個人から法人まで幅広い利用者を取り込める柔軟性がある。

そして、この市場の面白さは「空きスペース」という、これまで十分に活用されていなかった資産を消費市場につなげられる点にもある。空いている会議室、店舗、スタジオ、住宅などを、必要な人が必要な時間だけ使う。利用者にとっては新しい選択肢が生まれ、スペース所有者にとっては遊休時間を収益化できる。Rebaseはその間に入ることで、場所の新しい使い方を生み出している。

「一人で過ごす」という行動は、決して消費しないことではない。むしろ、自分の時間を快適にするために、食事、娯楽、旅行、ホテル、カラオケ、そして「場所」にお金を使うようになる。インスタベースは、この「一人の時間を買う」という新しい消費行動を支えるプラットフォームとして見ることができる。

おひとりさま消費というテーマでRebaseを見ると、同社は単なるレンタルスペース企業ではないことが分かる。個人が「やってみたい」「集中したい」「楽しみたい」と思ったとき、そのための場所を必要な時間だけ提供するインフラになりつつあるからだ。今後、働き方や趣味、余暇の過ごし方がさらに個人化していけば、「一人で何かをするための場所」への需要も広がる可能性がある。所有から利用へ、みんなから一人へ――。Rebaseとインスタベースは、そんな消費スタイルの変化を映す存在として、おひとりさま市場を考えるうえで注目したい企業である。

まとめ――「おひとりさま」はニッチではなく、日本の新しい標準へ

おひとりさま消費の広がりは、「一人で仕方なく消費する」という時代から、「一人だからこそ楽しむ」という時代への変化を示している。ひとりカラオケなら自分の好きな曲を好きなだけ歌い、快活CLUBなら自分だけの空間で趣味や娯楽を楽しみ、インスタベースなら必要なときに必要な場所を確保できる。共通しているのは、他人に合わせることなく、自分の時間や目的を優先できる点である。

そして、この市場の成長を支える最大の要因の一つが、単身世帯の増加である。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には単独世帯が全世帯の44.3%を占めると見込まれている。今後は「一人」が特殊な消費者ではなく、ごく一般的な生活者像になっていく可能性が高い。

ただし、すべての「一人」を同じように捉えることはできない。若い世代にとっては自由や趣味を楽しむためのおひとりさま消費であっても、高齢者にとっては生活上の支援を必要とする単身化である場合もある。だからこそ、企業は年齢や目的に応じた多様な一人向けサービスを開発し、行政は家族の存在を前提としない医療、介護、住まい、移動、見守りなどの仕組みを整えていく必要がある。

「一人で楽しめる社会」と「一人でも安心して暮らせる社会」は、これからの日本にとって表裏一体のテーマとなる。おひとりさま消費の拡大は、企業に新たな成長機会をもたらすだけでなく、日本社会が「家族中心」から「個人中心」へと変化していることを示す重要なシグナルでもある。企業と行政がそれぞれの役割を果たしながら、一人一人の自由と安心を両立させることが、人口減少・少子高齢化時代の新しい社会設計につながっていくだろう。

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