Wolt撤退、menu終了へ――日本のフードデリバリー市場はどこへ向かう?

日本のフードデリバリー市場、再編の先にある新たな競争

コロナ禍をきっかけに急速に普及したフードデリバリーは、いまや私たちの食生活を支える身近なサービスの一つとなった。スマートフォンから料理を注文し、自宅や職場まで届けてもらう便利さは定着した一方、市場では競争激化や採算性の問題を背景に、サービスの撤退・終了も相次いでいる。2026年にはWoltが日本市場から撤退し、KDDI系のmenuも9月30日でサービス終了予定となるなど、かつての「参入ラッシュ」から「淘汰と再編」の段階へ移行している。現在は出前館やUber Eatsといった既存大手に加え、送料・サービス料無料を掲げて急速にエリアを拡大するRocket Nowが新たな勢力として台頭している。フードデリバリー市場は、単に料理を届けるサービスから、食料品や日用品なども含めた生活インフラ型のプラットフォームへ進化しようとしている。今後は料金の安さだけでなく、加盟店の充実度、配達網、利便性、収益性などを含めた総合力が各社の明暗を分けそうだ。

区分サービス運営企業証券コード状況
継続出前館出前館2484日本でサービス継続
継続Uber EatsUber TechnologiesUBER日本でサービス継続
継続Rocket NowCP One Japan日本でサービス展開
撤退予定menumenu/KDDIグループ94332026年9月30日終了予定
撤退済みWoltDoorDashDASH2026年3月4日終了
撤退済みfoodpandaDelivery Hero2022年1月末終了
撤退済みDiDi FoodDiDi2022年5月25日終了
撤退済み楽天ぐるなびデリバリーぐるなび24402022年7月25日終了
撤退済みDoorDashDoorDashDASH2022年8月31日終了
撤退済みdデリバリーNTTドコモ2021年6月30日終了

日本のフードデリバリー市場に再編の波 出前館・Uber Eats・Rocket Nowの三つ巴へ

コロナ禍をきっかけに急速に普及した日本のフードデリバリー市場が、いま大きな転換点を迎えている。スマートフォンから料理を注文し、自宅や職場まで届けてもらうサービスはすっかり日常生活に定着した一方、プラットフォーム各社の競争は激しさを増し、撤退やサービス終了も相次いでいる。2026年8月時点で特に大きなニュースとなったのが、KDDI系の「menu」が9月30日でサービスを終了すると発表したことだ。運営会社もサービス終了後に解散・清算される予定であり、日本のフードデリバリー市場は大きな再編局面に入ったといえる。

フードデリバリー市場の特徴は、飲食店そのものではなく、飲食店と消費者、そして配達パートナーを結び付ける「プラットフォーム」が競争の中心になっている点にある。代表格が「出前館」と「Uber Eats」である。出前館は日本発の代表的なフードデリバリープラットフォームで、飲食店の商品をスマートフォンなどから注文できる環境を提供している。一方、Uber Eatsは世界的な配車・デリバリー企業であるUber Technologiesのサービスとして、日本でも幅広い飲食店を取り扱っている。コロナ禍の需要急増を経て、現在は単純な利用者数の拡大だけでなく、加盟店の獲得、配達員の確保、注文単価、配達効率などを含めた総合的な競争へ移行している。

そこへ新たな勢力として存在感を高めているのが「Rocket Now」である。韓国のCoupang系企業が日本市場に投入したサービスで、配達料無料を前面に出した価格戦略によって市場へ参入した。2026年8月現在、日本の主要なフードデリバリープラットフォームを考える際には、出前館、Uber Eats、Rocket Nowが大きな競争軸となっている。menuの終了によって、この3サービスを中心とする構図がさらに鮮明になるとの見方も出ている。

一方、少し前まで主要プレーヤーの一角を占めていたWoltは、2026年3月4日をもって日本でのサービスを終了した。Woltは2020年に日本へ進出し、地方都市を含めてサービスエリアを拡大してきたが、2026年2月に日本市場からの撤退を発表。「持続的な規模拡大と長期的な優位性を実現できる地域に投資を集中する」という国際事業ポートフォリオの見直しの一環として、日本事業を終了することになった。

こうした撤退が示しているのは、フードデリバリーが「市場が成長していれば勝てる」という単純なビジネスではないということである。利用者にとっては、配達料やサービス料が安いほど魅力的だが、運営側から見ると、注文を獲得するためのキャンペーン費用、配達員への報酬、システム開発費、カスタマーサポート費用などが発生する。さらに物価高による飲食店側のコスト上昇も重なり、消費者、飲食店、配達員、プラットフォームのすべてにとって、持続可能な価格設定が難しい市場になっている。

特に注目したいのが「送料無料」をめぐる競争である。Rocket Nowなどが配達料無料を打ち出すことで、消費者にとってはサービスを乗り換える動機が生まれる。しかし、無料配達を維持するためにはプラットフォーム側がコストを負担する必要がある。そのため、単純な値下げ競争が続けば、各社の収益性を圧迫する可能性がある。実際、2026年の市場では、利用者を増やすための規模拡大競争から、いかに効率的に注文を処理し、利益を確保するかという段階へ移っている。

もう一つの大きな変化は、フードデリバリーの対象が「料理」だけではなくなっていることだ。コンビニ、スーパー、ドラッグストアなどの商品を注文して届けてもらう買い物代行型サービスとの境界が薄くなっている。プラットフォーム側からすれば、昼食や夕食の注文だけでは利用時間が限定されるが、日用品や食品まで扱えば、朝から夜まで利用機会を増やせる。つまり、フードデリバリーで構築した配達ネットワークを、より広い「生活サービスの配送インフラ」へ発展させることが次の成長戦略となっている。

飲食店側にとっても、フードデリバリープラットフォームは重要な販売チャネルになっている。店舗の商圏を超えて注文を獲得できるほか、店舗に大規模な宅配網を自前で構築する必要がないからだ。一方で、プラットフォーム利用に伴う手数料などが発生するため、店頭販売と比べた収益性をどう確保するかが課題となる。そのため、複数のプラットフォームを使い分けたり、自社アプリや自社サイトからの注文を強化したりする飲食店も増えている。

消費者から見れば、サービスの撤退は不便に感じられる一方、競争によって料金やキャンペーン、利便性が改善されるメリットもある。Woltの撤退後も、例えばスターバックスはUber Eats、出前館、menuを通じたデリバリーを継続すると案内していた。 しかしmenuも9月末で終了するため、加盟店側も利用者側も、サービスの再選択を迫られるケースが増えていく可能性がある。

今後の焦点は、3強とされる出前館、Uber Eats、Rocket Nowがどこまで収益性と利便性を両立できるかだ。フードデリバリーは「注文を受けて料理を運ぶ」という単純なサービスから、注文データ、決済、店舗ネットワーク、配送網を組み合わせたデジタルプラットフォームへと進化している。市場の成熟に伴って淘汰が進む一方、配送インフラを料理以外の買い物へ広げる余地は大きい。

日本のフードデリバリー市場は、これまでの「新規参入が相次ぐ成長市場」から、「勝ち残るプラットフォームを見極める再編市場」へと局面が変わりつつある。Woltの撤退、menuの終了決定は、その象徴的な出来事といえる。今後は利用者数だけでなく、配達効率、加盟店数、注文頻度、収益性、そして食品・日用品を含む配送ネットワークをどこまで拡大できるかが、各社の競争力を左右することになりそうだ。

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出前館が仕掛ける「お店価格」戦略 フードデリバリーを日常の選択肢へ

スマートフォンひとつで料理を注文し、自宅や職場まで届けてもらえるフードデリバリーは、コロナ禍を経て日本人の生活にすっかり浸透した。その一方で、市場では競争激化や配達員不足、サービス料金の高さなどが課題となり、海外勢を含む複数のプラットフォームが日本市場から撤退している。そんななか、国内発のフードデリバリープラットフォームとして存在感を持つのが出前館である。2026年には、利用者にとって最大の不満の一つだった「デリバリーは店頭より高い」というイメージを変えるため、「お店価格で出前館」を全国へ拡大。フードデリバリーを特別なサービスではなく、外食やテイクアウト、自炊と並ぶ日常的な選択肢にする戦略を進めている。

出前館は、飲食店と消費者をオンラインでつなぐマーケットプレイス型のサービスである。利用者はスマートフォンやパソコンから飲食店や料理を検索して注文でき、店舗側にとっては自前で大規模な配達網を構築しなくても新たな顧客を獲得できる。出前館が提供する仕組みには、出前館側が配達を担うケースだけでなく、加盟店自身が配達する仕組みもあり、店舗の事情に応じてデリバリーを利用できる点も特徴だ。フードデリバリー市場においては、単に「料理を運ぶ会社」ではなく、注文、決済、店舗、配達員、消費者をつなぐデジタルプラットフォームとしての役割が重要になっている。

その出前館が2026年に力を入れているのが「お店価格で出前館」である。これは対象店舗の商品を、イートインやテイクアウトなどの店頭と同じ商品価格で注文できるようにする取り組みだ。2025年から一部地域で実証を開始し、2026年3月1日には全国47都道府県へ展開。6月時点では対象店舗が2万1,000店舗以上に拡大し、8月1日時点では約2万5,000店舗まで増えている。

これは単なるキャンペーンではなく、出前館の今後を左右する重要な戦略といえる。フードデリバリーが普及する一方、消費者にとって大きな壁となってきたのが「割高感」だった。料理そのものの価格に加えて送料やサービス料などが加われば、店頭で購入するより支払額が大きくなりやすい。便利ではあるものの、「今日は少しぜいたくしてデリバリーを頼もう」という使われ方になれば、利用頻度を高めることは難しい。そこで出前館は、商品価格を店頭と同じにすることで価格面の心理的なハードルを下げ、デリバリーの日常化を狙っている。

さらに2026年3月からは、出前館が配達する対象店舗で送料無料も開始した。現在の料金体系は商品代金にサービス料と送料が加わる形を基本としているが、対象となる「出前館がお届け」の店舗については送料無料を打ち出している。送料無料については終了時期未定で継続すると発表されており、「お店価格」と組み合わせることで、消費者にコストパフォーマンスを訴求している。

ただし、フードデリバリーにとって「安さ」は諸刃の剣でもある。消費者にとっては送料が安く、料理も店頭価格なら魅力的だが、運営側には配達員への報酬、システム運営費、加盟店獲得費用、広告宣伝費などさまざまなコストが発生する。特に雨や雪、猛暑、ゲリラ豪雨などの悪天候時や、注文が集中する時間帯には配達員の確保が難しくなる。出前館は2026年6月から、こうした配達コンディションが大きく悪化する場合に「配達員支援金」を導入した。対象となるケースでは、通常のサービス料に加えて1件あたり150円程度を利用者から受け取り、その全額を配達員への報酬として活用するとしている。

この取り組みから見えてくるのは、フードデリバリー市場が「利用者を増やす競争」だけではなく、「配達網をどう持続可能にするか」という段階に入っていることだ。利用者に低価格を提示しながら、配達員にも適切な報酬を支払い、加盟店にもメリットを提供する。この三者のバランスを取らなければ、プラットフォームは長期的に成長できない。出前館にとっては、注文数を増やすことと同時に、一件一件の配達を効率化し、利益につなげることが重要になっている。

実際、同社は2025年8月期第3四半期から「再成長フェーズ」へ移行したと説明している。2026年8月期第1四半期の資料では、固定費の適正化を継続しながら、限界利益を原資として市場・トップラインの成長を追求する方針を示している。つまり、コスト削減だけを優先する段階から、事業基盤を整えたうえで再び利用者や注文を増やしていく段階へ移行しているわけだ。

市場環境も出前館にとって重要な追い風となり得る。2026年にはWoltが日本市場から撤退し、さらにKDDI系のmenuも9月30日でサービス終了予定となっている。コロナ禍には多くのプレーヤーが参入したフードデリバリー市場だが、現在は競争と淘汰が進み、残った事業者がより大きなシェアを争う構図へ変化している。こうした環境では、加盟店の多さや利用者の認知度、配達ネットワークなど、既に構築されたプラットフォームの規模が競争力につながる。

一方で、競争相手の存在も忘れてはならない。Uber Eatsは日本市場で強いブランド力と幅広い加盟店網を持ち、新規参入したRocket Nowも価格面を武器に利用者を獲得しようとしている。出前館が今後も存在感を維持するためには、単に「安いサービス」を提供するだけではなく、加盟店の充実、配達品質、注文のしやすさ、キャンペーン、決済サービスなどを総合的に磨く必要がある。

その意味で、出前館が目指す「ライフインフラ」という方向性は興味深い。フードデリバリーは昼食や夕食を届けるだけでなく、買い物や日用品の配送など、生活に関わるさまざまなサービスへ広がる可能性がある。高齢化や共働き世帯の増加、子育て世帯の時間不足などを考えても、「必要なものを必要な場所へ届けてもらう」需要は今後も存在するだろう。

出前館は、単なる「出前サイト」から、飲食店と消費者を結び付ける生活インフラ型のプラットフォームへ進化できるかが問われている。2026年の「お店価格で出前館」や送料無料の取り組みは、そのための大きな一歩である。8月時点で「お店価格」の対象店舗が約2万5,000店まで広がっていることからも、同社が価格面のハードルを下げ、利用頻度を高めようとしていることが分かる。

フードデリバリー市場は、参入企業が増え続ける成長期から、撤退と再編を経て「残ったプラットフォームがどう収益化するか」を問われる成熟期へと移りつつある。国内上場企業として出前館を見る場合も、単なるフードデリバリー銘柄というだけでなく、価格戦略、配達員確保、加盟店ネットワーク、デジタルプラットフォーム、そして地域の生活インフラという複数の視点から捉えることが重要だ。今後、出前館が「便利だけれど高い」というデリバリーのイメージをどこまで変え、日常生活に欠かせないサービスとして定着させられるか。その取り組みは、日本のフードデリバリー市場そのものの行方を占う材料になりそうだ。

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Uber Eatsが「特別な出前」から日常の生活インフラへ 価格改革と配送網拡大で進化するフードデリバリー

スマートフォンから料理を注文し、自宅や職場まで届けてもらうフードデリバリーは、コロナ禍を契機に日本社会へ急速に浸透した。しかし、ブームの時期を過ぎた現在、市場は新規参入が相次いだ成長期から、淘汰と再編が進む成熟期へと移りつつある。2026年にはWoltが日本市場から撤退し、KDDI系のmenuも9月30日でサービスを終了する予定となっている。そんななか、国内市場で存在感を維持しているのが世界的なデリバリープラットフォーム「Uber Eats」である。Uber Eatsは単に料理を届けるサービスから、食料品や日用品、さらには荷物まで届ける生活インフラへと領域を広げている。2026年の動向を見ると、同社が目指しているのは「出前を頼むサービス」から「必要なものを必要なときに届けてもらうサービス」への進化であることが分かる。

Uber Eatsの最大の特徴は、飲食店、消費者、配達パートナーをオンライン上で結び付けるプラットフォーム型のビジネスモデルにある。利用者はアプリから飲食店やメニューを検索し、注文から決済までをスマートフォン上で完結できる。飲食店側にとっては、自前で大規模な宅配網を構築しなくても、Uber Eatsを通じて新たな顧客を獲得できる。配達パートナーにとっては、時間や場所を選びながら配達業務に参加できる。この三者を効率的につなぐネットワークそのものがUber Eatsの競争力となっている。

そのUber Eatsが2026年に大きく打ち出したのが、「お店と同じ価格」である。3月20日から、対象となる加盟店ではアプリ上の商品価格を実店舗と同じ価格で提供する取り組みを開始した。開始時点で対象店舗は全国約1万8,000店に達し、今後も拡大するとしている。背景にあるのは、消費者が抱く「デリバリーは店頭より高い」というイメージだ。商品価格が高いうえに配達料などが加わると、便利ではあっても日常的には使いにくい。そこで商品価格そのものを店頭とそろえることで、「今日は疲れたからデリバリー」という特別な利用だけでなく、日常的な食事の選択肢として利用してもらうことを狙っている。

これは、同じく「お店価格」を打ち出している出前館との競争という意味でも重要である。日本のフードデリバリー市場では、単純に加盟店を増やすだけでは利用者を囲い込むことが難しくなっている。料金、品ぞろえ、配達時間、使いやすさ、キャンペーンなど、総合的な利便性が選ばれるポイントになっている。Uber Eatsが価格面の改革に踏み込んだことは、成熟市場で利用頻度を高めるための戦略と見ることができる。

さらにUber Eatsは、料理だけに依存しない事業構造への転換を進めている。食料品や日用品の取り扱いを拡大していることがその一例だ。2026年7月には、小売店側の作業負担を軽減する「ピック・パック・ペイ」の導入店舗が3,000店舗を突破したと発表した。この仕組みでは、Uber Eatsの配達パートナーが店舗で商品をピックアップし、パッキングや会計まで担うことで、小売店側のオペレーション負担を抑えながらオンデマンド配送を実現する。人手不足に悩む小売業界にとっても、外部の配送ネットワークを活用できるメリットがある。 

サービスエリアの拡大も続いている。2026年5月には北海道、新潟県、長野県、山梨県などでサービスエリアを拡大し、富士山周辺や高原リゾートなど観光需要の高い地域にも展開を進めた。都市部だけでなく、地方や観光地まで配送網を広げることで、旅行者や地域住民の双方を取り込もうとしている。

こうした動きは、Uber Eatsの「3A戦略」にも表れている。Anywhere、Anything、Affordabilityの3つを軸に、郊外を含めてサービスエリアを広げ、食料品や日用品まで品ぞろえを拡大し、さらに価格面で利用しやすくするという考え方である。つまり、料理を届けるサービスだけではなく、「どこでも、何でも、手頃に届ける」プラットフォームを目指しているわけだ。

さらに注目されるのが、Uber Eatsの配送ネットワークを活用した即時宅配便「Courier(クーリエ)」である。2026年7月には、従来の22都道府県から全国47都道府県へサービスを拡大し、自転車やバイクだけでなく軽バンによる配送も開始した。最大25キロ圏内の荷物を対象に、個人の忘れ物やプレゼント、書類や商品の発送など幅広い用途に対応する。2024年11月から2026年6月までの利用データでは、個人利用が約6割、ビジネス利用が約4割だったという。Uber Eatsが構築してきた配送ネットワークを、フード以外にも活用する動きが本格化している。

この流れを支えるのが、Uberのサブスクリプションサービス「Uber One」である。2026年7月には特典を拡充し、Uber Eatsの対象注文で配達手数料やサービス料が何度でも0円になる特典に加え、Uber TaxiやCourierなどにもメリットを広げた。料金は通常プランの月額が498円から698円に改定された一方、学生プランは月額349円から298円へ変更された。フードデリバリーだけでなく、移動や配送まで一つの会員サービスにまとめることで、Uber全体の利用頻度を高める狙いがある。

ここで重要なのが、Uber Eatsが「フードデリバリー会社」という枠を越えつつある点だ。料理を注文するために登録した利用者が、スーパーの商品を注文し、さらにタクシーを呼び、必要なら荷物を即時配送する。利用者にとっては一つのアプリで複数の生活サービスを利用できるため、アプリを開く頻度が増える。Uber側にとっても、一つのサービスだけで顧客を獲得するより、複数のサービスを組み合わせることで顧客との接点を増やせる。

一方で、課題も残る。フードデリバリーは配達員の確保が欠かせず、猛暑や悪天候の際には配達環境が厳しくなる。Uber Eatsは2026年夏にも配達パートナーの水分補給を支援する取り組みを実施しており、配達員が安心して働ける環境づくりも重要なテーマとなっている。また、「お店と同じ価格」や送料無料などを打ち出すほど、利用者にとっては魅力が高まる一方、プラットフォーム側には価格と配達コストを両立させる難しさが生じる。今後は利用者数だけでなく、一件当たりの配送効率や加盟店との関係、配達パートナーへの適切な報酬などを含めた収益性が問われることになる。

日本のフードデリバリー市場は、Woltやmenuなどの撤退によって競争相手が減少する一方、Uber Eats、出前館、新興のRocket Nowなどが利用者を奪い合う構図へと変化している。その中でUber Eatsは、単純な「出前の価格競争」から一歩踏み込み、食料品、日用品、即時宅配、タクシーまで含めた総合的な生活プラットフォームを目指している。2026年の「お店と同じ価格」、地方へのエリア拡大、PPPの普及、Courierの全国展開、Uber Oneの機能拡充は、いずれもこの方向性を示す動きである。

フードデリバリーの未来は、料理を早く届けるだけでは決まらない。いかに安く、便利に、安定して届けられるか。そして、その配送網を料理以外のさまざまな商品やサービスにも活用できるかが重要になる。Uber Eatsは、すでにその次のステージへ踏み出している。日本のフードデリバリー市場が再編されるなか、Uber Eatsが「出前アプリ」から「日常生活を支えるオンデマンド配送プラットフォーム」へどこまで進化できるかは、今後の市場を占う大きなポイントになりそうだ。

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Rocket Nowが日本のフードデリバリー市場を変える? 「送料・サービス料0円」で急成長する新勢力

日本のフードデリバリー市場が再編期を迎えるなか、急速に存在感を高めているのが「Rocket Now(ロケットナウ)」である。2025年1月にサービスを開始した新しいフードデリバリープラットフォームであり、運営するのは米Coupangの完全子会社であるCP One Japan合同会社だ。最大の特徴は、サービス開始当初から打ち出してきた「送料0円・サービス料0円」という分かりやすい料金体系にある。2026年6月には累計700万ダウンロードを突破し、8月にはサービス対象エリアを46都道府県・420都市へ拡大するなど、わずかな期間で急速に事業規模を広げている。

Rocket Nowの登場が注目される理由は、単に新しいフードデリバリーサービスが誕生したからではない。日本市場では、コロナ禍をきっかけにUber Eats、出前館、Wolt、menuなど複数のプラットフォームが競争を繰り広げてきたが、2026年にはWoltが日本市場から撤退し、menuも9月30日でのサービス終了を予定している。参入企業が増える「成長市場」から、撤退・淘汰が進む「再編市場」へと変わるなかで、Rocket Nowはむしろ積極的にサービスエリアを広げている。市場環境が変化するタイミングで大規模な投資を続けていることが、新勢力としての大きな特徴といえる。

利用者にとってRocket Nowの最大の魅力は、料金の分かりやすさだ。同社は現在、誰でもサブスクリプション契約なしで送料とサービス料を無料としている。さらに、「お店と同価格」のマークが付いた対象店舗では、店舗で販売されている価格と同じ価格で料理を注文できる。つまり、通常のフードデリバリーで消費者が感じやすい「料理そのものが高い」「送料が上乗せされる」「サービス料までかかる」といった割高感を抑えようとしている。

この価格戦略は、Rocket Nowの成長を考えるうえで非常に重要である。フードデリバリーは便利な半面、店頭で購入するより支払額が高くなりやすい。そのため、消費者にとっては「雨の日」「仕事が忙しい日」「外出したくない日」など、特定の場面で利用するサービスになりやすかった。Rocket Nowはそこに対して、価格面のハードルを低くすることで、日常的に注文するサービスへ変えていこうとしている。実際、同社は「毎日の食事だからこそ、もっと気軽に、もっと便利に」という方向性を掲げている。

しかもRocket Nowは、価格だけでなく店舗網の拡大にも力を入れている。2026年6月時点で、店舗と同じ価格で提供する対象店舗は1万店以上とされ、公式サイトでは現在1万店を超える「お店と同価格」のストアを掲げている。人気チェーン店やさまざまなジャンルのレストランを取り込み、選択肢を増やすことで、利用者が「この店があるからRocket Nowを使う」という状態を作ろうとしている。

さらに興味深いのが、サービスエリアの急拡大である。2026年8月7日には、Rocket Nowの対象エリアが46都道府県・420都市に拡大したと発表された。サービス開始当初は東京都内の一部地域からスタートしたが、関東を中心にエリアを広げ、関西、中部、東北、中国、九州などへ進出。現在は北海道から九州まで幅広い地域をカバーする規模となっている。

このスピード感は、フードデリバリープラットフォームとしてのRocket Nowを考えるうえで見逃せない。プラットフォーム型ビジネスでは、利用者だけを増やしても成立しない。加盟する飲食店が増え、配達を担うドライバーが確保され、注文が発生することでネットワーク全体が機能する。Rocket Nowはサービスエリアを広げながら、加盟店と配達パートナーのネットワークも同時に構築している。

特に配達については、独立したドライバーが参加する仕組みを採用している。ドライバーへの業務委託料は、受注量、配達可能なドライバー数、天候、地域ごとのリアルタイムな配達状況などを考慮して算定される仕組みとなっている。需要が集中する地域や時間帯などに応じて配達報酬を調整することで、必要な配達力を確保する狙いがある。(ロケットナウ)

営業時間の拡大も利用者の利便性を高める動きだ。2026年5月にはサービス提供時間を従来の午前8時から翌午前3時までから、午前7時から翌午前4時までへ延長した。早朝の朝食需要から深夜の食事需要まで取り込むことで、利用時間を広げている。フードデリバリーは昼食と夕食だけでなく、朝食、夜食、飲料、スイーツなどへ利用場面を広げられるため、営業時間の長さは利用頻度を高める重要な要素になる。

また、決済手段の拡充も進んでいる。2025年11月にはPayPayを導入し、クレジットカードに加えてPayPay残高やPayPayクレジットを利用できるようにした。フードデリバリーでは注文から決済までをスマートフォン上で完結できることが重要であり、利用者が普段使っている決済手段に対応することは、サービスの定着にもつながる。

一方、Rocket Nowにとって最大の課題は、「送料・サービス料0円」という強みをいかに持続可能なビジネスモデルにつなげるかだろう。利用者にとって無料であることは大きな魅力だが、実際の配送には配達員への報酬、システム運営費、加盟店獲得費用、マーケティング費用などが必要になる。サービスの規模を拡大するほどコストも増えるため、利用者数や注文数の増加を収益性につなげられるかが今後のポイントとなる。

ただし、Rocket Nowには大きな市場機会もある。Woltの撤退やmenuのサービス終了によって、利用者や加盟店の移動が起こる可能性があるからだ。フードデリバリー市場が再編されるなか、既存サービスから流出したユーザーを獲得できれば、Rocket Nowにとって一気にシェアを伸ばすチャンスになる。特に「送料・サービス料無料」「お店と同価格」という分かりやすい特徴は、競合サービスとの差別化に使いやすい。

もちろん、Uber Eatsや出前館という強力な先行プレーヤーが存在することを忘れてはならない。両社は長年にわたって加盟店、利用者、配達ネットワークを構築しており、知名度も高い。Rocket Nowが本格的な競争相手になるには、単に安いだけではなく、料理の品ぞろえ、配達スピード、アプリの使いやすさ、配達品質、加盟店との関係など、サービス全体で支持を獲得する必要がある。

それでも、2026年8月時点で累計700万ダウンロード、46都道府県・420都市という数字は、短期間で成長していることを示す材料になる。 日本のフードデリバリー市場が淘汰の段階に入るなかで、後発のRocket Nowがこれだけのスピードでエリアと利用者を増やしていることは、市場に新たな競争を生み出す可能性がある。

日本のフードデリバリーは、かつての「新規参入ラッシュ」から「勝ち残り競争」へと局面を変えた。そのなかでRocket Nowは、徹底した低料金と急速なエリア拡大を武器に存在感を高めている。フードデリバリーを「便利だけれど高いサービス」から「普段使いできるサービス」へ変えられるか。そして、無料という強烈な価格訴求を維持しながら、加盟店、利用者、配達パートナーの三者が利益を得られるプラットフォームを構築できるか。Rocket Nowの挑戦は、日本のフードデリバリー市場そのものの勢力図を変える可能性を秘めている。

フードデリバリーは「普段使い」の時代へ

日本のフードデリバリー市場は、これまで多くの企業が利用者獲得を競い合う成長市場だった。しかし現在は、撤退する企業が現れる一方で、残った事業者がサービスの効率化や新たな需要の開拓に取り組む段階へ入っている。出前館は「お店価格」を掲げ、デリバリー特有の割高感を抑えることで利用頻度の向上を目指し、Uber Eatsも店舗と同価格の商品を増やすほか、食料品・日用品や即時配送へと事業領域を広げている。さらにRocket Nowは、送料・サービス料無料を武器に急速なエリア拡大を進めている。

今後の競争では、「どれだけ多くの店舗を掲載できるか」だけではなく、「どれだけ安く、早く、安定して届けられるか」が重要になるだろう。消費者にとっては、料金や品ぞろえ、配達時間、キャンペーンなどを比較してサービスを選ぶ時代になり、飲食店にとっては新たな販売チャネルとしてプラットフォームをどう活用するかが課題となる。一方、運営企業には配達員への適切な報酬とサービスの収益性を両立させることが求められる。

フードデリバリー市場の次の成長余地は、料理だけではない。スーパーやコンビニ、ドラッグストアの商品、さらには荷物の配送まで取り込めば、デリバリープラットフォームは「食事を注文するアプリ」から「必要なものを必要なときに届けてもらう生活インフラ」へ変わる可能性がある。市場再編が進むなか、出前館、Uber Eats、Rocket Nowがどのようなサービスを打ち出し、利用者の日常に定着していくのか。フードデリバリーは、これから新たな競争ステージを迎えることになりそうだ。

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