
レジリエンス時代に注目される「守る力」と「立ち直る力」 社会を支える企業群
自然災害、サイバー攻撃、感染症、気候変動、サプライチェーン寸断――現代社会は、これまで以上に多様なリスクにさらされている。企業や自治体に求められているのは、こうした危機を完全になくすことだけではなく、被害を最小限に抑え、発生後に迅速な復旧を実現する力である。こうした「耐える力・回復する力」を高める考え方が「レジリエンス(Resilience)」である。
日本は世界有数の災害多発国であり、地震や豪雨などへの備えは社会全体の重要課題となっている。熊本県災害対策本部は31日午前、「令和8年熊本地震」に関連して新たに1人の死亡が確認されたと発表した。これまでに確認された死者は、災害との関連を調査中の1人を含めて35人となった。また、死者を含む人的被害は126人に達している。こうした大規模災害の発生は、改めて社会インフラの強靱化や危機対応力の重要性を浮き彫りにしている。
レジリエンスという投資テーマは、単なる防災関連銘柄にとどまらない。国土強靱化による道路・橋梁などのインフラ老朽化対策、企業のBCP(事業継続計画)強化、災害情報を迅速に共有する防災DX、デジタル社会を守るサイバーセキュリティ、エネルギー安定供給など、幅広い分野を包含する大きなテーマとなっている。
例えば、老朽化した橋梁や道路を補修し社会基盤を守るショーボンドホールディングス(1414)、災害情報を地図情報システムで支えるドーン(2303)、サイバー攻撃から企業活動を守るトレンドマイクロ(4704)、災害復旧やインフラ再建の現場を支えるコマツ(6301)などは、それぞれ異なる角度から社会のレジリエンス向上に貢献している。
災害への備えは、被害が発生してから始めるものではなく、平時から取り組むべき社会投資である。人口減少による人手不足、インフラ老朽化、デジタル化による新たなリスクなど、日本社会が抱える課題は複雑化している。そのなかで、危機に強い社会をつくる企業への注目は今後さらに高まっていくだろう。
| 企業名 | コード | 市場 | レジリエンス関連ポイント |
|---|---|---|---|
| ショーボンドHD | 1414 | 東証プライム | 橋梁・道路補修の最大手。老朽インフラ更新、国土強靱化の本命銘柄。 |
| 応用地質 | 9755 | 東証プライム | 地質調査、防災コンサル、地震・土砂災害リスク評価。 |
| 建設技術研究所 | 9621 | 東証プライム | 河川、防災計画、ダム、洪水対策などを担う建設コンサル大手。 |
| 構造計画研究所HD | 208A | 東証スタンダード | 耐震解析、防災シミュレーション、都市防災技術。(ケイケイエイチディー) |
| 帝国繊維 | 3302 | 東証プライム | 消防ホース、防火服、救助資機材。災害対応インフラ企業。 |
| 日本ドライケミカル | 1909 | 東証スタンダード | 消火設備、防災設備、消防関連機器。 |
| ドーン | 2303 | 東証スタンダード | GIS、防災情報システム、自治体向け防災DX。 |
| 横河ブリッジHD | 5911 | 東証プライム | 橋梁建設・補修。インフラ強靱化関連。 |
| ライト工業 | 1926 | 東証プライム | 法面工事、地盤改良、土砂災害対策。 |
| NTT | 9432 | 東証プライム | 災害時通信、ネットワーク冗長化、社会インフラ維持。 |
| KDDI | 9433 | 東証プライム | 災害対策基地局、衛星通信など通信レジリエンス。 |
| ソフトバンク | 9434 | 東証プライム | 災害時通信、IoT、防災活用技術。 |
| ラック | 3857 | 東証スタンダード | サイバーセキュリティ。デジタルレジリエンス分野。 |
| トレンドマイクロ | 4704 | 東証プライム | サイバー攻撃対策、企業のIT継続性向上。 |
| INPEX | 1605 | 東証プライム | エネルギー安全保障、資源安定供給。 |
| ENEOS HD | 5020 | 東証プライム | 災害時の燃料供給、エネルギーインフラ。 |
| コマツ | 6301 | 東証プライム | 災害復旧・復興に不可欠な建設機械。 |
| 日立建機 | 6305 | 東証プライム | 復旧工事向け建機。 |
災害に強い国を支える「縁の下の力持ち」 ショーボンドHD(1414)が挑むインフラ・レジリエンス時代
日本は世界でも有数の自然災害大国である。地震、台風、豪雨、土砂災害などが頻発するなか、近年注目されているキーワードが「レジリエンス(Resilience)」だ。レジリエンスとは、単に災害を防ぐ「防災」だけではなく、被害を最小限に抑え、発生後には早期に復旧し、社会機能を維持する「強靱性」を意味する。企業活動や自治体運営においても重要性が高まっており、投資テーマとしても「国土強靱化」「インフラ老朽化対策」「防災・減災」といった分野への関心が高まっている。
そのレジリエンス関連銘柄として代表的な存在が、ショーボンドホールディングス(1414)である。同社は一般的な建設会社とは異なり、橋梁や高速道路などの社会インフラを「造る」よりも「守る」ことに特化した企業である。高度経済成長期に整備された日本のインフラは、建設から数十年が経過し、老朽化が大きな社会課題となっている。新設投資だけではなく、既存インフラを長く安全に使い続けるための補修・補強需要が拡大しており、ショーボンドHDの事業領域はまさにレジリエンス時代の中心に位置している。
日本では1960年代から1970年代にかけて、多くの道路、橋梁、トンネル、上下水道などが整備された。これらのインフラは現在、更新時期を迎えている。特に橋梁については、建設後50年以上が経過したものが増加しており、定期的な点検や補修を行わなければ、安全性を維持することが難しくなる。すべてを新しく造り替えるには莫大な費用と時間が必要であり、限られた財源のなかで既存インフラを延命する「予防保全」の重要性が高まっている。
ショーボンドHDは、こうした社会課題に対応する専門企業である。同社の強みは、橋梁やコンクリート構造物の補修・補強に関する高度な技術力だ。ひび割れ補修、耐震補強、コンクリートの劣化対策など、構造物の寿命を延ばす技術を数多く蓄積している。災害が発生した際にも、道路や橋が機能し続けることは、人命救助や物資輸送、復旧活動に直結する。つまり、同社の事業は単なる建設工事ではなく、社会インフラのレジリエンスを高める役割を担っている。
特に日本では、南海トラフ巨大地震や首都直下地震への備えが重要課題となっている。大規模災害では、建物の被害だけでなく、道路や橋梁の寸断が復旧を遅らせる大きな要因となる。そのため、災害が起きる前からインフラを強くしておく「事前防災」の考え方が広がっている。ショーボンドHDのような補修・補強技術を持つ企業は、この流れの恩恵を受ける可能性が高い。
また、同社にとって追い風となるのが、政府による国土強靱化政策である。日本政府は近年、激甚化する自然災害への対応として、防災・減災、老朽インフラ対策への投資を継続している。公共事業は景気変動の影響を受ける面もあるものの、安全保障や防災という観点から一定の需要が見込まれる分野である。特にインフラ補修は、人口減少社会においても必要性が高い「維持更新型」の市場であり、長期的な成長余地がある。
投資家から見たショーボンドHDの魅力は、単なる建設需要ではなく、「社会に不可欠なインフラを守る」という明確なテーマ性にある。新しい道路や橋を大量に建設する時代から、既存の社会資本を効率的に維持する時代へと移行するなかで、同社は時代の変化に合ったビジネスモデルを持っている。
一方で、注意すべき点もある。公共工事への依存度が高いため、政府のインフラ投資政策や自治体の予算動向の影響を受ける。また、建設業界全体の課題である人手不足や資材価格上昇も無視できない。しかし、高度な補修技術や専門人材を持つ企業は参入障壁が高く、価格競争に陥りにくいという特徴がある。
今後、レジリエンスという考え方は、災害対策だけでなく、社会全体の持続可能性を考えるうえで重要なテーマになっていくだろう。気候変動による豪雨災害の増加、巨大地震への備え、老朽インフラ問題など、日本が抱える課題は多い。そのなかで、ショーボンドHDは「壊れてから直す」のではなく、「壊れにくく、長く使える社会インフラをつくる」という役割を担っている。
レジリエンス投資とは、未来のリスクに備える投資でもある。目立つ成長産業とは異なるが、社会が安全に機能するためには欠かせない存在だ。ショーボンドHDは、インフラを守る技術力を武器に、災害に強い国づくりを支える“見えないインフラ企業”として、今後も注目される存在と言えるだろう。
災害情報を瞬時につなぐ防災DX企業 ドーン(2303)が支える「情報のレジリエンス」
近年、企業や社会を取り巻くリスクは大きく変化している。かつて災害対策といえば、堤防整備や耐震補強、避難施設の確保といった「ハード面」の強化が中心だった。しかし、地震、豪雨、台風、土砂災害などが頻発し、さらにサイバー攻撃やシステム障害など新たなリスクも増えるなかで重要になっているのが「レジリエンス」という考え方である。レジリエンスとは、危機に直面しても機能を維持し、被害を最小限に抑え、早期に回復する力を意味する。
このレジリエンス時代において、注目される分野の一つが「防災DX」である。災害発生時には、正確な情報をいかに早く収集し、共有し、判断につなげるかが人命や復旧スピードを左右する。そこで存在感を高めている企業が、ドーン(2303)である。同社は地理情報システム(GIS)を活用した防災・危機管理サービスを展開し、自治体や公共機関の災害対応を支える“情報インフラ企業”として成長を続けている。
ドーンの代表的なサービスの一つが、クラウド型GISを活用した防災情報システムである。GISとは、地図上にさまざまな情報を重ね合わせて管理・分析する技術だ。災害時には、避難所の位置、河川の状況、被害発生地点、通行規制情報など、多くの情報を一元的に把握する必要がある。従来は紙の地図や個別システムに分散していた情報を、リアルタイムで共有できる仕組みは、自治体の危機対応能力を大きく高める。
災害対応において最も重要なのは「初動」である。大規模地震や集中豪雨が発生した場合、数時間の判断の遅れが被害拡大につながる可能性がある。どこで被害が発生しているのか、どの道路が使えるのか、どこに避難が必要なのかを迅速に把握することが不可欠だ。ドーンが提供する防災システムは、こうした情報共有を支えることで、社会のレジリエンス向上に貢献している。
日本では近年、豪雨災害の激甚化が大きな課題となっている。線状降水帯による大雨や河川氾濫、土砂災害などが全国各地で発生し、自治体にはより高度な防災対応が求められている。また、人口減少によって自治体職員の数が限られるなか、少ない人員でも効率的に災害対応を行うためには、デジタル技術の活用が欠かせない。防災DXは単なるIT化ではなく、行政サービスの持続性を高める「行政レジリエンス」の強化につながっている。
ドーンの強みは、長年にわたり自治体向けシステムを手掛けてきた経験にある。防災分野では、単にシステムを提供するだけではなく、現場の運用を理解した設計が求められる。災害発生時に実際に使えるシステムでなければ意味がなく、自治体の業務フローや地域特性への対応力が重要になる。同社はGIS技術を基盤に、消防・防災分野など公共領域で実績を積み重ねてきた。
また、ドーンは消防分野との関わりも深い。消防・救急活動では、位置情報や現場情報を迅速に共有することが重要であり、地理情報技術との親和性が高い。119番通報から現場到着までの時間短縮や、効率的な部隊運用など、情報技術による消防力向上にもつながる。これはまさに、人命を守るためのレジリエンス強化と言える。
投資テーマとして見た場合、防災DX市場は今後も拡大余地がある。政府はデジタル田園都市国家構想や行政DXを推進しており、自治体システムの高度化は長期的な政策テーマとなっている。特に防災は住民の生命や安全に直結する分野であり、景気変動の影響を受けにくい公共投資領域でもある。
一方で、ドーンのような小型成長企業への投資では注意点もある。自治体向け事業は導入までに時間がかかるケースがあり、案件獲得のタイミングによって業績が変動する可能性がある。また、大手IT企業やシステム会社との競争も存在する。しかし、防災という専門性の高い領域で実績を持つことは大きな強みであり、今後の市場拡大による成長機会は期待できる。
これからの社会では、「災害をなくす」ことは難しい。しかし、被害を小さくし、早く立ち直ることは可能である。そのためには、橋や道路などの物理的なインフラだけでなく、情報を正しく届けるデジタルインフラの強化が不可欠だ。
ショーボンドHDが「物理的なインフラのレジリエンス」を支える企業だとすれば、ドーンは「情報のレジリエンス」を支える企業と言える。災害大国・日本において、正確な情報共有は社会を守る新たな基盤となる。防災とデジタル技術が融合する時代において、ドーンは目立たないながらも、社会の安全網を支える重要な存在として注目される企業である。
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サイバー攻撃時代の「デジタル防災」企業 トレンドマイクロ(4704)が支える企業レジリエンス
自然災害、感染症、地政学リスク、サプライチェーン寸断など、企業を取り巻くリスクは年々複雑化している。かつて「レジリエンス」といえば、地震や豪雨など物理的な災害への備えを指すことが多かった。しかしデジタル社会が進展した現在、もう一つ重要な脅威が存在する。それがサイバー攻撃である。企業の情報システムが停止すれば、生産活動、物流、金融取引、行政サービスなど社会全体に影響が及ぶ可能性がある。こうした時代において、サイバーセキュリティは新たな「社会インフラ」となっており、デジタル面でのレジリエンス強化が不可欠になっている。
その代表的な企業が、トレンドマイクロ(4704)である。同社は世界有数のサイバーセキュリティ企業であり、ウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」シリーズで一般にも広く知られている。一方で、現在の事業領域は個人向けセキュリティだけにとどまらず、企業や政府機関向けのクラウドセキュリティ、ネットワーク防御、サイバー攻撃対策などへ大きく広がっている。デジタル社会を守る「サイバー版の防災企業」として、トレンドマイクロはレジリエンスという投資テーマとの関連性を高めている。
現代企業にとって、サイバー攻撃は単なる情報漏えい問題ではない。ランサムウェアによるシステム停止、重要データの暗号化、工場や物流網への侵入など、事業継続そのものを脅かすリスクになっている。実際に国内外で、病院、自治体、製造業、インフラ企業などがサイバー攻撃の被害を受け、業務停止に追い込まれる事例が発生している。
こうした状況では、「攻撃を完全に防ぐ」という発想だけでは不十分である。重要なのは、攻撃を受ける可能性を前提として、早期に検知し、被害を抑え、迅速に復旧できる体制を整えることである。これはまさにレジリエンスの考え方であり、トレンドマイクロが提供するセキュリティサービスの核心でもある。
同社の強みは、長年にわたり蓄積してきた膨大な脅威情報(スレットインテリジェンス)にある。サイバー攻撃は日々進化しており、新しいマルウェアや攻撃手法が次々と登場する。そのため、過去の攻撃パターンを防ぐだけでは十分ではなく、世界中で発生している脅威を分析し、先回りして対策する能力が重要になる。トレンドマイクロはグローバルな研究体制を活用し、新たな脅威への対応力を高めている。
また、企業のIT環境がクラウド中心へ移行していることも、同社にとって大きな事業機会となっている。従来のセキュリティ対策は、社内ネットワークの外側に防御壁を築く考え方が中心だった。しかし、クラウドサービス、テレワーク、IoT機器の普及によって、守るべき範囲は大きく拡大している。そこで重要になるのが、クラウド環境全体を監視し、不正アクセスや異常行動を検知する仕組みである。
企業にとって情報システムは、電力や水道と同じような基盤になりつつある。システムが止まれば、売上機会の損失だけでなく、顧客や社会からの信用低下にもつながる。そのため、サイバーセキュリティへの投資は「コスト」ではなく、事業継続のための「保険」として位置づけられるようになっている。
特に近年は、政府によるサイバー安全保障政策の強化も追い風となっている。重要インフラ防護、企業のセキュリティ対策強化、サプライチェーン全体でのリスク管理などが求められるなか、大企業だけでなく中堅・中小企業にもセキュリティ投資の必要性が高まっている。サイバー攻撃は企業規模を問わず発生するため、市場全体の拡大余地は大きい。
投資家から見たトレンドマイクロの魅力は、景気循環に左右されにくい「必要不可欠な需要」を持つ点にある。企業は景気が悪化しても、事業を継続するために一定のセキュリティ投資を続ける必要がある。また、デジタル化が進むほど守る対象は増え、セキュリティ需要は中長期的に拡大しやすい。
一方で、競争環境は厳しい。世界では大手IT企業やセキュリティ専業企業が多数存在し、技術革新のスピードも速い。人工知能(AI)を活用した攻撃手法が登場する一方で、防御側もAIによる脅威検知や自動対応を進化させる必要がある。今後は、最新技術への継続的な投資と高度な人材確保が競争力を左右するだろう。
しかし、デジタル社会が拡大するほど、サイバー攻撃への備えは社会全体の重要課題になる。道路や橋を補修して災害に備えるように、情報システムを守り、迅速に復旧できる仕組みを整えることも現代社会に不可欠なインフラ整備である。
ショーボンドHDが「物理的なインフラのレジリエンス」を支え、ドーンが「災害情報のレジリエンス」を支える企業だとすれば、トレンドマイクロは「デジタル社会のレジリエンス」を担う存在と言える。災害大国である日本だけでなく、世界全体でサイバーリスクが高まるなか、企業活動を守るセキュリティ技術の重要性はさらに高まっていくだろう。
レジリエンスというテーマは、単に災害から守ることではなく、変化するリスクに対応し、社会や企業が継続して成長する力を意味する。トレンドマイクロは、その中でも目に見えない脅威から企業活動を守る「デジタル時代の防波堤」として、今後も重要な役割を担っていく企業である。
災害復旧から未来の街づくりまで コマツ(6301)が支える「世界のレジリエンス」
近年、世界では自然災害の激甚化や地政学リスク、インフラ老朽化といったさまざまな課題が浮上している。地震、洪水、山火事、土砂災害などが発生した際、社会を早期に立て直すためには、道路や建物を復旧し、物流や生活基盤を回復させる力が不可欠である。こうした「危機から立ち直る力」を意味する言葉が「レジリエンス」であり、防災・減災だけでなく、社会インフラや産業活動を維持するための重要な概念となっている。
このレジリエンスという視点で注目される企業の一つが、コマツ(6301)である。同社は世界有数の建設機械メーカーとして知られ、油圧ショベルやブルドーザー、ダンプトラックなどを世界各地に提供している。しかし、コマツの役割は単に建設現場で使われる機械を販売することにとどまらない。災害発生後の復旧活動、インフラ再建、鉱山やエネルギー開発など、社会の基盤を支える「現場力」を提供する企業として、世界のレジリエンス向上に貢献している。
災害が発生した際、最初に必要となるのは迅速な復旧作業である。地震で道路が寸断された場合、救援物資を届けるためには瓦礫の撤去や道路啓開が必要になる。豪雨による土砂災害では、土砂を取り除き、河川や道路を復旧しなければならない。その現場で活躍するのが建設機械である。人の力だけでは対応できない大規模な被害に対して、油圧ショベルやブルドーザーは復旧のスピードを大きく左右する存在となる。
コマツの建設機械は、日本国内だけでなく世界中の災害現場で利用されている。日本では地震や台風への対応、海外では洪水や森林火災後の復旧など、地域ごとに異なる災害リスクに対応している。災害発生後に必要となる「復旧インフラ」を提供するという意味で、コマツはレジリエンス関連企業の代表格と言える。
また、同社の強みは単なる機械性能だけではない。コマツは建設機械のデジタル化にも積極的に取り組んできた。代表的な取り組みが、ICT建機やスマートコンストラクションである。GPSやセンサー、通信技術を活用し、建設現場の作業効率や安全性を高める仕組みだ。
災害復旧の現場では、限られた時間と人員で効率的に作業する必要がある。現場の状況を正確に把握し、機械を最適に配置し、作業進捗を管理することは、復旧スピード向上につながる。デジタル技術を活用した建設機械は、単なる「掘る・運ぶための道具」から、社会復旧を支える高度なソリューションへと進化している。
さらに、レジリエンスという観点では、老朽化したインフラの維持更新も重要なテーマである。世界各国では道路、橋梁、ダムなどの社会資本が老朽化しており、補修や更新への需要が高まっている。新興国では経済成長に伴うインフラ整備、先進国では既存設備の維持管理が必要となる。建設機械への需要は、単なる景気循環ではなく、世界的な社会課題によって支えられる側面を持っている。
特に近年は、気候変動による自然災害リスクの高まりが指摘されている。異常気象による大規模洪水や山火事などは、世界各地で発生している。こうした災害への対応では、発生後の復旧能力だけでなく、被害を受けても社会機能を早期に回復できる仕組みづくりが重要になる。コマツの製品や技術は、まさにその「回復力」を支える存在である。
投資家から見たコマツの魅力は、世界規模で展開する事業基盤と、高い技術力にある。同社は日本企業でありながら海外売上比率が高く、北米、欧州、アジアなど幅広い市場で事業を展開している。世界各地でインフラ投資や資源開発が続くなか、建設機械需要を取り込む力を持っている。
一方で、建設機械業界は景気や資源価格の影響を受けやすいという特徴がある。鉱山向け需要は資源価格の変動に左右され、建設投資も景気後退時には減速する可能性がある。また、電動化や自動化など技術革新への対応も求められている。しかし、こうした変化に対して、コマツはICT化や環境対応技術を進め、新たな成長領域を開拓している。
レジリエンスというテーマは、これまで防災設備やインフラ補修企業に注目が集まりやすかった。しかし、実際に災害から社会を立て直すには、現場で動く機械と、それを操る技術が必要である。道路を復旧し、瓦礫を撤去し、新たな街を再建する。その過程で建設機械は欠かせない存在だ。
ショーボンドHDが「壊れたインフラを守り直す企業」、ドーンが「災害情報をつなぐ企業」、トレンドマイクロが「デジタル空間を守る企業」だとすれば、コマツは「現場から社会を復旧させる企業」と言える。
災害が避けられない時代において重要なのは、被害をゼロにすることだけではない。被害を受けても、いかに早く立ち上がるかである。世界各地の復旧現場で稼働するコマツの建設機械は、まさに社会の回復力を象徴する存在であり、レジリエンス時代における重要なインフラ企業として今後も注目されるだろう。
まとめ
レジリエンスとは、単に災害から守ることではなく、危機が発生しても企業や社会が機能を維持し、素早く立ち直るための力である。自然災害への対応だけでなく、サイバー攻撃、感染症、気候変動、物流リスクなど、現代社会が直面するさまざまな脅威に対応するための重要な概念となっている。
ショーボンドHDは老朽化したインフラを補修し、災害に強い社会基盤を支える。ドーンは防災DXによって情報面から危機対応力を高める。トレンドマイクロはデジタル空間の安全を守り、企業の事業継続を支援する。コマツは災害後の復旧現場で社会の再生を支える。それぞれ事業領域は異なるものの、共通しているのは「社会が困難な状況から立ち上がる力」を提供している点である。
今後、気候変動による自然災害の激甚化や、デジタル依存の高まりによるサイバーリスクの増加が予想されるなか、レジリエンスへの投資は一時的な防災需要ではなく、長期的な社会課題解決につながるテーマになると考えられる。
災害や危機を完全に避けることは難しい。しかし、被害を抑え、早期に復旧し、再び成長軌道へ戻る力を高めることは可能である。これからの時代、社会を支える「守る力」と「回復する力」を持つレジリエンス関連企業は、安心・安全な未来をつくる重要な存在として、投資家からも継続的に注目されるだろう。
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