病院からスマホへ――オンライン診療が変える日本の医療DX最前線

医療は「通う」から「つながる」時代へ

病院で診察を受けることは、長い間「病院へ行くこと」と同義だった。受付を済ませ、待合室で順番を待ち、診察を受けた後は処方箋を持って薬局へ向かう――。こうした一連の流れは、日本の医療制度の中で当たり前の光景として定着してきた。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、その常識は大きく揺らいだ。感染リスクを避けながら医療を受ける手段として普及したオンライン診療は、コロナ禍が収束した現在でも、慢性疾患の再診や女性医療、在宅医療などを中心に着実に利用が広がっている。さらに政府は医療DXを重要政策に掲げ、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなど、医療全体のデジタル化を進めている。

こうした変化を支えているのは、単に「オンライン診療アプリ」を提供する企業ではない。診療予約から電子カルテ、医師向け情報提供、服薬指導、薬の配送まで、それぞれ異なる領域で医療のデジタル化を推進する企業群である。

オンライン診療プラットフォーム「CLINICS」を展開するメドレー、診察から薬の受け取りまでを一気通貫で支える「SOKUYAKU」のジェイフロンティア、そして30万人を超える医師ネットワークを基盤に医療DXを推進するエムスリーの3社を取り上げる。それぞれ異なるアプローチから、日本の医療が「病院へ通う医療」から「デジタルでつながる医療」へと進化する姿を見ていきたい。

証券コード企業名主なサービス・事業オンライン診療との関連性
4480メドレーCLINICS(オンライン診療・電子カルテ・予約・決済)★★★★★ 国内有数のオンライン診療プラットフォーム
2413エムスリー医療DX、クリニック支援、医師向けプラットフォーム★★★★★ 医療DXの最大手。オンライン診療支援も展開
2934ジェイフロンティアSOKUYAKU(オンライン診療・服薬指導・処方薬配送)★★★★★ オンライン診療・服薬指導をワンストップで提供
6034MRTポケットドクター、遠隔医療支援、医師マッチング★★★★☆ 自治体・企業向け遠隔医療にも強み
9438エムティーアイルナルナ オンライン診療★★★★☆ 女性ヘルスケア・産婦人科領域に特化
3694オプティム遠隔診療支援、AI・IoT医療ソリューション★★★☆☆ 遠隔医療を支える技術・システムを提供
6095メドピア医師向けプラットフォーム、医療DX★★★☆☆ 医療DX関連として注目
3902メディカル・データ・ビジョン病院向けDX、PHR、オンライン診療システム★★★☆☆ 医療データ・病院DXを推進
3671ソフトマックス電子カルテ・病院情報システム★★☆☆☆ オンライン診療の基盤システムを提供
8129東邦ホールディングス医薬品流通、オンライン服薬指導支援★★☆☆☆ オンライン診療後の医薬品供給を支える

オンライン診療の現在地――「コロナの特例」から医療インフラへ、次の成長段階を迎えた日本の医療DX

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行は、日本の医療制度を大きく変えた。その象徴の一つが「オンライン診療」である。それまで日本では、原則として対面診療が基本であり、オンライン診療は離島やへき地など限定的な利用にとどまっていた。しかし感染拡大をきっかけに、時限的・特例的な措置として初診からのオンライン診療が認められ、多くの国民が初めて「病院へ行かずに診察を受ける」という体験をした。

あれから数年が経過した現在、オンライン診療は一過性のブームではなく、制度の中に組み込まれた医療サービスへと変わりつつある。そして2026年には、オンライン診療は医療法上でも明確に位置付けられ、制度面でも新たな段階へ進んだ。

オンライン診療を取り巻く環境は今、どこまで進化しているのだろうか。

まず理解しておきたいのは、「オンライン診療」と「オンライン健康相談」は全く異なるものであるという点だ。オンライン診療では医師が患者を診察し、保険診療であれば診療報酬に基づいて診療を行う。必要に応じて薬を処方し、オンライン服薬指導や自宅配送までつながる。一方、健康相談は医療行為ではなく、一般的なアドバイスにとどまる。

つまりオンライン診療とは、「病院がスマートフォンの中に入る」仕組みなのである。

もっとも、オンライン診療は万能ではない。

診察では触診や聴診、画像検査、採血などができないため、急性疾患や重症患者には適さない。骨折や腹痛、呼吸困難などでは、当然ながら対面診療が必要になる。

逆に相性が良いのは、慢性疾患や定期受診だ。

高血圧、糖尿病、高脂血症、花粉症、睡眠時無呼吸症候群、アレルギー、皮膚疾患などでは、病状が安定していればオンライン診療でも十分に対応できるケースが多い。

また精神科や心療内科でも再診を中心に利用が広がっているほか、女性医療では月経困難症や低用量ピル、更年期障害などの診療でも活用されている。

実際、エムティーアイの「ルナルナ オンライン診療」は、産婦人科領域を中心に利用を拡大してきた。

市場を牽引しているのは、医療DX企業のメドレーである。同社の「CLINICS」はオンライン診療だけではない。予約、問診、決済、電子カルテ、オンライン服薬指導までを一つのシステムで提供し、多くの医療機関が導入している。

つまり、オンライン診療とは単なるビデオ通話ではなく、「医療業務全体のデジタル化」の入り口なのである。

もう一つの代表企業がエムスリーだ。

同社は国内最大級の医師会員基盤を持ち、病院やクリニック向けDXサービスを展開している。オンライン診療専業企業ではないものの、医療情報プラットフォームとしてオンライン診療を支える存在感は大きい。

またジェイフロンティアの「SOKUYAKU」は、診察から服薬指導、薬の配送までワンストップで提供するサービスとして成長している。

患者から見れば、「診察を受ける」だけではなく、「薬が届くところまで」がオンライン化されて初めて利便性が完成する。この発想が近年のサービス競争の中心になっている。

一方で、制度も大きく変わっている。

2026年度の診療報酬改定では、オンライン診療そのものだけでなく、医療DXとの連携や在宅医療での活用がより重視される方向へ制度が見直された。また、オンライン診療は2026年4月から医療法にも位置付けられ、これまで「ガイドライン」で運用されていたものが、法律上の制度として整理されている。(GemMed | データが拓く新時代医療)

特に注目されているのが「D to P with N」という仕組みである。

これは医師が患者と直接つながるだけでなく、患者のそばに訪問看護師などが同席し、離れた場所にいる医師がオンラインで診療を行う形態だ。

高齢化が進む日本では、在宅医療の需要は今後さらに増えると予想されている。しかし医師不足は深刻であり、すべての患者宅へ頻繁に訪問することは現実的ではない。

そこで、看護師が患者宅へ訪問し、医師はオンラインで診察を行う。この仕組みは医師不足への対応だけでなく、地方医療を支える新しいモデルとして期待されている。2026年度改定では、こうした連携の評価も拡充された。

もちろん課題も残る。

最も大きいのはデジタル格差である。

高齢者ほどスマートフォン操作に不慣れなケースが多く、通信環境も地域差がある。また診療内容によってはオンラインだけでは判断できず、結局は来院が必要になることも少なくない。

さらに、医療機関側にも課題がある。

電子カルテ、予約システム、オンライン資格確認、電子処方箋など複数のシステムを連携させる必要があり、初期投資や運用負担は決して小さくない。

それでも方向性は明確だ。

政府は医療DXを重要政策に位置付け、マイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどとの連携を進めている。オンライン診療は単独のサービスではなく、「デジタル医療」の一部として発展していく可能性が高い。(厚生労働省)

投資の視点で見ると、この分野は単に「オンライン診療企業」を探すだけでは不十分だ。

メドレーやジェイフロンティアのようなプラットフォーム企業だけでなく、エムスリーのような医療DX企業、東邦ホールディングスのような医薬品流通企業、さらには電子カルテや病院システムを提供する企業まで含めて、一つのエコシステムとして捉える必要がある。

オンライン診療が普及すればするほど、予約システム、決済、電子カルテ、電子処方箋、薬局、配送、在宅医療、医療データ活用など、多くの関連市場が同時に成長するからだ。

コロナ禍では「感染を避けるための代替手段」と見られていたオンライン診療は、いまやその役割を終えつつある。現在のテーマは、「医療を効率化する手段」であり、「高齢社会を支える社会インフラ」である。

病院へ行かなくても診察が受けられる時代は、もはや未来ではない。その先にあるのは、医療そのものがデジタル技術と融合し、一人ひとりに最適化された医療サービスへ進化していく世界である。オンライン診療は、その変革の入り口として、これからも日本の医療と医療関連企業の姿を大きく変えていくだろう。

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CLINICSで医療は病院からスマホへ――メドレーが切り開くオンライン診療と医療DXの未来

病院へ行くために仕事を休み、待合室で長時間待ち、数分の診察を受けて薬局へ向かう――。日本では長年、それが医療を受ける当たり前の姿だった。しかしスマートフォン一つで予約から診察、決済、服薬指導まで完結する世界が現実になりつつある。その変化を牽引している企業の一つが、東証プライム市場に上場するメドレー(4480)である。

同社は医療・介護・人材の三つの分野で事業を展開する医療DX企業だが、その中でも一般消費者に最も知られているサービスがオンライン診療プラットフォーム「CLINICS(クリニクス)」である。

オンライン診療という言葉はコロナ禍で一気に普及した。しかしメドレーは、それ以前から「医療の非効率をITで解決する」という理念の下でサービスを開発してきた。つまり、コロナによって誕生した企業ではなく、社会の変化によって追い風を受けた企業なのである。

CLINICSの特徴は、単なるビデオ通話システムではないことにある。

患者はスマートフォンから診療予約を行い、事前問診に回答し、予約時間になるとビデオ通話で医師の診察を受ける。診察後はクレジットカードなどで決済し、処方箋は薬局へ送られる。対応する薬局であればオンライン服薬指導を受け、自宅へ薬を配送してもらうこともできる。

つまり、予約、診察、決済、薬の受け取りまでを一つのプラットフォーム上で完結できる点がCLINICS最大の強みだ。

さらに医療機関向けには電子カルテ「CLINICSカルテ」、予約管理、患者管理、問診、経営支援なども提供している。患者向けアプリだけではなく、病院側の業務効率化まで含めた総合的な医療DXサービスへ進化しているのである。

日本では長らくオンライン診療の普及は進まなかった。

理由は制度面にあった。かつては初診でのオンライン診療が厳しく制限され、対象患者も限定されていたためである。

転機となったのは2020年の新型コロナウイルス感染症の流行だった。

感染拡大を防ぐため、厚生労働省は特例措置として初診からのオンライン診療を認め、多くの医療機関が急速に導入を始めた。その後、特例は終了したものの、2022年には恒久制度として初診オンライン診療が制度化され、一定の要件の下で継続利用が可能となった。

そして2026年には、オンライン診療は医療法にも位置付けられ、従来ガイドライン中心だった運用から法制度上の医療サービスとして明確に整理された。これはオンライン診療が「例外的な診療」ではなく、日本の医療制度の一部として定着し始めたことを意味している。

こうした制度整備は、メドレーのような医療DX企業にとって追い風となっている。

もっとも、オンライン診療には限界もある。

触診、聴診、採血、レントゲン、CT、MRIなどは当然ながら実施できない。そのため急性腹症や外傷、重症感染症などでは対面診療が不可欠である。

一方で、高血圧、糖尿病、脂質異常症、花粉症、睡眠時無呼吸症候群、アレルギー、慢性的な皮膚疾患など、状態が安定している慢性疾患との相性は非常に良い。

特に再診では、「薬をもらうためだけに半日つぶれる」といった患者の負担を大きく減らせる。

医療機関側にもメリットは大きい。

予約管理の効率化、受付業務の削減、会計処理の自動化、電話対応の減少など、業務負担を軽減できる。また電子カルテと連携することで診療情報の一元管理も可能になる。

日本では医師不足が深刻化している。

厚生労働省の推計では、地域による医師偏在は今後も続くとされている。都市部では医療機関が多い一方、地方や離島では医師不足が慢性化している。

そこで期待されているのがオンライン診療である。

さらに近年注目されるのが「D to P with N」という仕組みだ。

これは医師(Doctor)がオンラインで診療を行い、患者(Patient)のそばには訪問看護師(Nurse)が付き添うモデルである。

看護師が血圧測定や身体状況の確認を行い、医師はオンラインで診察することで、地方医療や在宅医療の質を維持しながら医師不足に対応しようという考え方だ。

メドレーが目指しているのは、単にオンライン診療を普及させることではない。

医療全体のデジタル化である。

診療予約、電子カルテ、オンライン診療、オンライン服薬指導、電子処方箋、決済、診療データ管理――これらを一つのシステムでつなぐことで、医療機関の業務を効率化し、患者の利便性を高めようとしている。

近年は政府も医療DXを重点政策として掲げている。

マイナ保険証の普及、電子処方箋、全国医療情報プラットフォーム、電子カルテ情報共有サービスなど、医療情報をデジタルで連携する仕組みが整備されつつある。

こうした流れの中では、オンライン診療だけを提供する企業よりも、医療全体のデジタル基盤を提供できる企業の存在感が増していく可能性が高い。

投資家の視点でも、メドレーを単なる「オンライン診療銘柄」と捉えるのは適切ではない。

同社は人材採用サービス「ジョブメドレー」が収益の柱となっており、その利益を活用しながら医療DX分野への投資を進めてきた。収益性の高い人材事業と、成長市場である医療DX事業を組み合わせた事業構造は、同社の大きな特徴である。

医療業界は規制が多く、新しいサービスが普及するまで時間がかかる。しかし一度制度に組み込まれると、長期にわたって利用される傾向が強い。オンライン診療もまさにその段階へ入りつつある。

「病院へ行く」という常識は、これから徐々に変わっていくかもしれない。

もちろん、すべての診療がスマートフォンで済むわけではない。対面医療が必要な場面は今後も数多く残るだろう。それでも、慢性疾患の再診や在宅医療、地方医療、働く世代の受診機会の拡大といった分野では、オンライン診療はすでに不可欠なインフラになり始めている。

メドレーのCLINICSが目指しているのは、「病院をなくすこと」ではない。「必要なときには病院へ行き、行かなくてもよい診療はスマートフォンで受ける」という、新しい医療体験の実現である。

医療が病院という場所から、人々の生活の中へと溶け込んでいく――。CLINICSは、その変化を象徴するサービスとして、日本の医療DXの未来を映し出している。

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SOKUYAKUが変える診察から薬の受け取りまで――ジェイフロンティアが描く「医療のラストワンマイル」戦略

病院で診察を受けたあと、処方箋を持って薬局へ向かい、順番を待って薬を受け取る。この一連の流れは、日本では長年変わることのない医療の風景だった。しかし近年、この常識が大きく変わり始めている。

スマートフォンで診察を受け、そのままオンラインで薬剤師から服薬指導を受け、自宅やコンビニで薬を受け取る――。こうした新しい医療体験を実現しているサービスの一つが、東証グロース市場に上場するジェイフロンティア(2934)の「SOKUYAKU(ソクヤク)」である。

オンライン診療というと、診察をビデオ通話で行うサービスを思い浮かべる人が多い。しかしSOKUYAKUが目指しているのは、診察だけではない。診療予約からオンライン診療、服薬指導、処方薬の配送までを一つのプラットフォームで完結させる「医療のラストワンマイル」を担うことにある。

ジェイフロンティアはもともとヘルスケア商品のECやデジタルマーケティングを手掛けてきた企業である。健康食品や医薬品の販売を通じて培ったデジタルマーケティングのノウハウを生かし、「医療をもっと身近にする」という発想から2021年にSOKUYAKUを本格展開した。

その後、新型コロナウイルス感染症の流行がオンライン診療市場を大きく押し上げた。

感染リスクを避けるため、多くの医療機関がオンライン診療を導入し、患者側もスマートフォンで受診することへの心理的ハードルが下がった。一方で、コロナ禍が落ち着いた後は「オンライン診療は一時的なブームで終わるのではないか」という見方も少なくなかった。

しかし現実は異なっている。

現在のオンライン診療市場は、「感染対策」から「利便性の向上」へと役割を変えながら成長を続けている。慢性疾患の定期受診、花粉症、皮膚科、生活習慣病、女性医療など、対面診療が必ずしも必要ではないケースでは、オンライン診療を選ぶ患者が着実に増えている。政府も医療DXを重要政策に位置付け、制度整備を進めていることが、その流れを後押ししている。こうした環境の中で、SOKUYAKUが特徴としているのは「診療後」の体験まで設計している点だ。

オンライン診療サービスは数多く存在するが、患者にとって重要なのは診察を受けることだけではない。薬を受け取り、適切に服用するところまでが医療である。

SOKUYAKUでは、医師によるオンライン診療の後、薬剤師によるオンライン服薬指導を受け、処方薬を自宅へ配送してもらえる。対応エリアや提携先によっては、最短当日に薬を受け取れる仕組みも整備されている。さらに、お薬手帳機能や、かかりつけ医・かかりつけ薬局の登録機能なども備え、日常的な医療管理を支援している。

これは単なるオンライン診療アプリではなく、「受診から服薬まで」をデジタルでつなぐ医療プラットフォームと言える。

近年はサービスの幅も広がっている。

2026年には、患者が希望する時間帯から受診可能なクリニックを検索・予約できる機能を追加し、利便性を向上させた。また、調剤報酬改定に対応した対面服薬指導機能を実装するなど、制度変更に合わせてサービスを進化させている。さらに、子育て世帯向けの夜間オンライン診療支援や、企業・自治体との連携、防災医療ソリューションなど、利用シーンを広げる取り組みも進めている。

提携ネットワークも拡大している。2026年時点では、提携するクリニック、調剤薬局、ドラッグストアは合計2万1,000店舗超に達しており、サービス提供基盤は全国規模へと広がっている。

もっとも、オンライン診療には限界もある。

聴診、触診、血液検査、画像診断などはオンラインでは実施できない。そのため、急性疾患や重症患者、外科的処置が必要なケースでは対面診療が不可欠である。

つまり、オンライン診療は病院を代替するものではなく、病院へ行かなくても済む患者を増やすことで医療資源を効率的に配分する仕組みなのである。

この考え方は、日本の医療制度とも一致している。

高齢化が進み、医療従事者不足が深刻になる中、限られた医療資源を有効活用することは大きな課題だ。通院時間や待ち時間を減らし、医療機関の業務負担を軽減できるオンライン診療は、その解決策の一つとして期待されている。

投資家の視点から見ても、ジェイフロンティアは単なる「オンライン診療企業」ではない。

同社はヘルスケア商品のEC、デジタルマーケティング、医療DXを組み合わせた事業ポートフォリオを持ち、SOKUYAKUを核に「ヘルスケア経済圏」の構築を掲げている。オンライン診療の利用者増加だけでなく、法人向け導入や継続課金型サービスの拡大にも力を入れており、SOKUYAKU事業の収益性改善も経営課題として取り組んでいる。

今後は電子処方箋、マイナ保険証との連携、電子カルテ情報共有など、国が進める医療DX政策との接続も重要になる。実際、SOKUYAKUでは電子処方箋やマイナ保険証連携への対応を進めるなど、制度のデジタル化に合わせて機能を拡充している。

医療のデジタル化というと、多くの人は「オンライン診療」に目が向きがちだ。しかし患者にとって本当に価値があるのは、「診察がオンラインになること」ではなく、「受診から薬の受け取りまでがストレスなく完結すること」である。

SOKUYAKUは、その一連の体験を一つのサービスでつなぐことを目指している。医療の世界では、診察はゴールではない。薬を受け取り、治療を続け、健康を維持して初めて医療の価値が生まれる。

診察だけをオンライン化する時代から、医療体験全体をデジタルで再設計する時代へ――。ジェイフロンティアのSOKUYAKUは、その変化を象徴するサービスとして、日本の医療DXの次のステージを切り開こうとしている。

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30万人超の医師ネットワークが支える医療DX――エムスリーが変える日本の医療情報インフラ

「日本の医師のほとんどが利用するウェブサイトを運営する会社」と聞いて、多くの人はその社名を思い浮かべないかもしれない。しかし、医療関係者にとってエムスリー(2413)は、日常業務に欠かせない存在となっている。

東証プライム市場に上場するエムスリーは、医師向け情報サイト「m3.com」を中核に、医療情報提供、臨床研究支援、製薬会社向けマーケティング、医療DX、治験支援、病院経営支援など幅広い事業を展開する日本最大級の医療IT企業である。2026年時点では、日本の医師約34万人のうち30万人を超える医師がm3.comに登録しており、国内医師の約9割をカバーするネットワークを築いている。この圧倒的な会員基盤こそが、同社最大の競争力と言える。

エムスリーが設立されたのは2000年である。当時、医療情報は学会や専門誌、製薬会社のMR(医薬情報担当者)を通じて医師に届けられるのが一般的だった。しかしインターネットの普及により、医師自身が必要な情報をオンラインで取得できる環境が整い始める。エムスリーはこの変化をいち早く捉え、医師専用の情報プラットフォームを構築した。

現在のm3.comでは、医学ニュースや論文、学会情報だけでなく、症例検討、動画コンテンツ、求人情報、教育コンテンツ、医師同士の情報交換など、多様なサービスが提供されている。医師は日常診療の合間に必要な情報へ迅速にアクセスでき、製薬企業や医療機器メーカーは、適切な情報を必要とする医師へ効率的に届けられる。医療情報流通の仕組みそのものをデジタル化した点が、エムスリーの原点である。

こうした医師ネットワークは、その後の事業拡大にも大きく生かされた。

例えば製薬会社向けのデジタルマーケティングでは、新薬情報や学術情報をオンラインで配信するサービスを展開している。また、治験支援(CRO・SMO関連事業)では、患者募集や医療機関との連携を効率化し、新薬開発のスピード向上にも貢献している。さらに海外でも事業を拡大し、欧米やアジアを中心に医療情報サービスや治験支援を展開している。

近年、エムスリーが特に力を入れているのが医療DXである。

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、単に紙を電子化することではない。デジタル技術を活用して業務やサービスそのものを変革することを意味する。

日本の医療現場は、依然として紙の書類やFAX、電話に依存する業務が多い。紹介状、予約、処方箋、検査結果の共有など、多くの業務がアナログな手段で行われてきた。こうした非効率を改善することは、医療従事者の負担軽減だけでなく、患者サービスの向上にも直結する。

エムスリーは、病院やクリニック向けに予約システム、経営支援、電子化支援、AI活用など多様なDXサービスを提供している。また、グループ企業を通じて電子カルテや地域医療連携、病院経営支援などの分野にも事業を広げており、単なる情報サイト運営会社から医療インフラ企業へと進化を続けている。

オンライン診療との関係も見逃せない。

コロナ禍では感染対策としてオンライン診療が急速に普及したが、エムスリー自身はオンライン診療専業企業ではない。むしろ同社は、医療機関のデジタル化全体を支える立場にある。診療そのものだけでなく、医師の情報収集、患者とのコミュニケーション、医療データの利活用など、オンライン診療を支える基盤づくりに強みを持つ。

2022年には初診オンライン診療が恒久制度化され、さらに2026年にはオンライン診療が医療法にも位置付けられたことで、医療DXへの投資は今後も続くと見込まれている。電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス、マイナ保険証を活用したデータ連携など、国が進める医療DX政策とも親和性が高い分野である。

一方で、エムスリーを語るうえで欠かせないのが、コロナ禍後の事業環境の変化である。

新型コロナウイルス流行期には、ワクチン関連業務や製薬会社によるデジタル情報提供需要が急増し、同社業績は大きく拡大した。しかし感染拡大が落ち着くと、その反動で一時的に成長率は鈍化した。これはエムスリー固有の問題というより、コロナ特需の反動という側面が強い。

現在、同社は成長の軸足を再び中長期的な医療DXへ戻している。生成AIを活用した業務効率化、医療データ分析、病院経営支援、高度なデジタルソリューションなど、新たな分野への投資も進めている。医療現場では人手不足が深刻化しており、限られた医療資源を効率的に活用するためにもDXの重要性は今後さらに高まると考えられる。

投資家の視点から見ると、エムスリーの最大の強みは「ネットワーク効果」にある。

医師が多く集まるからこそ、製薬会社や医療機器メーカーは情報発信の場として利用する。利用企業が増えることでサービスは充実し、さらに医師が集まる。この好循環は簡単には模倣できない。

また、医療は景気変動の影響を受けにくい分野であり、高齢化が進む日本では医療需要そのものが大きく減少する可能性は低い。もちろん薬価改定や診療報酬制度など政策の影響は受けるものの、医療情報や医療DXへの需要はむしろ拡大していく可能性が高い。

エムスリーは、病院を建てる会社でも、医薬品を製造する会社でもない。しかし、医療情報が正しく流れ、医師同士がつながり、医療機関の業務が効率化される仕組みを提供することで、日本の医療を根底から支えている。

医療DXとは、単に紙をデジタルへ置き換えることではない。医師、患者、病院、製薬会社、行政をデータで結び、医療の質と効率を同時に高める取り組みである。その実現には、信頼できるネットワークと膨大な医療データ、そして現場に根付いたサービスが欠かせない。

30万人を超える医師ネットワークを基盤に、情報、研究、診療、経営、データをつなぐエムスリーは、日本の医療DXを支える「見えないインフラ」として、これからも重要な役割を担い続けるだろう。

まとめ|オンライン診療の本質は「診察」ではなく「医療全体のデジタル化」にある

オンライン診療という言葉から、多くの人はスマートフォンを使ったビデオ診察を思い浮かべる。しかし、今回取り上げた3社を見比べると、その本質は単なるオンライン診察ではないことが分かる。

メドレーは、予約、電子カルテ、決済までを一体化した医療機関向けプラットフォームを構築し、医療現場全体の効率化を進めている。ジェイフロンティアは、診察後のオンライン服薬指導や薬の配送まで含めた「医療のラストワンマイル」を担い、患者体験そのものを変えようとしている。そしてエムスリーは、30万人を超える医師ネットワークを基盤に、情報流通や病院経営支援、製薬企業との連携など、日本の医療インフラを支える存在へと成長してきた。

目指す領域は異なるものの、3社に共通しているのは「医療をより便利に、より効率的に、より持続可能にする」という方向性である。

少子高齢化や医療従事者不足が進む日本では、限られた医療資源をどう有効活用するかが大きな課題となっている。オンライン診療や医療DXは、その課題を解決する有力な手段の一つであり、今後は電子処方箋やマイナ保険証、電子カルテ情報共有サービスなどとの連携を通じて、さらに社会インフラとしての役割を強めていくだろう。

「病院へ行く」ことが医療の中心だった時代から、「必要なときに、必要な医療へデジタルでつながる」時代へ――。医療DXを支える企業の成長は、日本の医療の未来そのものを映し出しているのである。

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