
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
日銀の利上げで「家計全体」は年1兆円プラスでも、若年層の住宅ローン負担は重くなる。金利のある時代に、家計は何を考えるべきかを徹底解説
日銀の利上げがニュースになるたびに、多くの人はこう感じるのではないでしょうか。
「景気にどう影響するのかは難しい」
「預金金利が少し上がるのはうれしいかもしれない」
「でも住宅ローンは怖い」
「結局、自分の家計にはプラスなのかマイナスなのか分からない」
実際、金利の話は一見すると金融の専門家向けに見えます。
けれども本当は、家計にとって極めて現実的なテーマです。
預金、住宅ローン、教育費、老後資金、投資、消費、家の買い時、借り換え、保険、さらには企業の賃上げ余力まで、金利は暮らしの土台を広く動かします。
今回のニュースで象徴的だったのは、「家計全体では年1兆円のプラス効果」という見出しの一方で、「住宅ローン残高の多い若年層にはマイナス影響が大きい」という対比です。
この二つが同時に成立するところに、今の“金利のある世界”の難しさがあります。
つまり、利上げは日本の家計全体で見れば必ずしも悪い話ではありません。
預金の利息が増える人の方が多いからです。
しかし、それはあくまで家計全体を平均で見た話です。
個々の家庭で見ると、話はかなり変わります。
預金が多い高齢層はプラスになりやすく、住宅ローンを多く抱える若い世代はマイナスになりやすい。
同じ利上げでも、恩恵を受ける人と苦しくなる人がはっきり分かれるのです。
この変化は、今後の家計設計にかなり大きな意味を持ちます。
なぜなら、日本は長く「ほぼ金利がない世界」にいたからです。
預金を置いてもほとんど増えない。
住宅ローンは低い変動金利で借りるのが普通。
国債の利回りも低く、金利上昇を前提に家計を組み立てる感覚が薄れていました。
しかし、その前提が変わり始めています。
ここで重要なのは、利上げを単なるニュースとして流さないことです。
大事なのは、「自分の家計はどちら側にいるのか」を冷静に把握することです。
預金超過の家計なのか。
借入超過の家計なのか。
いま家を買う側なのか。
すでにローンを抱えている側なのか。
これから教育費が膨らむ世帯なのか。
老後に向けて金融資産を守りたい世帯なのか。
金利が上がる局面では、同じ日本国内でも家計の景色がまったく違って見えます。
だからこそ、これからの家計管理では、単に「利上げは良い」「利上げは悪い」と単純化するのではなく、
自分の家計にとって何が追い風で、何が逆風なのか
を言語化できることがとても大切です。
この記事では、
日銀の利上げがなぜ起きているのか、
家計全体で見ればなぜプラスと言われるのか、
それでも若年層にはなぜマイナスが大きいのか、
住宅ローンには具体的にどう影響するのか、
預金、家計管理、投資、家の買い方をどう見直すべきか、
そして今後の日本の家計は何を準備しておくべきかまで、包括的に解説していきます。
第1章 なぜ今、日銀は利上げを進めているのか
背景にあるのは「ようやく金利を動かせる経済環境」への変化
長い間、日本では「利上げ」という言葉自体が珍しいものでした。
むしろ、利下げ、金融緩和、マイナス金利、国債買い入れといった言葉の方がなじみ深かったかもしれません。
それだけ、日本は長く低金利に慣れ切った社会でした。
低金利が続いた理由は単純です。
景気が十分に強くなく、物価も上がりにくく、賃金上昇も弱かったからです。
モノの値段が大きく上がらず、企業も積極的に価格転嫁できず、家計も節約志向が強い。
こうした環境では、日銀は景気を冷やすより、むしろ景気を温めるために低金利を維持する必要がありました。
しかし近年、この前提が少しずつ変わってきました。
輸入物価の上昇、エネルギー価格の変動、円安、人手不足、そして企業の価格転嫁の進展によって、日本でも物価上昇が定着し始めたからです。
加えて、賃上げの広がりも見られるようになりました。
つまり、以前のように「何をしても物価が上がらない日本」ではなくなりつつあるわけです。
この状況で、日銀がゼロ近辺の金利を長く維持し続けると、今度は逆の問題が起きます。
物価が上がっているのに金利が低すぎると、家計の実質的な購買力が削られたり、過度な円安や資産価格のゆがみを招いたりする可能性があるからです。
そこで日銀は、極端に低かった金利を少しずつ“普通の世界”へ戻そうとしているのです。
これは、「景気を急に冷やしたい」というより、
異常に低かった金利を、経済の実力に合わせて少しずつ正常化する作業
と考えた方が分かりやすいです。
ただし、ここで見落としてはいけないのは、金利の正常化は必ずしも全員にとって歓迎ではないということです。
低金利の時代に恩恵を受けていた人にとっては、負担が増えるからです。
その代表が、住宅ローンを抱える若い世代です。
つまり、日銀の利上げはマクロで見れば理解できる流れですが、ミクロの家計にはかなり不均等な影響を与えます。
この“全体では正しくても、個別には痛みが出る”という構図が、いまの利上げ局面を理解するカギです。
第2章 なぜ「家計全体では年1兆円のプラス効果」になるのか
ポイントは、日本の家計が借金より預金をずっと多く持っていること
「利上げ」と聞くと、なんとなくマイナスの印象を持つ人は多いと思います。
住宅ローンが上がる、企業の借入負担が増える、景気が冷える。
こうしたイメージが強いからです。
それなのに、「家計全体では年1兆円のプラス効果」という表現が出てくると、違和感を覚える人も少なくありません。
でも、これは理屈としてはかなり分かりやすい話です。
日本の家計は、住宅ローンなどの借入もありますが、それ以上に莫大な預金を持っているからです。
つまり、金利が上がると、ローンを借りている人は負担が増えます。
一方で、預金を持っている人は利息が増えます。
この二つを家計全体で合算すると、日本では預金の方がずっと大きいため、差し引きでプラスになりやすいのです。
ここが、日本の家計構造の特徴です。
欧米では、金融資産の中で株式や投資信託の比率が高い国も多いですが、日本では預金の比率が依然として高い。
そのため、金利が上がった時の恩恵が、預金利息という形で比較的ストレートに出やすいのです。
もちろん、「預金金利が少し上がったところで大したことはないのでは」と感じるかもしれません。
しかし、家計全体でみれば、預金総額は非常に大きい。
金利がわずかに動くだけでも、全体としての利息増はかなりの規模になります。
これが、「年1兆円プラス」という試算の土台です。
ここで大切なのは、このプラス効果は平均の話だということです。
たしかに国全体で見れば、預金利息の増加が住宅ローン負担増を上回る。
でも、個々の家庭は平均ではありません。
住宅ローンが大きい家庭にとっては、預金利息より負担増の方が先に見えてしまう。
逆に、ローンがなく預金の多い世帯では、利上げが純粋にプラスになる。
つまり、「家計全体ではプラス」という事実と、「自分の家計は苦しい」という感覚は、矛盾しません。
平均でプラスでも、分布で見ればかなり偏りがある。
これが今回のニュースの本質です。
第3章 なぜ若年層ほどマイナス影響が大きいのか
若い世代は資産より負債が先に大きくなりやすいから
では、なぜ若年層にマイナス影響が集中しやすいのでしょうか。
答えはシンプルです。
若い世代ほど、金融資産の蓄積がまだ十分でない一方、住宅ローンという大きな負債を抱えやすいからです。
年齢を重ねた世帯は、長く働いてきた分、預金や金融資産をある程度積み上げています。
住宅ローンを完済している人も多い。
だから金利が上がると、ローン負担増の影響は小さく、預金利息増の恩恵の方が大きくなりやすい。
一方で、若年層や子育て世帯は違います。
家を買ったばかり、あるいは数年前に変動金利で借りたばかりという人も多い。
教育費や生活費もこれから重くなる。
そのうえ金融資産はまだ高齢層ほど厚くない。
こうした家計では、利上げのプラス面よりマイナス面の方が先に見えてしまいます。
特に日本の住宅ローンは、変動金利の利用割合が高いのが特徴です。
低金利が長く続いたため、「変動で借りるのが普通」という感覚が広がっていました。
実際、低金利の時代には、変動金利は非常に合理的な選択でした。
固定より金利が低く、月々の返済負担も抑えられたからです。
しかし、金利が上がる局面では、そのメリットが逆回転します。
変動金利を選んだ人ほど、将来の返済額や総返済額の増加リスクを意識しなければならない。
それが今の若年層に重くのしかかります。
つまり、若年層にとっての利上げは、単なる金融ニュースではなく、
人生設計の前提条件が変わる出来事
なのです。
「住宅ローンは低金利のまま長く続く」という無意識の前提が崩れ始めるからです。
ここで厳しいのは、若年層ほど賃金が十分に追いついていないことです。
給料が増えていれば、多少のローン負担増は吸収できます。
しかし、家計によっては、賃上げ以上に住宅ローンや生活費の上昇が重く感じられることもあります。
その結果、消費を削る、貯蓄を崩す、投資をやめる、教育費やレジャー費を抑えるといった行動が起きやすくなる。
若年層へのマイナス影響が大きいとは、そういう意味です。
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第4章 住宅ローンは具体的にどれくらい重くなるのか
問題は「今すぐいくら増えるか」だけでなく、「将来の不確実性が増すこと」にある
住宅ローンの影響を考える時、よく「月々いくら増えるのか」に注目が集まります。
もちろんそれも大事です。
しかし本当に怖いのは、毎月の増加額そのものより、将来の返済計画の読みづらさが増すことです。
変動金利には、多くの場合、すぐに返済額が跳ね上がらない仕組みがあります。
ただし、それは安心を意味しません。
支払いが急に増えなくても、元本の減り方が遅くなったり、将来的な見直し時に負担が増えたりすることがあります。
つまり、表面的に「今はまだ変わっていない」ように見えても、負担はじわじわ蓄積していく可能性があるのです。
さらに、住宅ローンの怖さは、利上げが一回で終わるとは限らないことです。
一度上がった後も、今後さらに追加で金利が上がる可能性がゼロではない。
そうなると、最初は小さな負担増でも、数年かけて効いてくることがあります。
家計の観点では、ここが非常に重要です。
住宅ローンの負担増は、家計を一気に破綻させるような急激なショックであることより、
少しずつ自由に使えるお金を奪っていく圧迫要因
として効くことが多いからです。
毎月1万円、2万円の増加でも、年間で見れば大きい。
しかもそれが数年続けば、教育費、旅行、外食、投資、貯蓄のすべてに影響します。
そのため、住宅ローンを抱える家計は、単に「今の金利上昇幅」に目を向けるのではなく、
家計にどれくらい耐久力があるか
を考える必要があります。
たとえば、
- 金利がもう一段上がっても耐えられるか
- ボーナス返済への依存が強すぎないか
- 繰り上げ返済の余力はあるか
- 教育費ピークと金利上昇が重なった時に大丈夫か
といった点です。
ここを確認しないまま、「今のところ大きく変わらないから大丈夫」と考えるのは危険です。
金利のある世界では、家計に必要なのは楽観ではなく、先回りした余裕の設計です。
第5章 預金は本当に家計の追い風になるのか
恩恵はある。ただし「預金が多い家計」に偏りやすい
利上げのプラス面としてよく語られるのが、預金金利の上昇です。
たしかに、ゼロに近かった普通預金や定期預金の金利が少しずつ上がってくるのは、家計にとって歓迎できる変化です。
長く「預金してもほとんど増えない」状態だったため、金利がつくこと自体が新鮮に映る人もいるでしょう。
ただし、ここでも注意が必要です。
預金金利の恩恵は、当然ながら預金を多く持っている家計ほど大きいからです。
つまり、平均で見ればプラスでも、実感できるかどうかは家計差が大きい。
たとえば、数百万円から数千万円規模の預金を持つ世帯にとっては、金利上昇の恩恵はじわじわ効いてきます。
一方で、預金残高が少ない、あるいは生活防衛資金しか持っていない家計では、利息増の恩恵は限定的です。
住宅ローン負担増や物価高の方がずっと重く感じられるかもしれません。
さらに、預金金利が上がるといっても、劇的に増えるわけではありません。
「ようやく金利がつくようになった」という段階であって、一気に家計が豊かになるような水準ではない。
だから、利息増をあまり過大評価しすぎないことも大事です。
むしろ家計管理で重要なのは、金利上昇をきっかけにお金の置き場を見直すことです。
普通預金に置きっぱなしでいいのか。
定期預金を活用するのか。
生活防衛資金と運用資金をどう分けるのか。
現金の必要額をどう考えるのか。
利上げ局面では、こうした問いがより重要になります。
つまり、預金は確かに追い風です。
しかしその恩恵を本当に活かせるのは、単に預金が多い人だけではありません。
金利のある世界に合わせて、家計の現金管理を見直せる人
が、より大きなメリットを取れるのです。
第6章 家計全体がプラスでも、消費は冷え込む可能性がある理由
恩恵を受ける人と負担を受ける人が違うから
ここがマクロ経済でとても重要な点です。
「家計全体ではプラスなら、消費も良くなるのでは」と思うかもしれません。
しかし、そう単純ではありません。
なぜなら、利上げで恩恵を受ける人と、負担を受ける人が違うからです。
預金利息が増えるのは、比較的高齢で資産を持つ層に多い。
一方、住宅ローン負担が重くなるのは、若年層や子育て世帯に多い。
ここで考えるべきなのは、どちらの層が日常的にお金を使うかということです。
一般に、住宅ローンや教育費を抱える現役世代の方が、所得の中で消費に回す割合が高い傾向があります。
逆に、資産を多く持つ高齢層は、利息が増えてもそれをすぐ消費へ回すとは限りません。
つまり、家計全体でみれば利上げはプラスでも、消費の現場ではマイナスが強く出る可能性があるのです。
住宅ローン負担が増えた若い世帯は、外食や旅行、車、教育関連支出を抑えるかもしれない。
一方、預金利息が増えた高齢世帯は、その分を全額使うわけではない。
こうなると、平均ではプラスでも、景気には思ったほど追い風にならない可能性があります。
この構図は、今後の日本経済を考えるうえでかなり重要です。
利上げが進むと、家計全体のバランスシートは改善して見えても、実際の消費行動は弱くなる可能性がある。
その意味で、利上げの家計影響を考える時は、平均値だけでなく、誰の手元にメリットとデメリットが落ちるのかまで見る必要があります。
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第7章 これから家を買う人はどう考えるべきか
「買うか買わないか」より、「どの前提で買うか」が重要になる
今後住宅購入を考えている人にとって、利上げ局面はかなり悩ましい環境です。
低金利時代のように、「変動で借りておけばとりあえず有利」とは言いにくくなってきました。
かといって、固定金利も以前より重く見える。
結果として、多くの人が迷いやすくなります。
ここで大事なのは、「今は買うべきか、やめるべきか」という二択ではなく、
どの前提で買うのか
を明確にすることです。
たとえば、
- 金利がもう一段上がっても家計が耐えられるか
- 共働き収入のどちらかが減っても返済可能か
- 教育費ピークと住宅ローン負担増が重なっても問題ないか
- 将来住み替えや売却の柔軟性があるか
こうした前提を置いたうえで買うなら、利上げ局面でも家を持つこと自体は十分に合理的です。
逆に危ないのは、低金利時代の感覚のまま、
「今までそうだったから、これからも変動が得だろう」
と漫然と考えることです。
金利が低いことが前提だった時代の住宅購入と、金利が少しずつ戻っていく時代の住宅購入は、同じようでいてかなり違います。
また、利上げ局面では物件選びもより重要になります。
返済負担が増える可能性があるなら、将来売りやすい立地、貸しやすい間取り、資産価値が落ちにくいエリアを選ぶ意味が大きくなるからです。
金利上昇局面では、家は単なる消費財ではなく、より強く「資産」として見られるようになります。
つまり、これから家を買う人は、
金利が上がっても耐えられる家計設計と、出口を意識した物件選び
の両方が必要になります。
昔よりも慎重さは求められますが、その分、前提を整理できる人ほど失敗しにくくなります。
第8章 すでに住宅ローンを抱えている人は何をするべきか
まずは「慌てて動く」より、家計の耐久力を確認することが先
すでに住宅ローンを組んでいる人にとって、利上げニュースはどうしても不安を煽ります。
「借り換えた方がいいのでは」
「固定にした方がいいのでは」
「今すぐ繰り上げ返済すべきでは」
そんな気持ちになるのは自然です。
ただし、最初にやるべきことは、慌てて金融商品を動かすことではありません。
一番先に必要なのは、
自分の家計がどれくらい金利上昇に耐えられるかを把握すること
です。
具体的には、
- 返済額が少し上がった場合の家計収支
- 現預金の余裕
- 教育費、車、保険など他の固定費
- ボーナス依存の有無
- 共働き前提かどうか
を確認することです。
この“耐久力”が十分あるなら、今すぐ大きな変更をしなくてもいいかもしれません。
逆に、もともと余裕が薄い家計なら、金利上昇が小さくても対策が必要になる。
つまり、ローンの種類だけでなく、家計全体のバランスを見ることが大切です。
また、家計改善で効果が大きいのは、実は住宅ローンそのものだけではありません。
通信費、保険、車関連費、サブスク、食費、教育関連支出など、毎月の固定費と準固定費を見直す方が、結果として住宅ローン上昇分を吸収しやすい場合もあります。
金利上昇局面では、ローン対策だけに意識を集中しすぎず、家計全体を再設計する視点が必要です。
さらに、繰り上げ返済についても一律の正解はありません。
現金を減らしすぎると、逆に家計の耐久力が落ちることがあります。
金利上昇が不安だからといって、手元資金を過剰に削るのは危険です。
特に子育て世帯や転職・独立などライフイベントが多い世代では、流動性の確保は非常に大事です。
要するに、すでに住宅ローンを抱えている人に必要なのは、
不安に駆られて部分最適の対策をすることではなく、家計全体の防御力を高めること
です。
これが、金利のある時代の住宅ローンとの付き合い方になります。
第9章 利上げ局面で、家計は投資をどう考えるべきか
預金が少し報われる時代でも、「全部を預金に戻す」は正解ではない
金利が上がると、投資より預金の方が安心に見える人も増えます。
たしかに、ゼロ金利時代と違って、預金に置いておく意味は少しずつ戻ってきます。
生活防衛資金や数年以内に使うお金については、預金の価値は以前より高まったと言ってよいでしょう。
しかし、ここで極端に走るのも危険です。
金利がつくようになったからといって、すべてを預金へ戻すのが正しいわけではありません。
なぜなら、物価上昇が続く局面では、預金だけでは実質的な資産価値が目減りする可能性があるからです。
重要なのは、
何のためのお金か
で置き場を分けることです。
たとえば、
- 生活防衛資金
- 1〜3年以内に使う予定資金
は預金でよい。
一方で、 - 老後資金
- 10年以上先を見据えた資産形成
- 子どもの将来資金の一部
は、預金だけではなく、投資も含めて考えた方が合理的です。
利上げ局面では、投資判断も少し変わります。
これまでのように「金利がないから、とりあえず投資信託に回す」という雑な判断ではなく、
現金の意味が戻る中で、それでも投資が必要な理由を考える
ことが求められます。
これは、むしろ健全な変化です。
金利のある世界では、預金、債券、株式、不動産の相対的な魅力が少しずつ変わります。
その変化に応じて、家計も「現金ゼロで全部リスク資産」でも、「怖いから全部預金」でもない中間を目指す必要があります。
利上げ局面は不安材料ではありますが、同時に家計の資産配分を見直すきっかけでもあるのです。
第10章 これからの日本の家計は、何を一番意識すべきか
平均ではなく、「自分の家計はどちら側か」を把握することが最重要
ここまでの話をまとめると、利上げは単純な善悪で語れません。
家計全体で見れば、預金利息の増加によってプラスになる。
しかし、住宅ローンを抱える若年層や負債の多い世帯ではマイナスになりやすい。
つまり、平均では語れても、個々の家計ではかなり違う世界が広がっています。
だから、これからの日本の家計で最も大切なのは、
「自分の家計はどちら側にいるのか」を把握すること
です。
預金超過なのか、負債超過なのか。
金利上昇が追い風なのか、逆風なのか。
預金利息増の恩恵を受ける側なのか、住宅ローン負担増の影響を受ける側なのか。
この自己認識がないと、ニュースの見出しに振り回されやすくなります。
また、利上げ局面では「家計の格差」が見えやすくなります。
資産を持つ家計は、金利上昇でさらに安定しやすい。
一方、負債を抱え、資産が薄い家計ほど、金利上昇の痛みを感じやすい。
この構造を無視して、「家計全体でプラスだから安心」と考えるのは危険です。
逆に言えば、今のうちに家計の耐久力を高めておくことができれば、利上げ局面は必ずしも悪いだけではありません。
現金管理を見直し、借入をコントロールし、固定費を調整し、投資と預金の役割を分ける。
この基本を丁寧にやる家計ほど、金利のある世界でも安定しやすくなります。
利上げは、家計にとって「終わりの始まり」ではありません。
むしろ、低金利に依存していた家計設計を見直すきっかけです。
その変化を前向きに使えるかどうかで、今後の家計の強さはかなり変わってきます。
まとめ
利上げは、平均ではプラスでも、若い家計には重くのしかかる
日銀の利上げは、家計全体で見れば預金利息の増加が住宅ローン負担増を上回り、差し引きでプラスになる可能性があります。
しかし、その恩恵は均等ではありません。
預金を多く持つ高齢層にはプラスが出やすい一方、住宅ローンを抱える若年層や子育て世帯にはマイナスの影響が集中しやすい。
この“平均と実感のズレ”こそが、今回のニュースの本質です。
住宅ローンを抱える家計にとって大事なのは、今すぐ過剰に不安になることではなく、家計の耐久力を確認し、固定費や現金管理を含めて全体を見直すことです。
一方、預金を持つ家計にとっては、金利がつく時代に合わせてお金の置き場を再設計することが重要になります。
つまり、利上げ局面で本当に必要なのは、
平均論ではなく、自分の家計の位置を知ること
です。
一言でまとめるなら、こうです。
日銀の利上げは、家計全体ではプラスに見えても、若い世代ほど痛みが大きい。 これからの家計管理に必要なのは、「金利が上がったら困る」と漠然と恐れることではなく、自分の家計が預金超過なのか負債超過なのかを見極め、低金利前提だった生活設計を見直すことなのである。
金利のある世界は、もう遠い未来の話ではありません。
だからこそ今、家計も“普通の金利がある時代”に備えて、静かに強くなっていく必要があります。
【重要】免責事項
投資判断の最終責任: 本記事で紹介している銘柄やセクター、分析内容は、情報提供および学習の啓発のみを目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。
成果の非保証: 過去のデータや予測は、将来の投資成果を保証するものではありません。市場環境の変化により、資産が減少するリスクがあります。
情報の正確性: 2026年時点の情報に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。最新の業績やニュースは、必ず各企業のIRサイトや一次資料でご確認ください。
損失の補償: 本記事の内容に基づいて被ったいかなる損害(直接的・間接的を問わず)についても、筆者は一切の責任を負いません。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長




