
【初心者向け解説】理論株価の計算方法と活用術|投資の「物差し」で割安株を見抜く全手法
株式投資の世界には、「株価は市場が決めるもの」という側面と、「株価には本来あるべき価値がある」という側面の2つが存在します。後者の「本来あるべき価値」を数値化したものが理論株価です。
本記事では、理論株価の基礎知識から、主要な算出モデル、実践的な活用法、そして限界までを徹底的に解説します。
監修者:市川雄一郎
GFS校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)
公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長
1. 理論株価とは何か?
1. 理論株価とは「企業の本当の値段」のこと
私たちが普段見ている「株価」は、実は「時価(その瞬間の値段)」に過ぎません。オークション会場で、みんなが欲しがって熱狂すれば値段は跳ね上がり、誰も見向きもしなければ暴落します。
一方、「理論株価」とは、そうした周囲の熱狂やパニックを一切排除して、その会社が持っている「現金」「土地」「ブランド力」「将来稼ぐ力」などを積み上げて計算した、「本来あるべき正当な価格」を指します。
野菜の「定価」と「特売価格」で考える
スーパーのキャベツをイメージしてみてください。
理論株価(定価): キャベツを作るのにかかった種代、肥料代、人件費、そして農家さんの利益を乗せた「本来これくらいで売るべき値段(150円)」
市場株価(時価): 台風が来て品薄になれば「300円」に跳ね上がり、豊作で余りまくれば「50円」に投げ売りされます。
投資家にとっての勝利の方程式は、「理論株価(本来の価値)よりも、市場株価(今の値段)が安い時」に買い、その差が埋まった時に売ることです。
2. なぜ「価値」と「価格」はズレるのか?
もし市場が常に完璧なら、理論株価と市場株価は常に一致するはずです。しかし、実際には大きくズレます。これには3つの人間的な理由があります。
① 心理的なバイアス(恐怖と強欲)
人間は、周りが儲かっていると「自分も乗り遅れたくない」と高値で買い(強欲)、暴落が始まると「どこまで下がるか分からない」とパニックで投げ売りします(恐怖)。この感情の波が、株価を理論値から遠ざけます。
② 情報のタイムラグ
ある企業が画期的な発明をしたとしても、その価値がすべての投資家に正しく理解され、株価に反映されるまでには時間がかかります。
③ 需給の偏り
「インデックスファンドの組み入れ」や「大株主の売却」など、企業の価値とは関係ない「機械的な売り買い」が発生すると、株価は一時的に理論値から大きく乖離します。
3. 理論株価を形づくる「2つの柱」
では、理論株価はどうやって計算されるのでしょうか? 専門的な数式はさておき、本質的には次の2つの合計で決まります。
① 資産価値(これまでに蓄えた財産)
その会社が今この瞬間に解散したとして、残った現金、工場、土地、有価証券などをすべて売り払ったらいくらになるか? という視点です。
例: 銀行に100億円の預金があり、借金がゼロの会社。この会社の価値は最低でも100億円以上ですよね。これが「底値」を支える価値になります。
② 収益価値(これから稼ぐお金)
その会社が将来にわたって、毎年どれだけの利益を出し続けるか? という視点です。
例: 今の財産は少なくても、毎年画期的なサービスで10億円の利益を出し、それが10年、20年と続くなら、その「未来の利益」にも大きな価値がつきます。
「今持っているお財布の中身(資産)」+「これから稼いでくる給料(収益)」= 企業の価値(理論株価) というわけです。
4. 初心者が理論株価を知るメリット
「計算なんて難しそう」と思うかもしれませんが、理論株価の考え方を知るだけで、投資の成績は劇的に変わります。
「不安」が「自信」に変わる
株を買った後に株価が下がると、誰でも不安になります。しかし、「理論株価は1,000円なのに、今は市場のパニックで700円まで下がっているだけだ」という根拠があれば、慌てて売る(損切りする)どころか、安く買い増すチャンスだと思えるようになります。
詐欺的な銘柄を避けられる
SNSなどで「この株は10倍になる!」と騒がれている銘柄があっても、理論株価をざっくり計算して「今の利益の100年分もの値段がついている(超割高)」と分かれば、火傷をする前に手を引くことができます。
5. 理論株価の「正解」は一つではない
ここで一つ、非常に重要なポイントがあります。それは、「理論株価にたった一つの正解はない」ということです。
プロのアナリストが計算しても、Aさんは「1,500円」と言い、Bさんは「2,000円」と言うことがあります。なぜなら、「その会社が将来どれくらい成長するか?」という予測(期待値)は人によって異なるからです。
理論株価とは、いわば「自分なりの納得感」を作るためのツールです。「自分はこう考えるから、この価格なら自信を持って買える」という基準を持つことこそが、投資家としての自立への第一歩となります。
結論
理論株価を理解することは、暗闇の中を歩く投資において「懐中電灯」を持つようなものです。 足元の価格に惑わされず、その企業の「中身」に目を向ける。そうすることで、あなたは「株価という数字」を売買するギャンブラーから、「ビジネスの価値」に投資する真の投資家へと進化できるのです。
最初は、証券会社や四季報が出している「目標株価」や「理論株価」を眺めるだけでも構いません。「なぜこの数字になっているんだろう?」と考えることから始めてみてください。
2. 主要な理論株価の算出モデル:3つの「計算ルート」を徹底解説
理論株価を算出する方法には、いくつかの「型(モデル)」があります。家を査定するときに「近所の似た家の価格」を参考にするのか、「その家を貸した時の家賃収入」から逆算するのか、といったアプローチの違いと同じです。
初心者の方がまず押さえておくべき、代表的な3つの算出モデルを深掘りして解説します。
① インカム・アプローチ(将来の「利益」に着目する)
これは、企業が将来生み出す「現金」をベースに価値を決める、最も理論的で王道な考え方です。代表格はDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法です。
仕組み:将来の「お宝」を今の価値に直す
想像してみてください。友人から「10年後に100万円あげるよ」と言われたとします。今の100万円は投資すれば増やせますが、10年後の100万円は今すぐには使えません。つまり、「将来の100万円」は「今の100万円」より価値が低いのです。
DCF法では、企業が将来10年、20年と稼ぎ出すキャッシュ(現金)をすべて足し合わせ、それを「今の価値」に割り引いて(目減りさせて)計算します。
メリット: その企業の「稼ぐ力」を最もダイレクトに評価できる。
デメリット: 「来年の利益」ならまだしも、「10年後の利益」を予想するのはプロでも至難の業です。少しの予測のズレで計算結果が大きく変わる、繊細なモデルです。
② コスト・アプローチ(持っている「財産」に着目する)
「稼ぐ力はひとまず置いておいて、今持っている貯金や土地を全部売ったらいくらになるか?」という、企業の「解散価値」に着目した方法です。
仕組み:お財布の中身を数える
例えば、ある企業の時価総額(市場での評価額)が100億円だとします。しかし、その企業のお財布(バランスシート)を覗いてみると、現金や不動産などの資産が150億円分もあり、借金はゼロだったとしましょう。
この場合、今すぐ会社を解散して資産を分け合えば、投資家は150億円を手にできます。市場価格の100億円でこの会社を買うのは、「150円入っている財布を100円で買う」ようなもので、非常にお得です。
メリット: 数字が明確(財務諸表に載っている)なので、大外れしにくい。
デメリット: 「今は資産があるけれど、赤字続きでどんどんお札を燃やしている(資産を減らしている)会社」などの、将来的な衰退を見落としやすい。
③ マーケット・アプローチ(「周りとの比較」に着目する)
「似たような業種の他の会社と比べて、この株は高いか安いか?」を判断する方法です。初心者の方にとって、最も身近で使いやすいモデルです。
仕組み:ご近所の相場を見る
不動産でいえば、「隣の家の坪単価が100万円なら、うちの家もそれくらいだろう」と考える手法です。株の世界では、以下の2つの指標がよく使われます。
PER(株価収益率): 利益に対して株価が何倍か(人気度)。
PBR(株価純資産倍率): 資産に対して株価が何倍か(割安度)。
例えば、IT業界の平均PERが20倍なのに、ある優良なIT企業のPERが10倍であれば、「業界平均まで買われるなら、株価は2倍になるはずだ(理論株価は今の2倍)」と推測します。
メリット: 計算が非常に簡単で、今の市場の流行(相場観)を反映しやすい。
デメリット: 業界全体がバブル状態で「みんなが高い」ときには、その高い基準に引っ張られて、理論株価も高く出すぎてしまう危険があります。
まとめ:どのモデルを信じればいいの?
結局、どのモデルが一番正しいのでしょうか? 結論から言うと、「これらを組み合わせて考える」のが正解です。
下値をコスト・アプローチで確認する 「最悪、会社が潰れても資産がこれだけあるから、株価はこの辺で止まるだろう(安全網)」
上値をインカム・アプローチで夢見る 「新事業がうまくいけば、将来これだけの現金を稼ぐから、株価はここまで伸びるはずだ(成長性)」
今の立ち位置をマーケット・アプローチで測る 「ライバル企業と比べて、今は評価されすぎ(または無視されすぎ)ではないか?(需給)」
このように、複数の視点を持つことで、理論株価はより強固な「投資の道しるべ」となります。
初心者が今日からできること
まずは、難しい計算式を自分で作る必要はありません。 証券会社のアプリなどで、「PER(収益)」と「PBR(資産)」をチェックする習慣をつけてください。
「この会社は利益は出ているのに(PERが低い)、資産価値も無視されている(PBRが1倍割れ)。ということは、理論株価はもっと高いはずだぞ」
そう思えるようになったら、あなたはもう立派な「理論株価」の使い手への道を歩み始めています。
モデルを使い分けるコツは、「その企業のどこに魅力があるか」に合わせること。成長企業ならインカム・アプローチ、安定した老舗企業ならコスト・アプローチを重視してみましょう。
理論株価を算出する3つのルートを知ることで、これまで「ただ動く数字」だった株価が、「意味を持った価値」に見えてくるはずです。
・投資で収入を得たい、資産を増やしたい YES or NO
・リスクはできるだけ抑えたい YES or NO
・投資先の見極め方を知りたい YES or NO
・成功している投資家と接点が欲しい YES or NO
・物価上昇への対策には投資が必要と考えている YES or NO
3. 理論株価を計算する際の実践ステップ
理論株価の計算と聞くと、数学の試験のような難解なイメージを持つかもしれませんが、本質は「企業の家計簿をチェックして、将来の給料を予想する」というシンプルな作業です。
初心者の方が、実際にExcelやノートを広げて計算に取り組むための「3つの実践ステップ」を分かりやすく深掘り解説します。
ステップ1:企業の「基礎体力」と「稼ぐ力」を把握する
まずは、計算の材料となるデータを集めます。料理でいえば「素材選び」です。使うのは、企業の決算書(有価証券報告書や決算短信)にある数字です。
① 「純資産」をチェック(お財布の中身)
会社が今持っている、返さなくていいお金です。これが「理論株価」の土台になります。
チェック項目: 1株あたり純資産(BPS)
意味: 「今すぐ会社を解散したら、1株あたりいくら戻ってくるか」という最低ラインの価値です。
② 「営業利益」の推移をチェック(稼ぐ力)
単年の利益だけでは不十分です。過去3〜5年の「本業で稼いだ利益(営業利益)」を並べてみましょう。
安定成長: 右肩上がりなら、将来の予測が立てやすい(信頼度高)。
激しい上下: 景気に左右されやすいので、予測は慎重にする(厳しめに見積もる)。
初心者のためのヒント:
会社が出している「来期の利益予想」をそのまま信じるのではなく、過去の平均値と照らし合わせて「現実的かな?」と疑ってみるのが、賢い投資家への第一歩です。
ステップ2:自分なりの「期待値(ハードル)」を設定する
ここが理論株価の計算で最も「人間味」が出る面白い部分です。株価を決める数式には、必ず「割引率(期待収益率)」というものが出てきます。
割引率とは「リスクへの警戒心」
例えば、「絶対に潰れない国が発行する債券(国債)」の利回りが1%だとします。一方、倒産のリスクがある株式投資をするなら、1%の利益では満足できませんよね?
「リスクがあるんだから、せめて年間7%は利益が欲しいな」とあなたが考えたなら、その7%が計算に使う「ものさし(割引率)」になります。
期待が高い(割引率を低くする): 成長が確実視される優良企業など。理論株価は高く出ます。
警戒が必要(割引率を高くする): 倒産リスクや不祥事がある企業など。理論株価は低く出ます。
初心者の方は、まずは一般的に使われる5%〜8%程度を基準に設定してみるのがおすすめです。
ステップ3:いよいよ計算!「収益」と「資産」を合体させる
材料が揃ったら、簡易版の理論株価を計算してみましょう。初心者の方におすすめなのは、「財産価値」と「事業価値」を分けて足す方法です。
簡易計算のシミュレーション
ある「A社」を例に計算してみましょう。
事業価値を出す(稼ぐ力の価値)
「1株あたりの利益」に「あと何年稼げるか」を掛けます。
1株利益が100円で、今後10年は安定して稼げそうなら:100円 × 10年 = 1,000円
財産価値を足す(持っているお宝の価値)
「1株あたりの純資産(BPS)」を足します。
1株あたりの純資産が500円なら:+500円
合体させる
1,000円(事業) + 500円(財産) = 1,500円
これが、あなたの導き出した「A社の理論株価:1,500円」です。
ステップ4:【最重要】「安全域」を設定して判断する
計算が終わって「1,500円」という答えが出たとします。しかし、ここでいきなり1,450円の株を買ってはいけません。なぜなら、あなたの計算(予測)が外れる可能性があるからです。
安全域(マージン・オブ・セーフティ)とは?
橋を作るとき、10トンのトラックが通る予定なら、あえて「30トンまで耐えられる設計」にしますよね。投資も同じです。
理論株価: 1,500円
安全域(20%引き): 1,200円
「自分の計算では1,500円の価値があるけれど、念のため1,200円以下にならないと買わないぞ」と決めるのです。これが「安全域」です。
このマージンを持つことで、もし将来の利益予測が少し下方修正されたとしても、大損するリスクを劇的に減らすことができます。
実践ステップのまとめ
データを拾う: 過去の利益と、今のお財布事情をチェック。
期待を決める: 自分はこの株に何%の利回りを求めるか決める。
計算する: 「稼ぐ力(利益×年数)」+「財産」で合計を出す。
余裕を持つ: 理論株価よりさらに2〜3割安い価格を「買い場」と設定する。
最後に
理論株価の計算は、「当てること」が目的ではありません。
計算というプロセスを通じて、「この会社はなぜ利益が出ているのか?」「この資産は本当に価値があるのか?」と深く考えること自体に意味があります。
自分なりの「物差し」を持って相場に臨むようになると、テレビのニュースやSNSの噂話に一喜一憂しなくなり、どっしりと構えた投資ができるようになりますよ。
まずは身近な、自分がよく使っている製品やサービスの会社から、このステップを試してみてください。
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4. 理論株価の限界と注意点:最強の武器にも「弱点」がある
理論株価を計算できるようになると、まるで霧が晴れたかのように市場の見通しが良くなった気がするものです。しかし、理論株価はあくまで「設計図」であって、現実の「建物(相場)」そのものではありません。
「理論上は正しいのに、なぜか負けてしまう」という事態を避けるために、初心者が絶対に知っておくべき理論株価の4つの限界と注意点を深掘り解説します。
① 「前提条件」が少しズレるだけで、答えが激変する
理論株価の計算は、多くの「仮定」の上に成り立っています。 例えば、「この会社は今後5年間、毎年利益が5%ずつ増えるだろう」という前提で計算するとします。しかし、実際には3%しか増えなかったり、逆にライバル企業にシェアを奪われてマイナスになったりすることも珍しくありません。
成長率の罠: 年利5%成長と10%成長では、10年後の利益に大きな差が出ます。
割引率の魔法: 「期待する利回り」を6%にするか7%にするか、わずか1%の差で、算出される株価が数百円、時には数千円も変わってしまうことがあります。
【初心者の心得】 計算して出た「1,234円」という数字をピンポイントで信じ込まないことです。それはあくまで「現時点での予測に基づいた仮の数字」です。「だいたい1,100円〜1,300円くらいかな」と、「幅」を持って捉えることが重要です。
② 「バリュートラップ(割安の罠)」の存在
理論株価を学んだ人が最も陥りやすいのが、この「バリュートラップ」です。 理論株価が2,000円なのに、市場では800円で売られている。一見すると絶好のチャンスに見えますが、数年経っても株価が800円のまま、あるいはさらに下がっていくことがあります。
なぜ、正当な価値まで株価が上がらないのでしょうか?
市場に無視されている: その業界自体に将来性がないと思われている。
経営陣にやる気がない: 資産はたっぷりあるのに、それを成長投資や配当に回そうとしない。
不透明なリスクがある: 表に出ていない巨額の訴訟や、不祥事の火種を市場が察知している。
【初心者の心得】 「安いには安いなりの理由があるのではないか?」と一度疑ってみることです。株価が理論値に戻るには、業績の劇的な変化や、世間の注目を集める「きっかけ(カタリスト)」が必要になります。
③ 「市場の空気(センチメント)」には勝てない
理論株価は「ロジック(論理)」の世界ですが、実際の株価は「感情」の世界で動く時間が長いです。
例えば、リーマンショックやコロナショックのようなパニック相場では、どんなに理論的に割安な優良株であっても、他のクズ株と一緒に叩き売られます。また、AIバブルのような熱狂相場では、理論株価を無視して、実力の5倍、10倍の値段がつくこともあります。
論理: 「この株は1,000円の価値があるから、売る必要はない」
現実: 「周りがみんな売っている! 怖いから自分も売らなきゃ!」
短期的には、「100の正論」よりも「1人のパニック」の方が株価を大きく動かすのが現実です。
【初心者の心得】 理論株価は「長期的な羅針盤」です。荒波(短期的な暴落)の中で羅針盤が「北」を指していても、船自体は波に流されます。理論株価を信じすぎて、全財産を一点集中させるような無茶な投資は避けましょう。
④ 計算式に含まれない「見えない価値」
理論株価の計算式は、主に「数字(財務データ)」を材料にします。しかし、企業の価値には数字に表れにくいものがたくさんあります。
ブランド力やファンの熱量: Appleやテスラのように、熱狂的なファンがいる企業の価値は、単純な利益計算だけでは測れません。
経営者の手腕: カリスマ的な経営者が去った途端、数字は同じでも企業の未来は暗くなることがあります。
特許や技術力: まだ利益は生んでいないけれど、世界を変えるような技術。
これらは現在の決算書には載ってこないため、保守的な理論株価の計算では「0円」と評価されてしまうことが多いのです。
【初心者の心得】 数字だけで計算した理論株価は、いわば「最低限の合格ライン」だと考えましょう。そこに、あなた自身の「この会社のサービスは本当に素晴らしい」という定性的な(数字にできない)評価をスパイスとして加えることが、プロに負けない投資判断につながります。
限界を知って、正しく使いこなす
理論株価の限界を知ることは、決して「理論株価が無意味だ」ということではありません。むしろ、限界を知ることで初めて、理論株価を本当の意味で使いこなせるようになります。
盲信しない: 答えは一つではないと知る。
余裕を持つ: 予測のミスをカバーするために「安全域」を設ける。
時間を味方につける: 市場が正当な価値に気づくまで、数ヶ月〜数年かかることを覚悟する。
数字の裏を読む: 決算書の数字だけでなく、企業の製品やサービスにも目を向ける。
理論株価は、あなたに「勇気」と「冷静さ」をくれるツールです。 「みんなが買っているから」ではなく、「理論的に見て、今の価格ならリスクよりリターンの方が大きい」と判断できるようになれば、あなたはもう初心者卒業です。
5. 理論株価との付き合い方:投資の「軸」を育てる技術
理論株価の計算方法や限界を学んだ後、最後に最も大切なステップがあります。それは、算出した数字を日々の投資行動にどう結びつけ、「自分の心」とどう折り合いをつけていくかという、実践的な「付き合い方」です。
理論株価を単なる「計算結果」で終わらせず、一生モノの「武器」にするための心得を深掘りして解説します。
① 理論株価を「絶対の正解」ではなく「座標」にする
初心者が陥りがちな最大のミスは、理論株価を「将来必ずその価格になる予言」だと勘違いしてしまうことです。しかし、投資の世界に100%の予言は存在しません。
理論株価の本当の役割は、大海原で自分の位置を確認するための「座標」です。
「今、自分が立っている場所(市場価格)は、本来あるべき場所(理論価値)から見て、東にいるのか西にいるのか?」
「あまりにも遠くへ流されすぎていないか?」
このように、現在地を客観的に把握するための基準として使いましょう。理論株価という座標があるからこそ、「今は追い風だからもう少し乗っていよう」「今はあまりにも高すぎるから、一旦船を降りよう」という主体的な判断が可能になります。
② 「市場との対話」を楽しむためのツールにする
理論株価を算出すると、市場の価格に対して「なぜこんなにズレているんだ?」という疑問が湧いてきます。実は、この「ズレの理由を考えること」こそが、投資の醍醐味であり、上達の近道です。
市場が正解の場合: 「自分が気づいていないリスク(新製品の失敗、隠れた借金など)を、市場はすでに察知しているのではないか?」
自分が正解の場合: 「この企業の良さを、まだ世の中の投資家が理解していないだけだ。いずれ気づかれた時に大きな利益になるぞ」
このように、理論株価を「市場という巨大な知能」との答え合わせに使うのです。ただ「上がった・下がった」で一喜一憂するのではなく、「自分の仮説が市場に認められたかどうか」を確認する作業に変えることで、投資はギャンブルから「知的エキサイティングなゲーム」へと進化します。
③ 感情の波を鎮める「心の安定剤」にする
多くの投資家が失敗する理由は、知識不足ではなく「感情のコントロール」ができないことにあります。株価が暴落したとき、理論株価という「軸」を持っていない人は、恐怖に負けて最も安いところで売ってしまいます。
しかし、理論株価という付き合い方をマスターしている人は、こう考えます。
「株価は30%下がったけれど、この会社の工場の価値も、ブランドの価値も、来年の予想利益も1円も変わっていない。つまり、理論株価は不変だ。だったら、今はただ『バーゲンセール』が起きているだけだ」
この「価値と価格を切り離して考える能力」こそが、投資で生き残るための最大の防御力になります。理論株価は、あなたがパニックに陥りそうなとき、そっと背中を支えてくれる「心の安定剤」になってくれるのです。
④ 継続的な「メンテナンス」を怠らない
理論株価は、一度計算したら終わりではありません。企業は生き物であり、それを取り巻く環境も常に変化しているからです。
3ヶ月に一度の決算発表で、利益のペースが変わっていないか?
金利などの経済状況が変わり、割引率(期待利回り)を見直す必要はないか?
このように、定期的に自分の計算式をアップデートする「メンテナンスの習慣」を持ちましょう。自分の予測が外れていたなら、素直に理論株価を修正する。この柔軟さこそが、頑固な理論至上主義者にならずに、しなやかに利益を出し続けるコツです。
⑤ 最後に:理論株価を「信じすぎない」という知性
逆説的ですが、理論株価との最高の付き合い方は、「理論株価を疑い続けること」です。 数学的な美しさに酔いしれて、「数字上はこうだから、市場が間違っている!」と頑なになりすぎると、市場の大きなトレンド(流れ)を見落とします。
「自分の計算は正しいはずだが、もしかしたら何かを見落としているかもしれない」という謙虚さを常に持ち合わせてください。
理論株価は、あなたの「左脳(論理)」を司る。
市場の動きや世の中の変化は、あなたの「右脳(直感)」で感じる。
この両方のバランスを取りながら、理論株価を「あくまで頼れるアドバイザー」として隣に置いておく。それが、最も賢く、そしてストレスのない理論株価との付き合い方です。
あなたの投資を「物語」から「根拠」へ
理論株価を学ぶ前、あなたの投資は「なんとなく良さそう」「誰かが言っていたから」という、ふわふわした「物語」だったかもしれません。 しかし今、あなたは数字に基づいた「根拠」を手に入れようとしています。
理論株価という物差しを持って市場を見渡せば、景色は一変します。 暴落は「チャンス」に見え、過熱したバブルは「危険信号」に見えるようになります。この確かな視点こそが、あなたが長期的に資産を築いていくための、最も価値ある財産になるはずです。
理論株価を味方につけ、一歩ずつ、自信を持った投資を歩んでいきましょう。
投資の世界へようこそ。数字の裏側にある「真の価値」を見抜く旅を、ぜひ楽しんでください。
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